こんにちは!モルドバの首都、キシナウに滞在中の世界半周旅行者・のぶよです。(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
モルドバの首都・キシナウから1時間、小高い山に囲まれたオルヘイ・ベッキ(Orhei Vechi)地区は、キシナウからの日帰りトリップにおすすめの雄大な自然が広がるスポットです。
谷間を流れる川に沿った丘から望む雄大なモルドバの田舎の風景はもちろん、ここオルヘイ・ベッキで有名なのは洞窟修道院。
その名の通り、この辺りの地質である石灰岩の断崖絶壁を削って作った洞窟の中に、モルドバ正教の修道院があり、今でも人が生活している、「生きた信仰の地」なのです。
メインの洞窟修道院はもちろん、雄大な景色を望めるおすすめスポットや、キシナウからオルヘイ・ベッキへの行き方も含めて解説します。
正直、ここを訪れるためだけでもモルドバに行く意味があると思ったくらいのおすすめスポットです!
オルヘイ・ベッキをひとことで!
・大自然に囲まれた谷間の絶景!
・洞窟修道院はもはや異世界。信仰の凄さを肌で感じられる。
・レストランは少なく、バスの本数も限られているので注意。
オルヘイ・ベッキ観光マップ
青:観光スポット
黄:ブトゥツェニバス停
赤:レストラン
緑:撮影スポット
まずは洞窟修道院へ
キシナウからのバスが到着するブトゥツェニ村のバス停からゆるやかな丘を登ること5分ほど。
すでに絶景が見渡せます。
オルヘイ・ベッキ地区はとても独特な地形。
360°山に囲まれた谷を流れる川沿いに、さらに丘が広がっています。
簡単に言うと、山に囲まれた盆地の中にさらに山があるイメージ。
この内側の丘の断崖絶壁の崖を削って作られたのが、オルヘイ・ベッキの洞窟修道院です。
川側から見ると、切り立った崖の中ほどに明らかに人の手が加えられていて、窓が作られているのがわかります。
ここが信仰の場所であり、今でも数人の修道士たちが生活をしているというのだから驚き。
下の写真の白い教会のような建物がこの異世界への入口となっています。
洞窟修道院の内部はファンタジーの世界。
狭い入口を通って一歩洞窟の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気と神聖な雰囲気に圧倒されます。
そしてなぜかおじいちゃんの家の匂いが(笑)
こちらが洞窟修道院の内部です。
決して広いとは言い難い、アパートの一室ほどしかない空間に、イコンの宗教画や祭壇、礼拝所がひしめき合っています。
パンやペットボトルの水、マグカップなどの生活用品が多く目につきます。
ここで確かに生活をしている人がいるんです。
そのうちの一人がこちら。
のぶよが洞窟内の神聖な雰囲気に圧倒されている間、ずっと聖書を読み耽り、時に胸で十字を切っていました。
明らかに話しかけにくい雰囲気で、邪魔したくなかったので話しかけずにいたのですが、急に地の果てから聞こえてくるような低い声が背後から響き渡りました。
「ウェア アー ユー フロム?」
驚いて振り返ると、先ほどまで聖書を一心に読んでいた老人がのぶよのことを凝視しています。
怖い。
おそるおそる、「じゃぱん」と答えます。すると、老人が、笑った。
怖い。怖すぎる。
そして彼は外に続く扉を指さして、小さな窓から外に出てみるように促しています。
おそるおそる言われたとおりに外に出てみると、そこには想像もしていなかったような絶景が。
洞窟修道院から眺める絶景
この老人は、毎日、毎週、毎月、毎年、ずっとこの景色を眺めながらここに住み続けて神に祈りをささげているのです。
雨の日も、雪の日も。
岩を削って嵌められた窓や扉はもはや異世界のもの。
しかし置かれたマットやコーヒーカップに生活感を感じます。
洞窟修道院の地下部分は、修道僧の生活の場
中に戻ると、今度は地下に続く扉を開けるように促してくる老人。
石を削って作った階段を下って扉を開けると、そこは彼らが床に就く場所。
いわばベッドルームです。
かつては多くの修道僧がここで暮らしていたようで、10個ほどの横穴が掘られています。
一応プライバシーのようなものは微かに存在していたよう。
ここで睡眠をとり、行水をし、他は神に祈りをささげる生活…。
のぶよにはそれがどれだけ大変なことであるのか想像もつきません。
一番奥の横穴の奥には、蝋燭の灯りに照らされたキリストの絵が。
周りは真っ暗でかなり怖いです。
疑問:どうして洞窟の中に修道院があるのか
全く観光地化されていないので知られてはいませんが、実はこのオルヘイ・ベッキのみならず、モルドバにはいくつかの洞窟修道院があります。
どうしてわざわざ大変な思いをして洞窟を削って、不便な思いをして中で生活をするのか疑問に思う人もいるのでは。
実はその理由には、モルドバという国が辿った数奇な歴史が深く関係しているのです。
モルドバはもともとモルタビア公国として独立しており、ルーマニア正教とスラブ系の宗教が混ざったモルドバ正教という宗教が信仰されていました。
(現在もモルドバ正教は国教として定められています。)
しかしロシア帝国に編入されてしまったモルドバ。
後にロシア帝国に代わったソビエト連邦時代には、社会主義という名のもとに一切の信仰を禁じられたのです。
しかし長年の間に人々に根付いた信仰心は簡単に消すことはできません。
そのため、日本の隠れキリシタンのように、中央政府から隠れて信仰が続けられたのです。
その象徴ともいえるのが、オルヘイ・ベッキのような洞窟を掘って造られた洞窟修道院。
外から見るとまさか中に修道院があって信仰が行われているなんて思いもしないでしょう。
それに加えて、モルドバはソ連の辺境の地。
共産党の目が届きにくかったというのも、洞窟修道院が見つかることなく現在まで残っている理由でしょう。
洞窟修道院周辺の見どころ
洞窟修道院の真上には、凛として立つ古い十字架が。
ここから眺める谷間の絶景は素晴らしく、オルヘイ・ベッキの観光ポスター等でよく使われています。
洞窟修道院から100mほど歩いたところには、モルドバ正教会の教会があります。
こちらは比較的新しく建てられたもののようでした。
ブトゥツェニの村へ
洞窟修道院が位置する丘のふもとに位置するのが、ブトゥツェニの村です。
道路は舗装されておらず、昔ながらの家々が建ち並ぶ典型的なモルドバの田舎の村といった雰囲気。
地方の村では人々が閉鎖的なことも多い東欧の国々ですが、ブトゥツェニ村の人々はなんだか気さく。
どこの誰だかわからないのぶよに普通に挨拶してくれます。
村のいたるところに、現役の井戸があります。
この村では、いまだに井戸水が生活用水として利用されているのです。
ブトゥツェニ村には2軒のレストランがあります。
そのうちの一つ”Vila Etnica”は金曜~日曜の週末しか営業しておらず不便。
もう一つの”Eco Village”は、のぶよが訪れた平日でも営業していました。
谷間のパノラマが広がる崖の上をハイキング!
時間と体力が許せば、洞窟修道院があるブトゥツェニから、丘の上を歩いて、川の向こう側に位置するトレブジェニ村へ行ってみるのもいいでしょう。
ぐるっとまわってブトゥツェニ村のバス乗り場まで戻ってきても2時間ほど。
静けさの中に広がる大自然と、オルヘイ・ベッキ地区の独特な地形を望むパノラマビューを満喫できますよ。
トレブジェニ村
ブトゥツェニ村に比べて少し大きめのトレブジェニ村ですが、未舗装の道路や家々の感じは変わりません。
聞こえてくるのは犬や鶏の鳴き声のみ。
なんとものどかな雰囲気です。
この村の生活用水も井戸水です。かなり多くの井戸を目にしました。
この辺りの人々の移動手段は、なんと馬車。
といってもおしゃれなものではなく、馬に荷台を引かせてその上に乗り込むというなんともシンプルなものです。
昔から変わらない風景に出会うことができて、大満足です。
タタール浴場跡
トレブジェニ村から橋を渡ってブトゥツェニ村に戻る途中にあるこちらの遺跡は、かつてこの地に居住していたタタール人の浴場跡。
比較的良い状態で保存されています。
キシナウからオルヘイ・ベッキへの行き方
キシナウからオルヘイ・ベッキまでは、ミニバスの利用で1時間ほど。
キシナウ中央バスターミナルの建物から50mほど北に行ったところにある、「郊外線用ミニバス乗り場」からの発着となるので注意。
こちらのチケットオフィスでチケットを購入します。
片道26MDL(=¥170)。
帰りはミニバスの運転手に直接支払います。
このミニバス乗り場がなかなかのカオスでわかりにくいです。
いろいろな行先のミニバスが混在しているので、運転手らしき人に尋ねるのが一番です。
2019年3月現在、キシナウ – ブトゥツェニ間のミニバスは一日3往復のみ。
一台のバスが二つの町を往復しています。
キシナウ発:10:20、14:55、18:15
ブトゥツェニ発:8:00、12:00、16:10
おわかりのようにかなり不便なスケジュールで、日帰りで訪れる旅行者の行動パターンは、
キシナウ10:20発、ブトゥツェニ16:10発
の一択となってしまいます。
しかしながら、洞窟修道院やブトゥツェニの村を散策し、隣のトレブジェニ村までハイキングして戻ってくるにはちょうどいい時間だと感じました。
こちらがミニバスが到着するブトゥツェニのバス停です。
帰りのミニバスも同じ場所からの出発。
左手に見える未舗装の坂道が、洞窟修道院へと続く道です。
キシナウ中心街は、市内交通はもちろんモルドバ国内移動の拠点でもある場所。
トロリーバスやマルシュルートカ(ミニバス)が縦横無尽に走っているので、どこにでも簡単にアクセス可能です。
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