こんにちは!ジョージア第二の都市・クタイシにのんびりと滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
クタイシ滞在中のデイトリップ先としてポピュラーな町の一つが、ロープウェイの町・チアトゥラ(Chiatura / ჭიათურა)。
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もともとは鉱山の町として栄え、かつてのソ連時代には「これでもか!」とばかりに何本ものロープウェイが敷かれたチアトゥラ。
ソ連的な町の雰囲気も含め、なかなかに個性が強く面白い町です。
そんなチアトゥラ観光とセットで訪れたい場所が、今回紹介するムグヴィメヴィ僧院(Mgvimevi Convent / მღვიმევის მონასტერი)です。
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岩山の中腹にへばりつくように築かれた教会などの建物は、13世紀の建造。
中世ジョージア王国時代の建築技術を凝縮したような傑作は、ジョージア国立文化遺産にも指定されています。
僧院の建物自体も素晴らしいのですが、この場所が特徴的なのは、天然の洞窟内に聖堂が築かれている点。
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ムグヴィメヴィ僧院は現役の祈りの場として機能しており、この場所で祈りを捧げながら暮らす僧たちの姿もちらほら。
中世から現代に続く信仰の力を五感で感じることができ、信仰の違いを越えた感動が味わえます。
今回の記事は、ムグヴィメヴィ僧院の訪問レポート。
旅行者の間ではなぜか知名度が高くはないのですが、とにかく圧倒的聖地感だったので、チアトゥラ観光と組み合わせてぜひとも訪れてほしいです!
長い階段を上り、ムグヴィメヴィ僧院内部へ
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チアトゥラの中心街から歩くこと20分ほど。小高い岩山の上に、堂々と佇む建造物が姿を現します。
チアトゥラの街に漂っていたソ連的な雰囲気が嘘であったかのように、そこはかとなく漂う中世ジョージアの香り…
あれが、ムグヴィメヴィ僧院です。
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幹線道路からムグヴィメヴィ僧院までは、数百段におよぶ石段が延々と続いていきます。
まるで、天上の聖地と下界を隔てるために設けられたかのよう。
一段上るごとに、周囲の空気が研ぎ澄まされていき、神秘的な静謐さが徐々に辺りを支配していきます。
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15分ほどかけてようやく石段を上りきった先にあるのが、ムグヴィメヴィ僧院敷地内への入口。
メインの教会である聖母降誕教会の真下にある岩盤がくり抜かれ、トンネルのような通路が設置されています。▼
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トンネル内に一歩足を踏み入れて、びっくり。
まるでRPGゲームのダンジョンに出てくるような光景が、目の前に現れるのですから。▼
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長さ10mほどの短いトンネル内にはオレンジ色に光る明かりが灯され、そこはかとなくミステリアスな雰囲気。
岩肌がむき出しの壁にはイコン画がいくつも設置されており、聖地に至る通路を歩いていることを実感します。
トンネル自体の雰囲気も素晴らしく、なんだか冒険心がくすぐられてワクワクが止まらなくなるほど。
しかし、短いトンネルを抜けた先で待っていたのは、さらに驚きの光景でした。
聖なる祈りの洞窟に圧倒される。
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トンネルを抜けた先でまず目に入るのが、礼拝用のスペースとされている洞窟でした。
幅5m/奥行き10m/高さ5mほどの規模で、もともとは天然の洞窟。
現在は、キリスト教の祭祀の際に特別な礼拝を行うためのスペースとなっているそうです。
洞窟の内壁となっているゴツゴツした岩肌には、いくつもの宗教画や十字架が掲げられていて圧巻。
洞窟最奥部には岩の間を伝って垂れ落ちた湧き水が伝う岩があり、なにやら神聖なものとして祀られているようです。▼
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ジョージア国内には、天然の洞窟を利用した洞窟住居群がいくつか存在していることは有名。
南部のヴァルジアや中部のウプリスツィヘなどがそれにあたり、敷地内には住人が祈るための場所として教会などが設置されています。
いっぽうのムグヴィメヴィ僧院は、洞窟住居としてではなく、完全に祈りの場としての目的のみで造られた場所という点が独特。
天然の洞窟に神聖なものを見いだし、祈りの場を築いた先人たち。
実際にこの場所を訪れてみると、その理由がなんとなく伝わってくるはず。言葉では言い表せないパワーに満ち溢れているように感じました。
岩に押しつぶされそうな傑作。聖カトリナ教会
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洞窟の礼拝スペースから外に出ると、大小二つの教会が姿を現します。
小さい方の教会が、聖カトリナ教会(St. Catherine Church)。
天然の岩の窪みの部分に造られたもので、今にも岩に押し潰されそう。
緻密な彫刻が施された外壁と、屋根部分に設置された羊の像が特徴的で、13世紀の建設当時の技術の高さに驚かされます。
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聖カトリナ教会の内部は六畳ほどのスペースしかない小さなもの。
壁には十数枚のイコン画がかけられ、神聖な空気に満ちていました。
ムグヴィメヴィ僧院の中心。聖母降誕教会
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ムグヴィメヴィ僧院のメインの教会であり、中心的な祈りの場として機能しているのが、聖母降誕教会(Church of the Nativity of the Mother of God)。
建造は、中世ジョージア王国の黄金時代に翳りが見えていた13世紀後半(750年前)のこと。
当時の建築技術の高さを感じさせる外壁の彫刻の素晴らしさと、天然の岩と一体化したかのような佇まいが圧巻です。
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聖母降誕教会が完成した当時のジョージアは、モンゴル帝国をはじめとする異民族の侵攻に悩まされていた時期。
どうしてこの場所に教会が築かれたのかは、はっきりとは解明されていませんが、敵の目を逃れるために天然の岩に隠れたような場所を選んだのかもしれません。
その甲斐あってか、15世紀初頭に中央アジアからティムール朝がジョージア一帯に襲来した際も、ここムグヴィメヴィ僧院は陥落することがなく祈りの場としての機能を保ち続けたと言われています。
唯一無二の立地も、外観の秀逸さも素晴らしい聖母降誕教会ですが、内部も必見。
西側と南側の二か所に設置された扉を抜けた先でまず目につくのが、木製のイコノスタシスです。▼
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「イコノスタシス」とは、ジョージア正教会によく見られるもの。
人々が礼拝を行うスペースと神職者が儀式を行うスペースを隔てるための板のことです。
聖母降誕教会内のイコノスタシスは、18世紀に設置されたもの。
ジョージアでは珍しい木製となっており、十二使徒(イエス・キリストに仕えた十二人の聖人)の姿が描かれています。
聖母降誕教会内部は、かつては壁から天井にいたるまでびっしりとフレスコ画で覆われていたそう。
現在は内壁部分のフレスコ画の多くは風化してしまいましたが、天井や柱には多く残っています。
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フレスコ画の中には、ムグヴィメヴィ僧院を建設したとされるラチャ公ラティの姿も描かれています。
ラティとは、13世紀にここイメレティ地方の北隣にあるラチャ地方一帯を治めていたラチャ公国の王。
周囲を深い山々に囲まれたラチャ地方は、中世ジョージア王国の統治が強く及んでおらず「ラチャ公国」として半独立状態にありました。
ムグヴィメヴィ僧院が位置しているのは現在ではイメレティ地方となりますが、当時はラチャ公国の力がここまで及んでいたことを示しています。
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RPGのダンジョンのような通路を抜けた先に現れる、洞窟の礼拝スペース。
中世ジョージアの建築技術の高さを感じさせる、建物の造りや装飾。
750年前の建造当初から現在まで変わらない、圧倒的な聖地感。
決して大きな敷地ではないムグヴィメヴィ僧院ですが、かねてから神聖な場所として人々の信仰心を集めてきた地の威厳は、訪れる人間の心を惹きつけてやみません。
↑ムグヴィメリ僧院の内部のRPGダンジョン感、見て。入口からすでにすんごいワクワクしたし、聖地感も素晴らしい。
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) November 13, 2022
てか、これが無名ってジョージアのポテンシャルやばすぎんかぬ?クタイシから余裕で日帰りもできるのに何で人来ないんだろうぬ? pic.twitter.com/rNndnYyXXY
ムグヴィメヴィ僧院の基本情報/アクセス/見学時の注意点
ムグヴィメヴィ僧院の基本情報&見学時の注意点
ムグヴィメヴィ僧院の開場時間&料金
ムグヴィメヴィ僧院は、一般の見学客でも自由に立ち入ることができます。
僧院が一般に向けて開かれているのは、毎日11:00~16:00の間のみ。
入場料は必要ありませんが、蝋燭を購入するなど寄付が推奨されています。
ムグヴィメヴィ僧院の見学に必要な時間
ムグヴィメヴィ僧院の敷地はかなり狭く、一般の旅行者が立ち入ることができるエリアは限られています。
そのため、見学時間は30分~40分ほどみておけば十分。
チアトゥラ中心街からの往復(片道30分~40分)を合わせると、アクセス&見学にかかる時間の合計は1時間半~2時間ほどと考えておきましょう。
ムグヴィメヴィ僧院のドレスコード
ムグヴィメ僧院のドレスコードはかなり厳しい点にご注意を。
・男性:肩が隠れる服装/踵が隠れる靴/長ズボン
・女性:男性のドレスコード + 頭部をスカーフで覆う/長いスカート
上記の一般的なドレスコードと同様に、ムグヴィメヴィ僧院への半ズボンやタンクトップ、サンダル着用での立ち入りは男女問わず不可能。
また、女性の場合は頭部のスカーフ着用はもちろん、長ズボンがNGとされている点に要注意。
下半身は長いスカートの着用一択とされています。(僧院の入口にスカーフ等の貸し出しがありました)
ムグヴィメヴィ僧院へのアクセス・行き方
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ムグヴィメヴィ僧院のアクセス拠点となる町は、1.5kmほど西に位置するチアトゥラ(Chiatura / ჭიათურა)一択。
チアトゥラの中心街からムグヴィメヴィ僧院の入口までは、幹線道路沿いを歩いて20分ほどの道のりです。▼
平坦な幹線道路を歩いて行くと、左手にそびえる岩山の中腹にムグヴィメヴィ僧院が見えてきます。
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商店の脇に設置された通路を抜けると、僧院の建物まで続く長い石段へと続きます。
石段の通路は、距離300n / 片道10分~15分ほどですが、高低差がかなりある点にご注意を。
おわりに
チアトゥラの観光とあわせて訪れたいムグヴィメヴィ僧院の魅力を紹介しました。
知名度は高くはないものの、洞窟内に造られた祈りの場や、秀逸な教会建築はかなりの見ごたえ。
岩山の中腹にあるロケーションも含め、訪れる価値は十分にあります。
2時間ほどみておけば満喫できるので、チアトゥラ観光と組み合わせての訪問にはもってこい。
ソ連ロープウェイの町・チアトゥラの知られざる一面に、きっと感動するはずです!
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