「どこにもない国」沿ドニエストル共和国へ。行き方、帰り方、両替、国境情報を徹底解説。

「どこにもない国」沿ドニエストル共和国へ。行き方、帰り方、両替、国境情報を徹底解説。

こんにちは!モルドバの首都、キシナウに滞在中の世界半周旅行者・のぶよです。(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)

旅人の間でよくネタになるのが、「今まで何か国行った」とか「こんなマイナーな国に行った」など。

「ある場所が国であること」はとても重要で、ヨーロッパに多数あるアンドラやサン・マリノなどのミニ国家へも、せっかくだから足を踏み入れたくなるのが旅人の性なのでは。

そんな旅人魂に、同様に火をつけるのが「未承認国家」という言葉でしょう。

他の普通の国と同様に、独自の言語、文化、政治体制があるにもかかわらず、国際的には「国」として認められていないため、そのように呼ばれる地域のことを指します。「存在しない国」や「どこにも無い国」なんて呼ばれることも。

それらの未承認国家が一つの国であるのか、一地域に過ぎないのかという議論はここでは置いておくとして、東ヨーロッパの小国、モルドバの中にも、そんな未承認国家が存在します。

その名も、「沿ドニエストル共和国」
英語では「トランスニストリア」
と呼ばれ、こちらの呼称の方が世界では一般的です。

モルドバの中にありながら、もはや立派な「国」として独自の道を歩む沿ドニエストル共和国。実際に潜入してきたので、アクセスや両替、国境越え情報などを書き残しておきます。

※いちいち注釈を置くのはややこしいので、ここでは沿ドニエストルを「国」として扱うこととします。

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沿ドニエストル共和国の成り立ち

沿ドニエストル共和国は、その名の通り、モルドバの東部を流れるドニエストル川に沿った場所に位置する南北に細長い国です。

現在のモルドバ共和国の前身でったモルダビア公国 (ルーマニア人の国家)にはそもそも属していなかった沿ドニエストル。この地域はかつてのロシア帝国の一部であり、ラテン民族の国家であるモルダビア公国とスラブ民族の国であったロシア帝国の国境を守る重要な防衛線となっていました。

ロシア帝国がソ連にとって変わられ、第二次世界大戦の戦勝国となった際、現在のモルドバ全体がソ連領となり、その支配はソ連崩壊の1990年まで続きます。

ソ連崩壊の直前は、モルドバの民族感情が高まりだした時代。
そもそもルーマニア人と同一民族であり、同言語を話すモルドバは、ルーマニアとの国境を開放したり、キリル文字を廃止してラテン文字を採用したりと、いわば「ルーマニアへの再統一」を目論んだような政策を実施します。

それに黙っていられなかったのが、沿ドニエストル地域に住むスラブ系住民。自分たちとは文化も民族も言語も異なるルーマニアへの再統一を望みませんでした。

両者の溝は埋まることがないまま、1990年、モルドバはソ連から独立します。しかし歴史的にスラブ系住民が多数を占める沿ドニエストル地域では、ルーマニア系住民が多数を占めるモルドバ側に主権を握られることを嫌い、勝手に独立を宣言する事態に。

沿ドニエストルはソ連時代に重工業で発達したため、何の産業も持たないモルドバの中ではかなり裕福であった地域。そのためモルドバ政府としては沿ドニエストル地域の独立を承認してしまうと大切な工業地帯を失ってしまうことなるため、それを拒否します。

その結果、モルドバと沿ドニエストルの間で起きたのがトランスニストリア戦争です。
独立したばかりのモルドバが、ロシアの後援を受けた沿ドニエストルに敵うはずもなく、あっさりと沿ドニエストルが勝利し休戦協定が結ばれます。モルドバはドニエストル川東岸地域のみならず、西岸の町であるベンデルへの支配権まで失ってしまいます。

それから今日まで、沿ドニエストルはロシアの援助を受けながら独自の政府、憲法、軍隊、通貨を持ち、公用語のロシア語を守りぬき、国際的には「モルドバ内の一地域」でありながらもモルドバ政府の実効支配が及ばない「事実上の独立国」として独自の道を歩んでいます。

キシナウから沿ドニエストルへの行き方

そんな複雑な歴史を持つ沿ドニエストル共和国。旅人の間ではこの国に関して様々な噂が飛び交っており、主にネガティブなものばかり。

・入国審査時に賄賂を請求される
・ソ連の流れを受け継ぐ警察国家なので、自由に写真が撮れない
・日本とは国交がない (そもそも国として認めていない)ため、何かあったら救援を望めない

などなど。特に賄賂の噂はかなり有名です。

そんな事前情報にびくびくしていましたが、滞在中のモルドバの首都・キシナウでは、日帰りで沿ドニエストルに行ってきた旅行者もちらほら。

実際に行ってみないとわからない。というわけで行くことにしました。沿ドニエストル共和国。

まずはキシナウ中央バスターミナルへ

↑喧騒の中に佇むキシナウ中央バスターミナル

行き先によって三つのバスターミナルがあるキシナウの町。
沿ドニエストル共和国の「首都」・ティラスポリやかつての要塞が残るベンデルへのミニバスはキシナウ中央バスターミナルを発着します。

チケットは運転手からではなく、事前に専用のチケット売り場で購入する必要があります。
このチケット売り場はバスターミナル内部の一般的なチケット売り場ではなく、バスターミナル裏側、屋外に設置された沿ドニエストル方面専用チケット売り場で購入します。
ミニバスもチケット売り場の目の前から出発するのでわかりやすいです。

特にパスポートの提示を求められることなく、普通にチケットを購入できます。

のぶよはティラスポリの手前のベンデル(Bender)にある要塞を観光してからティラスポリへ向かう計画。キシナウ→ベンデルの片道で30.7MDL (=¥200)。所要時間は1時間半ほどです。

↑このレシートがチケットの代わりとなるので、ミニバスの運転手に見せる。
チケット売り場の目の前には、沿ドニエストル行きのミニバスが数台停車しており、運転手たちが行先を叫びながら乗客を募っているため簡単に目的のバスを見つけられます。

↑ティラスポリ行きのバスがこちら。行先表示はロシア語。車のナンバープレートはモルドバではなく沿ドニエストルのもの。バスによっては途中でベンデルを経由する場合もあります。

のぶよが乗車したのがこちらのベンデル行きのミニバスです。こちらはローマ字で行先が表示されていますが、ナンバープレートは沿ドニエストルのもの。なかなかに謎です。

いずれのバスも、15分~30分おきに運行されているので、あまり時間を気にしすぎなくても大丈夫です。

いよいよ「国境」へ。出入国のようす

周り一面荒野が広がるぼこぼこの道を走ること1時間ちょっと。ミニバスが減速し始めます。そう、モルドバと沿ドニエストルの悪名高き「国境」にさしかかったのです。

モルドバの「出国審査」

ミニバスはモルドバ側の国境検査場で一時停止。軍服を着た兵士や警察の姿は見えますが、特に何も起こらないままミニバスは発進。

それもそのはず。モルドバ側からしたら沿ドニエストルはあくまでも自国の一部分という扱い。入国も出国もないんです。しかし一応検問所を設けているところに、沿ドニエストル問題の複雑さが見てとれます。

沿ドニエストルの「入国審査」

モルドバ側の検問所から走ること数百メートル。赤と緑の毒々しい色に塗られた沿ドニエストル側の国境検問所に差し掛かります。

ここでドライバーがのぶよと数名の乗客を指さしながらなにやらロシア語で言っています。
「外国人は外に出て、入国審査を受けろ」とのこと。

車内にいた外国人はミニバスを降りて、検問所内の小さなオフィスへ向かいます。

気持ちはドキドキ。
「賄賂を求められたらどうしよう。とりあえず言葉がわからないふりをして…まあ5ユーロくらいなら別にいいか。いやでもやっぱり悔しいなあ…」

そうこうしているうちにのぶよの順番が。担当は金髪美人なお姉さん。そしてお姉さんのひとことに驚きました。

「ズドラーストヴィチェ(こんにちは)」(笑顔で)

直観的に悟りました。「あ、これは大丈夫だ」と。
そしてパスポートを渡すと、なにやら機械に読み込むお姉さん。
そして一言、「今日帰るの?」

はい、今日帰りますよ。
そもそも沿ドニエストルに宿泊するとなると登録やら色々と面倒くさいそうなので、ほとんどの外国人は日帰り観光をします。

しばらくの間のあと、お姉さんは再び笑顔で、「うぇるかむ」と言ってパスポートを返してくれました。

やった…入国審査クリア…賄賂なし…沿ドニエストル美人の笑顔付き

はやる気持ちを抑えながら、荷物検査を受けていたミニバスへと戻りました。

返却されたパスポートには、沿ドニエストル共和国への入国カードとなる一枚の小さな紙が挟まれていました。

この紙を失くしたり、記載された時間を越えて滞在すると確実に問題になります。

盗難・強盗などに遭っても在モルドバ日本大使館に救援を要請することは事実上不可能。沿ドニエストル滞在中は、普段にもましてパスポートや貴重品の管理に注意を払いましょう。

沿ドニエストルについたら初めにしなければいけないこと

拍子抜けするほど簡単だった沿ドニエストル共和国への「入国」。
想像の域を出ませんが、賄賂うんぬんというのは昔の情報だと思います。現にキシナウで出会った旅人で沿ドニエストルへ行った人たちは誰も賄賂の話なんてしていませんでしたし。

国境を越えて15分ほどで、ミニバスはベンデルのバスターミナルへ到着します。

↑ベンデルのバスターミナルはもはや旧ソ連の雰囲気そのもの。

沿ドニエストルを訪れる旅行者が初めにしなければならないこと。それは両替です。

モルドバの通貨であるモルドバ・レイは沿ドニエストル内では流通しておらず、独自通貨である「沿ドニエストル・ルーブル」が使われています。どこまでもロシアについていく姿勢がすごい。

この沿ドニエストル・ルーブルがなかなかの曲者で、沿ドニエストル共和国内でしか両替できないというもの。モルドバ側で予め両替したり、沿ドニエストル出国後に再両替することは不可能です。
余った沿ドニエストルルーブルはただの紙切れと化します(笑)

そして未承認国家の通貨であるという特性上、他国発行のキャッシュカードでATMから沿ドニエストルルーブルを引き出したり、他国発行のクレジットカードを使うことも不可能です。
つまり旅行者は必ず両替をする必要があります。

旅行者が沿ドニエストル内で初めに到着するであろう町はベンデルかティラスポリのいずれかでしょう。いずれもバスターミナルすぐそばに両替所があります。

ベンデルでの両替

到着したバスターミナル側には両替所はなく、肝心のバスターミナルは閉鎖されて廃墟と化しているベンデル。

最も近い両替所は、バスターミナル裏手にあるこちらの電器屋兼スーパーマーケット内の両替所です。
少し南へ行くと、ベンデルの中心街があり、そちらでもいくつか両替所を見かけました。

ティラスポリの両替所

キシナウからティラスポリへ向かうミニバスは、全て鉄道駅前が終点です。
閑散としているティラスポリ駅前ですが、両替所が2軒あるので困ることはないでしょう。

もちろん町中にもたくさんの両替所があります。

いくら両替すればいいか

↑沿ドニエストルの通貨、沿ドニエストルルーブル

なかなか難しいのが、いくら分を沿ドニエストルルーブルに両替すればいいのかということ。
余ってしまうと他国では両替できませんし、沿ドニエストル内で再両替するのもレートが良くなくて損した気持ちになってしまいます。

のぶよ的には、10ユーロ分(=¥1250)のみ両替すれば十分だと感じました。

キシナウへ戻る帰りのバスはモルドバ・レイで支払うことも可能ですし、沿ドニエストルはモルドバ同様にかなり物価が安いです。何か特別なことをしたりお土産をたくさん購入しないのなら10ユーロで十分でしょう。

ちなみにのぶよは1ルーブルも余すことなく使い切りました。その内訳が以下の通り。

€10 = 181沿ドニエストルルーブル(p)

・ベンデル要塞入場料:50p
・ベンデル→ティラスポリ ミニバス:3.5p
・レストランで昼食:62p
・スーパーで沿ドニエストルのビールをお土産で購入:23.5p
・キシナウ行きミニバス:40p
・トイレ:2p

※1沿ドニエストルルーブル=¥7くらい

という感じです。ご参考までに。

ちなみに両替のレートはどこも同じようなものでした。両替手数料などもとられないので、最低限だけ両替しておいて、足りなくなったらその都度両替するのもアリだと思います。

沿ドニエストルからキシナウへの帰り方

ティラスポリからキシナウへのバスは、ティラスポリ鉄道駅前を発着します。行きと同様に、15分~30分おきに出ています。

最終のキシナウ行きミニバスの時刻に要注意!

ティラスポリのチケット売り場にはバスの時刻表があり、19時台、20時台の出発もあるように書かれていましたが、観光案内所の人曰く、キシナウ行きの最終ミニバスは18:45とのこと。

これを逃すとヤバいです。なぜなら、旅行者の沿ドニエストル共和国での滞在資格は「トランジット」(日帰り)なので、日をまたいで滞在することは不法滞在とみなされてしまうためです。

最終バスに乗ることは考えず、万が一を考えて、少し早めのバスでキシナウへ戻る計画を立てておくべきでしょう。

ティラスポリ駅の左側に、ミニバスのチケット売り場が併殺されています。

もちろんロシア語しか通じませんが、係員のお姉さんは親切で笑顔が素敵。そして例にもれず、美人。
帰りのバスの出発時刻から、そのバスの車体が黄色であることまで親切に教えてくれました。(もちろんロシア語で)

のぶよは沿ドニエストル・ルーブルで支払いましたが、モルドバ・レイでの支払いも可能だということです。
キシナウまでは1時間45分で40沿ドニエストル・ルーブル(=¥280)。

お姉さんの言う通りの真っ黄色のバスに乗ること30分ほど。再び国境へと差し掛かります。

沿ドニエストルの出国審査

いよいよ沿ドニエストルを「出国」します。入国の際にもらった小さな紙がちゃんとあるか確認していると、国境警備員がバスに乗車してきて、一人ひとりのパスポートを例外なくチェックしていきます。なぜか出国時は、現地の人もパスポートを提示しなければならないようです。

特に何も言われず、バスから降りることもなくあっさりと沿ドニエストルを出国しました。
入国の際にもらった小さな紙は、出国時に回収されると思っていたのですが、そのままパスポートの中に挟まっていました。

モルドバの入国審査

沿ドニエストルを出国さえしてしまえば、何事もなくモルドバに「入国」するものだと思っていたのぶよ。

行きと同様に、ミニバスはモルドバ側の国境検問所で一時停止します。しかし行きに比べてやたら停車時間が長い。なにやらバス後部の荷台を開けて、荷物の検査をしている模様でした。

乗客は特にパスポートを提示したりバスから降りたりする必要はなく、あくまでも「自国内での検問」というスタンスなのでしょう。特に問題もなく、モルドバに「再入国」できました。

モルドバ領内に入った途端、道路がかなりボコボコになります。勝手に独立を宣言している未承認国家より貧しい感じがするモルドバっていったい…(笑)

おわりに

旅人なら一度は足を踏み入れてみたいと考える、「未承認国家」・沿ドニエストル共和国。

実際に現地をこの目で見ると、かつて戦争が起こったとは考えられないほど平和そのものでした。しかしながら日本国外務省によると、沿ドニエストル地域へは渡航注意喚起が発令されています。

繰り返しますが、万が一何か起こっても、誰にも助けを求めることができない場所、その一つが沿ドニエストル共和国です。実際の渡航はあくまでも自己責任で、現地での最新情報の入手を心がけるべきです。

次回の記事では、実際に沿ドニエストル共和国内でのぶよが訪れた二つの町、ティラスポリとベンデルを観光した様子をお伝えします。

 

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