こんにちは!ジョージア北西部のスヴァネティ地方を3週間旅した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
スヴァネティ地方は、自然が好きな人やハイキング・トレッキングを目的とする人にはぴったりの旅行先。
初心者向けの簡単なコースから、数日かけて歩くような上級者向けのコースまで、あらゆるニーズを押さえたトレッキングコースが点在しているのです。
その中でも、大自然の絶景と伝統的な村の雰囲気を手軽に味わえるおすすめのトレッキングが、今回紹介するズルルディ山脈トレッキング。
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メスティアの町の南側にそびえるズルルディ山脈の尾根を歩いて行くため、全体を通してずっと絶景が広がる歩き甲斐のあるコースなのですが、観光客にはほとんど知られていません。
そのため、夏場はトレッキング目的の旅行者で大賑わいのスヴァネティ地方にありながらも、秘境感たっぷりの風景の中を歩けるのです。
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「パノラマビューが見られるトレッキング」と聞くと、かなりの登りがあると思ってしまいがちですが、実はこのコースはほぼすべてが下り坂であるのもポイント。
スタート地点のメスティアからチェアリフトで一気に山頂まで登ることができるので、体力に自信がない人でも十分挑戦することができるのです。
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大自然の絶景がこのトレッキング最大の魅力ですが、ゴール地点のツヴィルミ村(Tsvirmi / წვირმი)の風景も楽しみの一つ。
「古き良きスヴァネティ地方の風景が残る」と言われる小さな村で、観光地化の波とは無縁の「素顔のスヴァネティ地方」に出会えるでしょう。
ズルルディ山脈(ハツヴァリ展望台~ツヴィルミ)トレッキング詳細
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ズルルディ山脈トレッキングコースは、ハツヴァリ展望台~ツヴィルミ村間を結ぶ8.5kmほどの道のり。
コースのほぼ全てが下りなので、体力的にはかなり楽に歩くことができます。
ハツヴァリ展望台~ツヴィルミ間トレッキング詳細
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・所要時間:2時間半~3時間
・距離:8.5km
・高低差:▲120m ▼600m
メスティアの中心街南側からチェアリフトが敷かれており、トレッキングのスタート地点であるハツヴァリ展望台までの高低差900mほどの山の斜面を一気に登ることができます。
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ズルルディ山脈トレッキングコースは、いちいち絶景ポイントをピックアップする必要がないほどにコース全体が絶景続き。
ただ、ウシュバ山(メスティアの北側にある山)の絶景が見られるポイントは限られているので、記事内では「展望台」として紹介しています。
メスティア~ハツヴァリ展望台を結ぶチェアリフトは、天候や風向きによって運休することが多いです。
チェアリフトが動いていない場合、トレッキングスタート地点となるハツヴァリ展望台までは徒歩で登ることとなります。
高低差900mの山道を9kmほど余計に歩いて登ることになり、体力的には相当しんどいものがあるので、できる限り天候が安定した日を狙って文明の利器を利用しましょう(笑)
のぶよの場合は、コロナウイルスの影響でリフトが運休していたため、自力で歩いて登りました。
(誰の役に立つのか謎ですが、下のタブ内で徒歩コース詳細情報を解説しています)
この区間の詳細
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・所要時間:3時間
・距離:9.1km
・高低差:▲960m
チェアリフトが運休している場合や、最初から最後まで自分の足で歩きたいエクストリームな人は、メスティア中心街~ハツヴァディ展望台間を徒歩で登ることも可能です。
その場合は、後述するツヴィルミまでのトレッキングコースに+3時間(合計6時間)~かかると考えておきましょう。
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メスティア中心街から南東(ウシュグリ方面)へと歩き、チェアリフト乗り場を通り過ぎたところにある山道を入っていきます。
この山道がいきなりの難所。
・道がわかりにくい
・湧き水のせいで常に地面が濡れていてグチャグチャ
・急な坂もあり
という道が2kmほど続きます。
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どうにか最初の山道を抜けると舗装道路に合流するので、これに沿って登っていきましょう。
舗装道路を歩き始めて3kmほどで、数家族が住むだけのヘシュキリ(Heshkili)という集落に到着します。
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ここヘシュキリは、車両が通る道とハツヴァディ展望台へ続く山道が分岐する地点。
東方面へのびる山道を歩いて行きましょう。(車両が通る道はハツヴァディ展望台には至りません)
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ハツヴァディ展望台への山道はそこまで傾斜はきつくなく、緩やかな坂がダラダラと続く感じ。
途中の風景はとても美しく、スヴァネティ地方の山々を一望しながら歩くことができます。
リフトで楽々アクセス!ハツヴァリ展望台
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メスティアからのチェアリフトが到着するのが、ズルルディ山脈で2番目に高い地点にあるハツヴァリ展望台(Hatsvali)。
ほとんど歩くことなく、メスティア中心街から一気に登ることができるため、老若男女問わず多くの観光客で賑わうスポットです。
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リフトが到着した場所のすぐ横には展望台兼レストランがあり、テラス席には自由に立ち入ることができます。
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このレストランのテラス席が、視界いっぱいにコーカサスの山々が広がるハツヴァリ展望台と呼ばれる絶景ポイント。
晴れた日なら、メスティアの町を挟んで北側に鎮座するウシュバ山の堂々たる姿が見られます。
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ハツヴァリ展望台にやってきた観光客のうち、実に9割以上はこの風景だけを写真に収めてふたたび下界へとチェアリフトで下っていくのですが、それは本っっ当にもったいない!
今回紹介するツヴィルミ村までは、ここから8.5kmほどの距離を歩くことになるのですが、「そんなに歩けない!」という人でも、次のポイントであるメンタシ展望台までは絶対に歩くべきです。
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ハツヴァリ展望台~メンタシ展望台は片道3kmほどで、2時間もあれば十分に行って帰って来ることが可能。
メンタシ展望台自体も絶景が望めるポイントですが、そこまでのコースから見られる風景の美しさは、今回紹介するトレッキングコースの中でも指折りのものです。
この区間の詳細
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・所要時間:50分
・距離:3km
・高低差:▲120m
ハツヴァリ展望台から次のポイントであるメンタシ展望台までは、ほとんどが平坦な道。
最後の数百メートルだけ少々上り坂となりますが、誰でも歩くことができるレベルのものです。
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ハツヴァリ展望台のリフト乗り場付近からトレッキングコース入口を進んでいくと、道はずっと一本道。
迷うことは絶対ありませんし、歩きにくい箇所もないので、スニーカーでも全く問題ありません。
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途中には、メスティアとズルルディ山脈を隔てた反対側の谷間のパノラマが見られる地点も。
最も手前にあるのがトレッキングのゴール地点であるツヴィルミ村で、奥にたたずむのがテトヌルディ山です。
晴れていれば息を呑むほどの絶景が広がるでしょう。
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山のてっぺんをずっと歩いて行くのはとても開放感があって気持ちが良いもの。
この時は一面の紅葉でしたが、夏なら一面緑の風景が見られることでしょう。
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最後の数百メートルの上り坂の先に見えるアンテナがある地点が、メンタシ展望台。
今回のトレッキングで最も標高が高い地点で、ここからは下っていくだけとなります。
ワイルドな雰囲気で絶景を眺める!メンタシ展望台
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先述のハツヴァリ展望台と同様に、ウシュバ山の全景が見られるもう一つのポイントがメンタシ展望台(Mentashi)。
今回のトレッキングコースで最も標高が高い場所に位置しているポイントで、お店などの施設は一切ないため、ハツヴァリ展望台以上にワイルドな雰囲気の中で絶景を楽しむことができます。
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北東方向にはメスティアの空港とその先の谷間、さらに奥にはチャラアディ氷河の遠景も望むことができます。
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メスティアの町と反対側である南東方向に目を向けると、これから向かっていくツヴィルミ村が遠くに見えます。
深い山々に抱かれた村のパノラマビューには、なんだか神々しささえ感じてしまうほど。
これからのトレッキングがさらに楽しみになってくる瞬間です。
この区間の詳細
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・所要時間:1時間半
・距離:5.5km
・高低差:▼590m
メンタシ展望台からツヴィルミ村までは一切上りはなく、ただひたすら山を下っていくだけ。
全体的に緩やかな下り坂ですが、メンタシ展望台からの200mほどの区間はものすごい急坂となっています。
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手でつかむ物は一切なく、とにかく急なので落下しないように十分に気をつけましょう。
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200mほどの急坂ゾーンを越えたあとは、かなり緩やかに下っていくだけの簡単な道が2kmほど続きます。
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この区間は見晴らしがかなり良く、美しいパノラマビューをずっと眺めながら歩くことができるのもポイント。
トレッキングのハイライトとなる絶景の連続に感動するはずです。
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2kmほど歩いて行くと、ツヴィルミ方面(南方向)へと分岐するポイントがあります。
真っすぐいってもツヴィルミ村へは行けるのですが、最短距離を行くならこの分岐点を右に曲がって山道を下っていくのが良いでしょう・
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分岐点を曲がって南に進んでいく道からの風景も、ずっと絶景。
北のメスティア側にあるウシュバ山の山頂もどんどん小さくなっていき、しまいには見えなくります。
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ツヴィルミ村到着前1.5kmほどの下り坂には一部急な箇所もあるので、目の前の美しい眺めに気をとられすぎないようにご注意を!
スヴァネティ地方の原風景が残る!ツヴィルミ村
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今回紹介するトレッキングのゴール地点となるツヴィルミ村(Tsvirmi / წვირმი)は、テトヌルディ山に抱かれるように数十軒の家々が建ち並ぶだけの小さな山村。
特に観光スポットなどがあるわけではなく、アクセスも不便なため、一般的な観光客の旅行プランからは外されてしまうことがほとんどです。
“村中の家全てがゲストハウス”なんてことも珍しくないほどに観光地化が進むスヴァネティ地方🇬🇪
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の旅する翻訳家 (@taisuke5696) October 2, 2020
ですが定番ルートから外れたツヴィルミ村は観光化の波とは無縁で、自給自足が基本の素朴な生活感溢れる地。
秋の柔らかな陽射しに包まれた村の風景は、神々しいまでに透き通っていました。#ジョージア pic.twitter.com/pWkxjfn45s
しかしながら、この素朴な雰囲気こそがツヴィルミ村最大の魅力。
観光地化が激しいスヴァネティ地方において、人々が昔ながらの生活スタイルでひっそりと暮らす村は意外と多くないのです。
どこまでもピュアな村を散策
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「何もないのに、美しい。」
ツヴィルミ村の風景を目にした旅行者は、きっとこう思うはずです。
メスティアのように観光客向けのホテルが建ち並んでいることはありませんし、世界遺産のウシュグリのように見張り塔が建ち並ぶ荘厳な風景が見られるわけでもありません。
深い山々に囲まれた谷に位置する村らしい、素朴でピュアな雰囲気を感じながらのんびりと散策することが、ツヴィルミ観光のハイライトだと思います。
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スヴァネティ地方には「ほとんどの建物が石造り」という圧巻の風景を誇る村がいくつもあり、観光客に大人気となっています。
一方のツヴィルミ村には石造りの建物もあるとはいえ、ジョージア地方部によくある、くたびれた感じの普通の民家も多いです。
「中世に迷い込んだような村」ではなく「ちょっと前の時代の懐かしい村」といった感じで、それが逆に魅力となっているのかもしれません。
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観光資源が豊富で、国際的に注目を集めつつあるスヴァネティ地方。
観光客が多く訪れる村では、見た目こそ伝統的な雰囲気が残っているものの、実際は民家のほとんどが観光客向けのゲストハウスだったり、村人の収入のほとんどが観光マネーだったりすることも珍しくありません。
しかし、ツヴィルミ村にはそんな観光地化の波は到達しておらず、ゲストハウスも数軒あるだけ。
観光客の数もたかが知れており、観光マネーには期待もできないため、村人のほとんどが畑を耕したり家畜を世話したりと、自給自足で生活をしているのです。
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そのため、ツヴィルミ村にはかなり多くの畑や牧草地があるのが印象的。
パッチワークのように区切られた畑が織りなす緑の風景は、ツヴィルミを象徴するものだと思います。
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集落部分から少し離れて丘の上まで歩いて行くと、村の風景を一望できるポイントがあります。
西に傾いた太陽に照らされ、静寂に包まれたツヴィルミ村の風景は、どんな有名観光スポットにも負けないほどに魅力的で旅情をかきたてるものでした。
絶景の教会
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ツヴィルミ村の東側の丘の上に位置する石造りの教会は、ジョージア政府によって重要文化財に指定されている歴史あるもの。
村人の信仰の中心であると同時に、村を取り囲む絶景が見られるポイントでもあります。
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中世の教会を見守るようにそびえるテトヌルディ山の全景。
雲がかかっていなければ、雪に覆われた山頂まで見晴らすことができます。
また教会の南側にはさらに谷が深く広がっており、小さな村々が点在している様子が見られます。
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緑の風景の中にひっそりと佇む家々の姿は、まるで桃源郷さながら。
ツヴィルミ村に宿泊&拠点として、これら谷底にある村々へと足をのばしてみるのも良いかもしれません。
修道院
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ツヴィルミ村の最も東の村はずれの高台の上には、2018年に建造されたばかりの修道院があります。
修道院の建物自体はかなり新しいもので歴史的価値はないのですが、その周辺に広がる風景は一見の価値あり。
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ツヴィルミ村の素朴でピュアな雰囲気を凝縮したような牧場地帯と、コーカサスの山々を間近に望む開放的な風景が一面に広がり、何をするでもなくただ歩くのがおすすめです。
この修道院付近からさらに北東方向に未舗装道路が1.5kmほどのびており、バス停がある幹線道路(メスティア~ウシュグリ間)へと合流します。
ツヴィルミからメスティアやウシュグリへとアクセスする場合には必ず通ることとなります。
(ツヴィルミから各地への戻り方については後述しています)
ズルルディ山脈~ツヴィルミ周辺のまわり方
ツヴィルミ村へ/からの交通
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「ツヴィルミには行ってみたいけど、メスティア側からトレッキングで行くのはきつい…」
「ツヴィルミまで来たけど、どうやって他の町へ移動すれば良いの?」
という人、ご安心ください。
ツヴィルミ村は、メスティア~ウシュグリ間を結ぶ幹線道路沿いから3kmほど入った場所にあり、この区間を走る観光マルシュルートカが停車する(かもしれない)バス停があるのです。
バス停~ツヴィルミ村間の3kmは歩く必要があるものの、高低差はほとんどない簡単な道のりなので問題なく歩けるでしょう。
ツヴィルミ~バス停間徒歩ルート
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・所要時間:45分
・距離:2.9km
観光マルシュルートカが停まる「かもしれない」バス停、と書いたのは、停まらない場合もあるため。
基本的にここを通るマルシュルートカは、メスティア~ウシュグリ間を日帰りで観光する旅行者向けに運行しているもので、途中乗下車は想定されていないのです。
とは言え、空席があればツヴィルミ村入口のバス停で乗車/下車することはもちろん可能。
料金相場は20GEL~40GEL(=¥627~¥1255)とドライバーによって開きがあります。
メスティア~ウシュグリ4日間トレッキングとの組み合わせも可能!
上の項で解説した通り、かなり不便な場所にあるツヴィルミ村から、メスティアやウシュグリなど他の村へ移動するのは結構大変。
のぶよ的には、今回紹介したズルルディ山脈トレッキングをメスティア~ウシュグリ間の4日間ハイキングと組み合わせるのが最も効率的だと思います。
メスティア~ウシュグリ間の4日間ハイキングは、スヴァネティ地方観光のハイライトとも言えるアクティビティーの一つで、70kmの距離を4日間かけて歩くもの。
各日のコースや宿泊地となる村(ゲストハウス設備アリ)もある程度決まっており、夏場は多くのハイカーで賑わいます。
1日目に「スヴァネティ・ヴァレー」と呼ばれる地域を歩き、2日目にアディシ村へと到着するのが一般的なコース。
しかしながら、今回紹介したズルルディ山脈トレッキングコースを1日目に歩いて、2日目にアディシ村へ到着することも可能なのです。
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このように、メスティア~ウシュグリ間のトレッキングに組み合わせてツヴィルミ村を訪れることで、いちいちメスティアに戻る時間も手間も省け、交通手段の確保も考えなくて良いのでメリットたっぷりです。
ツヴィルミに宿泊もおすすめ!
上で紹介した4日間トレッキングに組み合わせてツヴィルミ村を訪れる場合は、必然的にこの村に宿泊することになるでしょう。
また、メスティアに戻るプランの場合でもツヴィルミに1泊はして、翌日スヴァネティ・バレーを歩いてメスティアへと戻る(上の4日間トレッキングの1日目区間を反対方向に歩く)ことも可能です。
ツヴィルミのゲストハウスの数は限られているものの、インターネット予約に対応している場合が多いです。
旅行者の数は少ないため、夏季であっても満室になって泊まれないことは考えにくいですが、目当ての宿を予約しておく方が安心ですよね。
おわりに
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旅行者の間ではほとんど知られていない、ズルルディ山脈トレッキングコースを紹介しました。
数多くのトレッキングコースに恵まれ、それぞれ異なる絶景が広がるスヴァネティ地方ですが、のぶよ的にはBEST3に入るほどに美しい風景が見られるコースだと感じました。
山々が織りなす大自然の絶景はもちろんのこと、昔懐かしい風景に満ち溢れたツヴィルミ村の散策も楽しめる満足度バツグンなコースにもかかわらず、距離は短め&下り坂多めなのも嬉しいポイント。
「トレッキング客であふれるメジャーなコースは飽きた!」というニッチさを求める旅行者に、心からおすすめしたいです。
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