こんにちは!モルドバの首都、キシナウから沿ドニエストル共和国へデイトリップをした世界半周旅行者・のぶよです。(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
沿ドニエストル共和国という謎に包まれた未承認国家。
前回の記事では、詳細なアクセス方法や両替、その歴史などについて書きました。
今回は、沿ドニエストル共和国の「首都」・ティラスポリからほど近い、ドニエストル川西岸に位置する唯一の沿ドニエストル領の町・ベンデル(Bender)に立ち寄ったので、観光情報やティラスポリまでのアクセスなどを写真メインで解説していきます。
※「ベンデル」という町の名前はロシア語読みで、ルーマニア語名は「ティギナ(Tighina)」です。
しかしながらロシア語名の方が現地ではポピュラーなので、記事内では「ベンデル」と表記することとします。
ベンデルの観光マップ
赤:ベンデル要塞
青:モニュメント
黄色:バスターミナル/ティラスポリ行き20番ミニバス乗り場
旧ソ連感しかない、ベンデルのバスターミナル周辺
キシナウからのミニバスで沿ドニエストル領に入って、まず目に入るのがキリル文字のみで書かれた標識です。
ラテン文字で書かれるルーマニア語 (モルドバ語)が公用語であるモルドバとは異なり、沿ドニエストル共和国の公用語はあくまでもロシア語。
ラテン文字を見かけること自体がかなり珍しいと言えます。
キシナウからのミニバスが到着するのが、こちらのベンデルのバスターミナル。
なんと閉鎖されています。
バスターミナル周辺には人影はまばらでなんとも閑散とした退廃的な雰囲気。
ここだけでも、既にソ連に来てしまったような感覚を覚えます。
バスターミナルからベンデル観光のメインであるベンデル要塞 (ティギナ要塞)までは徒歩10分ほど。
その道のりはもはや30年前のソ連時代にタイムスリップしてしまったかのようです。
バスターミナル近くの広場に建つのは、沿ドニエストル共和国の国章です。
ソ連の象徴である鎌とハンマーが描かれ、「ソ連の後継者」を自負する沿ドニエストル共和国の象徴となっています。
ソ連感がすごいモニュメントは、鐘がついているベルタワー。
戦車も堂々と置かれています。
正面に書かれたキリル文字は、ロシア語で「沿ドニエストル共和国」と書く際の略称です。
町を走るバスは、レトロを通り越しておんぼろ。
土埃をかぶった色褪せた車体を見ていると、とても今が21世紀だとは信じられなくなってきます。
バスターミナルからベンデルの中心街へとのびるメインストリート。
旧ソ連でおなじみの、無機質で巨大な集合住宅が建ち並びます。
ベンデルの中心街にあるショッピングセンター。
人気はまばらでなんとも物寂しい雰囲気です。
というか、ここだけではなくて町自体に活気がないような気がします。
ベンデル観光のメイン・ベンデル要塞 (ティギナ要塞)
16世紀にオスマントルコによって支配されていたベンデル周辺の地域。
この地域のオスマントルコ軍による征服の最前線として、ベンデル要塞は築かれました。
その後の露土戦争を経てロシア軍に破壊されてしまったベンデル要塞。
19世紀にベンデル周辺地域はロシア帝国領となり、現在の要塞は復元されたものです。
要塞の前に点在する謎のオブジェと、ロシア正教会
バスターミナルから北に歩いていくと現れるのが、ベンデル要塞の入口となるこちらの門です。
門をくぐるとどっしりと構えた姿を表すベンデル要塞の本陣。
想像よりもかなり大きく、なんだか中欧の要塞のように見えます。
要塞の入口前は広大な広場になっており、なぜか謎のアート作品らしきものが点在しています。
かかしのようなものや、
すごくロシア風なセンスを感じる作品まで。(笑)
広場の一角にはロシア正教の教会があり、内部にはイコンが描かれています。
要塞前広場の見どころを見終えたら、いよいよチケットを購入し、ベンデル要塞へ入場します。
未だに荒れ果てたままのベンデル要塞
要塞の入口にある小さなチケットオフィスで入場料を支払います。
沿ドニエストル人は25沿ドニエストル・ルーブルですが、外国人は50沿ドニエストル・ルーブル (=¥350)と結構強気な値段設定です。
観光客の姿はほとんどなく、のぶよ以外には一組のカップルを見かけただけでした。
沿ドニエストルの偉人であろう人たちの銅像の横にある門をくぐると、そこは広大な要塞の中庭部分です。
かつて石を積み上げて塀を造った際に用いられた道具が展示されています。
崩れてしまった石壁が修理されることなく放置されていました。
いくつかの塔の内部も、崩壊してしまったためか立ち入り禁止になっていました。
併設のベンデル要塞歴史博物館が軽く怖い
要塞の一角にあるのが、こちらのベンデル要塞歴史博物館。入場料は無料です。
誰も人がいない小さな博物館。そこに佇む微妙なクオリティーのマネキン。
薄暗い博物館内部は軽くホラーです。(笑)
沿ドニエストルのかつての統治者の肖像画や、
結構精巧に作られた要塞の模型、
しまいにはかつてソ連時代に使用されていたルーブル紙幣まで展示されていました。何かの手紙かパンフレットかと思いました。
こんなに大きなお札、持っているのもなかなか大変だったのでは。
他にもオスマントルコ時代の出土品なども展示されていて興味深かったのですが、いかんせん説明書きはすべてロシア語。
なので感覚で理解するしかないのが残念なところ。
要塞の城壁からのパノラマもお忘れなく!
ベンデル要塞を取り囲む城壁には登ることができ、いくつかの塔にさらに上がることも可能です。
ここから眺めるベンデルの町やドニエストル川のパノラマは必見。
先ほど歩いてきた要塞の前の広場の奥に見えるのがベンデルの中心街です。
ドニエストル川をはさんで手前の西岸(ベンデルの町がある側)は、沿ドニエストル共和国の中で唯一、ドニエストル川の西に位置する領土です。
モルドバと沿ドニエストルが争ったトランスニストリア戦争において、かつてより交通の要所であるベンデルでの戦闘は壮絶を極めました。
この戦いに勝利したのが沿ドニエストルだったため、ベンデルはモルドバの実効支配が及ばない「沿ドニエストル領」として、組み込まれることになったわけです。
そんな人間の争いなど小さなことだと言わんばかりにゆったりと流れるドニエストル川。
その流れを眺めていると、何が正しく何が間違っているのか、自分が今立っているこの場所がどこの国に属するかなんてどうでもいいんじゃないか、そんな気持ちにさせられます。
しかしながら川の反対側を見ると軍用車両が並ぶ軍事基地があり、この場所に複雑な過去と現在があることを再認識させられます。
インフォメーション
ベンデル要塞 (Cetatea Tighina)
住所:Strada Panin 2/3, Bender, Transnistria, Moldova
営業時間:全日 9:00~18:00
入場料:50沿ドニエストル・ルーブル (=¥350)
所要時間:1時間
ベンデル~ティラスポリ間の移動は少しトリッキー
ベンデル要塞以外に特に見どころがあるわけでもないベンデルの町。(旧ソ連感に満ちた町を散策するだけでも楽しいですが)
日帰りでしか沿ドニエストル共和国に滞在することができない旅行者の多くは、ベンデル要塞とティラスポリの街をセットで観光することでしょう。
ここで注意したいのが、ベンデルからティラスポリへ移動する際は、キシナウから到着した際のバスターミナルからは乗車できないという点。
バスターミナルから500メートルほど南に歩いたベンデルの中心街の一角にあるバス乗り場から、ティラスポリ行きの20番のミニバスに乗る必要があります。
詳しい場所は、記事の初めの地図を参考にしてください。
こちらがティラスポリ行きの20番のミニバス。
大きく番号が表示されているのでわかりやすいです。
20分に1本ほど運行しているようで、料金は片道3.5沿ドニエストルルーブル (=¥25)、所要時間は15分ほどです。
20番のミニバスはティラスポリの鉄道駅前に到着せず、中心街である10月25日通り周辺を経由して郊外へ向かうので、運転手に好きなところで降ろしてもらいましょう。
(ティラスポリの鉄道駅から10月25日通りまでは1kmほどの距離があります)
おわりに
沿ドニエストル共和国に行く人のほとんどが、ティラスポリだけを観光して帰ってしまうのですが、それはもったいない!
ティラスポリの観光だけなら数時間で済んでしまいます。
どうせなら同じ道沿いにあるベンデル要塞に寄ってから、ティラスポリへ向かうのはいかがでしょうか。
キシナウ中心街は、市内交通はもちろんモルドバ国内移動の拠点でもある場所。
トロリーバスやマルシュルートカ(ミニバス)が縦横無尽に走っているので、どこにでも簡単にアクセス可能です。
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