こんにちは!ジョージア滞在も4年目、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア料理に関する記事も充実してきた今日この頃。
定番料理の紹介から、各メニューの知られざるヒミツまで…この国の奥深い食文化を日本のみなさんに正しくお伝えするために、ひと肌もふた肌も脱ぎまくってきました。
当ブログを追っているみなさんはとくとご存じでしょうが、ジョージアにおいてのぶよが主食として日々食べている料理があります。
それがヒンカリ(Khinkali / ხინკალი)。
「ジョージアの水餃子」や「ジョージア風小籠包」などと表現されるヒンカリ。
のぶよ的にはだいぶ知名度が上がってきたように思うのですが、いまだに「ヒンカリ?なにそれ聞いたことない…」なんて反応をされることもあります。
ヒンカリを知らないなんて、本当にもったいない!
「ジョージアに来てヒンカリを食べない=日本を旅行して寿司を食べない」くらいのレベルで、ジョージアでは超超超定番料理です。
定番料理だからこそ、奥が深いのがこの世の常。
実際、ヒンカリに関してきちんとまとめられた情報は、日本語でも英語でもほとんど存在しないように思います。
だったら、ジョージアに滞在している外国人全員の中で最も多くヒンカリを食べてきたと自負している(まじで)、のぶよがまとめてやろうではありませんか!
というわけで今回の記事は、のぶよが4年近くのジョージア滞在においてリサーチしてきたヒンカリのヒミツを徹底解明するもの。
謎に包まれたヒンカリの起源から、ジョージア国内に存在するヒンカリのバリエーション、本場での作り方まで…
底なしのヒンカリ沼へ、みなさんを誘う内容となっています。
ヒンカリに関しては、真偽が怪しい噂や起源論争が多く出回っているのも事実。
この記事をもって、ヒンカリにまつわる数多くのミステリーに終止符が打てればと思います。(みんな知っているだろうけど、何事もハッキリさせたいタイプなので)
ジョージア料理の定番!ヒンカリの七不思議
ジョージアのヒンカリ七不思議①:ヒンカリは水餃子?小籠包?
まずは「そもそもヒンカリって?」といったヒンカリ協会雑巾がけレベルの入門者に向けて、サックリと説明します。
ヒンカリとは、小麦粉生地を薄くのばしたもので具を包み、お湯で茹でて調理した料理のこと。
ひとことで表すなら「水餃子」ですが、のぶよ的には「茹で小籠包」のイメージの方が近い気がします。
日本人にとって小籠包といえば、台湾や上海など東アジア圏のものが断然ポピュラーでしょう。
東アジア圏の「小籠包」とジョージアのヒンカリの大きな違いは以下の3点です。
①お湯で茹でて調理される
②一般的な小籠包より2倍~3倍の大きさ
③具は牛豚の合い挽き肉が主流
具を包んだ生地を茹でるという調理法だけ見ると、「ヒンカリ=ジョージアの水餃子」と言った方が良い気もします。
しかしながら、茹であがったヒンカリの中には肉汁スープがたっぷりと入っており、これはまさに「ジョージアの小籠包」の名にふさわしいもの。
ヒンカリが水餃子なのか、小籠包なのかについてはいったん置いておくことにしましょう。
「水餃子スタイルで茹でて調理され、小籠包のように肉汁がたっぷり」という、水餃子と小籠包の良いとこどりの料理と言えます。
ジョージアのヒンカリ七不思議②:謎に包まれた起源と歴史
日本から遠く離れたジョージアに、餃子のような小籠包のような料理があると知ると、気になってくるのが、どこからどうやってヒンカリがジョージアに入ってきたのかという起源。
ジョージア人/外国人にかかわらず多くの人が信じるのは、およそ800年前にモンゴル帝国がジョージアに侵攻してきた際にもたらされたという説です……が。
実はこのモンゴルから入ってきた説以外にも、ジョージアのヒンカリの起源や歴史に関してはいくつかの説が存在しています。
①モンゴルから伝わった説
ヒンカリの起源に関してジョージア国内外で最も有名な説が、「800年前にモンゴル帝国から入ってきた」という説。
確かに、シルクロード沿いの国には餃子のような料理が必ずと言っていいほどに存在しているもの。
中央アジアのマンティやトルコのマントゥ、ロシアのペリメニなどは、いずれもモンゴル帝国によってもたらされた水餃子が各地域に根付いたものだと言います。
のぶよも当初はこの説を信じていたのですが、だとすると矛盾する点もいくつか。
それは、ジョージアのヒンカリは、モンゴル帝国が進軍し支配下においたジョージア平野部の料理ではなく、地理的に隔絶されていてモンゴル軍の侵攻を受けなかったコーカサス山岳地域の料理であるためです。
モンゴル軍と接点がなかったはずのコーカサス山岳地域に、モンゴル由来のヒンカリが根付く…
そんなテレパシーのような現象はちょっと考えにくいですよね。
②プシャヴィ地方で独自に生まれた説
「ヒンカリはモンゴルからもたらされたのに、モンゴル軍と接点がなかったコーカサス山岳地域にヒンカリが広まった」という、なんとも解せない矛盾を解決してくれるのが、2つ目の説。
ヒンカリはモンゴルからもたらされたものではなく、コーカサス山岳地域の一つであるプシャヴィ地方(Pshavi / ფშავი)で独自に生まれた料理であるとするものです。
これは、主にプシャヴィ地方やその周辺の山岳地域の人々が信じている説なのですが、これも若干怪しい部分が。
そもそも食料や物資が限られている山岳地域で、日持ちしにくく手間がかかる餃子のような料理が生まれるのか?という疑問です。
ジョージア料理の中で、生地に具を包んで茹でる調理法のものはヒンカリのみ。
コーカサス山岳地域には他に類似の料理が存在しないことからも、独自発祥説はやや弱いように思います。
③北コーカサス地域の「ヒンカル」が変化した説
モンゴル由来でも山岳地域独自発祥でもない…とすると、いったいどこでヒンカリが生まれたのかさらに謎が謎を呼ぶもの。
その答えとなるかもしれないのが、北コーカサス地域の料理である「ヒンカル(ヒンガル)」がジョージアの山岳地域で変化したという3つ目の説です。
ヒンカリとヒンカル…そっくりな名前的にもかなり信ぴょう性がありそうなのでは…!
▲ 北コーカサス地域のヒンカルは、薄くのばした小麦粉生地を四角形に切り分けて茹でたものに、肉やソースをかけて食べるもの。
いわば「包まないヒンカリ」といった感じで、見た目は大きく違うものの具材はほぼ同じです。
ヒンカルが食べられるのは、以下の赤字の地域において。▼
地図をよく見ると、ジョージアのヒンカリの本場とされるプシャヴィ地方などのコーカサス山脈地域と山一つ挟んで北側に位置する地域でヒンカルが食されているのです。
実は、ジョージアのコーカサス山岳地域には、チェチェン人やダゲスタン人が山を越えて幾度となく侵攻→同化してきたきたという歴史があります。
現在でも北コーカサス地域の民族の末裔がジョージアの山岳地域には居住しており、コーカサス山脈の南北間での交流の中でヒンカルがヒンカリに変化してジョージアに根付いたというのは、あながち間違いではないのかも…
まあ、北コーカサス地域のヒンカルの起源をたどればモンゴル帝国に行き着くわけなので、「ジョージアのヒンカリの起源=モンゴル帝国」と言っても間違いではないでしょう。
というわけで、のぶよ的にはジョージアのヒンカリの発祥は以下の流れということで着地しました。▼
①モンゴル帝国が襲来した際に、小麦粉生地と肉を同時に食べる料理が北コーカサス地域に伝わる
②北コーカサス地域で「ヒンカル」として独自に進化
③北コーカサス地域のヒンカルがジョージアの山岳地域にもたらされる
④ジョージアで「ヒンカリ」として独自に進化
これなら、モンゴル帝国起源というのはそのままに、ジョージア山岳地域でヒンカリが広まった謎も解決です。
この説に行きついたのぶよ、天才ではなかろうか…?
ジョージアのヒンカリ七不思議③:「ヒンカリには二種類ある」という噂の真偽
さてさて。ヒンカリの起源や歴史に関する謎が解けたところで、次の謎に迫っていきましょう。
外国人はもちろん、ジョージア現地の人も信じている「ヒンカリには大きく分けて二種類ある」という説の真偽に関してです。
トビリシやバトゥミなど都市部のレストランのメニューを見ると、「ヒンカリ」とだけ書かれていることはあまりありません。
多くのお店では、挽き肉入りのヒンカリが二種類用意されているのです。
・カラクリ・ヒンカリ(Kalakuri khinkali / ქალაქიური ხინკალი)
→ジョージア語で「町風のヒンカリ」
・ムティウルリ・ヒンカリ(Mtiuluri khinkali / მთიულური ხინკალი)
→ジョージア語で「山岳地域風のヒンカリ」
ここだけ見ると「へえ~ヒンカリにも町風と山風があるんだ~」なんて思ってしまいますが、実はこの分類、ものすごく怪しいです。
以下、二種類のヒンカリの「特徴」とされる部分を見ていきましょう。
カラクリ・ヒンカリ
ジョージア都市部のみならず、全国的にポピュラーなのがカラクリ・ヒンカリ(Kalakuri khinkali / ქალაქიური ხინკალი)。
ジョージア語の「カラキ(Kalaki)=町」が語源となっているので、日本語にするなら「町風のヒンカリ」といったところでしょうか。
お店の人に「カラクリ・ヒンカリって?」と尋ねるとほぼ100%の確率で「具にハーブが入っている」との答えが返ってきます。
カラクリ・ヒンカリに入るハーブ=パクチーとイタリンパセリのことで、肉の臭み消しと独自の風味を出す役割です。
カラクリ・ヒンカリの皮は見た目も感触もツルっとしていてかなり薄めなのが特徴的。
これは生地にコーンスターチを混ぜているためで、調理中に破れないように工夫されています。
カラクリ・ヒンカリの具は、牛豚の合い挽き肉にパセリやコリアンダーなどのハーブ類&各種スパイスを混ぜたエスニック風味が強めなのも特徴的。
シルクロード上に位置しているジョージアの都市部(平野部)は、歴史的に他地域との交易が盛んでした。
新鮮なハーブやスパイスを手に入れやすいため、都市部の人の味覚に合わせてアレンジされたのかもしれません。
・トビリシで一番のヒンカリ露店 (トビリシ)
・Nikalas Ezo (トビリシ)
・Churi (トビリシ)
・Old Time Sakhinkle (トビリシ)
・Bolnisi Khinkali House (ボルニシ)
・EL DEPOT (クタイシ)
・Kiziki (バトゥミ)
ムティウルリ・ヒンカリ
ジョージアに二種類あるとされるヒンカリのもう一つが、ムティウルリ・ヒンカリ(Mtiuluri khinkali / მთიულური ხინკალი)と呼ばれるもの。
ジョージア東部のコーカサス山岳エリアに属する「ムティウレティ地方」が語源となっていて、日本語にするなら「山岳地域のヒンカリ」といったところです。
ぺちゃっとした平べったい形が特徴的で、カラクリ・ヒンカリに比べるとサイズはやや小さめ。
生地は、小麦粉+水+塩だけで作られているため、ツルツル感はあまりなく、もっちりとした食感になります。
お店の人に「ムティウルリ・ヒンカリって?」と尋ねると「ハーブが入らないヒンカリ」と返答されます。
ハーブだけでなく、スパイス類もほとんど入らないのが特徴的。
物資に限りがあり、新鮮なハーブ類やスパイスが貴重品であった山岳地域ならではのスタイルです。
というわけで、このムティウルリ・ヒンカリこそがオリジナルバージョンの元祖ヒンカリ。
ジョージアを旅行するなら、一度は食べたい山岳部らしい味わいです。
・Nikalas Ezo (トビリシ)
・Klike’s Khinkali (トビリシ)
・Salobie (ムツヘタ)
・Chveni Ubani (パサナウリ)
・Chokhi (パサナウリ)
「ジョージアのヒンカリは2種類説」の真実
ここまで読むと、ジョージアのヒンカリは、以下の通りくっきりと二種類に分類できそうに思えてきます。
・カラクリ・ヒンカリ(町風)=ツルツル皮&サイズ大き目&ハーブやスパイスが入る
・ムティウルリ・ヒンカリ(山岳地域風)=もっちり皮&小さめ&ハーブやスパイスが入らない
なるほど…たしかに「ジョージアのヒンカリには二種類ある」という噂は正しいように思えてきます…が。
実際にジョージア各地域でヒンカリを食べ歩くと分かるのですが、カラクリ(町風)とムティウルリ(山岳地域風)の二種類のヒンカリの特徴がミックスしたものも多く存在することに気が付きます。
・ムティウルリの平べったい形でもハーブ入り
・カラクリのツルっとした生地でもハーブなし
そして、ヒンカリの本場とされるコーカサス山岳地域の人に二種類のヒンカリの謎について尋ねると、なんとも驚きの反応が。
「カラクリ(町風)とムティウルリ(山岳地域風)?あれはトビリシのレストランがマーケティングのために勝手に呼びだしたのが広まっただけだ!」
つまり、トビリシのレストランの創作ヒンカリを「カラクリ」という新たなジャンルにして、それと本来のヒンカリを差別化するために、本来のヒンカリに対して「ムティウルリ」という呼称が勝手に生み出されたのだとか。なるほど…これだから都会の人間は…!
・ムティウルリ・ヒンカリ:ジョージアの山岳地域各エリアのヒンカリの総称としてトビリシで勝手に生み出されたもの
・カラクリ・ヒンカリ=トビリシでアレンジされたヒンカリに名前をつけたもの
本場の山岳エリアの人にとっては、ヒンカリはそもそもムティウルリ(山岳地域風)のみ。
山岳地域といっても広い範囲に渡るため、エリアによってハーブが入ったり形が違ったり…といったバリエーションが存在するとのこと。
わざわざ「ムティウルリ(山岳地域風)」と総称で呼ぶ概念すらないそうです。
日本で例えるなら、「九州豚骨」という総称で東京で勝手にブランディングされたラーメンが良い例。
九州の人からすれば「いや…”九州豚骨ラーメン”ってざっくりしすぎでは?博多も鹿児島も熊本も久留米もあるんですが?そもそもうちらは”九州豚骨”なんてざっくり名で呼ばん!適当なこと言うな!」といった感じでしょうか。
ジョージアのヒンカリ七不思議④:ヒンカリの本場はどこ?山岳地域のヒンカリをさらに詳しく!
それでは、「山岳地域風」とひとくくりにされるムティウルリ・ヒンカリに、どんな種類があるのでしょうか。
ここでは、のぶよがこれまでに出会ったジョージア山岳地域各地のヒンカリをいくつか紹介していきます。(まだ未食のヒンカリも多くあるので、いつの日か全種類コンプリートしたい…!)
テラヴリ・ヒンカリ
ジョージア東部のカヘティ地方に位置するテラヴィ周辺のヒンカリだとされるのが、テラヴリ・ヒンカリ。
見た目的には小ぶりでぼてっとした形で、皮ももっちりとした「よくある山岳地域のヒンカリ」といった感じです。
テラヴリ・ヒンカリの最大の特徴が、具の挽き肉が豚肉100%である点。
一般的なヒンカリは牛豚の合挽き肉が使用されることがほとんどなので、豚だけというのはかなり珍しいです。
というのも、テラヴィ周辺のカヘティ地方は、ジョージアでも有数の豚肉文化が根付くエリアであるため。
カヘティ地方の豚肉はとにかく美味しいことで有名で、ヒンカリの具の挽き肉のジューシーさと豚肉ならではの脂の風味はとにかく絶品です!
・Zodiaco (トビリシ)
トゥシュリ・ヒンカリ
ジョージア北東部、コーカサス山脈の最奥部に位置するトゥシェティ地方は、2024年現在でも電気すら通っていない秘境。
この山深く、他地域から隔絶されたエリアで食されるトゥシュリ・ヒンカリは、ジョージアのヒンカリの中でも唯一無二のポジションです。
その最大の理由が、具の挽き肉に羊肉が使われるため。
実はトゥシェティ地方は、ジョージアでも珍しく豚肉を禁忌とする地域。
豚肉のみならず、豚皮製品などの持ち込みも厳しく制限されているほどです。
基本は牛豚の合挽き肉が使用されるヒンカリにおいても、トゥシェティ地方でポピュラーな家畜である羊の肉が使用されるというわけ。
羊独特の臭みはいっさい感じられず、あふれ出る肉汁と少量のハーブの清涼感のバランスが素晴らしいヒンカリです。
ヘヴスルリ・ヒンカリ&プシャヴリ・ヒンカリ
続いて紹介するのは、ジョージアのヒンカリの発祥の地とされるプシャヴィ地方と、そのさらに奥に位置するヘヴスレティ地方のヒンカリ。
それぞれ「プシャヴリ・ヒンカリ」や「ヘヴスルリ・ヒンカリ」と呼ばれます。
形は完全なるぺったんこ形で、具を包む際にへらを使って十数本つけられるサクの部分がとても美しいです。
プシャヴリ・ヒンカリ/ヘヴスルリ・ヒンカリのいずれも、具は牛豚の合挽きが定番。
人によっては羊肉の挽き肉を使用することもあるそうです。
最大の特徴と言えるのが、具は挽き肉のみでハーブはいっさい入らない点。
味付けは塩の他にキャラウェイ・パウダー(=クミン)が少量使用されるだけで、かなりあっさりとした味わいが特徴的です。
肉の旨味が100%詰まったスープは芳醇の極み。
トビリシにもこのスタイルのヒンカリを提供する店はいくつかあるので、ぜひ挑戦してみてほしいです。
・Klike’s Khinkali (トビリシ)
・Cafe Daphna (トビリシ)
パサナウリ・ヒンカリ
ジョージア山岳地域のヒンカリの本場のひとつとされるパサナウリ村は、トビリシからカズベキを結ぶジョージア軍用道路のちょうど中間地点に位置しています。
ジョージア人にとって「パサナウリ=ヒンカリの村」なのですが、実はパサナウリ村自体がヒンカリ発祥の地ということではないそう。
パサナウリ村は、さらに奥の山岳地域(プシャヴィ地方やヘヴスレティ地方)へ続く道の分岐点に近い&幹線道路沿いなので交通の便が良い場所に位置する村。
移動時に休憩をとろうとする運転手向けに、山岳地域出身者によるヒンカリを提供するレストランが多く集まるようになり、いつしか「パサナウリ=ヒンカリの聖地」のような存在になったのだそうです。
こんな背景から、「パサナウリ風ヒンカリ」といった独自のジャンルはなく、各山岳地域のヒンカリの特徴がミックスされたハイブリッド山岳地域風ヒンカリがパサナウリのヒンカリの特徴と言えるかもしれません。
トビリシからのアクセスも良く、手軽に山岳地域の絶品グルメが食べられるパサナウリは、ヒンカリ好きにはたまらない村。
旅行者の多くが訪れるカズベキへの道の途中にあるので、時間があれば立ち寄ってみてほしいです!
ジョージアのヒンカリ七不思議⑤:各地域に広がったヒンカリのバリエーション
ジョージアのヒンカリと言えば、肉の種類こそ色々あれど、基本的な具は挽き肉。
しかしながら、食文化が全国に広がっていく過程において、肉以外の食材を具に包んだヒンカリも続々と誕生しました。
ここでは、ジョージア全国的にポピュラーなヒンカリのバリエーションを紹介していきます。
キノコのヒンカリ
まずは、数ある進化系ヒンカリの中でものぶよイチオシのキノコのヒンカリ(Sokos khinkali / სოკოს ხინკალი)。
ジョージア中西部のイメレティ地方で生み出されたとされるもので、現在はジョージア全国で食べることができます。
キノコのヒンカリの具は、細かく刻んでソテーされたマッシュルーム。
スパイスとハーブたっぷりで炒められており、信じられないほどの旨味が溶け出したスープはとにかく感動的に美味しいです。
・Klilke’s Khinkali (トビリシ)
・EL Depot (クタイシ)
・Kiziki (バトゥミ)
マッシュドポテト&チーズのヒンカリ
挽き肉の代わりに、マッシュドポテトとチーズを混ぜたものを具にしたヒンカリ(Kartopilis khinkali sulgunit / კარტოფილის ხინკალი დასულგუნით)もかなりの美味しさ。
ほくほくねっとりのじゃがいもと、芳醇なチーズの風味が口全体に広がり、独特の食感とほど良い塩気がヤミツキになります。
ジョージア西部の名産である「スルグニ」というチーズが使用されるのが定番で、濃厚なコクがじゃがいもと絶妙なハーモニーです。
・Klilke’s Khinkali (トビリシ)
・Nikalas Ezo (トビリシ)
・EL DEPOT (クタイシ)
・Kiziki (バトゥミ)
タラゴンのヒンカリ
ジョージアでも珍しい進化系ヒンカリがタラゴンのヒンカリ(Khinkali tarkhunit / ხინკალი ტარხუნით)。
ジョージア全国的にポピュラーな春のハーブであるタラゴンをふんだんに使ったヒンカリで、具の挽き肉はもちろん生地にもタラゴンが混ぜられているため、鮮やかな緑色をした外見が特徴的です。
タラゴンは独特の風味と香り高さが特徴的で、日本人の間では好き嫌いが分かれるハーブ。
ハマる人はとにかくハマるので、ぜひ一度は挑戦を!(のぶよは大好物)
・Chokhi (パサナウリ)
牛挽き肉のヒンカリ
ヒンカリの具の基本は牛豚の合挽き肉ですが、地域やお店によっては牛挽き肉100%を具にしたヒンカリも提供されます。
豚の脂が入らないため、やや風味的に劣ってしまうのが難点ですが、店によっては具にバターを加えてコクをプラスする場合もあります。
また、牛肉のヒンカリにはハーブが使われない場合が多いのも特徴的。
牛肉独自の風味や味わいが存分に感じられる変わり種ヒンカリ、美味しいお店のものはかなりのレベルです。
焼きヒンカリ
ジョージア人は、ヒンカリを注文する際に数十個単位で大量に頼むのですが、食べきれない場合も多々。
残ったヒンカリは紙箱などに入れて持ち帰ることが可能です。
ヒンカリは薄い生地の中にスープが入っているという性質上、翌日に温め直して食べるのが難しい料理。
茹で直すと生地が破れてしまい、せっかくの肉汁スープが外に漏れてしまうのです。
そんな残り物のヒンカリを美味しく食べようと考えたジョージアの人々の知恵の結晶が、焼きヒンカリ(Shemtsvari khinkali / შემწვარი ხინკალი)。
すでに茹でて調理済みのヒンカリを、大量の油で揚げ焼きにしたものです。
その食感&味は、日本の焼き餃子に近いもの。
日本人的には醤油が欲しくなること間違いなしの料理です。
家庭で残り物を再利用するための料理という性格が強く、レストランのメニューではあまり見かけないのが難点の焼きヒンカリ。
運良くメニューにある場合は、問答無用で注文してみましょう!
ジョージアのヒンカリ七不思議⑥:ジョージア人直伝!ヒンカリの正しい食べ方
ヒンカリを初めて目にした旅行者が悩むことNo.1が、「これ…どうやって食べるの…?」というもの。
ひと口でいくにはサイズが大きすぎますし、フォークとナイフを使えば皮が破れてスープが漏れ出してしまます。
ジョージアのヒンカリの正しい食べ方は、以下の通りです。▼
①ヘタの部分を指でつまんで持ち上げる
②くるっと逆さにして生地を一口かじり穴をあける
③中のスープを穴から飲み干す
④残りの具と生地をむしゃむしゃ
といった感じ。
ジョージアではフォークやナイフを使ってヒンカリを食べる人は少数派で、普通は手で直に持って食べます。
ヒンカリの中に入っているスープは激熱であるため、一気に食べようとすると口の中を火傷してしまうので要注意。
また、ジョージアではヒンカリにソース等をつけたりスープの具にしたり…ということは絶対にありませんが、多くの人は黒胡椒をどばっとかけて食べます。
のぶよ個人的には、黒胡椒なしの方が肉本来の旨味やスパイスの奥深さが感じられると思うのですが、郷に入っては郷に従うのもアリかもしれません。
また、初心者が困ることの一つが、ヒンカリの上部の生地がギュッと密になった上部のヘタの部分。
外国人を見ていると、ヘタの部分もそのまま食べる人が多い気がしますが、ジョージア人でこのヘタの部分を食べる人はまず存在しません。
このヘタの部分は生地の密度が高く硬いため、食べずに残す人がほとんど。
ヘタの部分を残しても失礼ではないですし、日本の寿司屋で海老の尻尾を残すのが普通な感覚だと考えれば◎
ジョージアのヒンカリ七不思議⑦:家庭で作られるヒンカリのレシピ
形や具材こそ違えども、ヒンカリの基本的な作り方は餃子づくりの工程とほぼ同じ。
生地を薄くのばす→小さな円形に成形→具を包む…というステップで、最後に茹でて調理する点だけが異なります。
ヒンカリの具材となる挽き肉に関しては、牛豚の合挽き肉に塩胡椒、クミンパウダーが入るのが基本。
家庭によっては刻んだフレッシュハーブを入れたり、各種スパイスを入れる場合もあります。
ヒンカリ最大の特徴とも言える、生地の中にたっぷり詰まったスープ。
その秘密は、準備段階で挽き肉に水を混ぜて肉に水分を含ませることにあります。
調理時に生地の中で肉のエキスを含んだ水分が肉から染み出た結果、たっぷんたぷんの肉汁お化けスープになるというわけ。
中の具の塩加減やスパイスの配合は各家庭によって大きく異なりますが、ヒンカリ作りにおける最大のポイントとなるのが生地作りです。
日本では「餃子の皮」が市販されていて、具を包むだけで簡単に手作り餃子ができますが、ジョージアでは「ヒンカリの皮」などいっさい売られていません。
各家庭/各レストランで、小麦粉と水から生地を練り上げて作るのです。
(どうして冷凍/冷蔵のヒンカリの皮が市販されないのかは、まじでジョージア七不思議)
この生地作りの工程こそが、ヒンカリ名人の腕の見せどころ。
厚すぎるともってりしすぎた食感に/薄すぎると茹でる際に破れてしまうため、ちょうど良い薄さにするには熟練の技が必要となります。
豪快でおおざっぱな味付け&調理法が多いジョージア料理の中では、ヒンカリはとてもデリケートな料理と言えるでしょう。
薄くのばして成形した生地の中央に小さじ1杯~1.5杯ほどの具をのせ、くるくると手のひらで回転させながら包んでいきます。
この包むステップも初心者にはかなり難しいのですが、ヒンカリ名人のおばさんたちは目にもとまらぬ早業で手を動かします。
あとは、ヒンカリを大量のお湯の中で8分ほど茹でれば完成。
ヒンカリを茹でている間は常にかき混ぜ続けないといけない(混ぜないと鍋にくっついてしまう)のも大変なところ。
ジョージアでは木べらを用いて鍋を混ぜたりヒンカリをすくったりするのが基本です。
ジョージア全国的に、ヒンカリ作り=女性の仕事という認識がとても強く、山岳エリアの村に必ず一人はいる「ヒンカリ名人」とされる人も多くは女性。
しかしながら、ごくまれにヒンカリ作りを男性が担当する店も存在します。
生地をのばすプロセスや包むプロセスは、かなり指先の器用さが必要。
男性ヒンカリ名人が芋虫のように太い指で器用にヒンカリを包むようすは、まるで無形文化財さながらの感動を与えてくれます。
ヒンカリのレシピについては、現在修行中です!(のぶよは壊滅的にヒンカリ作りのセンスがない)
修行を終え、お見せできるレベルのヒンカリが作れるようになった際には、詳細な作り方・レシピをシェアします!
おわりに:ジョージアで一番ヒンカリが美味しい店は?
ジョージア料理の定番中の定番であるヒンカリに関するアレコレを詳細に解説してきました。
このとてつもなくマニアックな記事をここまで読んだ人は、さぞかしヒンカリに興味津々なのではないでしょうか…良かったら友達になりましょう(笑)
そんなヒンカリストのみなさんのために、ジョージアで一番美味しいヒンカリを出す店をこっそりとお教えしましょう…
ジョージア全国津々浦々を旅してはヒンカリを食べまくってきたのぶよが「ここのヒンカリはまじで全世界の人に食べてほしい…!」と感動したお店です。
それは……
別記事にまとめています!(でなければものすごいボリュームの記事になってしまうので)
「ジョージア全国ヒンカリの旨い店ランキング」と題して、ジョージアNo.1のヒンカリを紹介しているので、ぜひともチェックを!▼
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