こんにちは!ジョージア滞在ももう9か月目、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
嬉しいことに、最近日本でも知名度が上がりつつあるジョージア料理。
当ブログでも実際に食べた本場の絶品料理の数々を紹介した記事をあげているのですが、結構読まれていて勢いを感じます。
日本でポピュラーになりつつあるジョージア料理ですが、「いったいどんな味付けなのか想像ができない」という人も多いかもしれません。
一方の本場・ジョージアでは「これをなくしてジョージア料理は語れない!」という食文化の特徴たるものがあります。
それは、スパイスやハーブを多用すること。
和食の多くに出汁や醤油が使われているのと同様に、ジョージア料理でスパイスやハーブが使われていないものなど存在しないと断言しても良いほどに、味付けの基本となっているのです。
今回の記事は、ジョージア料理に必要不可欠なスパイスやハーブなどの調味料を特集したもの。
スパイス文化が根付いていない日本では、「何それ?」と思われるような珍しいものもあるかもしれません。
ジョージア料理に精通している人にも、どんな味か想像もつかない人にも、新しい発見があるはずです。
各スパイス・ハーブがどんな料理に使われるのかも紹介しているので、自分で作ってみるのも良いかも!
ジョージア料理の基本中の基本!スパイス類
ヨーロッパとアジアの境目に位置するジョージア。
かつて東から西へと香辛料が運ばれたシルクロード沿いに位置しているため、多くの民族が行き交ってきた歴史があり、その食文化は多種多用です。
初めてジョージア料理を食べた人は、様々なスパイスが織りなす複雑な風味に驚くことでしょう。
この項では、ジョージア料理を代表するスパイスを紹介していきます。
1:マリーゴールド
「え?マリーゴールドって、あの黄色い花?食べられるの?」
そうです。ジョージアではマリーゴールドを食べるのです(笑)
日本人にとっては、「マリーゴールド=黄色い花」というイメージしかありませんが、ジョージアでは花びらを乾燥させて粉末状にしたスパイスとして用いられます。
ジョージア語名は「クヴィテリ・クヴァヴィリ(Kviteli kvavili/ ყვითელი ყვავილი)」という魔法の呪文のような響き。
鮮やかな黄色い粉末が大量に積まれているのを市場や露天で見かけることがあるでしょう。
独特の苦みが感じられるのが特徴で、料理の色味を整える目的でも使用されます。
2:ブルー・フェヌグリーク
マリーゴールドと同様に、花がスパイスとして使用されるものの一つが、ブルー・フェヌグリーク。
ジョージアを始め、コーカサス地域の山岳部にしか自生していない植物で、種子とその周りの鞘を砕いて粉末状にしたものが使われます。
上で紹介したマリーゴールドよりも苦みが強く、舌先でピリッとする感覚が特徴的。
ジョージア語名では「ウツホ・スネリ(Utskho Suneli / უცხო სუნელი)」と言い、肉料理やスープ料理には欠かせないスパイスです。
3:ベルベリス
ジョージアの市場を訪れると、赤い木の実を乾燥させてレーズンのような状態にしたものが売られていることに気が付くでしょう。
こちらがベルベリス(バーベリー)と呼ばれる木の実で、ジョージア語ではコツァフリ(Kotsakhuri / კოწახური)と呼ばれます。
乾燥した状態の実がそのまま使われることもありますが、粉末状にしたものを利用するのがよりポピュラー。
フルーティーな香りと甘酸っぱさが特徴で、ビタミンがたっぷりなベルベリス。
肉料理の下味をつける際には欠かせないスパイスの一つです。
4:コンダリ(サマー・セイボリー)
日本ではほとんど知られていないながらも、ジョージアではかなりポピュラーなスパイスが、「コンダリ(Kondari / ქონდარი)」と呼ばれるもの。
英語ではサマー・セイボリー(Summer Savory)と呼ばれるシソ科の植物を乾燥させて粉末状にしたもので、野菜や肉、豆類など幅広い食材の味付けに使われます。
その風味はかなり独特で、バジルとオレガノの中間といった感じ。
シソ科らしく、スッと鼻に抜けるような爽快な後味が残ります。
5:月桂樹の葉(ローリエ)
ジョージアだけでなく、ヨーロッパからアジアまでの広い範囲で、主に煮込み料理に使用される月桂樹の葉(ローリエ)。
肉の臭み消しとして材料と一緒に煮込むと、独特のすっきりとした味わいを加えてくれる「魔法の葉っぱ」です。
ジョージア語では「ダプニス・ポトレビ(Dapnis Potlebi / დაფნის ფოთლები)」と呼ばれ、煮込み料理以外にも、肉のグリル料理などで乾燥させた葉を粉末状にしたものを使用します。
6:キャラウェイ・シード
西アジア原産のキャラウェイ・シードは、日本でも徐々にポピュラーになりつつある健康食の一つ。
その名の通り、キャラウェイというセリ科の植物の種のことで、三日月形をした可愛らしい形が特徴的。
欧米圏でもポピュラーで、種子をパンにまぶして焼き上げることで独特の食感や風味を楽しむことができます。
ジョージア語では「クリアヴィス・テスリ(Kliavis tesli / ქლიავის თესლი)」と呼ばれますが、欧米のように種をそのまま使うのではなく、砕いて粉末状にしたものをスパイスとして利用します。
キャラウェイは、ジョージア国内では北東の山岳部地域にのみ自生しているため、この地域の料理の多くに隠し味として使われる「山の味覚」といったところ。
ジョージア料理を代表するヒンカリもこの山岳地域が発祥で、キャラウェイシードのさわやかな風味がプラスされた奥深い味わいとなっています。
7:コリアンダー・シード
ジョージア料理を特徴づけるのが、コリアンダー(パクチー)をとにかく多様すること。
葉を仕上げにのせることもかなり多いのですが、見た目にコリアンダーが入っていなくても多くの場合は使われています。
それは、コリアンダーの種を砕いて粉末状にしたコリアンダー・シードがほぼ全ての料理に使われるため。
ジョージア語ではこの種を「キンジス・テスリ(Kinzis tesli / ქინძის თესლი)」と呼び、砕いて粉末状にしたものがもはや塩コショウ感覚で使われているようです。
「コリアンダー(パクチー)の種」と聞くと、葉が放つ独特な香りと風味を想像して敬遠してしまう人も多いのですが、コリアンダー・シードには葉のような香りや風味は一切ありません。
柑橘系のような爽やかな香りで甘味も感じられ、クセが全くない「万能スパイス」のような存在なので、苦手に感じる人はかなり少ないと思います。
8:ミント
日本ではデザートやガムの風味など「お口直し」に使われるイメージが強いミントの葉ですが、中東やトルコなど西アジアでは立派な調味料の一つ。
ジョージアでは「ピトナ(Pitna / პიტნა)」と呼ばれ、肉や魚の味付けにはもちろん、チーズとの相性も良いとされています。
生の葉よりも乾燥させた粉末状のミントがスパイス感覚で使用されることが多く、独特の爽快な風味を料理に足してくれる存在です。
9:フメリ・スネリ
「ジョージア料理にはスパイスがあり過ぎてややこしい…」と思う人におすすめなのが、フメリ・スネリ(ხმელი სუნელი / Khmeli Suneli)というジョージア風スパイスミックス。
インド料理のスパイスミックスと言えば「マサラ」ですが、それのジョージア版と思っておきましょう。(もちろんスパイスの種類や調合は全く異なりますが)
フメリ・スネリには、すでに紹介した各種スパイスが黄金バランスで調合されています。
・コリアンダーシード
・ブルー・フェヌグリーク
・コンダリ
・月桂樹の葉
・ミント
・マリーゴールド
など数多くのスパイスに、パセリやディルなどのハーブ類を調合したものとなっています。
メーカーや各家庭によって調合具合は異なりますが、マリーゴールド由来の黄色とその他のスパイスの茶色、ハーブの緑色が混ざったような独特の色をしているのが一般的。
これ一つあれば、どこかエスニックな香りただようジョージア料理が簡単に作れてしまう魔法のスパイスです。
10:スヴァネティ・ソルト
ジョージア北西部のスヴァネティ地方の特産品であるスヴァネティ・ソルトは、かつては限られた地域でしか生産されていなかったもの。
現在でこそジョージア全国のスーパーマーケットなどで簡単に手に入るようになりました。
スヴァネティ地方では、各種ハーブやスパイスを塩と混ぜたものが伝統的に作られており、各家庭によってその調合は異なってくるため、一つとして同じスヴァネティ・ソルトは存在しません。
味わいはとても奥深く、ハーブの香りがふんだんに感じられるのが最大の特徴。
肉、魚、ゆで卵、ヒンカリ…とにかく何にかけても美味しくなります。
スヴァネティ地方では、「どんな料理でもこれを使って味付けしている」と言われるほどにポピュラーな調味料なので、旅行の際のお土産にもぴったりだと思います。
12:メグレリアン・ソルト
スヴァネティ地方のお隣・サメグレロ地方では、一味違うメグレリアン・ソルトという塩が生産されています。
最大の特徴は、塩とハーブだけでなく、「アジカ」と呼ばれる激辛スパイスミックスを混ぜて作られること。
アジカに関しては後述していますが、ニンニクや唐辛子などを混ぜたペーストのようなものです。
そのため、もはや塩とは思えないような真っ赤な色をしており、味もかなりの激辛。
実はサメグレロ地方では激辛料理が名物で、人々はとにかく何を食べても辛くないと気が済まないのです(笑)
全国区となったスヴァネティ・ソルトに比べると知名度は高くありませんが、サメグレロ地方を訪れるならぜひ購入してみましょう!(本当にどこの露店でも売っています)
メグレリアン・ソルトを使いまくる、激辛文化のサメグレロ地方。
滞在時に絶対食べたいサメグレロ名物グルメの記事は現在執筆中です!
ジョージア料理の彩りと風味を整える!ハーブ類
スパイスと同様に、ジョージア料理に欠かせないのがハーブ類。
日本のような出汁文化ではないジョージアでは、味を調えたり肉の臭み消しとして各種ハーブが用いられます。
ここでは数あるハーブの中から、ジョージア料理で最もポピュラーなものを紹介します。
1:コリアンダー(パクチー)
日本人の間では「パクチー好き?嫌い?」とよく議論になりますが、ジョージアという国には「パクチーが嫌い」という概念がありません。
それほどにポピュラーな食材として定着しており、とにかく多くの料理に入っており、あの独特な香りと風味を放っています。
例えるなら日本で言うネギのようなポジションかも。
シュクメルリ、ハルチョー、オジャフリ…
ジョージア料理を代表するメニューのほとんどに入っているコリアンダー(パクチー)ですが、仕上げに振りかける場合が多いので、苦手な人は抜いてもらえる場合もあるでしょう。
しかしながら、ヒンカリの具や肉料理などの下味をつけるためにすでに使われている場合は抜いてもらうことは不可能。
ジョージアに足を踏み入れたなら、コリアンダー(パクチー)と良好な関係を築くしか道がありません。
逆に言えば、「ジョージア料理」を謳っていてパクチーが入っていないものは総じて偽物。
日本全国のパクラーの皆さん、終の棲家としてジョージアはいかがでしょうか(笑)
2:ニンニク
コリアンダー(パクチー)と同等かそれ以上にポピュラーな食材がニンニク。
ジョージアでニンニクが使われていない料理と言えば、パンくらいなのではないでしょうか。
スープ、煮込み料理、グリル料理、漬物…とにかく何にでも使われます。
ニンニクを使ったジョージア料理として日本人に最も知られているのが、鶏肉を大量のニンニクとヨーグルトで煮込んだシュクメルリでしょう。
意外なことに、ジョージアの地元の人はシュクメルリをそこまで食べないそう。
お祝いの席などで大人数で分けて食べるくらいだそうですよ。
3:ディル
東欧諸国で広く愛されるディルは、ジョージア料理でもとてもポピュラー。
独特のスッキリした味わいが特徴的なハーブで、ソース各種や肉・魚の臭み消しなどに用いられるほか、チーズとの相性も良いとされています。
料理の味わいが引き締まったものになるのはもちろん、見た目にもおしゃれな万能ハーブと言えるでしょう。
4:タラゴン(エストラゴン)
ロシアや中央アジア地域原産でヨモギ科のタラゴン(エストラゴン)は、ジョージア人が大好きなハーブの一つ。
ジョージア語では「タルフマ(Tarkhuma / ტარხუნა)」と呼ばれ、市場で大量に売られているのをよく目にします。
パイの中にたっぷりと入れて「タラゴンパイ」を作ったり、羊肉のシチューであるチャカプリに使われたりしますが、最も驚くべきは飲み物になっていること。
ジョージア全国でポピュラーな炭酸飲料であるレモネード(レモンを使ったものに限らず、色々なフレーバーあり)の中には、緑色をした「タラゴン・レモネード」なるものが存在するのです。
メロンソーダの色をさらに濃くした見た目はお世辞にも美味しそうではありませんが、これが意外と飲みやすいのです。
タラゴンのハーブっぽさを感じながら、炭酸飲料らしい甘味も感じることができます。
ジョージア以外ではなかなか味わえないタラゴンのレモネード。
旅行の際にはぜひ一度は挑戦したいものですね!
ジョージア料理に必須のソース類
最後に紹介するのが、スパイスやハーブを用いて作られるソース類。
ヨーロッパの多くの国で見られるようなソース文化ではないジョージアですが、この国にしか存在しない独自のソースが作られ、いくつかの料理では付け合わせの定番となっています。
市販されている出来合いのソースもありますが、未だに各家庭で手作りされるのが主流。(その方が安く大量に作れるので)
ここでは、ジョージア全土でポピュラーなソースを紹介します。
ジョージアを訪れるなら絶対に一度は食べる機会があるので、覚えておきましょう。
ジョージア料理の定番ソース①:ツケマリ(トケマリ)
ジョージア全土で愛される超・超・超定番ソースがツケマリ(Tkemali / ტყემალი)。
ツケマリの主な材料は梅で、各種ハーブやスパイスを調合してじっくりと煮込んで作ります。
甘酸っぱくて深みがある独特な味わいが特徴で、梅のフルーティーな香りが口いっぱいに広がります。
言うならば、「梅酒のソース版」といったところで、日本人がきっと好きな味。
緑色のソースと赤色のソースの二種類がありますが、これは使用する梅の熟し具合の違いによるものです。
ジョージアでは、ポテトにかけたり、グリルした肉料理にかけたりと大活躍なツケマリ。
これ一つあれば、ケチャップはもう必要ありません!
ジョージア料理の定番ソース②:バジェ
ジョージアの中でも主に西部地域で食されるソースがバジェ(Bazhe / ბაჟე)。
クルミを細かく砕いたものにニンニクやスパイスで味付けをした、茶色っぽい色のソースです。
一口食べると、クルミ本来の甘みが口の中に広がり、日本のごまダレのような濃厚なコクがあります。
市販されていることはあまりなく、各家庭で手作りで作られる場合がほとんどなので、なかなか目にする機会は少ないかもしれません。(特にトビリシなどジョージア東部では珍しい)
ジョージア西部を訪れる際にはぜひ挑戦してみましょう。
ジョージア料理の定番ソース③:アジカ
辛党の人にぜひ挑戦してほしいソースが、アジカ(Ajika / აჯიკა)と呼ばれる激辛ソース。
赤唐辛子をメインに、ニンニクやハーブ、スパイスなどを混ぜて練り合わせたもので、辛い中にもスパイスの芳醇で奥深い味わいが感じられるのが特徴です。
ジョージア全土でポピュラーなアジカですが、特に有名なのがジョージア西部のサメグレロ地方とそのお隣のアブハジア共和国のもの。
激辛文化で有名なサメグレロ地方のアジカは、辛さの次元が違います。
肉料理やスープに混ぜるのはもちろん、パンに塗って食べる人もいるほどなので、食文化の違いに驚きですね。(ジョージア東部ではそんなことしません)
これらジョージア西部地域でメジャーなペースト状の「生アジカ」は日持ちしませんが、乾燥させて粉末状にしたものはかなり長持ちするそうなので、お土産にも便利だと思います。
ジョージア料理の定番ソース④:サツェベリ
BBQなどの肉料理に欠かせないソースがサツェベリ(Satsebeli / საწებელი)。
トマトをベースに、玉ねぎやニンニク、各種スパイスとパクチーを合わせた芳醇な甘みが特徴的で、ジョージアではケチャップのように毎日の食卓で活躍するソースのひとつです。
作り方はとても簡単&特別な材料は必要ないので、自作しやすい点も◎
ジョージアでは市販のサツェベリもポピュラーですが、自家製の美味しさとは天と地の差があります。
おわりに
ジョージア料理に必要不可欠な存在であるスパイスやハーブ、ソース類を一挙紹介しました。
和食とは全く異なる味付けの概念が根付いていることに、のぶよ自身も当初はとても驚きました。
日本ではなかなか手に入りにくいスパイスも多いですが、多くの人がジョージア料理に興味を持てば、スーパーなどで簡単に手に入るようになる日も遠くないかもしれません。
エスニックかつヘビーで、多文化の混ざり合いを感じるジョージアの食文化。
現地を訪れる際には、どんなスパイスが使われているのか考えながら名物料理を食べ歩くのもおすすめです!
コメント
こんにちは!
この秋バルカン半島を回った際に、ブログ記事が参考になり大変助かりました。
お礼を申し上げようと思いつつ、年末になってしまいました…。
ありがとうございます!
今後はトビリシの記事をじっくりと拝見する予定です。
残念ながら日本食レストランは閉店してしまったんですね。
辛いスパイスやソースもあるとのこと、探してみます。
写真もきれいでとても読みやすいので、ジョージアに限らず記事のアップデートをこれからも楽しみにしています。
Yamamoto様
コメントいただきありがとうございます!
バルカン半島の記事をお役立ていただいたとのこと、とても嬉しいですし書いた甲斐があったと思います。
トビリシやジョージア関連の記事も、アップデートさせていただきます!(日本食のお店はAkasaka/Piccolo Cafeのいずれも廃業となってしまったようですね…)
励ましのお言葉、感謝いたします!