こんにちは!ジョージア北西部のスヴァネティ地方を合計3回訪問した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
「初めてのジョージア旅行でコーカサス山岳地域を訪問したいんだけど、どこがおすすめ?」と問われたら、のぶよは迷わず即答します。
「とにかくスヴァネティ地方へ行け…!」と。

コーカサスの山々の大自然と、中世から時が止まったような石造りの村々、山岳地域の伝統文化に温かなホスピタリティー…
「ジョージア」と聞いて多くの人が思い浮かべるような要素がギュッと詰まった地域であるからです。


これほどに「コーカサスの秘境感」が漂う山岳エリアでありながら、アクセスや観光面のインフラはかなり整備されているのもスヴァネティ地方の素晴らしい点。
自分の足で歩きたいアドベンチャー派にも、大自然を手軽に味わいたいファミリー派にも、ゆっくり過ごしたいリゾート派にも…とにかく、全ての旅行スタイルに適した楽しみ方ができるのもおすすめする理由です。


また、スヴァネティ地方は「観光」という面以外の文化面や歴史面に関してもかなり独特のエリア。
「ジョージアにありながらジョージア文化ではない」というのがスヴァネティ地方最大の特徴なので、訪問前にはこの地域のカルチャー面のアレコレを知っておく必要があります。

というわけで今回の記事は、のぶよが愛してやまないスヴァネティ地方の観光に必要な知識や情報をぎゅっと詰め込んだもの。
定番から穴場までの見どころはもちろん、旅をより奥深いものとするスヴァネティ文化に関する解説もたっぷりでお送りします。
これさえ読んでおけば、スヴァネティ旅行が充実したものとなること間違いなし!
ここまで細かくスヴァネティ地方を周った日本人も他にいないでしょうし、ここまで詳細な情報を残してくれる人ものぶよ以外にはいないはずなので、ぜひとも役立ててもらえれば嬉しいです。
- スヴァネティ地方を理解するための基本情報
- スヴァネティ地方の見どころ
- ①スヴァネティ地方の玄関口!【メスティア】
- ②メスティアから気軽に行ける氷河!【チャラアディ氷河】
- ③天空の湖の鏡張りの風景に感動!【コルルディ湖群】
- ④メスティアから簡単に行ける絶景ポイント!【ハツヴァリ展望台】
- ⑤スヴァネティの原風景に出会える村!【ツヴィルミ】
- ⑥観光ハイライトとなる世界遺産の村!【ウシュグリ】
- ⑦ウシュグリから訪れる最果ての地!【シュハラ氷河】
- ⑧スヴァネティで最も隔絶された村【アディシ】
- ⑨スヴァネティ旅行最大の冒険!【メスティア~ウシュグリ間4日間トレック】
- ⑩復讐の塔が聳える山村を歩く!【裏スヴァネティ絶景街道】
- ⑪ウシュバ山に抱かれた隠れ里!【マゼリ】
- ⑫ピュアな山村で極上の山暮らし体験【裏スヴァネティ山村街道】
- ⑬ジョージアで最も旅行者が訪れない穴場エリアへ!【クヴァモ・スヴァネティ地方】
- スヴァネティ地方観光のベストシーズン
- スヴァネティ地方へのアクセス・行き方
- スヴァネティ地方旅行のプランニングのコツ(必要日数 / 宿の選び方)
- おわりに
スヴァネティ地方を理解するための基本情報

スヴァネティ地方は、ジョージアという国の中で最も異色のエリアのひとつ。
辿ってきた歴史や文化をはじめ、言語や人々のメンタリティーに加えて村の風景まで、ありとあらゆる面で「ジョージア文化」とは一線を画した独自の山岳地域らしさが感じられます。
スヴァネティ地方を特徴づけるのが、コーカサスの大自然に伝統的な文化が複雑に入り混じっていること。
一般的な山岳地域であれば、歴史や文化の事前知識なしでも大自然を堪能すれば良いだけなのですが、スヴァネティ地方に関しては事前に文化面の知識を得ておくことが必須となります。
ここでは、スヴァネティ地方がどんな地域であるのかをザックリと理解するために、スヴァネティ旅行前に知っておきたい基本的な情報を解説していきます。
以下9つのテーマに分かれているので、気になるところからチェックしてください。▼
スヴァネティ地方の地理

スヴァネティ地方が位置しているのは、ジョージア北西部の山岳地域。
エリアの北側には標高3000m~4000m級の大コーカサスの山々が連なり、その向こうはもうロシア領。
エリア南側にも3000m級の山々が聳えており、四方を深い山に囲まれているのが特徴です。

現在でこそ車両通行可能な舗装道路が敷かれてアクセスは飛躍的に改善されましたが、かつてはジョージアの中でも最も訪問しにくい地域の一つだったスヴァネティ地方。
トビリシやバトゥミなど下界の都市からは距離があり、移動にかなりの時間を要するため、現在でも日程に限りがある短期旅行者はスヴァネティ訪問をスキップしてしまいます。
こうした地理的な隔絶によって、スヴァネティ地方は長い歴史においてジョージア中央政府の統治が及びにくかった地域。
これが、スヴァネティ地方がジョージア他エリアとは文化的に大きく異なる最大の要因となっています。


スヴァネティ地方内に目を向けると、大きく二つのエリアに分けることができます。
最大の町であるメスティアよりも東側の一帯は、訪れる旅行者が多くかなりひらけているエリア。
「スヴァネティ地方の定番スポット」とされる村や自然スポットの全ては、東側エリアにあります。
いっぽう、メスティアよりも西側一帯はほとんどの人に素通りされてしまいがち。
定番スポットの類こそないものの、観光地化の波に呑まれていないピュアなスヴァネティ文化が感じられます。
スヴァネティ地方の歴史
スヴァネティ地方の村々を訪問すると、中世そのままの雰囲気に驚かされるはず。
中世以降は数々の異民族の侵攻を受けてきたジョージアという国において、数百年前の風景がここまでオリジナルのままに残っている地域は他に存在せず、この点もスヴァネティ地方の独自性を象徴しています。
いったいどうして、スヴァネティ地方では中世の雰囲気がそのままに残っているのか…その秘密は、この地域が辿ってきた独自の歴史が深く関係しています。

元々のスヴァネティ地方で根付いていたのは、山岳地域らしく土着の精霊信仰。
4世紀初頭(1700年前)にジョージアがキリスト教を受容すると、徐々にキリスト教化が進みます。
興味深いのが、スヴァネティの人々はキリスト教をそのまま受容するのではなく、元々の精霊信仰に適応させて受容した点。
例えば、「五穀豊穣の神=聖母マリア」「月の神=聖ギオルギ」といったように、精霊信仰の各神をキリスト教の聖人と同一視することで、独自の宗教観が生み出されたのです。
こうして、ジョージア他地域とはやや異なる形ながらもキリスト教文化が浸透していったスヴァネティ地方。
11世紀初頭(1000年前)に中世ジョージア王国が成立するとその領土に入ることとなり、さらにキリスト教化が進みます。

中世ジョージア王国の衰退期にあたる13世紀半ば(800年前)になると、モンゴル帝国やティムール朝をはじめとする異民族の襲来を恐れたジョージア各地域の人々によって、貴重なイコン画や資料がスヴァネティ地方に運ばれて保護されるように。
その後、ジョージア地域一帯は完全に異民族の支配下に入ってしまい、15世紀(600年前)にはとうとう中世ジョージア王国が崩壊してしまいますが、山深いスヴァネティ地方にだけは異民族の支配は及ばなかったのです。

異民族の支配も中央政府による統治もなく、力の空白地帯となったスヴァネティ地方。
住民たちは「自由スヴァネティ軍」と称される自治組織を形成し、自分たちで各村のあれこれを管理するようになりました。
驚くべき点が、この独自の自治システムによる統治が19世紀半ばまで四百年間も続いたこと。
この自治期間の長さと、中世からずっと異民族による統治が及ばず戦乱に巻き込まれることがなかった点こそが、現在のスヴァネティ地方に中世そのままの独自の文化や景観が残る最大の理由だと言えます。

スヴァネティ地方で四百年間続いた自治を終焉させたのが、19世紀後半(150年前)にコーカサス地域へ進出してきたロシア帝国でした。
スヴァネティの人々が素直に大国の統治を受け入れるはずもなく、幾度となく蜂起が起こりますが、結局は大国の支配下に。
20世紀に入りロシア帝国が崩壊した後は、そのままソ連の統治下に入ります。
1991年にソ連が崩壊しジョージアが独立してから十年ほどのスヴァネティ地方は、まさに暗黒の時代。
その地理的な隔絶と貧困による不満から、法の統治が及ばぬ無法地帯と化しており、誘拐や山賊による襲撃が多発していたのです。

現在でもジョージア他地域には「スヴァネティの人は攻撃的だ」などと言う人も少なくないのですが、その偏見はこの暗黒時代のイメージによるもの。
2004年にジョージア軍による犯罪者の一掃が行われると治安は劇的に改善し、ようやく観光地としてのスヴァネティ地方の魅力が注目されはじめることになります。
現在でこそ「ジョージア観光の定番エリア」とされるスヴァネティ地方ですが、実は観光開発が始まってからまだ二十年ほど。
カズベギ周辺地域などかなり開発が進んでいる他の山岳エリアに比べて、スヴァネティ地方がややのんびりとした雰囲気なのは、観光エリアとしての歴史の浅さに要因があるのかもしれません。
スヴァネティ地方の伝統文化&工芸品

地理的に他地域との関わりが薄く、独自の歴史を辿ってきたスヴァネティ地方。
ジョージアの他地域とは異なる伝統的な文化が色濃く残っており、伝統が人々の日々の生活の中にも強く息づいている印象を持ちます。
スヴァネティ地方の人々の多くは元々、林業や牧畜業で生計を立ててきたため、木工細工や羊毛を加工した工芸品が名産。
中でも有名なのが「スヴァン帽」と呼ばれる羊毛の帽子です。

球体を半分に切ったような形のスヴァン帽にはいくつかの色のバリエーションがあり、男性のみが被るもの。
かつてはその人の村における地位などによって、どの色のスヴァン帽を身に着けるかが決まっていたのだそうです。

また、スヴァネティと言えば木工細工でも有名。
椅子やテーブルなどの家具類はもちろん、民家の木製テラスに施された装飾の細かさを見ると、スヴァネティの人々の手先の器用さに驚かされることでしょう。


また、スヴァネティ地方はポリフォニーと呼ばれる混声合唱も有名。
スヴァネティ地方でのポリフォニーは基本的に宴の場において男性のみで歌われるのが独特で、スヴァネティ独自の言語であるスヴァン語で歌われる場合も多いです。
ジョージア他地域では乾杯の際に様々な祝辞を言葉で述べるのが定番ですが、スヴァネティ地方の乾杯はこのポリフォニーとともに行われるのも興味深い点。
歌っては飲み、また歌っては飲み…を延々と繰り返すわけで、なかなかにエクストリームな状況となります。

こうしたスヴァネティならではの伝統文化や工芸文化を深く理解したいなら、メスティアにあるスヴァネティ歴史民俗博物館を訪問するのがおすすめ。


こスヴァネティ地域での出土品や中世の武器などの展示から始まり、かつて実際に使用されていた家財道具や民族衣装などの展示まで、スヴァネティ地方の伝統文化に関する展示がとても充実しています。
スヴァネティ地方の伝統建築

標高が高いスヴァネティ地方の伝統建築は、長く厳しい冬との戦いそのもの。
地面に浅い穴を掘って生活スペースを半地下に設置することで冷気を遮断し、断熱性の高い石を何重にもなるように積み上げて厚い壁を作ることで保温性を高めるような住居が作られました。
その内部は独特で、半地下の生活スペースの中央部には火を起こして暖をとるための囲炉裏が。
囲炉裏を取り囲むような四角形の空間がリビングルーム兼寝室となっており、まるで日本昔ばなしのような生活スタイルに不思議と親近感が湧きます。

▲スヴァネティ地方の伝統的な家屋内で必ず見られるのが、この独特の細長い家具。
家具の内側は空洞となっており物置として利用され、家具の上はベッド代わりになっていました。
また、スヴァネティ地方では伝統的に家族内の序列が存在するのもユニーク。
一家の長のみが座ることが許された「サクルツヒル」と呼ばれる木彫りの立派な椅子がどこの家庭にも備わっており、このあたりの家父長制的な家族観もひと昔前の日本とどこか共通するものが感じられます。▼


かつてのスヴァネティ地方では、衣食住のすべてがこのリビング兼食堂兼寝室のような空間で行われ、家族全員がこの空間で就寝していたそう。
家によっては別に小部屋が一室設置されている場合もあり、これは家族内に若い男子が居た場合に嫁となる女子を迎えて契りを交わすための空間だったそうです。

以上がスヴァネティ地方の伝統的な建築ですが、民家によっては「復讐の塔」が併設されている場合も。
塔へは室内からの通路を利用して外に出ることなく直接アクセスすることができ、非常時に立て籠もれるように備蓄品などを保管していたそうです。
スヴァネティ地方のライフスタイル

近年アクセスが良くなり観光地化が進みつつあるスヴァネティ地方では、インフラ面や物流面が急速に改善されつつある状況。
最大の町であるメスティアに限れば、ジョージアの他地域と変わらないレベルでの滞在が可能であるほどです。
しかしながら、小さな村々では現在でも山の伝統を色濃く残した生活が営まれているのがポイント。
物資に限りがあるこれらの村では基本的に自給自足の生活が基本であり、自家製の作物や家畜由来の原料を利用した食材が使用されています。


標高が高く寒冷なスヴァネティ地方は農業に適しておらず、収穫できる作物もじゃがいもとビーツと人参とりんごくらい。
かねてから冬場のビタミン不足が大きな課題だったそうで、人々は春から秋にかけての期間にジャムや漬物などの保存食を作り、長い冬に備えるのです。
しかしながら、いくら自給自足が基本とはいえ、完全に貨幣経済から抜け出すことはできないもの。
スヴァネティ地方の小さな村で暮らす人々の多くは、自家製のチーズや保存食をズグディディなど下界の都市へと出荷することで現金収入を得ているのだそうです。

また、スヴァネティ地方のライフスタイルを特徴づけるのが、ものすごい薪文化であること。
スヴァネティ地方には電気は通っているものの都市ガスは通っていないため、冬場の暖房&調理用を兼ねてとにかく大量の薪が消費されます。
そんなスヴァネティの薪文化の象徴が、「ペチ」と呼ばれる薪ストーブ。▼

スヴァネティの一般家庭ならどこにでもあるペチは、暖房用と調理用を兼ねたもの。
ペチの中でハチャプリを焼いたり、ペチの上で煮込み料理を作ったりする光景は、スヴァネティ地方の風物詩だと言えます。
スヴァネティ地方の石塔と「血の復讐」

スヴァネティ地方の風景を独特なものにしているのが、黒っぽい石で造られた高さ20mを超える塔の存在。
これらの塔は「復讐の塔」と呼ばれ、スヴァネティ地方内のどこの集落でも必ず見られるものです。
一見すると、カズベギやトゥシェティ地方などジョージアの山岳地域によくある見張り用の石塔のように思えますが、スヴァネティ地方の「復讐の塔」は内部の造りも建設された目的も大きく異なります。


ジョージア語でコシュキ(koshki / კოშკი)と呼ばれる石塔のほとんどは、コーカサスの山を越えて侵入してくる異民族から自分たちの村や家族を守るために建設されたもの。そのため、普通は敵の侵入を見張ることができる高台などに位置しています。
しかしながらスヴァネティ地方の石塔は高台ではなく、一般の民家に石塔が併設されているのが独特。
これには、15世紀~19世紀にかけてどこの国にも属さず、村ごとに自治が行われていたスヴァネティ地方独自の事情が関係しています。

かつてのスヴァネティ地方では、村の掟を破る者や他の村人を侮辱したり暴力をふるう者には「血の復讐」と呼ばれる制裁がなされ、本人はもちろんその家族も復讐の対象とされました。
一応、「血の復讐」は村の偉い人の決定により行われるというルールがあったのですが、しばしばそれは破られ、個人的な怨恨などで復讐が実行されることも多かったのだそうです。
「何がきっかけで他の村人に復讐されるかわからない」という恐怖は、人々に見張りと防衛を兼ねた塔を自宅に作らせ、家族が数か月間塔の内部で籠城生活を送ることを可能にしたのです。
いわば「エクストリーム村八分に備えた避難生活用の塔」と理解するのが分かりやすいかもしれません。

現在では「血の復讐」の風習は廃れ、人々は塔の外の自宅で生活を送るように。
これらの塔はいつしか「血の復讐の塔」と呼ばれるようになり、スヴァネティ地方独自の風習や歴史を現在に伝え続けているのです。
そんな恐ろしい歴史を持つ「復讐の塔」ですが、現在は観光客向けに開放されているものもちらほら。
スヴァネティ地方ならではの体験なので、ぜひとも最上部まで登ってみましょう。


実際に復讐の塔に登ってみると、この場所でかつて人々が生活していたということに改めて驚かされるはず。
復讐の塔の最上部からは、例外なく周囲360°を見渡す絶景が広がりますが、当時の人々は日々「血の復讐」を恐れながらこの風景を見張っていたわけで、なんとも言えない気持ちになります。
スヴァネティ地方には全体的に「陰」の空気が漂っているような気がするのですが、この復讐の塔が放つ不気味さもその要因なのかもしれません。
スヴァネティ地方の言語
スヴァネティ地方の住民の大半は、ジョージア語とスヴァン語の二言語話者。
スヴァン語とはジョージア語と同じカルトヴェリ語族の言語であるものの、文法や語彙、発音などにおいてほとんど共通点がありません(例えるなら同じゲルマン語族である英語とドイツ語がお互いに意思疎通が不可能であるようなもの?)。
スヴァン語の最大の特徴が、表記するための文字を持っていない点。
数百年以上に渡って父・母から子へ口頭で伝えられて現在にまで残っているわけで、現在では便宜上ジョージア文字を用いて表記されはするものの「文字を持たない言語」である点は覚えておきましょう。
スヴァネティ地方を旅すると、スヴァン語を耳にする機会は頻繁にあるはず。
メスティアでは使用頻度は減少傾向にあるものの、ウシュグリやその他の小さな村における家族間・村人間の共通語は現在でもスヴァン語です。
一般の旅行者にはジョージア語とスヴァン語を聞き分けることは難しいかもしれませんが、スヴァン語はとにかく長母音が多いのが特徴的。
硬い子音の連続が多いジョージア語に比べると柔らかく聞こえ、スヴァン語独特の抑揚にはまるで歌っているかのような美しさが感じられます。
スヴァン語は文字を持たないこともあり、消滅の危機にあるとして保護が叫ばれているのが現状。
話者人口は年々減少傾向で、スヴァネティ生まれのスヴァン人でありながら片言のスヴァン語しか話せない若者も増えているのだそうです。
私たち外国人が少しだけでもスヴァン語を使えば、現地の人にとても喜ばれるはず。
挨拶フレーズくらいは覚えた上でスヴァネティ地方を訪問するのがおすすめです。▼
| ジョージア語 | スヴァン語 | |
| こんにちは | გამარჯობა ガマルチョバ | ხოჩა ლადაღ ホチャ ラダフ |
| ありがとう | მადლობა マドロバ | ივასუ ხარი イヴァス ハリ |
| お元気ですか? | როგორ ხარ? ロゴル ハル | მაგვარდ ხარი? マグヴァルド ハリ |
| こんばんは | საღამო მშვიდობისა サガモ シュヴィドビサ | ხოჩა ნებოზ ホチャ メボズ |
スヴァネティ地方の食文化

スヴァネティ地方を旅する際の楽しみのひとつが、ここでしか食べられないスヴァネティ料理に挑戦すること。
地理的にも気候的にも恵まれているとは言えないスヴァネティ地方ですが、限られた食材を最大限に活かした郷土料理の数々に、人々の涙ぐましい努力が感じられます。
全体的に、スヴァネティの名物料理はかなり質素。
小麦粉・じゃがいも・チーズなど、地域内で入手しやすい材料を最大限に利用したものが目立ちます。


厳しい自然環境の中で生きていくために、昔から受け継がれてきた伝統の味。
豪華さや彩りとは無縁な飾らない素朴な味わいの料理の数々は、なんだか心が温かくなるようなほっとする味わいのものばかりです。
スヴァネティ地方の食文化や郷土料理の世界はとにかく奥が深いので、別記事でガッツリと解説しています。▼
スヴァネティ地方のゲストハウス文化とホスピタリティー

のぶよ的に、スヴァネティ地方を旅する際に絶対に体験するべきだと思うのが、人々のホスピタリティー。
ジョージアという国自体がホスピタリティーで有名ですが、スヴァネティ地方の人々のホスピタリティー精神は群を抜いていると思います。
そんなホスピタリティー文化にどっぷりと浸かることができるのが、家族経営のゲストハウス。
スヴァネティに来てゲストハウスに泊まらなければ何の意味もない!」と断言できるほどに、伝統や文化や人の温かさが詰まった空間です。


「ゲストハウス」とひとことで言っても様々なタイプがあり、モダンな設備が自慢のお洒落なものから、本当に普通の民家でしかないものまで。
好みや予算に合わせて自分に合った宿を選ぶことができますが、せっかくなら家族の一員になったかのように温かなおもてなしが受けられる小規模&ローカルなゲストハウスがおすすめです。

また、スヴァネティ地方のゲストハウスで驚かされるのが食事の量と品数のあまりの多さ。
「バラエティー豊かな食事を大量に提供する=おもてなしの印」という感覚が強く根付いていることもあり、物資の限られた山岳地域であるにもかかわらず色々と出してくれる優しさに感動させられます(が、とにかく量がやばいので心の準備を)。

そんなわけで、観光地を周ることだけではなく、滞在面でも楽しめるのがスヴァネティ地方の素晴らしさ。
小さな村のゲストハウスに数日滞在しながら、山村暮らし体験をするのもおすすめです!
スヴァネティ地方の見どころ

スヴァネティ地方がどんな場所であるのかをザックリと理解したら、いよいよ実際に旅するとき。
メスティアとウシュグリの二大観光地はもちろんのこと、エリア内にはコーカサスの大自然が五感で感じられる場所や伝統的な風情を強く残した村まで、感動間違いなしのスポットが点在しています。
ここでは、スヴァネティ地方旅行で訪問したい見どころを一挙公開していきます。
各スポットの詳細情報についてはそれぞれ別記事へのリンクを貼っているので、気になった場所はぜひともチェックを!
①スヴァネティ地方の玄関口!【メスティア】

スヴァネティ地方で旅行者が最初に足を踏み入れる町が、メスティア(Mestia / მესტია)。
スヴァネティ地方最大の人口を有し、観光・滞在の中心となる町で、宿泊施設やレストラン、チェーンのコンビニなど旅行者に必要な物はひと通りそろいます。
中心街こそ小奇麗に整備されているメスティアですが、少し散策するとスヴァネティ地方独特の「復讐の塔」を持つ石造りの建物が並ぶ光景に気が付くはず。
THE・観光地といった雰囲気ではあるものの、山の伝統が香る風景の数々もちゃんと残っており、それらがちょうど良いバランスで混ざっているような印象を受けます。


コーカサスの山々を背景に昔ながらの風景が広がるメスティアは、スヴァネティ地方の旅のスタート地点としてもゴール地点としてもぴったりな場所。
スヴァネティ地方の伝統文化や歴史に触れることができるミュージアム施設も充実しているので、天候にかかわらず楽しめる点も魅力的です。
②メスティアから気軽に行ける氷河!【チャラアディ氷河】

メスティアから簡単にアクセス可能な自然スポットとして知られるチャラアディ氷河(Chalaadi Glacier / ჭალაადის მყინვარი)は、観光客に人気の日帰りスポット。
氷河の一部がえぐれてできた洞窟のような地形が特徴的で、「チャラアディ・ブルー」と称される氷河内部の神秘的な青の世界が見られます。


氷河自体への立ち入りはリスクをともなうため推奨されませんが、間近で眺める自然の造形物のダイナミックさは感動もの。
メスティア中心街から個人でもアクセスしやすい点も含め、滞在中にぜひとも足をのばしたいスポットです。
③天空の湖の鏡張りの風景に感動!【コルルディ湖群】

メスティア滞在中に絶対に訪れたいのが、標高3000mほどの地点にあるコルルディ湖群(Koruldi lakes / კორულდის ტბები)。
人里離れた場所で肩を寄せ合うようにして点在するいくつかの氷河湖のことで、周辺のコーカサス山脈を反射した湖面の鏡張りの風景が見られるのです。


メスティアからコルルディ湖群まではトレッキングでのアクセスが定番で、そのコース自体もかなりの絶景続き。
ただ、トレッキングコースの高低差はかなり大きく、傾斜も急な場所が多いので、スヴァネティ地方のトレッキングの中では最もハードな部類に入ります。
湖へ至るトッキングコースの途中まではタクシーでもアクセス可能で、その場合は最後のゆるやかな数kmほどを歩くだけ。
体力に自信がない人でも(お金さえかければ)、スヴァネティ地方屈指の絶景が堪能できるのが嬉しいです。
④メスティアから簡単に行ける絶景ポイント!【ハツヴァリ展望台】

「自分の足で歩くのは厳しいけど、コーカサスの絶景が見たい!」という人におすすめなのが、メスティア中心街の南側の山の頂上にあるハツヴァリ展望台(Hatsvali viewpoint / ხაცვალის ხედვის წერტილი)。
メスティア中心街からチェアリフトで簡単にアクセスすることができ、観光客に大人気のスポットとなっています。


ハツヴァリ展望台はメスティアからの単純往復でも良いのですが、展望台の先にあるツヴィルミ村までハイキングするのもおすすめ。
ハツヴァリ展望台~ツヴィルミ間の道のりはほぼ全てが下り坂なので、体力に自信のない人でも問題なく歩けます。
⑤スヴァネティの原風景に出会える村!【ツヴィルミ】

メスティアからズルルディ山脈を隔てた南側の谷間にあるツヴィルミ(Tsvirmi / წვირმი)は、のぶよ個人的にイチ押しの村。
ツヴィルミは観光客に人気の村ではないため、目立った見どころは少なく、旅行者向けのインフラも整ってはいないのですが、それこそがツヴィルミを特別な場所にしています。
近年、観光地化が激しいスヴァネティ地方では、だんだんと伝統的な村の風景や人々の生活が失われつつあるのが現状。
一方で、他の観光エリアから地理的にやや離れたツヴィルミでは、観光客がほとんどやってこないこともあり、「古き良きスヴァネティ地方の村」という雰囲気が色濃く残っているのです。


ツヴィルミへはメスティアを起点にハツヴァリ展望台を経由しての日帰りトレッキングで訪れることも可能ですし、後述するメスティア~ウシュグリ間4日間トレッキングと組み合わせて訪問することも可能。
村にはゲストハウスとして営業する民家も数軒点在しているので、宿泊や食事に困ることはありません。
あまり多くの観光客が訪れて観光地化されてしまうのは嫌ですが、ツヴィルミの素朴で懐かしい風景の素晴らしさはもっと多くの人に知られるべき。
観光地っぽい場所が好きではない人や、スヴァネティ地方リピーターの旅行者には、心からおすすめしたい場所です。
⑥観光ハイライトとなる世界遺産の村!【ウシュグリ】

スヴァネティ地方を旅する旅行者のほぼ全員が訪れるのが、エリア内で最も奥に位置するウシュグリ(Ushguli / უშგული)という山村。
人口千人ほどの小さな村は中世の姿をそのままに残した屋外民俗博物館さながらの雰囲気で、UNESCOの世界文化遺産にも指定されています。
はっきりと言いましょう。
ウシュグリへ行かないのなら、わざわざスヴァネティ地方に来る意味はありません。


桃源郷のような現実離れした雰囲気のウシュグリは、村全体が絶景ポイントと言っても過言ではないほど。
村を見守るように堂々と聳えるシュハラ山の雄大な姿を背景に、石造りの復讐の塔がにょきにょきと生えたような集落は、まるで昔ばなしの世界をそのまま具現化したかのようなファンタジー感です。
ウシュグリを訪れる旅行者の多くはメスティアからの日帰りの行程なのですが、正直日帰りではウシュグリの魅力を100%堪能することはできません。
日帰り観光客が去った後の夕暮れ時の村の風景や、朝の静寂に包まれた集落の雰囲気を味わうことこそが、ウシュグリ観光のハイライトだと思います。
⑦ウシュグリから訪れる最果ての地!【シュハラ氷河】

ウシュグリから日帰りで訪問できる自然スポットが、シュハラ氷河(Shkhara Glacier / შხარის მყინვარი)。
ロシアとの国境まで目と鼻の先という最果ての地は、絶えず解けつづける氷河が発する「ピキピキッ」という音に大地の息吹が感じられる場所です。

ウシュグリ~シュハラ氷河間にはハイキングコースが敷かれており、徒歩や馬に乗ってのアクセスが可能。
距離こそやや長めではあるもののアップダウンはほとんどない初心者向けのコースなので、ウシュグリ滞在中にぜひとも挑戦してみましょう。
⑧スヴァネティで最も隔絶された村【アディシ】

メスティアとウシュグリのちょうど中間にあたる場所に位置するアディシ(Adishi / ადისში)は、かつて「スヴァネティ地方で最も隔絶された村」と呼ばれた場所。
現在でこそ車両通行可能な道が敷かれていますが、かつては深い山の中を歩くか馬に乗って移動するかしかなかったため、山岳集落ならではの風情が現在でも色濃く残っているのです。


アディシ集落はゆっくりと一周しても20分もかからないような規模ですが、この場所に漂う中世そのままの雰囲気は本物。
メスティア~ウシュグリ間4日間トレッキングで必ず経由することになる村でもあるので、トレッキングに挑戦する人はきっと独特の雰囲気に魅了されるはずです。
⑨スヴァネティ旅行最大の冒険!【メスティア~ウシュグリ間4日間トレック】

スヴァネティ地方の二大観光地であるメスティアとウシュグリ間は、マルシュルートカや現地ツアーで移動するのがポピュラー。
車では2時間ほどで移動できる二つの村ですが、体力と日程が許すならぜひ挑戦してほしいのがトレッキングで移動することです。
総歩行距離70km/4日間に及ぶ複数日トレッキングとなりますが、コース自体は初心者でも問題なく歩けるほどのレベル。
各日の宿泊&食事は山の中の村にあるゲストハウスで済ませることができるので、特別な装備やテントなどは全く必要ありません。


手軽&難易度低めのトレッキングであるにも関わらず、コース上で見られる風景の素晴らしさには言葉を失ってしまうほど。
ぽっかりと口を開ける氷河に、伝統の石造りの集落、谷間で家畜たちがのんびりと過ごす風景…など、スヴァネティ地方の魅力を全身で体験することができるのです。
なによりも、4日間に渡って歩き続けた先にあるウシュグリに到着した時の達成感は言葉にならないものがあるはず。
のぶよ的に、この4日間トレッキングこそがスヴァネティ地方観光における真のハイライトだと思います。
⑩復讐の塔が聳える山村を歩く!【裏スヴァネティ絶景街道】

ジョージア他地域からメスティアに至る道路を走っていると、メスティアに到着するよりも前に小さな集落がいくつも点在していることに気が付くはず。
いずれの集落にも観光地化の波は一切到達しておらず、スヴァネティ地方の原風景がそのままに広がっています。
のぶよはこのエリアを「裏スヴァネティ絶景街道」と名付け、定番以外のスヴァネティ地方の見どころを探している旅行者に布教しています。


裏スヴァネティ絶景街道沿いに点在する十数ヶ所の集落は、その名の通りどれも絶景ばかり。
伝統的な家屋を改装したゲストハウスも点在しており、観光地とはひと味違うピュアなスヴァネティ地方の雰囲気が存分に感じられます。
⑪ウシュバ山に抱かれた隠れ里!【マゼリ】

スヴァネティ地方の中でも穴場の村を探している人におすすめなのが、マゼリ(Mazeri / მაზერი)という小さな集落です。
周囲三方を深い山に囲まれたマゼリは、まるで隠れ里のような雰囲気。
村のすぐ背後には雪を被ったウシュバ山が堂々と聳えており、村のどこを見渡しても感動ものの絶景が広がっています。


マゼリへのアクセスは、メスティアからタクシーなどを利用しての日帰りも可能ですが、裏スヴァネティ絶景街道や裏スヴァネティ山村街道の各村と組み合わせて訪問するのがベスト。
観光地化の波とは無縁のスヴァネティ地方西部地域ならではの素朴な風景を、余すところなく満喫することができます。
⑫ピュアな山村で極上の山暮らし体験【裏スヴァネティ山村街道】

忙しく動き回るような旅ではなく、山村に住んでいるような気分で滞在するスタイルの旅がしたい人におすすめなのが、ファリ集落あらエツェリ集落にかけてのスヴァネティ地方西部エリア。
メスティアなどスヴァネティ地方東部に比べて驚くほどに観光客の数は少なく、コーカサス山岳地域ならではの伝統的な生活が現在でも営まれています。
のぶよはこの宝石のようなエリアを「裏スヴァネティ山村街道」と命名し、スヴァネティ地方の山岳文化や人々の生活に興味がある旅行者に向けて布教しています(が、いまだに効果はあまりなさそう…)。


いずれの集落も、観光してまわるよりものんびりと過ごすのに適している場所。
昔ながらの生活スタイルで生活する家族が営むゲストハウスも点在しており、スヴァネティ地方ならではの山岳文化にどっぷりとひたることができます。
⑬ジョージアで最も旅行者が訪れない穴場エリアへ!【クヴァモ・スヴァネティ地方】

ここまで紹介してきた見どころの全ては、厳密には「ゼモ・スヴァネティ地方」と呼ばれる地域に属するもの。
実はスヴァネティにはもう一つ「クヴェモ・スヴァネティ地方」というエリアがあるのですが、旅行者にも観光局にも完全にスルーされているのが現状で、ジョージアで最も旅行者が訪れないエリアの一つとされます。
クヴェモ・スヴァネティ地方にいったい何があるのか…その答えは「何もない」です。
しかしながらこの「何もなさ」こそがこのエリアの魅力であり、スレていない山岳地域本来の魅力が多く残っているのです。


クヴェモ・スヴァネティ地方があるのは、ウシュグリからさらに奥にあるザカリ峠を越えた先。
公共交通手段は一切存在せず、自分の足で歩いて各集落に宿泊しながら旅するしかないのですが、その不便さが逆に旅の醍醐味を感じさせてくれます。
ジョージアの中でもここまで観光地化とは縁がないようなエリアは、もはやクヴェモ・スヴァネティ地方くらい。
美しい自然風景や素朴な集落での滞在、名物グルメや温かな人々との出会いなど、旅することの楽しさがぎゅっと詰まった「ジョージア最後の未知エリア」へぜひとも足をのばしてみてはいかがでしょうか。
スヴァネティ地方観光のベストシーズン

スヴァネティ地方へは、年間を通してアクセスが可能です。
とはいえ、ここはコーカサスの山々に囲まれた山岳部エリア。
平野部とは気候が大きく異なりますし、もちろん冬場は一面雪で覆われるため、一般的な観光には不向きです。
「スヴァネティ地方のベストシーズン」は、何を目的に訪問するかによって変わってくるものですが、大まかに言うと次の通りです。▼
・トレッキング目的:夏~秋(7月~9月)
・スキー目的:冬(12月~3月)
・紅葉目的:秋(9月下旬~10月初旬)
このように、季節ごとにそれぞれの楽しみ方があるのもスヴァネティ地方の魅力ですが、何を目的にするにかかわらず避けた方が良い時期も。
それは、4月~6月にかけての春から初夏の季節。
ジョージア全体が梅雨のような気候となる時期で、山岳地域であるスヴァネティではとにかく雨に降られる可能性が高いためです。
各季節ごとのスヴァネティ地方の気候の詳細は、以下のタブ内にまとめているので参考にしてください。
長い冬が終わり、スヴァネティ地方でようやく雪解けが始まるのは4月に入ってからのこと。
草木もまだ芽吹いておらず、一面真っ茶色で寂しい風景&地面はグチャグチャとなるこの時期。
トレッキングにも向きませんし、山岳リゾート気分を味わうには気温が低すぎるでしょう。
5月に入ると気温は上がってくるものの、ジョージア全体が梅雨のような気候となり、雨が降る確率がかなり高くなります。
不安定な天気は7月上旬頃まで続くので、この時期の旅行は悪天候リスクと隣り合わせであることを覚えておきましょう。
7月中旬になると、それまで数か月続いた梅雨のような天気が嘘のように晴れ渡る日が続き、スヴァネティ地方にも夏がやってきます。
夏本番である7月中旬~8月末は、天気が安定している文句なしのベストシーズン。
大自然を眺めながらのんびりリゾートステイするには最適な時期となります。
しかしながら、ベストシーズンのスヴァネティを体験しようと、バケーションシーズンにあたる欧米諸国から多くの旅行者がやってくるのもこの時期。
メスティアやウシュグリなど人気の村は外国人であふれ、トレッキングコースでさえ人でいっぱいになるそうです。
小さな村のゲストハウスは客室数が少なく、宿泊先の選択肢が限られてしまうのはもちろんのこと。
「せっかくの大自然を味わうために歩いていても、目に入るのは人の姿ばかり…」なんてちょっと幻滅してしまうかも。
のぶよ的にイチ押しなのが、夏の超ハイシーズン明けの9月。
9月も中旬になると、それまでの観光客の波が嘘のように落ち着いた雰囲気になります。
特に9月下旬の紅葉の進み具合は感動もの。
到着した時は一面が緑色だった山が、10日足らずで真っ黄色に変化していたくらいですから。
気温も7、8月に比べると涼しいので、トレッキング目的なら最適な時期だと思います。
一方で、紅葉が見頃を終える10月上旬を過ぎると、スヴァネティ地方は一気に冬の空気に包まれ、天候は不安定になります。(1週間で最高気温が10℃以上下がることも)
年によっては10月中に雪が降ることも珍しくありません。
11月に入ると雪が降る日が次第に多くなり、11月末にもなるともう冬真っ盛りになるスヴァネティ地方。
12月になるとスキー場もオープンし始め、ウィンターアクティビティーを楽しむ人達で賑わうようになります。
スキー目的なら、12月~3月までがベストシーズン。
ただ、気温はかなり下がりエリア全体が大雪に覆われるため、一般的な観光やトレッキングはほぼ不可能となります。
スヴァネティ地方へのアクセス・行き方

「スヴァネティ地方観光のベストシーズン」の項で解説した通り、スヴァネティ地方へは通年のアクセスが可能です。
ジョージア他都市から来た旅行者が最初に足を踏み入れることになるのは、100%メスティア。
各都市~メスティア間のアクセス方法は以下の3通りとなります。▼
・マルシュルートカ(乗り合いミニバス)
・鉄道* + マルシュルートカ
・飛行機

スヴァネティ地方はジョージア他都市からかなり距離があるため、マルシュルートカだと移動が長時間となってしまうのがネック。
トビリシやクタイシを拠点にアクセスする場合は、たった1時間ほどで移動可能な飛行機の利用も選択肢の一つとなります(が、欠航率の高さなど注意すべき点は多い…)。
ジョージア各都市~メスティア間の詳細な移動情報に関しては別記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください!▼
スヴァネティ地方旅行のプランニングのコツ(必要日数 / 宿の選び方)

見どころがたくさんあるスヴァネティ地方の旅行は、時間をたっぷりと使ってのんびりと楽しみたいもの。
とはいえ、のぶよのように数週間の滞在×3回もできる人はそれほど多くないでしょう(笑)
最低何日間あればスヴァネティ地方を満喫できるのか…宿泊先は予約しておく方が良いのか…など、初めて訪問する人は色々と未知な部分も多いはず。
この項では、スヴァネティ地方の旅行のプランニングに役立つ情報を解説していきます!
スヴァネティ地方旅行の必要日数
初めてのスヴァネティ地方旅行なら、どの場所にどれくらいの日数が必要なのか、なかなかイメージが湧きにくいものです。
多くの観光客が訪れるメスティアとウシュグリの二大観光地に最低限必要な日数は以下の通りです。
・メスティア:最低1泊2日 (理想:2泊3日)
・メスティア周辺エリア:1日~4日 (どこまでまわるかによる)
・ウシュグリ:最低1日 (理想:2泊3日)
以下は、各スポット観光に必要な日数に関しての詳細情報です!
【メスティア:1泊2日】
メスティアの中心エリア自体には、あまり見どころの数は多くはないので、限られた時間でも観光が可能。
しかし、他都市からメスティア入りする旅の1日目は、ほとんどの場合午後遅くなってからの到着となるため、観光する時間はほとんどありません。
午後に到着してからウシュグリへと移動しようと思っても、タクシー以外の手段がないのが現状。
日程がかなり限られている場合以外は、到着日はメスティアに宿泊するのがベターでしょう。
1泊2日の日程であればメスティアの主要な見どころは全てまわることができますが、ミュージアムを訪れたり名物グルメに挑戦したり…と楽しみ方が色々とあるのもメスティアの魅力。
のぶよ的には、最低でもメスティアに2泊はして、スヴァネティ地方らしいのんびりとした雰囲気を味わうのがおすすめです。
【メスティア周辺スポット:それぞれ+半日~1日】
メスティアの周辺には数多くの見どころが点在しており、足をのばす場合はそれぞれ半日~丸一日の時間を要します。
自分の足で歩くのか、タクシーや現地ツアー等を利用して快適にアクセスするのかによって、各スポット観光の所要時間は変わってきます。
| トレッキング | 現地ツアー/タクシー | |
| コルルディ湖群 | 往復7~8時間 | 往復4時間 |
| チャラアディ氷河 | 往復6~7時間 | 往復2~3時間 |
| ハツヴァリ展望台 | 往復5時間 | 往復1時間 |
| ツヴィルミ村 | 往復6~9時間 | 往復3時間 |
| マゼリ | 片道7~8時間 (日帰りは×) | 往復4時間 |
| 裏スヴァネティ絶景街道 | 片道4~6時間 (日帰りは△) | 往復3時間 |
| 裏スヴァネティ山村街道 | 片道7時間 (日帰りは×) | 往復3時間 |
トレッキングの場合は、体力面も考えて1日1か所にしておくのが基本。
(ハツヴァリ展望台とツヴィルミは組み合わせ可能)
トレッキングで全ての場所を訪れる場合、プラス4日間は必要になります。
反対に、タクシーなどを利用する場合は、1日でいくつかの見どころをセットでまわることも可能。
2日間~3日間あれば、全ての見どころをくまなく訪問するできるでしょう。
また、裏スヴァネティやマゼリなどスヴァネティ地方西部エリアは日帰りしやすい距離ではないため、メスティア滞在とは切り離して考えるのが◎
いずれの村にもゲストハウスがあるので、村から村へと宿泊しながら移動するプランが良いでしょう。
【ウシュグリ:1泊2日】
世界遺産のウシュグリへは、メスティアからの日帰りで訪れる旅行者がかなり多いのですが、絶対に1泊はすることをおすすめします。
というのも、ウシュグリは東西に細長い地形で意外と面積が大きく、見どころも広範囲に散らばっているため。
ウシュグリ村内での交通手段は馬くらいしかないので、日帰りで主要スポットを全てまわるのは至難の業です。
のぶよ的には、最低でも1泊2日、理想的には2泊3日の日程がおすすめ。
急ぐことなく、桃源郷のような世界遺産の村の雰囲気を味わってほしいです。
また、ウシュグリ近郊のシュハラ氷河へと足をのばす場合は、トレッキングで往復6時間 / 馬で往復3時間ほどの時間が必要。
シュハラ氷河を訪問したい場合は、必ずウシュグリに宿泊することとなります。
スヴァネティ地方の宿泊先の選び方

スヴァネティ地方に滞在する際は、各町や村での宿泊先の選び方がとても大切。
山がちな地形&村内の交通が発達していない場所が多いので、一歩間違えるとかなり不便を感じながらの滞在となってしまうためです。
スヴァネティ地方での宿泊先選びのポイントや注意点は、エリアによって大きく変わります。
・メスティア
・ウシュグリ
・それ以外の村
の3つに分けて見ていきましょう。
メスティア:中心街ならどこでも!予算や好みに合わせてチョイス

スヴァネティ地方最大の町であるメスティアは、宿泊先の選択肢も比較的豊富。
高級リゾートホテルのような施設こそないものの、快適な中級ホテルから格安ゲストハウスまで、予算や好みに合わせた滞在が可能です。
メスティアの宿泊先選びのポイントは、中心街に位置する宿を選ぶこと。
南北を山に挟まれた谷にひらけた町なので、中心街を外れると坂道が多くなり、ちょっとした移動が不便になるためです。

スーパーマーケットやレストラン、バスステーションなど、旅行者が利用する施設は全て中心街の半径200m以内の狭いエリアにあるため、ここから離れれば離れるほど移動に不便を感じることに。
中心街であろうとそれ以外の地区であろうと宿代相場はほとんど変わらないので、特別な事情がないなら中心街の宿での滞在がベストです。
ウシュグリ:基本ゲストハウス泊。中央部の集落が便利

ウシュグリは人口千人ちょっとの小さな村。
ホテル等の大規模な宿泊施設は存在しないため、基本的にゲストハウスでの宿泊となります(改築をして近代的な設備&雰囲気のゲストハウスならある)。
ウシュグリのゲストハウスを選ぶ際に覚えておきたいのが、村内は4つの集落に分かれている点。
最も端に位置する2つの集落間の距離は2kmほど離れており、集落間を結ぶ交通手段も(馬以外には)ないため、行ったり来たりするのは結構大変なのです。

おすすめは、中央に位置するチャジャシ / チュヴィビアニのどちらかの集落の宿を選ぶこと。
村全体で2軒しかない商店もこれらの集落にありますし、メスティアからの観光マルシュルートカが停車するバス停もこれら集落の中間地点に位置しています。
その他の村:宿泊予約サイトに載っている宿には注意

メスティアとウシュグリ以外のスヴァネティ地方の村は、どれも人口数十人~百人ほど。
もちろんホテルなどの設備はなく、一般の家の一部の部屋を旅行者に開放したゲストハウス泊が基本となり、どの村もかなり小さいので特に立地を気にする必要もありません。
しかしながら、観光地化が激しいスヴァネティ地方の一部の村では、宿泊先となるゲストハウスの当たり外れがかなり激しい点に注意が必要です。
疑ってかかった方がいいのが、Booking.comなどの宿泊予約サイトに掲載されている宿。
こうした宿は多くの外国人観光客が予約して訪れるため、宿の人が観光ボケしてしまったところも少なくないのです。
特に、メスティア~ウシュグリ間の4日間トレッキングの宿泊拠点となる村で、この傾向は顕著。
トレッキング客のコースはほぼ決まっており、みんながみんな「トレッキング→1泊→翌朝には出発」という流れでこれらの村に滞在することから、「温かくもてなしたところで、どうせ1泊して朝には出ていく→適当にあしらっておけば良い」という残念な意識が蔓延しつつあるのです。
のぶよが4日間トレッキングの1泊目にBooking.comを通して予約していた某村の某宿では、
・かなり高い金額(ジョージア的に)だったのに夕食は芋とパンだけ
・後から色々別料金を請求してくる
・暖房をつけていたら勝手に消される
なんてこともありました。
もちろん、全ての宿がそうであるわけではありませんが、せっかくの旅行なら気持ちよく過ごせる宿に泊まりたいもの。
のぶよが実体験で学んだのは、小さな村では予約なし(飛び込み)で部屋を見学させてもらうのがベストということでした。
小さな村ではゲストハウスの設備や料金などはどこも同じようなものなので、決め手になるのは宿の家族の人柄以外にはありません。
部屋の下見をしながらオーナー家族の感じを見て決めるのが、最も失敗しにくい方法だと思います。
おわりに
ジョージア観光のハイライトとなるエリアの一つであるスヴァネティ地方の観光・滞在に必要な情報を全て解説しました。
独自の歴史や文化面はもちろん、珠玉の見どころの数々やプランニングに役立つ情報まで…
この記事を読んで実際にスヴァネティ地方を旅してもらえたなら、何より嬉しいです。
スヴァネティ地方は、日本ではまだまだ知られていないエリアですが、ジョージア当地では超定番のエリア。
欧米人旅行者たちによって「もう見つかってしまった感」が感じられ、そう遠くない未来には一大観光地として開発されて団体ツアーなども多く訪れるようになるかもしれません。
そうなる前にの今こそ、ピュアな魅力が残る村々の素晴らしい風景や、人々の間に息づく伝統のホスピタリティー文化を体験するチャンス。
ジョージア旅行のハイライトとなるコーカサスの桃源郷のような地域の魅力を、余すところなく堪能しに行ってはいかがでしょうか。





























































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