こんにちは!ジョージア滞在も4年目!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
当ブログの中でも、なかなかの人気を誇るジョージア料理や食文化に関する記事。
「ジョージア現地の本物の味や食文化を伝える」ということを目的に、色々と書いてきました。
今回のトピックは、ジョージアという国の食文化を語る上で避けては通れないもの。
ジョージアに根付いたソ連時代の料理に関してです。
ご存じの通り、ジョージアは1991年に独立するまでの70年間もの長い間、ソ連の統治下にありました。
独立から30年以上が経った現在でも、町並みや人々の生活習慣や社会システムの一部など、ソ連統治時代の影響は至るところで感じられます。
それは食文化に関しても、例外ではありません。
もちろんジョージアの人にとって、ジョージアの伝統的な料理を食べる機会はとても多いもの。
しかしながら、ソ連時代にジョージアに伝わって普及した料理もごく身近に存在しています。
食文化とは面白いもので、元々は遠く離れた異なる食文化の地から伝わってきた料理であっても、いつの間にかその地の気候や風土に合わせて定着し、人々の口に合うように進化していきます。
ソ連時代にジョージアに伝わった料理の数々に関しても、オリジナルに近いものもあれば、原型を半ば失ってしまうほどにジョージアナイズされたものまで…
まさに、ジョージアにおける食の近代史の象徴がジョージア流ソ連料理なのです。
というわけで今回の記事は、ジョージアに現在でも根付くソ連時代の料理について解説するもの。
日本人には「ソ連時代の料理」と聞いてもパッとこない人も多いと思うので、ソ連料理の基礎知識も含めて丁寧に解説していきます。
ジョージアに滞在しているなら絶対に一度は食べたことのある定番メニューが、実はソ連時代に伝わったものであることもしばしば。
伝統的なジョージア料理とはひと味違う、奥深い食文化を存分に感じましょう!
ジョージアの「ソ連料理」とは?
そもそも「ソ連時代の料理」と聞いても、パッとしたイメージは浮かびにくいもの。
すでにソ連崩壊から30年以上が経過し、かつてはソ連に統治されていたジョージアであっても、当時を知らない世代も増えてきています。
まずは、ジョージアに残るソ連料理の基礎知識として、ソ連時代の料理の特徴や当時の人々が通っていた飲食店のスタイルなどの食文化を知っていきましょう。
①「ソ連料理」の最大の特徴:マヨネーズの多用と欧州の料理の簡略化
ご存じの通り、ソ連(ソヴィエト社会主義連邦)は社会主義政策を敷いていた国。
人々の移動は制限され、欧州やアメリカなどいわゆる「西側の国々」との関係性も良好ではなかったため、当時のヨーロッパやアメリカ、日本などの資本主義経済圏の国々とは異なる経済状況にありました。
日本では1970年代からの高度経済成長期や1980年代後半のバブル経済に湧くと同時に、伝統的な和食以外にも西洋の食文化が広く浸透して「新たな日本の食文化」を象徴する料理が多く生まれました。
いっぽうのソ連では、深刻な物資不足や食材の不足に悩まされており、いかに限られた食材でいかに多くの労働者たちにカロリー摂取させるかが最大の課題となっていたのです。
そんな時代背景から生まれたのが、ソ連料理を特徴づけるマヨネーズ文化と乳製品文化。
マヨネーズやサワークリームなど動物性食品由来の加工食品をとにかく多用することで、簡単に多くのカロリーを一食の食事から摂取できるように考案されたのです。
また、当時ソ連料理として領土内に広まったものは、フランス料理やオーストリア=ハンガリー帝国などヨーロッパ諸国の食文化を極限まで簡略化したものばかり。
「ジュリアン」や「オリヴィエ」、「グヤーシュ」などの料理が代表的な例で、フランス語やハンガリー語を冠した料理名にもその名残が感じられます。
上で挙げた「ソ連式ヨーロッパ料理」は、どれも発祥国オリジナルのレシピではありません。
手に入りにくい材料を省いたり、ソ連領内で定番だった乳製品やトマトなどの食材に置き換えられたりして独自に発展したもので、本場とは大きく味わいが異なります。
②ソ連各地域の食文化の流入:「ジョージアのソ連料理」の定義
1991年に崩壊するまで、ソ連(ソヴィエト社会主義連邦)はアメリカと世界のパワーを二分する存在の超大国でした。
私たち日本人の間では、「ソ連=ロシアを中心とした連邦制の国」という認識が強いですが(そしてそれは間違いではないですが)、実はかつてのソ連を構成していたのはロシア人やウクライナ人などのスラブ系民族だけではありません。
ウズベク人、キルギス人、ラトビア人、アルメニア人、そしてジョージア人…など、数多くの民族が同一国家の下で暮らす超多民族国家でした。
世界で一番広い面積を誇ったソ連の領土内には、民族も言語も宗教も異なる民族がいくつも生活しており、もちろん食文化だって多種多様。
ソ連では社会主義政策が敷かれていたこともあり、領内各地域の郷土料理がソ連各地域に均一に広がり、それぞれの土地に定着していったのです。
ウクライナ発祥のボルシチや、ウズベキスタンで有名なプロフ、シベリアの水餃子ペリメニ…など、ソ連時代にポピュラーになった料理の多くは、元をたどれば各地域の郷土料理。
それが広大な領土全域に広がって食されるようになり、ローカライズされて現地の食文化と混ざり、ソ連崩壊後も各国の人々に食されている…というわけです。
というわけで、本記事での「ジョージアのソ連料理」の定義は、以下の通り。
・ソ連時代に生み出されて広まった大衆料理
・ソ連時代にジョージアに入って来た他地域発祥の料理
どこからどこまでがソ連料理!という線引きはとても難しいのですが、まあこんな感じでいきましょう。
③ソ連時代に広まったジョージアの食文化
②「ソ連各地の食文化の流入」の項で解説した通り、ソ連各地域の郷土料理がジョージアに入ってきて独自にアレンジされたものは多くありますが、その反対も存在します。
つまり、ジョージアの郷土料理が旧ソ連構成国に広まって各地で独自に進化したもので、いわば「ソ連式ジョージア料理」のようなもの。
①「ソ連時代の食文化の特徴」の項で解説した通り、ジョージア料理のオリジナルそのままではなく、材料や手順が簡略化されて広まったものが多いです。
実はソ連時代のコーカサス地方は、独自の食文化を持つ美食エリアとして名を馳せていました。
じゃがいもしか採れないような北の大地に暮らす人々にとっては、肉も野菜も果物も豊富で未知のスパイスを多用するコーカサスの食文化は、とてもエキゾチックで風味豊かで魅力的なものだったのかもしれません。
コーカサス地域の料理の中でも、特に人気が高かったのはジョージア料理だったそう。
オーストリやハチャプリ、ヒンカリなどの定番のジョージア料理がソ連圏全体に広がり、各地域に根付いていきました。
モスクワやサンクト・ペテルブルクなどソ連の都市部に広がって人気となったジョージア料理ですが、やはり限られた物資の中でどうにかこうにかしてアレンジされる運命にありました。
「ソ連式ジョージア料理」では、ジョージア料理の最大の特徴であるスパイス類はほぼ用いられず、薪などの燃料も不足していたため煮込み時間が大幅に短縮されるのが特徴的。
コクや旨味の足りなさを補うためなのか、それともカロリー大量摂取のためなのか…
伝統的なジョージアの食文化においてはあまり用いられないマヨネーズやサワークリームを投入したアレンジ版ジョージア料理も多く見られます。
「こうしてアレンジされて広まって定着したもの=ジョージア料理」だと認識している旧ソ連構成国出身者が、ジョージアに来て本場のジョージア料理を食べると、あまりの味の違いに驚くものなのだそうです。
日本でも、もはや原型をとどめていない「鶏肉のガーリッククリーム煮込み」なる謎のシュクメルリが広まっていて、本場のものとは完全に別物で日本人旅行者がびっくりすることは当ブログで何度も言っていますが、料理を魔改造したがるのは古今東西同じなのかもしれませんね。
④ソ連時代の食堂「スタローバヤ」とは?
かつてのソ連時代、労働者たちの胃を満たしつづけてきた場所がスタローヴァヤ。
日本語にするなら「ビュッフェスタイルの食堂」といったところ。
当時はどんなに小さな町へ行こうがスタローヴァヤが必ず一軒は存在しているほどに、人々にとって身近な存在だったのだそうです。
現在のジョージア、特にトビリシでは、スタローヴァヤスタイルの食堂は減少の一途。
しかしながら、ちょっと地方部に出れば現役で営業するスタローヴァヤは多くありますし、西部のバトゥミではいまだにポピュラーな飲食店スタイルです。
スタローヴァヤのシステムはとても簡単。
カウンターに出来合いの料理がずらりと並んでいるので、好きなものを好きなだけ注文してよそってもらうだけです。
日本や諸外国でのビュッフェと異なるのは、重さで料金が決まるスタイルではないこと。
(とはいえ、最近は重さで料金が決まる進化系スタローヴァヤも存在するけど)
スタローヴァヤでは一人前の量が予め決まっており、「○○スープを器一杯でいくら」「カツレツ1個いくら」といった感じ。
なので、注文時は食べたい料理の名前を係のおばちゃんに告げるだけでOKです。
ジョージアのスタローヴァヤは、ソ連時代から時が止まったかのような内装&雰囲気の店もまだまだ現役。
出来合いの料理ばかりなので味はそこそこ…といった場合が多いですが、レトロな雰囲気も含めて一度は体験してみたい空間です。
ジョージアのスタローヴァヤの価格帯は、スープ + サラダ + メインの肉料理 + サイドメニューで10GEL(=¥500)前後。
低価格で一食がっつり食べられる&調理の待ち時間もないというスタローヴァヤのメリットは、ソ連時代の労働者たちに愛された時代から変わっていません。
⑤スタローヴァヤのサイドメニューの定番「ピュレとグレーチカ」
スタローヴァヤでメインとなる肉料理や魚料理を係のおばちゃんに注文すると、「ガルニール?」と(旧ソ連圏お得意の)無表情できかれるのが定番。
「ガルニール」とはロシア語で「サイドメニュー」のこと。
日本のファミレスではサイドメニューの選択肢もよりどりみどりでどれにしようか迷ってしまう…
なんてこともあるのかもしれませんが、ジョージアのスタローヴァヤでのサイドメニューは超シンプルな二択です。
・ピュレ:マッシュドポテト
・グリーチカ:蕎麦の実を炊いたもの
フライドポテトやパスタがサイドメニューにあることはごく稀。
基本的に上の二つしか選べないお店がほとんどです。
人によって好みは分かれるでしょうが、のぶよ的にはピュレ派の方が断然多いイメージ。
蕎麦の実を炊いたものも美味しいのですが、「貧しい食事」と考える人も少なくないのだそうです。
ジョージアのソ連料理15選
ここまでで、ジョージアのソ連料理に関する基礎知識はOK。
いったいどんな料理があるのか、気になってきたのでは?
ここからは、ジョージアに根付くソ連時代の料理を15個品紹介していきます。
いまやしれっとジョージア料理の定番ポジションに就いているアレやコレも、実はソ連時代に伝わってきたものだったりする場合も…
①コトレティ
まずは、ジョージア全国の食堂やスタローヴァヤにおける定番中の定番、コトレティ(Kotleti / კოტლეტი)。
挽き肉を俵状に丸めて多めの油で揚げ焼きにしたハンバーグのような料理です。
ロシア語では「カトリェート」と呼ばれ、旧ソ連圏の多くの国で食される定番料理のひとつ。
肉は牛豚の合挽きが基本ですが、鶏ひき肉を使った「カトミス・コトレティ」というバリエーションも存在します。
ジョージアのコトレティは、挽き肉に刻んだハーブやスパイスを混ぜて味付けをするのが一般的。
「サツェベリ」と呼ばれる自家製のピリ辛トマトソースをかけて食べるのがジョージア流です。
外はカリッと&中はふんわりとした食感で、あふれ出る肉汁にノックアウト…
スタローヴァヤによって当たり外れが大きい料理ですが、美味しい店のものは感動的な絶品です。
②ストロガノフィ
ロシアのビーフストロガノフがジョージアに根付いたものが、ストロガノフィ(Stroganovi / სტროგანოვი)。
「ビーフストロガノフィ」とフルで呼ばれることも多いのですが、ジョージアにおけるビーフストロガノフィにはあるミステリーがあります。
それが、牛肉ではなく鶏肉が使われること。
「ビーフストロガノフィ」とメニューに書かれているのに、出てくるのは鶏肉のストロガノフ…という不思議な体験ができます。
ジョージアのストロガノフィの作り方は、鶏肉が使われる以外はロシアと同様。
たっぷりのバターとサワークリームで煮込まれた鶏肉はとても芳醇な風味で、コクたっぷりの後味がやみつきになります。
スパイス等はいっさい使用されず、味付けは塩胡椒のみのシンプルなものですが、仕上げにフレッシュハーブをのせて彩りを加えるのがジョージアらしい点です。
③ボルシチ
ウクライナ発祥のボルシチ(Bolshi / ბოლში)はソ連時代に多くの地域へと広がり、ここジョージアでも食堂の定番スープの一つとして根付きました。
ボルシチは地域や家庭によってレシピが大きく異なる料理ですが、本場のウクライナやロシアでは主役となるのは真っ赤なビーツ。
対するジョージアでは、ビーツ=具として煮込む数ある野菜の一つという位置づけで、中にはビーツが入らないボルシチを提供する店も存在します。▼
ビーツなしの「ジョージア風ボルシチ」の具材は、キャベツや玉ねぎ、ニンジンがメイン。
赤味はトマトペーストやトマトピューレを入れて出すのがポイントです。
また、ウクライナやロシアのボルシチとは異なり、大量のスパイス類を入れるのもジョージア風ボルシチの特徴。
もはや「仕上げにサワークリームをのせたハルチョー」と言った方が正しいような気がしますが、ハルチョーにはキャベツが入ることはないため、あくまでもこれは「ボルシチ」であるようです。
原型からだいぶ離れてしまってはいるものの、ジョージア風のボルシチは野菜の旨味とスパイスの複合的な風味が混じり合った絶品。
どこのスタローヴァヤにも置いてある定番メニューで、店によって味や具材が大きく異なるので、食べ比べてみるのもおすすめです。
④マダム・ボヴァリー
「これぞソ連時代の料理!」といった風格が漂う一品が、マダム・ボヴァリー(Madame Bovary / მადამ ბოვარი)。
1949年公開のフランス映画『ボヴァリー夫人』の名を冠する料理で、「ソ連式フランス料理」と言えるかもしれません。
マダム・ボヴァリーは、ソテーした豚肉とマッシュルームを器の底に敷き、マヨネーズやトマト、じゃがいもやチーズなどを重ねてオーブンで焼き上げたグラタンのような料理です。
ジョージアではなかなか味わえない、洋風でがっつりした食べごたえが特徴的なマダム・ボヴァリー。
ソ連時代に考案された料理に共通する特徴である「とにかくカロリー摂取のためにマヨネーズかけとけ!」という調理法に忠実な、ボリューミーな一品です。
マダム・ボヴァリーはなぜかバトゥミなどのジョージア西部で多く見かける料理で、トビリシなど東部ではあまり置いている店がないのもミステリー。
ソ連料理の中では最も日本人ウケしそうな料理だと思うで、見かけたらぜひとも挑戦を!
⑤ジュリエニ
マダム・ボヴァリーに続いて、さらにソ連感がびしびしと感じられる料理が、ジュリエニ(Zhiulieni / ჟიულიენი)。
旧ソ連圏ではロシア語風に「ジュリエン」と呼ばれる定番料理が、ジョージア語風に呼ばれたものです。
もはや見た目からしてインパクトがすごいジュリエニですが、器を覆う真っ白な物体の正体はマヨネーズ。
鶏肉や豚肉とマッシュルームを大量バターでソテーしたものにチーズをのせ、大量のマヨネーズで覆ったものをオーブンで焼き上げた豪快な料理です。
この未知なる料理がどんな味なのかと言うと、見かけ通りの味です(笑)
しっかり目に味付けされた肉とキノコにチーズがとろけ、マヨネーズの油分とこってり感がどこまでも追いかけてくる感じ…そう。ジュリエニは果てしなく重たいのです。
ジュリエニのカロリーは、なんと1200kcalほどにもなるそう。
胃もたれ必至のガッツリ系ソ連料理で、かつての労働者たちよろしく胃を満たしてみては?
⑥グヴェゼリ
ジョージア全国どこでも売られているグヴェゼリ(Gvezeli / გვეზელი)は、小麦粉生地に具を詰めて焼き上げたパンのような料理。
レストランのメニューに載っていることは珍しく、ベーカリーなどで売られていることが多いです。
グヴェゼリをひとことで表すなら、ロシアの定番の軽食であるピロシキの派生形。
ピロシキ=挽き肉が具に入るイメージがありますが、ジョージアのグヴェゼリは挽き肉以外の具が入る場合も多いです。
面白いのが、肉以外の具が入ったグヴェゼリにはお米が入る場合が多い点。
日本人的には炭水化物×炭水化物ということで、なんとも不思議な感じがしますが、きのこや野菜だけを具にしたパンだと物足りない(&カロリーが足りない)ためだと考えると納得です。
⑦オリヴィエ
「THE・ソ連時代の料理」といったサラダが、オリヴィエ(Olivier / ოლივიე)。
フランス語風の名前を冠しているのは、考案した人がオリヴィエというベルギー人だったという逸話に基づいたものです。
オリヴィエは、ジョージアのスタローヴァヤなら必ず置かれている定番のサラダ。
サイコロ状にカットしたじゃがいもやグリーンピース、ハムやピクルスなどをたっぷりのマヨネーズで和えた、ソ連風ポテトサラダのような料理です。
オリヴィエの味付けは塩胡椒のみとシンプルで、お酢は入らないのが基本。
ピクルスの酸味と塩気が味の決め手となっており、たっぷりのマヨネーズのコクが舌に残りますが、全体的に淡白な味わいです。
日本のポテトサラダのねっとり&ほくほくした食感とは異なり、オリヴィエに使用されるじゃがいもは芯が残った状態になるように固めに茹でられたものが使用されるのも独特。
シャキシャキした食感が楽しいのですが、個人的には日本のポテトサラダが圧勝のような気もします…
⑧ペリメニ
旧ソ連圏全体で定番とされるペリメニ(Pelmeni / პელმენი)は、遠くシベリアの大地で生まれた水餃子のような料理。
その起源は800年前にユーラシア大陸の広範囲を支配したモンゴル帝国によってもたらされたもので、ジョージアの小籠包であるヒンカリとルーツは同じだと言われています。
ジョージアのペリメニは、スタローヴァヤや食堂はもちろん、レストランでもメニューに載っているほどの定番料理。
スーパーではお湯で茹でるだけで食べられる冷凍のペリメニも売られており、手軽に食べられる料理としてのポジションを確立しています。
ペリメニをどんなスタイルで提供するかは、お店によってかなりばらばら。
お湯で茹でたものにマヨネーズをかけた「ソ連風」が最もポピュラーですが、サワークリームやバターとともに煮込まれて提供される、手が込んだものも存在します。
冷凍のペリメニもそれなりに美味しいのですが、包みたての生ペリメニは生地の食感も肉の風味も大きくアップした絶品。
ペリメニを看板メニューにするお店もジョージア国内にいくつかあるので、滞在時にはぜひ食べてみてほしいです!
⑨ムツヴァディ
ソ連時代の人々の楽しみと言えば、長く厳しい冬が明ける春の時期に外で炭火を炊いて肉を焼くシャシュリク。
旧ソ連圏全体に広がったバーベキュー文化ですが、その起源は中央アジア地域やコーカサス地方であったとされています。
ジョージアではムツヴァディ(Mtsvadi / მწვადი)と呼ばれる、炭火BBQ料理。
全国津々浦々、どんなに田舎に行こうとも食べられる定番中の定番料理です。
ムツヴァディに使用されるのは、基本的に豚肉。
大きめの塊にカットした肉を長い串に刺し、炭火でじっくりと焼く豪快な料理です。
下味がつけられているため、そのままかぶりつくのもOKですが、ジョージアでは「サツェベリ」と呼ばれるトマトベースのピリ辛ソースをかけるのが定番。
豚の脂がじゅんわりと染み出す絶品の肉料理は、ソ連全域に広がったのも納得の美味しさです。
⑩シュニッツェリ
ソ連が成立した1922年から数年前のこと。
オーストリア=ハンガリー帝国が崩壊し、地図から消えることになりました。
中央ヨーロッパで絶対的な権力を誇ったこの大国の食文化のいくつかは、ソ連に流入して普及したのですが、その象徴がシュニッツェリ(Shnitzeli / შნიცელი)。
オーストリアのウイーン名物とされる、薄くのばした豚肉に衣をつけて揚げた「シュニッツェル」のことです。
ジョージアのシュニッツェリは、豚肉ではなく安価な鶏肉が使用されるのが定番。
調理法はほとんど同じであるものの、叩いて薄くのばした鶏肉に各種スパイスで下味をつけるのが独特です。
ジョージアの中でも、なぜか西部地域でばかり見かけるのはシュニッツェリの七不思議。
奥深いスパイスの風味が香るサックサクの鶏肉は、とにかくもう信じられないほどに美味しいです。
⑪ガロフ
スタローヴァヤに並ぶ数あるスープ料理の中でも定番なのが、ガロフ(Gorox / გაროხი)。
豆のスープの総称で、レンズ豆やインゲン豆など使用される豆によって色や風味が大きく異なります。
ガロフの調理法は意外に手が込んでいて、ベースとなる豆を炊いたものに玉ねぎや人参を加えてミキサー等でペースト状にし、お湯を加えてじっくり煮込むというもの。
豆本来の甘味や風味が最大限に引き出されており、栄養も満点な一品です。
ガロフの味の決め手となるのが、少量だけ入れられるクミンパウダー。
店によってレシピや味付けは大きく変わるものの、クミンは必須のスパイスとして使用されます。
心も体も温まる優しい味で、クミンのほのかな香りが鼻腔をくすぐる絶品スープ。
店によっては「豆のスープ」(Baradis supi / ბარდის სუპი)としてメニューに載っている場合もあります。
⑫プラヴィ
ジョージアは、お米を主食として食す文化はほとんど根付いていない国。
しかしながら、ソ連時代に入ってきたプラヴィ(Plavi / პლავი)は、食堂やスタローヴァヤのメニューに載っている場合もあり、サラダ感覚で食されています。
プラヴィの起源は、中央アジアの郷土料理であるプロフ。
羊肉を用いた炊き込みご飯のような料理ですが、羊肉を食す文化が薄いジョージアでは鶏肉で代用されるのが主流です。
本場・中央アジアのプロフ(まじで美味しい)と比べると、ジョージアのプラヴィはかなり大味で肉や野菜の風味も薄めなのが残念。
米の炊き加減が柔らかめである場合も多いのですが、米文化の国ではないので仕方がない部分はあります。
「めちゃくちゃ美味しい!」というわけではないものの、プラヴィはジョージアではとても貴重な米料理。
レストランや食堂ではまず置いておらず、スタローヴァヤ限定の料理というのも興味深いです。
⑬キエヴリ・コトレティ
ジョージアのスタローヴァヤや食堂でよく見かけるキエヴリ・コトレティ(Kievuri kotleti / კიევური კოთლეთი)は、ご存じ「キエフ風カツレツ」とのこと。
叩いて薄くのばした鶏肉を何枚も重ねて丸め、たっぷりのバターを包んで揚げた料理で、ナイフを入れるとじゅんわりと染み出してくる芳醇なバターが鶏肉に絡む絶品です。
「キエフ風」とつくことから、ウクライナ発祥の料理なのかと思ってしまいがちですが、実はこの料理がどこ発祥なのかははっきりしていないのだそう。
ジョージアでは「ウクライナ料理」という認識よりも、「ソ連時代に普及した料理」という認識の方が強い気もします。
発祥に関しては置いておくとして、揚げたてのキエヴリ・コトレティは見た目を裏切らない絶品。
スタローヴァヤの作り置きのものはバターが冷えて固まってしまっているので、できれば食堂やレストランで出来たてに挑戦したいものです!
⑭グリヤシ
⑩シュニッツェリの項で登場したオーストリア=ハンガリー帝国由来の料理をもう一つ。
ハンガリー料理として絶大な知名度を誇る「グヤーシュ」がソ連時代に伝わり、ここジョージアで進化した「グリヤシ」(Guliyashi / გულიაში)です。
ハンガリーをはじめ、中欧諸国のグヤーシュは、牛肉を大量のパプリカペーストで煮込んだもの。
いっぽう、ソ連時代にはパプリカがあまり普及していなかったため、パプリカの代わりにトマトを入れて代用した「ソ連式グヤーシュ」がスタローヴァヤの定番となりました。
そんなソ連式グヤーシュはジョージアにも流入してきたのですが、ジョージアではパプリカは珍しくない食材。
そのため、ソ連式にトマトをたっぷり入れつつも、オリジナルに忠実にパプリカペーストも用いる「グリヤシ」へと独自の進化を遂げました。
ジョージアのグリヤシは、トビリシなど東部ではなぜかほとんど見かけず、バトゥミなど西部地域でのみ食されているのもミステリアス。
じっくり煮込まれた牛肉と旨味たっぷりの煮汁が、サイドメニューのピュレと絡まって極上の食感となります。
⑮チェブレキ
ジョージアから黒海を挟んだ対岸に位置するクリミア半島。
この地に暮らしてきたクリミア・タタール人の郷土料理であるチェブレキ(Chebureki / ჩებურეკი)は、旧ソ連圏全体に広がって超ポピュラーな軽食のポジションにつきました。
チェブレキは、小麦粉生地に挽き肉をのせて半分に折って閉じ、油でサッと揚げた料理。
大きな揚げ餃子のような料理で、生地の中に閉じ込められた肉汁がじゅんわりと染み出す絶品です。
ジョージア、特に西部ではチェブレキの人気が根強く、専門的に提供するお店まで存在するほど。
作り置きのチェブレキは油がべちょっとして美味しさが半減してしまうため、揚げたて熱々をサクサクッといただくのが極意です。
ハーブやスパイスで味付けされた具の挽き肉は、ノックアウトされるほどのジューシーさ。
生地のパリパリ&サクサク食感も素晴らしく、人々に愛され続けているのも納得です。
おわりに:ジョージアのソ連料理はどこで食べられる?
ジョージアに残るソ連時代の料理のアレコレを解説しました。
ソ連時代というとどうしても複雑な思いもあるものですが、食文化という形で根付いているのは事実。
人々に愛される美味しいものに、歴史も国境もありませんよね。
伝統的なジョージア料理に比べて、スパイスの使用が控えめでザックリとした味わいなのもソ連料理の特徴。
「ジョージア料理ばかり食べてきたから、ちょっと違うものが食べたい…」といった日にもおすすめです。
ここまで読んで「ソ連料理…食べてみたい!」と思ったあなたへ。
本記事で紹介したソ連料理の数々は、どこの店にも置かれているわけではありません。
どれも「庶民の味」といった料理なので、ある程度の価格帯のレストランにはまず置いておらず、ローカル食堂やスタローヴァヤで食べられる場合がほとんどなのです。
ジョージア各都市でソ連料理が食べられるお店の記事をいくつかピックアップしてみたので、気になる人はぜひチェックを!▼
・Pelmeni No.1(トビリシ)
・ソ連式スタローヴァヤ(バトゥミ)
・Shua Kalaki(コブレティ)
・ノダリの家(コブレティ)
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