こんにちは!ジョージア西部エリアをのんびりと開拓中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージアのちょうど真ん中に位置するイメレティ地方は、知られざる見どころに恵まれたエリア。
中世ジョージア王国はじまりの地である古都・クタイシを中心に、個性あふれる町や自然スポットが点在しています。
今回紹介するのは、そんなイメレティ地方の北部に位置する町・トキブリ(Tkibuli / ტყიბული)。
(のぶよのように)一風変わった波長を持つ旅行者には、絶対に刺さるはず…!
なぜなら、トキブリはジョージアの中でも一、二を争うほどのソ連的な雰囲気の町であるためです。
トキブリは、ソ連時代に炭鉱のお膝元として開発された町。
かつてはとにかく黄金時代の極みだったようで、お金をかけて開発されたことが一目瞭然の、優雅な建物がずらりと軒を連ねた独特な町並みが残ります。
しかしながら、ソ連崩壊後に炭鉱の閉山が相次いだ結果、かつて2万人以上いた町の人口は8千人ほどにまで激減。
炭鉱町の宿命なのかもしれませんが、どうしようもない哀愁が町全体を覆いつくしているかのようです。
観光地としての知名度は限りなくゼロに近いトキブリ。
しかしながら、ソ連時代の建造物や町の雰囲気が好きな人にはとにかく!もう!心から!おすすめです。
数十年前にタイムスリップしたように感じさせるトキブリのソ連感は、ジョージアでもトップクラス。
しかも、ただの無機質な共同住宅がずらりと並ぶ町並みではなく、「ソ連時代にお金をかけて開発された町」という唯一無二な雰囲気も、トキブリの魅力だと思います。
今回の記事は、トキブリの観光情報を解説するもの。
もはやこんな町にスポットライトを当てたサイトなど他にはありませんが、きっと一部の旅行者の心に刺さるはず…
はじめに言っておきます…正直、トキブリは万人向けの観光地ではありません(笑)
しかしながら、ソ連時代の雰囲気だってジョージアという国が経験した近代史の一部。
この国の魅力をより深く、多角的に感じたい人は、ぜひとも足をのばしてみましょう。
さあ、ソ連時代へタイムスリップ…!
トキブリ観光マップ
赤:おすすめレストラン
黄色:バスステーション
緑:アンブロラウリ行きミニバス乗車ポイント
トキブリの見どころ
トキブリ鉄道駅
トキブリ観光のゲートウェイとなる場所が、トキブリ鉄道駅。【マップ 青①】
鉄道駅というか、「旧鉄道駅」と言った方が正しいかもしれません。
2022年現在は鉄道は走っておらず、建物が残っているだけ。
鉄道駅前の広場は、クタイシなど他都市からのミニバスが到着するバスステーションのようになっています。
かつては、イメレティ地方の最大都市であるクタイシとトキブリを結ぶ列車が1日2往復していたそうで、いわば「トキブリの生命線」のような存在だった鉄道。
2020年に運行停止となったそうで、表向きは「コロナ禍による運休」とされていますが、実際は利用客の減少によるものだったのかもしれません。
誰もいなくなった鉄道駅は、物寂しい雰囲気に支配されています。
鉄道路線が廃止されてまだ2年ということもあり、駅舎の建物は思っていたよりも綺麗に保たれている印象。
これからもおそらくこの場所に鉄道が走ることはないでしょうし、今後どのような味のある建物になっていくのか楽しみで仕方ありません…(変態)
トキブリ鉄道駅の北側には、ぼろぼろの公衆住宅が建ち並ぶ中心街の町並みと、かつて炭鉱夫たちが汗水を流した山々の風景が。
錆びついたレールも含めて、哀愁漂うトキブリの町を象徴する風景に思えます。
メインストリート
トキブリの町を南北に走るメインストリートは、山の向こうのラチャ地方へと続く幹線道路を兼ねたもの。【マップ 青②】
メインストリート沿いの建物は、外壁だけリノベーションされたそう。
白っぽい色に統一された建物が川沿いに連なる光景は、なかなか絵になります。
トキブリのメインストリートは、この町の中心街としての役割も兼ねたもの。
栄えているのは全長500mほどの区間しかありませんが、学校や市庁舎、商店に各種文化施設など、町としての機能の全てが集約しています。
トキブリ鉄道駅から200mほど北に進むと、トキブリ劇場や市庁舎に囲まれた広場に到着します。
トキブリ劇場
メインストリート沿いを歩いていると目の前に現れるのが、トキブリ劇場。【マップ 青③】
演劇やオペラなどが開催される劇場は、昔も今もトキブリ市民の憩いの場。
かつてのソ連時代には、ある程度の規模の町の多くにこうした文化施設が建設されました。
トキブリの文化施設の多くは閉鎖されて放置された状態にありますが、この劇場は現在でも利用されている数少ないものの一つです。
トキブリ劇場の建築様式はとても美しく、洗練されたもの。
現在の町の場末感を考えると信じられないほどに立派な建物で、かつてのトキブリがどれほどに栄えていたのかイメージできます。
いちおう現役で稼働しているトキブリ劇場ですが、演劇などが開催される頻度はそれほど多くないよう。
もしかしたら近い将来、ここも他の文化施設のように閉鎖され、放置されてしまうのかもしれません。
文化宮殿
トキブリ劇場のすぐ西側。ちょっとした高台の上にどーんと構えるのが、かつての文化宮殿。【マップ 青④】
もちろんソ連時代の建造で、芸術を学ぶ若者が集まるミュージアム兼カルチャーセンターとしての役割を担っていたそうです。
文化宮殿は、人口の減少にともなって十数年前に閉鎖され、それからはずっと放置された状態。
かなり立派な建物で建築様式も素晴らしいので、何かに再利用すれば良いのに…と思わずにはいられません。
コンスタンツァ通り
トキブリのメインストリートの一本西側にあるのが、コンスタンツァ通り。【マップ 青⑤】
メインストリート沿いがトキブリの商業・行政の中心なら、コンスタンツァ通りは閑静な住宅街といった感じ。
この町で暮らす人々の生活の香りが感じられるストリートです。
コンスタンツァ通りは、かつて炭鉱町として大いに栄えたトキブリを象徴する場所。
街路樹が並ぶストリート沿いに建てられた住宅は、どれも凝った造りとなっており、かなりのお金をかけて整備されたことが一目瞭然なのです。
ソ連時代の町並みというと、「フルシチョフカ」と呼ばれる、灰色で真四角の無機質な集合住宅が建ち並ぶ光景をイメージ人も多いのではないでしょうか。(そしてそのイメージは正しい)
しかしここトキブリは、ソ連時代にはかなりの裕福さを誇った町。
無機質な巨大集合住宅よりも三階~四階建ての低層住宅が目立ち、炭鉱労働者やその家族は比較的良い生活を送っていたのだとか。
コンスタンツァ通りの住宅は、一階部分に重厚なアーチが設置されていたり、細かいところに彫刻が施されていたりと、凝った造りの建物ばかり。
きちんと保存して「ソ連レトロな町並み」としてPRすれば、観光客が来そうな気がしないでもないのですが…
トキブリの黄金時代が過ぎ去ってから、すでに30年以上。
人口は最盛期の半分以下になってしまい、老朽化した住宅からは多くの住民が退去してしまいました。
そのため、窓ガラスが割れたままだったりと明らかに空き家となっている部屋も多く見られます。
コンスタンツァ通りは距離にして200mほどの短いものですが、一つ一つの住宅のディテールに見られる細かな違いを観察しながら散策するのも楽しいもの。
通りの北端には、ソ連時代に設置されたロープウェイ乗り場の廃墟がどーんと姿を現します。
ソ連ロープウェイ乗り場跡
コンスタンツァ通りの北端にある広場のど真ん中に建つのが、ソ連ロープウェイ乗り場跡。【マップ 青⑥】
完全なる廃墟と化しており、ボロボロ&どろどろのひどい状態。
立ち入りはできなくなっています。
かつてはこの場所から、トキブリのどこからでも見える岩山の頂上にある「ツフラジュヴァリ」までを結ぶロープウェイが運行されていました。
ロープウェイ乗り場の周辺は、「THE・ソ連」といった雰囲気の町並み。
巨大な集合住宅がいくつか建っており、どうしようもなく退廃的な雰囲気に支配されています。
トキブリの巨大集合住宅は、一見するとジョージアによくある無機質で飾りっ気のないものに思えます。
しかしよく見ると、正面ファサードなどに凝った装飾が施されているのが特徴的です。
こうした点からも、かつてのトキブリがどれだけ豊かな町だったのかイメージできます。
巨大な集合住宅でも住人の数はどんどん減少しているそうで、人影はほとんどなく陰鬱とした雰囲気。
完全なる廃墟となってしまう日も、そう遠くはないのかもしれません…
トキブリ・バザール
トキブリ市民の台所となる存在が、トキブリ・バザール(Tkibuli Bazaar / ტყიბულის აგრარული ბაზარი)。【マップ 青⑦】
大都市・クタイシから運ばれた肉や魚、野菜などの生鮮食品が多く売られ、常に(トキブリ的には)多くの人で賑わいます。
トキブリ・バザールの敷地はとても小さいですが、いちおう屋外市場と屋内市場に分かれているのはジョージアのバザールあるある。
屋外では日用品を売る店が目立ち、屋内では食材を売る店が多いです。
屋外の小道を散策しているだけでも楽しいのですが、トキブリ・バザールの真髄は屋内市場。
二階建ての古い建物の中に広がっていたのは、数十年前から時が止まったような風景でした。▼
屋内市場は、もはや完全なるソ連時代そのもの。
絶妙な薄暗さと人の少なさに、ものすごく限られた品揃え、そしてやる気ゼロの店主のおばさんたち…
この空間だけは絶対に2022年ではない…
営業している店自体が全体の3分の1ほどしかなく、どこも閑古鳥が鳴きわめく開店休業状態。
ジョージア広しといえども、ここまでレトロな(?)雰囲気を色濃く残したバザールは初めてでした。
聖ギオルギ教会
トキブリのメインストリートを南に歩いて行くと、緑に囲まれた公園の一角に可愛らしい教会が。
ここが、聖ギオルギ教会。【マップ 青⑧】
トキブリの人々の信仰の中心的な役割を担っている場所です。
教会自体は近年リノベーションされたもので、歴史的な価値は少ないですが、カラフルに彩られた内部は必見。
聖ギオルギ教会が建つ公園の南側には、トキブリ唯一のレストランが営業しています。
トキブリのおすすめレストラン
かつてのトキブリには多くの飲食店があり、それはそれは賑わっていたそう。
しかしながら、人口減少とともに一軒、また一軒…と閉業していくことに。
唯一残ったのが、聖ギオルギ教会がある公園のすぐ南側でひっそりと営業するレストランでした。【マップ 赤】
店名などは特になく、看板にはジョージア文字で「レストラン」と書かれているだけ。
観光客がまったくやって来ないトキブリなので、利用客もほぼ100%地元民です。
とはいえ、外国人でも入りにくい雰囲気はゼロ。
お店の人も笑顔で対応してくれて(ジョージア語で)、とても印象が良いです。
「観光客が来ない=外国語メニューが必要ない」ということで、この店のメニューはジョージア語表記のもののみ。
ジョージア料理の基本はほとんど揃った豊富なメニューで、価格がかなり安めなのも良かったです。
迷いに迷った結果、のぶよが注文したのがクパティ(Kupati / კუპატი)。
ジョージア風のソーセージで、ここイメレティ地方をはじめとするジョージア西部地域が本場の料理です。
このレストランのクパティは、2本で7GEL(=¥350)と安め。
自家製のソーセージを炭火で焼いたものを提供してくれます。
独特のプチッという食感とあふれ出る肉汁、炭火焼きの香ばしさのハーモニー…
ハーブとスパイスが効いたお肉は、とにかくめっちゃくちゃ旨いです!
クパティには「サツェベリ」という自家製のピリ辛トマトソースをかけて食べるのが定番なのだそう。
言われるがままに試してみたら、すでに絶品だったクパティがさらなる絶品に…
味も、値段も、お店の人&雰囲気も、総合的に大満足だったこのレストラン。
何回か通って色々なメニューに挑戦したくなるような、素敵なお店でした。
トキブリを訪れるなら絶対にチェックしたいお店として、勝手に推していきたいと思います!
(というか、トキブリで食事できる場所はここしかない)
トキブリへのアクセス・行き方
トキブリへのアクセスは、同じイメレティ地方のクタイシを基点にするのが最も便利。
クタイシから/への移動であれば、ミニバス路線も利用しやすいです。
いっぽう、トキブリから北方向の山を越えた先にあるラチャ地方からのアクセスも不可能ではありません。
①タクシー
トキブリへの最も簡単&効率的なアクセス方法が、タクシーをチャーターしてしまうこと。
各都市~トキブリ間のタクシー料金の相場は以下の通りです。
【ラチャ地方側から】
・アンブロラウリ~トキブリ片道:90GEL(=¥4500)
・アンブロラウリ~トキブリ単純往復:160GEL(=¥9000)
【イメレティ地方側から】
・クタイシ~トキブリ片道:70GEL(=¥3500)
・クタイシ~トキブリ単純往復:140GEL(=¥7000)
最も効率的なのは、タクシーをチャーターしてラチャ地方~イメレティ地方の移動を兼ねながらトキブリに立ち寄るプラン。
トキブリからラチャ地方に至る幹線道路沿いには他にも見どころがあり、丸1日あれば効率良く観光しながら移動することが可能です。
タクシーを1日チャーターする場合の料金相場は、1台あたり300GEL~400GEL(=¥15000~¥20000)ほど。
何か所に立ち寄るかなどによって料金は変動してくるので、上手に交渉しましょう!
②ミニバス(マルシュルートカ)
トキブリに個人でアクセスしたい場合は、ミニバス(マルシュルートカ)の利用も可能。
基本はイメレティ地方側の町(クタイシやゼスタポニなど)からのアクセスとなるでしょうが、ラチャ地方側の町(アンブロラウリやニコルツミンダ)からの移動も不可能ではありません。
イメレティ地方方面(クタイシ/ゼスタポニ)~トキブリ
イメレティ地方最大の町であるクタイシ~トキブリ間には、直行のミニバスが1日4本運行しています。
トキブリ行きのミニバスのクタイシでの発着ポイントは、中央バスステーションではない点にご注意を。
クタイシⅠ鉄道駅前の広場からの発着となります。▼
トキブリからクタイシに移動したい場合は、トキブリ鉄道駅前のバスステーションに行けばOK【マップ 黄色】
クタイシ行きはもちろん、ゼスタポニ(Zestaponi)という小都市行きの便も出ているよう。(まあゼスタポニにわざわざ行く人もいないだろうけど)
トキブリ→クタイシのミニバスは、9:00/12:00/15:00/17:00の1日4本のスケジュール。
朝クタイシを出てトキブリを日帰り観光するプランでも余裕です!
ラチャ地方方面(アンブロラウリ/ニコルツミンダ)~トキブリ
ラチャ地方側からトキブリへとアクセスしたい場合は、クタイシ基点に比べるとややハードルが高め。
ラチャ地方側の町とトキブリを直接結ぶバスは存在しないため、アンブロラウリ~ニコルツミンダ~トキブリ~クタイシを結ぶミニバスを途中乗車/下車するしかありません。
アンブロラウリ→クタイシ方面ミニバスの時刻表は以下の通り。▼
【アンブロラウリ~クタイシ便】
・運行頻度:1日1便
・料金:アンブロラウリ~トキブリ7GEL(=¥350)
・スケジュール:アンブロラウリ9:30発→ニコルツミンダ9:50通過→ツフラジュヴァリ入口10:15通過→トキブリ10:45通過→クタイシ12:00着
この便は、トキブリ鉄道駅前のバスステーションは経由しない点に要注意。
鉄道駅前から50mほど西に歩いて、橋を渡ったところにあるメインストリート沿いを通過します。【マップ 緑】
トキブリからラチャ地方方面に抜けたい場合も、要領は同じ。
クタイシ始発のアンブロラウリ行きのミニバスに途中乗車します。
・運行頻度:1日1便
・料金:/トキブリ~アンブロラウリ7GEL(=¥350)
・スケジュール:クタイシ発16:00→トキブリ通過17:15→ツフラジュヴァリ入口通過18:00→ニコルツミンダ通過18:30→アンブロラウリ着19:00
この便は夕方にしか走っていないので、トキブリ→ラチャ地方方向の移動はややトリッキーかもしれません。
おわりに
旅行者にはまったく知られていないトキブリの魅力(?)を徹底解説しました。
ジョージア人にこの町のことをきいても、「トキブリ?なんでそんな町行くの?」なんて言われてしまうレベルでマイナーではありますが、この町に漂う哀愁はまさに本物。
個人的にはかなり良かった町の一つです。(まあ自分で言うのもなんだけどちょっと変わっているので…)
ソ連時代のレトロな雰囲気が好きな人は、とにかくもう有無を言わずに行くべき。
トキブリの中心街からも見える「十字架の崖」・ツフラジュヴァリの観光とセットで訪れるプランもおすすめです!
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