こんにちは!ジョージア西部アジャラ地方の山間部に滞在中。世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アジャラ地方山間部の滞在拠点として便利な村の一つが、フロ(Khulo / ხულო)。
人口4000人ほどの小さな村ですが、この地域の交通・商業の拠点としての役割を担っています。
フロは山の斜面にひらけた村。中心街のすぐそばには深さ200m以上はある深い谷間が広がっており、谷の反対側とを結ぶロープウェイが敷かれていることで有名です。
ソ連時代に整備されたこのロープウェイ、とにかく恐怖でしかないのですが、その様子は別記事にて。▼
今回紹介するのは、その恐怖体験を越えた先にある桃源郷のような村です。
その名も、タゴ村(Tago /თაგო)。
人口100人ほどの小さな村で、アジャラ地方山間部らしい一面の緑に包まれた村の風景は、まるでジブリの世界のよう。
車両でのアクセスが難しいこともあり、静寂に包まれた村の風景は「これ、本当に21世紀の風景…?」と思ってしまうほどです。
伝統的な木造民家が肩を寄せ合うように並ぶタゴ村では、昔から変わらない伝統的な生活が営まれている点も見逃せません。
長らくオスマン帝国の支配下にあったため、村人の大半がイスラム教徒であるのも興味深いです。
今回の記事は、フロを拠点として観光に訪れたいタゴ村の魅力を解説するもの。
素朴な雰囲気が残る村の風景と、美味しい空気を満喫しに行きましょう!
ジブリの世界そのまま!タゴ村の見どころ
「恐怖のロープウェイ」で、人生で一、二を争うほどの8分間の恐怖体験の後。
のぶよの目の前に広がったのは、まるでおとぎ話の世界のようなタゴ村の風景でした。
「山々の緑に囲まれた、小さな小さな集落」といった雰囲気で、数十軒の家と、自給自足用の畑が連なっています。
ロープウェイ乗降場から村の中心地(というか、数軒の民家が密集しているエリア)までは、200mほどの小道を歩いていくだけ。
ぐるりと一周しても1時間~2時間ほどでまわれてしまうほどの小さな村なので、地図も必要ないほどです。
伝統建築が残るタゴ村の風景
タゴ村に「上陸」して初めに気が付いたことが、「何一つ音がしない」ということでした。
それもそのはず。
北を深い谷間、南を深い山々に挟まれたタゴ村への唯一の交通手段は、恐怖のロープウェイのみ。
かつては谷底を通る道路を整備する計画が進められていたのですが、完遂されることはありませんでした。
獣道状態の細い道は一般車が通れるはずもないほどの悪路だそうで、4WD車でしか通行不可能。
その唯一の道さえ、いったん雪が降ると遮断されてしまい、冬季は陸の孤島となるそうです。
タゴ村から谷を隔てた反対側にあるフロ村との間にロープウェイが完成したのは、ソ連時代末期にあたる1980年代のこと。
それ以来は冬季でも物資や人員の輸送が可能となり、現在もこのロープウェイが村人の足として活躍していますが、こちらも安全上の問題からいつ運休となるかは不明です。
そのため、タゴ村では「ロープウェイが無くなったら、村を捨ててフロやバトゥミなどに移り住む」と考えている人がほとんどなのだとか。
そんなタゴ村の中心部には、アジャラ地方伝統の木造建築が肩を寄せ合う素晴らしい風景が広がっています。
一年を通して湿度が高いアジャラ地方では、石造りの建築が主なジョージア東部と異なり、風通しの良い木造の家が好まれ建設されてきたそうです。
同じアジャラ地方に位置するバトゥミなどの大都市では、伝統的な木造建築はほとんど残ってはいませんが、ここタゴ村では9割ほどの家屋が木造建築。
ひと昔前にタイムスリップしたかのような、不思議な感覚になります。
村の中心部に来ると、先ほどまでの無音の世界とは打って変わって、色々な生活音が聞こえてきます。
料理を作る音、薪を割る音、子供を叱りつけるお母さんの声、牛の鳴き声…
昔から変わっていない風景と人々の生活が、現代に蘇ったような印象を受けます。
タゴ村の散策時にぜひ注目したいのが、この地方独自の木造高床式倉庫。▼
ここアジャラ地方とその北のグリア地方、さらに北のサメグレロ地方などジョージアの黒海沿岸地域は、一年を通して温暖で湿度が高いエリア。
腐りやすい食材などを湿度が高い地面から遠ざけ、風通しの良い場所で長期間保存するために、こうした倉庫が造られるようになったそうです。
この辺りの知識は、全部トビリシの野外民族博物館で学びました。
実際の伝統家屋をジョージア各地方から移築したものが、そのまま展示会場となっている素晴らしい博物館で、地域ごとの伝統文化や人々の生活を学ぶことができます。
ジョージアの地方部を旅する前に、ぜひ足を運んでみることをおすすめします!
一年中住んでいるわけではない?タゴ村の住民の不思議なライフスタイル
タゴ村の住民の半分以上は、この村出身にもかかわらず一年中住んでいるわけではありません。
タゴ村だけでなく、アジャラ地方の山村に見られるこのような木造民家は「ヤルヤ」(yalya)と呼ばれるもの。
通年生活することを前提に建てられたものではなく、あくまでも夏場の避暑用の家なのだそうです。
雪がない春~秋の間のみ、生まれ故郷の家で家族みんなで過ごし、冬場はバトゥミなど都市部のアパートで生活をするスタイルの人も少なくないのだとか。
もはやジブリの世界にしか思えないような風景の連続に、のぶよの頭の中には様々なジブリ映画のテーマソングがごちゃ混ぜになった曲が延々と流れていました。
(ヘビーリピートしていたのは「トットロ、トットーロ」だった)
自然と共に生きるタゴ村の人々の暮らし
タゴ村の人々の生活は、現在でも自給自足が基本。
現在でこそロープウェイが利用でき、フロ村の商店での買い物も容易になりましたが、ほんの40年前までは完全なる自給自足が営まれていたと言います。
各家庭の軒先では、村での生活を感じられる風景がたくさん。
このエリアの名産であるたばこの葉や、収穫した豆などを天日干ししている光景を多く見かけました。
ロープウェイで渡った反対側の谷にあるフロでは、道端で煙草の葉を売るおじさんたちを数人見かけましたが、もしかしたらタゴ村の人なのかもしれません。
他にも色とりどりの野菜や果物、トウモロコシなどの穀類が育てられており、肉や乳製品となる牛の姿も多く見かけます。
日用品や調味料など、村ではどうしてもでは手に入らない物が必要な際に、ケーブルカーでフロ村に渡って購入するのでしょう。
フロ村には電気は通っているものの、ガスは通っていないよう。
そのため、各民家では燃料用の大量の薪を常備しており、木造の倉庫いっぱいに保存されています。▼
子供たちが薪割りを手伝っている光景もちらほらと見られ、伝統が受け継がれていることが感じ取れます。
タゴ村のすぐ裏側には深い森が広がっており、木材はそこから運ばれてくるよう。
木材は家屋の建設や暖房など様々な用途に使用され、「そこにある物を使って生活する」という昔ながらの感覚が息づいているように思いました。
ジョージアなのに村人はイスラム教徒?
ジョージアでは、どんなに小さな町や村でも教会やチャペルがあるものなのですが、タゴ村にはそれがありません。
その代わりにあるのが、こちらのモスク。▼
トルコとの国境に近く、オスマン帝国支配の影響を強く受けたアジャラ地方は、ジョージアの中でも独自の歴史と文化を持つ地域。
もともとはキリスト教徒であった住民の多くが、300年以上に渡るオスマン帝国の支配時代にイスラム教に改宗させられたためです。
バトゥミなどの沿岸部や都市部では、オスマン帝国に代わってこの地を支配したロシア帝国時代に、再びキリスト教信仰が根付いたそうですが、タゴ村のような内陸部の山村ではいまだに住民の多くがイスラム教徒であると言われています。
取って付けたような質素な外観のモスクですが、内部にはなんとも美しい空間が広がっています。
タゴ村のモスク内部は三層構造となっており、木製のハシゴを使って上り下りできるようになっています。
礼拝の場所となるのが、二階と三階部分。
エキゾチックなモチーフのカーペットと、赤や緑を基調としたカラフルな装飾の数々の美しさには、思わず息を呑みます。
モスク内部は、木を基調とした温かみのある空間。
随所に設置された窓から差し込むやわらかな自然光に照らされ、どこか幻想的な雰囲気です。
タゴ村の住民のほとんどはイスラム教徒のジョージア人だそうで、実際にのぶよが見学を終える頃に礼拝にやってくる人達の姿もありました。
小さなモスクですが、現役の祈りの場として機能していることがわかります。
タゴ村の人々は、この山深い地で先祖代々のイスラムの習慣を守り抜いてきました。
「世界で二番目のキリスト教国」であるジョージアにありながらも、イスラムのエッセンスが混ざった独自の文化。
多様な文化や信仰、民族が入り混じるジョージアという国を象徴しているような気がします。
タゴ村を一望するビューポイントへ
タゴ村の南には、9km先のスハルタ修道院(Skhalta Monastery)まで続くトレッキングコースがあり、時間と体力が許すなら挑戦することも可能です。
トレッキングをしない場合でも、タゴ村から1kmほどコースを歩いた地点にはビューポイントがあるので、せっかくならここまでは足をのばすのがおすすめ。
タゴ村の全景と谷の向こうにひろがるフロ村、その背景にそびえるアジャラ地方の深い山々の風景を一望することができます。▼
人里離れたこの地で、物資も限られている状態での生活…きっと想像を絶するほどの苦労があることでしょう。
しかしながら、「この美しい山々の風景を眺めながらの毎日は、きっと何にも代えがたい価値があるのかもしれないな。」と心から感じました。
タゴ村のアクセス情報
車両の進入がほぼ不可能なタゴ村へのアクセス方法はかなり限られています。
ほとんどの場合は、谷を挟んだ反対側に位置するフロから、恐怖のロープウェイを利用して往復することとなるでしょう。
体力がある人は、フロ→タゴ→スハルタ修道院と1日かけてこのエリアを満喫することも可能です!
フロ~タゴ村
タゴ村へのアクセス拠点となるのが、フロ村。
全長1700mのロープウェイが敷かれており、簡単にアクセスすることが可能です。
タゴ村~スハルタ修道院
タゴ村の南9kmほどの場所に位置するスハルタ修道院(Skhalta Monastery / )は、アジャラ地方で最も古いキリスト教建造物。
タゴ~スハルタ修道院間にはトレッキングコースがあるので、興味のある人はぜひ足をのばしてみるのがおすすめです。
タゴ村~スハルタ修道院トレッキングの記事は、現在執筆中です!
おわりに
恐怖のロープウェイとセットで楽しみたい、タゴ村の美しい風景を紹介しました。
目立った観光スポットがあるわけではありませんが、この地域の伝統文化を五感で感じられるのが最大の魅力です。
アジャラ地方には、他にもこのような素朴で伝統的な雰囲気を残す村が点在しています。
のんびりと村をめぐるような旅も面白いかもしれませんね。(当ブログでも訪問した村を随時紹介していきます!)
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