こんにちは!ジョージア滞在も4年目!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
当ブログでいくつか紹介している「ジョージア料理のヒミツ」シリーズ。
ハチャプリやヒンカリなどのメジャーどころから、オジャフリやムツヴァディなど日本ではあまり知られていないながらもジョージアではド定番なものまで…
本場の味にまつわるヒミツや現地の食文化、各料理が美味しいお店までを紹介してきました。
今回スポットライトを当てるのは、おそらく日本で最も有名なジョージア料理であるシュクメルリ(Shkmeruli / შქმერული)です!
この何とも覚えづらい名前の料理が日本に広がったのは、つい数年前のことです。
SNSで「世界で一番ニンニクが美味しく食べられる料理」として話題になったことをきっかけに、某牛丼チェーン店でシュクメルリ定食として発売されるまでに。
それまでは話題に上ることすらなかったジョージアという国の知名度を、グッと引き上げてくれたアイコンのような存在。それがシュクメルリだったのかもしれません。
現在は日本でのシュクメルリブームはやや落ち着いた感じはしますが、手軽なレトルト食品になっていたり、都市部のレストランのメニューになっていたりと、根強い人気があることは間違いないでしょう。
この記事を読んでいる人のほとんどは、シュクメルリという料理をここ数年で初めて知り、日本で発売されたシュクメルリを食べたことがある人ではないでしょうか。
初めに言ってしまいますが、本場ジョージアのシュクメルリは日本人がイメージするものとはかけ離れた料理です。
「せっかくなら本場のシュクメルリを食べてみたい…!」と考えてジョージアに渡航する人は、心の準備が必要かもしれません(笑)
というわけで、今回の記事は本場ジョージアにおけるシュクメルリという料理を徹底解剖するもの。
発祥や食べ方など基本情報はもちろん、ジョージア国内に3種類のバリエーションが存在するシュクメルリについてもしっかりと解説しています。
「シュクメルリに種類なんてあるの…?」と思う人も多いかもしれませんが、ラーメンに醤油/味噌/塩などのバリエーションがあるようなものだと考えるのが◎
それぞれのシュクメルリが食べられるレストラン情報も掲載しているので、ジョージア旅行でシュクメルリ食べ比べ(のぶよはこの行為を「シュクめぐり」と呼んでる)をしたい人には、きっと役立つはずです。
きっとあなたがまだ知らないシュクメルリの世界へ…いざ!
ジョージアのシュクメルリとは?日本人が知らないヒミツにせまる。
「そもそも、シュクメルリって何…?」という人もいるでしょう。
超簡単に説明すると、「ニワトリ丸々一羽を大量の油と大量のニンニクで揚げ焼きにし、仕上げに水を加えた料理」です。
この「仕上げに加える水」を牛乳にしたりサワークリームにしたりすることで、数種類のバリエーションが生まれるのですが、基本的な材料と調理法はジョージアに存在するどのシュクメルリにも共通しています。
「あれ…?シュクメルリって鶏肉のガーリッククリーム煮込みでは…?」
「シチューみたいに野菜入れるのでは?サツマイモとか…」
「チーズのせてグラタンみたいにするんじゃ?」
と思った人…あなたは日本に渦巻く資本主義マーケティングという名の波にまんまと飲み込まれています。(まさにそんなあなたのためにこの記事を書いています!)
まずは日本で多くの人が誤解している、ジョージアにおけるシュクメルリの基本情報をしっかりと見ていきましょう!
シュクメルリの起源と発祥の村
現在でこそジョージア全国に広がったシュクメルリですが、実はもともとはある山深い村の郷土料理であったことは、意外に知られていません。
シュクメルリが生まれた村が、ジョージア西部のラチャ地方に位置するシュクメリ(Shkmeri / შქმერი)という人口百人ほどしかない小さな村。
実際に訪れてみると、この超限界集落そのものな地でシュクメルリが生まれたなんて信じられないほどに寂れた雰囲気です。
「シュクメリ村」と「シュクメルリ」…なんだか名前が似ているように思いますが、偶然ではありません。
この村でシュクメルリが発祥した理由についてはいくつかの説が存在していますが、ジョージアで最も有名なのは以下のものです。
むかしむかし、ラチャ地方のアンブロラウリという町にトビリシから偉い役人が訪問すること決まりました。
とりあえず、町で一番のお屋敷に役人を招きましたが、あまりに急な決定だったことと冬の時期であったため、人々には役人をもてなすための食材の用意がありません。
困り果てたお屋敷の調理担当の男は屋敷で飼われていた若鶏を潰し、冬場の栄養不足で痩せた若鶏の身の不味さをごまかすために大量の油と大量のニンニクで揚げ焼きにした料理をその場で思いついて提供することに。
この料理の美味しさに、役人は大感激。
調理担当の男を呼び寄せ「初めて食べたがとても美味しい。これは何という料理か。」と尋ねます。
自分が思いついて適当に作った料理であるとは口が裂けても言えない調理担当の男は、自分の出身地であるシュクメリ村の名を冠して「シュクメルリ・カタミ」(=ジョージア語で“シュクメリ村風の鶏肉”)と答えます。
トビリシに戻った役人は、ラチャ地方で食べた「シュクメリ村風鶏肉」の味が忘れられず、自身の調理担当に何度も作らせたのだとか。
こうして、鶏一羽を捌いて大量の油とニンニクでグリルした料理は「シュクメルリ」と呼ばれるようになり、発祥の地ラチャ地方の外にも広がっていきましたとさ。めでたしめでたし
そんなわけで、シュクメルリはシュクメリ村の名を冠しているというわけ。
ジョージアの伝統的な肉料理は、成長して老いた家畜の肉が使用されるのが普通ですが、エピソード内ではあえて貴重な若鶏を使用している点に精一杯のおもてなしの心が感じられるような気がしますね。
のぶよはシュクメリ村に実際に訪れたことがあるのですが、まさかここがシュクメルリの発祥の地だとは信じられないほどの寂れ具合でした。
村に飲食店は一軒もなく、オリジナルのシュクメルリを食べるためには、村の一般家庭で作ってもらうしか方法がありません。
(「シュクメルリ発祥の村」として道の駅併設のレストランでも作ってガンガン売り出せばよいのに…と思ってしまうのぶよは、資本主義に侵されすぎているのだろうか…)
ジョージアに存在する3種類のシュクメルリ
さて。シュクメルリの発祥は紛れもなくラチャ地方なのですが、食文化とは常に変遷を遂げていくもの。
ジョージア全国にこの料理が広がっていく過程で、その土地に合わせて少しずつバリエーションが増えていきます。
ラチャ風シュクメルリ
▲「元祖シュクメルリ」とも言える、本場ラチャ地方のシュクメルリはこちら。
ラチャ地方のシュクメルリは、発祥のときからそのままの姿。
大量の油とニンニクで若鶏を揚げ焼きにし、最後に水を加えてスープ状にした超シンプルなものです。
気候が厳しく、地理的に他エリアと隔絶されている山岳地域であるため、一般的なジョージア料理で多用されるスパイスやハーブは一切使用されないのが特徴的。
油に水を入れて乳化させることで、透き通った琥珀色のスープとなっており、茶色のシュクメルリと呼ばれることもあります。
トビリシ風シュクメルリ
本場ラチャ地方から伝わったシュクメルリが、首都トビリシで独自に進化したものがトビリシ風シュクメルリ。
材料も調理法もラチャ風とそっくりそのままですが、最後のステップで水の代わりに牛乳を加えたもので、黄色っぽい色合いが食欲をそそります。
牛乳を使用することでまろやかさが出るのはもちろんのこと。
やや難しく技術が必要な油を水で乳化させるステップを牛乳を使用することで誤魔化すことができるのもポイントです。
誰が作ってもそれなりに美味しく出来上がる&ニンニクの強い風味と香りがややましになるため、万人受けする味わい。
現在ではトビリシのみならず、ジョージア全国で最もポピュラーなシュクメルリとなっています。
アジャラ風シュクメルリ
山深いラチャ地方発のシュクメルリは、東はトビリシへ、西は黒海沿岸地域へと広がっていきます。
黒海沿岸に位置するジョージア第二の都市・バトゥミを中心とするアジャラ地方に到達したシュクメルリは、オリジナルのラチャ風やトビリシ風とは全く異なる進化を遂げました。
アジャラ地方はもともと、ヨーグルトや牛乳、バターなどの乳製品を多用する食文化が根付く地域。
200年前のロシア帝国時代やソ連時代にはリゾート地として賑わった歴史もあり、ロシアやウクライナなど東欧地域で好まれるスメタナ(サワークリーム)も流入し、ありとあらゆる料理において多く使用される独特の食文化を持ちます。
そんな乳製品王国のアジャラ風シュクメルリは、揚げ焼きにした鶏肉を一度取り出して油を切り、大量のサワークリームを投入してオーブンで焼き上げるという独自の調理法。
他の種類のシュクメルリとは異なり、鶏肉とニンニクを焼いた油は使用されないため、ニンニク感も油っこさも控えめなあっさりした味わいが最大の特徴。
純白の見た目も美しく、食欲が刺激されます。
日本で広まったシュクメルリは「鶏肉のガーリッククリームソース煮込み」という認識だと思いますが、それに最も近いのがこのアジャラ風だと思います。(とはいえ、煮込む調理法ではないので別物ではあるけど)
ジョージア人はシュクメルリを食べない?
ここまで読んだ人は「ジョージアに3種類もシュクメルリがあるなんて…そんなにバリエーションが生まれるほどにポピュラーな料理なんだ…!」と思うかもしれません。
実は、ジョージアの現地の人はシュクメルリを食べることはあまりありません。
「シュクメルリの存在を知らない」という人こそ珍しいですが、「知ってるけど食べたことがない」というジョージア人は結構多い印象です。
というのも、シュクメルリはどこのレストランにも置いてある定番料理ではないため。
地元の人が利用するローカル食堂のメニューにあることはほとんどなく、ある程度の価格帯のお店だったり、数人で利用するための居酒屋タイプのお店に行かないと食べられないのです。
鶏を丸々一羽使用するため、量が多く価格が高めのシュクメルリ。
日本の牛丼チェーンで「シュクメルリ定食」が大ヒットしたこととは対照的に、ジョージアのシュクメルリは一人で食べる料理ではなく、数人が集まった際にみんなで囲んで食べる宴会料理といった位置づけです。
そのため、日常的に家庭でシュクメルリを食べるという文化はジョージアにはなく、「数人が集まる特別な機会に外に食べに行くもの」として愛されています。
日本で広まったシュクメルリは別物
ここまでの内容と写真ですでにお察しだと思いますが、日本で広まったシュクメルリはジョージアのシュクメルリとは完全なる別物です。
大きく分けて3種類存在するジョージアのシュクメルリですが、いずれのタイプも鶏肉とニンニク以外の野菜やハーブやスパイス、チーズが入ることは絶対にありません。
日本では「ガーリッククリーム煮込み」や「チーズをのせたグラタン」、「さつまいもや人参を入れたクリームシチュー」のようにシュクメルリという料理が表現されることがありますが、ぜんぶまるっと総じて嘘。ただのマーケティングです。
まあ、シュクメルリという料理が日本で受け入れられるためには少々のアレンジは必要でしょう。
(本場ラチャ地方風の大量油&大量ニンニクの鶏肉なんて絶対に受け入れられなかったでしょうし…)
しかしながら、「日本でポピュラーなシュクメルリとジョージアのシュクメルリは完全なる別物」という知識を持っておくことは、現地の食文化に対するリスペクトにもつながることだと思います。
だって、米の代わりに蕎麦の実を使ってソーセージを巻いてパイナップルをのせたものが「日本の寿司」とどこかの国で言われてたら微妙な気持ちになりません?そういうこと。
シュクメルリの食べ方
ジョージアのシュクメルリの食べ方は、とってもシンプル。
こんがりと焼けた鶏肉にソースを絡め、手で持って豪快にかぶりつくのです。
フォークやナイフを使用して食べる人もいないわけではないものの、鶏肉には骨がついているため綺麗に食べるのは不可能。
最終的には手を使うことになりますし、ジョージアではシュクメルリを手づかみで食べてもマナー違反ではありません。
シュクメルリのスープは3つの種類ごとに質感や味が大きく異なるものの、どれもパンをひたしながら食べるのが現地流。
鶏の旨味とニンニクの風味が100%染み出したスープは、どのタイプのシュクメルリでも絶品。
余った分はどのお店でも持ち帰ることができ、リゾットやパスタのソースとして自宅で再利用することも可能です!
(むしろのぶよは、この再利用魔改造料理が目的でシュクメルリを注文して残りを持ち帰ってたりする)
シュクメルリのレシピ
特別なスパイスやハーブが一切必要ないシュクメルリは、日本にいながらにして現地の味を完全再現することが可能。
ジョージア料理は独自のスパイスを用いることが多く、日本では手に入りにくい材料が使用されることも多いので、シンプルな材料で作れるシュクメルリは自炊派には嬉しい存在です。(だからこそ、変にアレンジされていないシュクメルリが日本で広まってほしかった…)
シュクメルリのレシピはとてもシンプル。ざっくり説明すると以下の通りです。▼
①丸鶏をさばく
②たっぷりの油で鶏を焼き、大量のみじん切りニンニクを投入
③水(もしくは牛乳)を入れて油と乳化させる
④追いニンニクをたっぷりとまぶす
ステップ③の乳化が味の決め手となるので、ここさえクリアすればジョージア本場の味そのままのシュクメルリが日本の食卓で楽しめます。
シュクメルリの詳細なレシピやコツについては別記事で解説しているので、「ガチのシュクメルリを食べてみたい!」という人はぜひチェックを!▼
ジョージアの3種類のシュクメルリ&おすすめレストランをシュクめぐり!
ここまで読めば、ジョージアにおけるシュクメルリという料理がどんな存在なのか、なんとなく理解できたのは。
ここからは、「ジョージアに存在する3種類のシュクメルリ」の項で解説した3種のシュクメルリについて、どんな味なのかもっと詳しく知っていきましょう!
基本の調理法や材料はほとんど同じであるのに、その味わいは三者三様。
それぞれのシュクメルリが食べられるおすすめのレストラン情報も掲載しているので、ジョージア旅行の楽しみの一つに各地の「シュクめぐり」はいかがでしょうか。
①ラチャ風シュクメルリ
まずは、元祖でありオリジナルであるラチャ地方風のシュクメルリ。
材料は鶏肉とニンニク、油と塩と水の5つだけという超シンプルな「シュクメルリの原型」です。
シンプルな材料であるため、素材の味がとても大切なのは言わずもがな。
他エリアでは大人の鶏が使用される場合がほとんどですが、ラチャ地方ではシュクメルリ発祥の逸話をそのままに、若鶏が使用される点も独特です。
ラチャ風のシュクメルリはとにかく油がすさまじく、ニンニクの香りと風味を乳製品でごまかすこともないため、良くも悪くもパンチが効いた味わい。
本場ラチャ地方のお店ならまず間違いなく美味しいのですが、トビリシなどラチャ地方以外の地域でラチャ風シュクメルリを出す店では当たり外れがものすごく激しい点にご注意を。
ラチャ風シュクメルリにおける調理時の最大のポイントである乳化がきちんとされたものは、鶏の旨味が染み出した油と水が均等に混ざり合い、まるでラーメンのスープのような果てしない旨味と芳醇さに感動させられます。
ラチャ風シュクメルリが美味しい店:Taverne Krikhula(アンブロラウリ)
元祖シュクメルリを食べたいなら、やはりラチャ地方まで足をのばすのが◎
ラチャ地方で最大の町であり、シュクメルリ発祥のエピソードの舞台となったアンブロラウリにあるTaverne Krikhulaは、ラチャの地元の人たちが「あそこのシュクメルリが一番!」と口を揃える名店です。
Taverne Krikhulaはレストランというよりも食堂といった雰囲気で、観光客向けではなく地元の人が通うローカル感が魅力的。
このお店のシュクメルリは、まさに絶品です。
ぷりっぷりの身の若鶏は、ぱりっぱりの皮の香ばしさに包まれた柔らか食感の極み。
ボリュームは恐ろしいほどに多く、「これでもか!」とばかりに大量のニンニクが投入されているのですが、意外にぺろりと食べられてしまうかもしれません。
その秘密が、完璧なまでに乳化されたスープ。
本来は混ざりにくい水と油に力を加えて混ぜることで琥珀色のスープを作り出しているのですが、このスープがまじで美味しいのです。
若鶏の風味と皮から出た油がしっかりと溶け込んでおり、もはやこのスープを使ってラーメンを作ったら売れそうなレベル。
トビリシでもラチャ風のシュクメルリを出す店がありますが、正直比べるのが失礼に思えるほど。
あまりに美味しすぎたためのぶよは2回訪問したのですが、いずれも完璧な味わいでした。
・Restaurant Ortachala(トビリシ)
・Kve Chame Kve Tsadi(オニ)
②トビリシ風シュクメルリ
続いては、仕上げに牛乳を入れてまろやかさを出したトビリシ風のシュクメルリ。
「トビリシ風」と名付けていますが、今やジョージア全国の飲食店でシュクメルリを注文すると出てくるのはこれ。
牛乳のおかげで少しマイルド&ミルキーな口当たりになっていますが、果てしない油感とニンニク感は健在です。
少し白っぽい黄色の見た目がなかなかに食欲をそそらせる、トビリシ風のシュクメルリ。
牛乳が入っているためか、ワインのお供にももってこいな味わいです。
トビリシ風シュクメルリが美味しい店:Ludi Kazbegi (トビリシ)
トビリシをはじめ、ジョージア全国で食べられるトビリシ風シュクメルリですが、比較的安価で質の高いものを食べるならLudi Kazbegiがおすすめ。
Ludi Kazbegiは、トビリシ中心街からほど近いマルジャニシュヴィリ地区に位置するビール工場兼ビアガーデン。
注ぎたての生ビールはもちろん、ジョージア料理の定番が揃った豊富なメニューもウリで、客層は地元の男性グループがほとんどというローカル感にあふれたお店です。
Ludi Kazbegiのシュクメルリは、絵に描いたようなトビリシ風。
鶏肉が大きな素焼きの器からはみ出しているほどの大ボリュームで、どう考えても一人で食べきれる量ではありません。
牛乳のまろやかな風味と、相変わらずのニンニク感…鶏肉の焼き加減も上手で、外パリパリ&中しっとりの極上食感が味わえます。
この店の難点を挙げるとすれば、日によって味にバラツキがあること。(まあジョージアの飲食店はどこもそうだけど)
焼き加減やスープの味わいはだいたいいつでも美味しいのですが、塩加減がキツめのおばちゃんが当番の日にあたると、重い&油っこい&ニンニク臭&塩味という四重苦になるのでご注意を(笑)
③アジャラ風シュクメルリ
ジョージアのシュクメルリ界における異端児が、アジャラ風シュクメルリ。
西部のバトゥミを中心としたアジャラ地方で独自に進化したシュクメルリは、他の2種類に比べて調理法や味わいにやや違いがあります。
・ラチャ風/トビリシ風:鶏肉を油とニンニクで揚げ焼き→水/牛乳を加える=2ステップ
・アジャラ風:鶏肉を油とニンニクで揚げ焼き→鶏肉だけ取り出して別皿に→サワークリームを加えてオーブンで焼く=3ステップ
こんな感じ。
つまりアジャラ風では鶏肉を揚げ焼きにした大量の油は使われないため、他の2種類のシュクメルリに比べると油っこさやニンニク臭はかなり抑えられています。
アジャラ風をひとことで言うなら「上品なシュクメルリ」といった感じ。
サワークリームの酸味やコクが鶏肉の旨味とニンニクの芳醇さを包み込み、クリーミーで奥深い味わいに仕上がっています。
煮込むという調理法ではなく、野菜などが入ることこそないものの、日本人がイメージする「シュクメルリ=鶏肉のガーリッククリームソース」に最も近いのがアジャラ風だと思います。
芳醇&クリーミーな鶏肉と程良いニンニクの味わいは、アジャラ風のふわふわパンとの相性も抜群!
ジョージア全国で一般的なパンはかなり硬め&甘味がほぼないものがほとんどですが、アジャラ地方はすぐ隣のトルコ由来のふんわり食感&ほのかな甘味のあるパンが好んで食されるのです。
そう、まさに日本の食パンに少し近い味わい。なんとも嬉しい…!
クリームソースがじんわりと染みこんだふんわりパンは、アジャラ風シュクメルリの必須アイテム。
ジョージア他地域とは異なり、アジャラ地方の食堂ではパンが無料でついてくる店が多い点も嬉しいです。
アジャラ風シュクメルリが美味しい店:Shua Kalaki (コブレティ)
アジャラ地方の多くの店で提供されるアジャラ風シュクメルリですが、のぶよ的に一番だと思うのが、コブレティにあるShua Kalakiというレストランのもの。
ここは食堂ではなくレストランに当たるのですが、信じられないほどの格安価格が魅力的。
いまやジョージア全国で最安値の飲食店だと思いますし、地元の人々に愛され続けるのも納得です。
Shua Kalakiのシュクメルリは、直径20cmほどはある素焼きの器にどーんと盛られた状態で提供されます。
純白のサワークリームで化粧した鶏肉の存在感もすごいですが、オーブンから直行されるため、ぐつぐつブクブクとマグマのごとく沸騰しているインパクトはもはやこのお店の風物詩です。
鶏肉の焼き加減は完璧で、ニンニクの量も油の量もちょうど良い感じ。
サワークリームのほのかな酸味と甘みが柔らかな鶏肉を包み込み、コク深く芳醇な風味に感動するはずです!
・Cafe Gundaka(バトゥミ)
おわりに
根強いファンも多いシュクメルリについてのアレコレを徹底解説してきました。
ほとんど話題に上がることのない「ジョージア本場のシュクメルリ」について、少しでも知ってもらえたなら何よりです。
日本のシュクメルリだって美味しいこと間違いなしでしょうが(のぶよは食べたことがない)、やっぱり本場ジョージアとは完全に違うものと認識しておくのは大切なこと。
ある料理が現地でどう調理されどう食されているかを知ることは、その土地の食文化へのリスペクトにもつながることだと思います。
とはいえ、食文化が流入する過程でローカライズされるのはこの世の常。
インド発のカレーが日本で独自進化を遂げて「家庭の味」に成り上がったように、日本バージョンも「日本風シュクメルリ」として今後も愛されていってほしいと思います。
そんなわけで、本場ジョージア発のシュクメルリ談義はここまで。
いつかジョージアに渡航した際は、3種類のシュクメルリ制覇(=シュクめぐり)を目指してみては?(カロリーと胃腸と肌荒れがえらいことになりそうだけど…)
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