こんにちは!ジョージア第二の都市・クタイシにのんびり滞在中!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア中部・イメレティ地方の中心都市であるクタイシは、およそ1000年前に中世ジョージア王国が興隆した場所として知られる古都。
市内にも周辺にも、当時の栄光を今に伝える見どころが点在しており、ジョージアの歴史や文化に触れたい旅行者は必ず訪れたい町の一つです。
クタイシ市内に限れば、定番とされる見どころを順番にまわっても半日ほどで済んでしまう規模。
そのためか、この町を訪れる旅行者のほとんどは、市内観光よりも周辺の見どころへのアクセス拠点として滞在する人が多いように思います。(のぶよも「クタイシ市内には見どころが少なめ」と思っていました)
しかし!そこはさすがの「ジョージアの古都」。
知られざる魅力を放つエリアが実は存在していたのです。
それが、「裏クタイシ」と勝手に名付けた、市内北東部のリオニ川の両岸に広がるエリア。
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このエリアは、クタイシの中でも最も長い歴史を持つ地区の一つ。
観光の中心とされるクタイシ旧市街は、近年リノベーションされて綺麗な町並みに整備されていますが、このエリアに並ぶ建物はどれもひと昔前のまま。
そう、古き良きクタイシの風情や情緒が存分に感じられるのです。
また、クタイシはかねてから異なる宗教を持つ民族が共存してきた町。
この町の寛容さや多様性を象徴するかのように、シナゴーグを中心としたユダヤ教徒居住地や、「フレンチ・クオーター」と呼ばれる旧カトリック教徒居住地など、小さなエリアの中に異文化の香りが漂っているのも大きな魅力です。
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今回の記事は、この「裏クタイシ」エリアの魅力を徹底解説するもの。
「裏クタイシカルチャーさんぽ」と名付け、エリア内の見どころに立ち寄りながら散策するためのガイドとなっています。
数時間あれば余裕で歩けてしまうほどですが、とにかく見どころがたくさんあるので、満足感はかなりのものとなるはず。
文化的な香りに包まれたクタイシという町を、より深く味わえること間違いなし!
裏クタイシカルチャーさんぽの概要
裏クタイシカルチャーさんぽマップ
緑:散策コース
裏クタイシカルチャーさんぽの基本情報&モデルルート
本記事で紹介する「裏クタイシカルチャーさんぽ」の散策コースは、誰でも簡単に歩けるレベル。
普通の街歩きだと考えてOKです。
各見どころをサクサク見学するなら2時間半~3時間ほど。じっくり見学しながら歩くなら4時間ほどが必要となります。
・総歩行距離:6.2km
・所要時間:徒歩コース1時間半 + 各見どころの見学時間=計2時間半~4時間
・難易度:★☆☆☆☆
クタイシ中心街からほど近い場所を歩くだけなので、わざわざバスに乗って移動したり…といった面倒がない点も◎
クタイシの市内観光の定番スポット自体は半日でまわれるので、残りの半日を「裏クタイシカルチャーさんぽ」に費やすのがベストです。(日当たりの関係で、午後の方が各見どころの風景が綺麗に見えるかも!)
本記事で紹介している散策コースと主な見どころは、以下の通りです。
・聖母受胎告知寺院
・聖ギオルギ教会・シナゴーグ
・ツタの塔
・ムツヴァネクヴァヴィラ寺院・ジョージアで一番小さな教会
バグラティ大聖堂をスタート地点にして逆方向で歩いてももちろんOK。
その場合でも高低差は大して変わらず、所要時間も同じくらいです。
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個人的には、最後にバグラティ大聖堂をまわす方が達成感がある&バグラティ大聖堂からの眺めは午後遅い時間の方が美しいと思うので、本記事内ではバグラティ大聖堂をゴール地点としています。
文化が香る旧カトリック教徒居住地:フレンチ・クオーター
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「裏クタイシカルチャーさんぽ」のスタート地点となるのが、市内中心部ど真ん中にあるコルキスの噴水(Colchis Fountain)。【マップ 青①】
こちらはクタイシ観光の定番中の定番といったスポット。
多くの旅行者はコルキスの噴水から西に位置する旧市街方面へと向かいますが、今回は北方向に向かって歩いていきます。
コルキスの噴水周辺はリノベーションされた建物がずらりと並びますが、北方向へ歩くこと5分ほどで、周囲の町並みは昔ながらの住宅街へと変貌します。
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この辺り一帯が「フレンチ・クオーター」(=フランス風地区)と呼ばれるエリア。
建物がフランス風なわけでも、フランス人が住んでいたわけでもありません。
かつてこのエリアにはジョージア人カトリック教徒が多く居住しており、「カトリック=フランス」という先入観からそう呼ばれていたのだそうです。(あとは「フランス=お洒落」みたいな感覚もあったのかも)
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フレンチ・クオーターのど真ん中に堂々とそびえるのが、聖母受胎告知寺院(Kutaisi Holy Annunciation temple)。【マップ 青②】▼
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一見しただけでジョージア正教会の建築とはまったく異なることが分かりますが、それもそのはず。
こちらは1862年にカトリック教会として建設されたもので、近隣のカトリック教徒住民の信仰の場として機能してきたのです。
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優雅なアーチ式の装飾が施された入口を抜けて中に入ると、一面のパステルブルーの世界に驚きます。
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周囲の壁も、天井のドーム部分も、すべてが淡い青色。
建設当時から内部の壁はこの色で塗られていたそうで、百年以上の時を経て色褪せているのも味わいがあります。
ジョージア正教会では、教会内部の壁にフレスコ画を施すことはあっても、淡色で塗ることはありません。
この場所が、同じキリスト教とはいえ異なる教義を持つ宗派の祈りの場であったことを感じさせられます。
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建設当初こそカトリック教会として機能していた聖母受胎告知寺院ですが、クタイシのカトリック教徒人口の減少とともに、いつしかジョージア正教会として機能するように。
現在は、「外観や内装はカトリック教会 / 宗教画や機能面は正教会」というちぐはぐな状態となっています。
聖母受胎告知寺院から、再びフレンチ・クオーターを進んでいくと、今度は「THE・ジョージア正教会の建物」が姿を現します。▼
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こちらが、聖ギオルギ教会(St. Giorgi Church)。【マップ 青③】
フレンチ・クオーターの最果てにたたずんでおり、白亜の外壁が素敵です。
現在でこそジョージア正教会として機能している場所ですが、もともとはアルメニア使徒教会の祈りの場として建設されたものです。(アルメニア使徒教会はジョージアの正教会とは異なる宗派)
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教会の名前にもなっている「聖ギオルギ」とは、ジョージアでは知らぬ者はいない聖人のことです。
「馬に乗ってドラゴンを退治した」という伝説が語り継がれており、彼の名を冠した宗教建築物はジョージア全国どこにでも見られえうほど。
それほどに、この国の人々にとっては篤い信仰の対象となっている存在です。
聖ギオルギ教会のすぐ目の前には、フレンチ・クオーターの中でも最も美しい建物があるのでお見逃しなく。
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石造りの重厚な建物の二階部分には、パステルグリーンに塗られた木製テラスが。
細やかなアーチ部分の装飾がとても美しいです。
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なんとももったいないことに、現在は空き家となっているよう。
こういった昔ながらの建築をちゃんと、ありのままに保存すれば、変にキラキラ建造物を作らなくても観光客はやって来るのに…と口惜しく思ってしまいます。
(この国の人はそういう点をわかってないのか、変にリノベーションされ原型を留めていないキラキラ旧市街なんかを作りがち)
現代に残るユダヤ教徒居住地:ジューイッシュ・クオーター
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フレンチ・クオーターのすぐ南に広がるのが、ジューイッシュ・クオーター(=「ユダヤ教徒地区」)と呼ばれるエリア。
その名の通り、かつてはユダヤ教徒が多く居住していた地区で、最盛期のユダヤ教徒人口は2万5千人にも上ったのだそうです。
しかし、1960年代に高まったシオニズム運動(ユダヤ人による国家(=イスラエル)を建設しようとする機運)によって、ジョージアのユダヤ教徒コミュニティーの様相は一変。
クタイシのユダヤ教徒のほとんどはイスラエルをはじめとする国外に移住してしまい、現在残るのはたったの130人ほどだそうです。
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ジューイッシュ・クオーターの町並みは、どこまでも果てしなくボロボロなレトロなもの。
「1970年代を最後に手入れされていないのでは…?」と思ってしまうほどに、傷みが激しい建物も多いです。
この古き良き雰囲気のエリアの中心に建つのが、クタイシ・シナゴーグ(Kutaisi Synagogue)【マップ 青④】▼
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シナゴーグとは、ユダヤ教の礼拝所のこと。
クタイシのシナゴーグは1886年の建造で、ジョージアでは珍しく、現役で機能しているものの一つです。
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実はここクタイシは、かつてジョージアで最大のユダヤ教徒コミュニティーが存在していた町。
その起源は紀元前6世紀(2700年前)にまで遡り、バビロン捕囚から逃れてこの地に定住したユダヤ教徒たちは「グルジム」と呼ばれています。
商業や計算に優れていたユダヤ人たちは、そのコミュニティーの大きさと密さを活かしながら、大きな存在感を示していたそうです。
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シナゴーグ敷地のすぐ外のベンチには、ボリス・ガポノヴ(Boris Gaponov)というクタイシ出身のユダヤ人住民の銅像も。
中世ジョージアの詩人・ショタ・ルスタヴェリの作品をヘブライ語に訳した人物として、現在でも大きく評価されています。
ゲートをくぐり、白亜に輝くシナゴーグの内部に入ってみましょう。
扉を開けた先に広がっていたのは、豪華絢爛でカラフルな異世界でした。▼
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内部には係の人(?)がおり、「シャローム」とヘブライ語で挨拶されます。
それと同時に、「見学するなら寄付金2GELを払うように」とのこと。
なんともちゃっかりしているではないですか…(別に寄付が強制なのは良いのだけれど、開口一番にお金のことを言われると「がめついな…」と思ってしまう)
内部の華麗な雰囲気も、書かれた文字も、話される言語も、いきなり寄付を要求される感じも…
もはやこの空間だけジョージアではないかのようです。
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淡い色味に統一されたシナゴーグ内部は、まるで夢の世界のように幻想的。
信仰は異なれど、この場所にただよう神秘的な雰囲気に圧倒されました。
シナゴーグ見学後は、ジューイッシュ・クオーターのレトロな町並みを東に向かって歩いて行きましょう
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現在のジューイッシュ・クオーターはジョージア正教徒住民が多数派となっているそうですが、クタイシに130人残ったユダヤ教徒のほとんどは現在でもこの地区で暮らしているそう。
空き家となって放置された状態の建物も目立ち、地区から人口が減少していることが見て取れます。
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ジューイッシュ・クオーターの果てまで来ると、次の目的地であるパンテオンとムツヴァネクヴァヴィラ寺院が建つ小高い丘が見えてきます。
クタイシの町を一望する絶景:パンテオンの丘
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ジューイッシュ・クオーターの東側には、緑の木々に覆われた小高い丘があります。
あれが、パンテオンと呼ばれる場所。
地区のメインストリートから裏道に入り、坂道を少し上ったところに入口があります。▼
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1956年に完成したパンテオンは、ジョージアで名を馳せた作家や著名な人物が眠る墓地。
数百にも及ぶ墓石がずらりと並ぶ光景が圧巻です。
パンテオンの敷地内にどーんと構えるのが、名物のツタの塔。【マップ 青⑤】▼
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パンテオンが造成される以前からこの場所に建っていた石塔が、自然とツタに覆われて現在の姿になったのだそう。
緑のガウンを羽織っている途中の姿にも見え、クタイシっ子の間では「映えスポット」としても話題なのだそうです。
パンテオンの敷地の少し奥には、重厚で美しいフォルムの教会がたたずんでいます。▼
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こちらが、ムツヴァネクヴァヴィラ寺院(Mtsvanekvavila temple)。【マップ 青⑥】
ジョージア語で「緑の花」を意味する名を冠し、ひょろりと背の高い四本の木々とのコントラストが素敵です。
もともとこの場所には、クタイシが中世ジョージア王国の都として定められた11世紀初頭に完成した、小さな木製教会があったそう。
1913年に建物の大部分が増築され、石造りの重厚な外観を持つ現在の姿になりました。
ムツヴァネクヴァヴィラ寺院の敷地内には、小さなチャペルがあります。
このチャペルからの眺めは、クタイシ全体を見ても有数の絶景。▼
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▲ 西方向には、雄大な流れを讃えるリオニ川と、ジョージア第二の都市・クタイシの町並み、それらを見守るように凛とたたずむバグラティ大聖堂の堂々たる姿が広がります。
南方向には、これまで歩いて来たフレンチ・クオーターとジューイッシュ・クオーターの民家がずらり。▼
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視界の限りに広がるクタイシの町並みは、大都市なのにどこか昔懐かしい雰囲気でいっぱい。
文化的で情緒的な香りがぷんぷん漂っているのを感じ、はじめて来たのに懐かしく感じるような不思議な感覚になりました。
パンテオンの丘の見学を終えたら、リオニ川沿いに向かって坂道を下っていきます。
ここまで来ると、だんだんと住宅の数がまばらになってきて、クタイシの中心街から郊外に向かっていることを実感します。▼
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このあたりにはなぜかレンガ造りの民家が多いのも特徴的。
ひと昔前の地方都市を歩いているような、レトロで瀟洒な雰囲気が感じられます。
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しばらく歩いて行くと、左側にダムへと続く階段が現れます。(少し見えにくいのでお見逃しなく)
この長い階段を下ってダムを渡り、リオニ川の対岸へと歩いて行きましょう!
リオニ川を渡って対岸へ:ダム
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クタイシの町を二分するリオニ川。
中心街こそいくつもの橋で結ばれていますが、このエリアで川を渡ることができるのはダムに架かった歩道橋のみです。【マップ 青⑦】
車両の通行はできず、歩行者にのみ開放されています。
歩道橋部分の通行は自由に可能ですが、ダムの施設部分への立ち入りは禁じられているのでご注意を。
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このダムは、リオニ川の水位を調整するために造られたもの。
クタイシ市内を流れるリオニ川は水位がかなり低く、流域の岩場がむき出しになっているほどなのですが、それもこれもこのダムが上流からの水を堰き止めているからなのです。
なかなかの迫力があるダムを越えると、そこはリオニ川の右岸。
歩くこと15分ほどで、次の目的地であるクタイシ植物園に到着です。
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植物園の入場料金は、一人1GEL(=¥50)と格安。
入口は一ヶ所しかなく、ゲートのすぐ目の前にチケットブースがあります。
「ジョージアで一番小さな教会」に出会う:クタイシ植物園
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クタイシ中心街の北東に位置するクタイシ植物園(Kutaisi Botanical Garden)は、市民の憩いの場として開発されたもの。【マップ 青⑧】
しかしながら人気はイマイチ芳しくないようで人影はまばら&整備もやっつけ仕事。
そこはかとない場末感が園内全体を支配しています(こういう場所大好き)。
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クタイシ植物園の敷地は、ぐるりとまわっても30分もあれば十分なほどに小さなもの。
植物園なのに植物があまりちゃんと手入れされておらず、どうにも物寂しい雰囲気に満ち溢れていますが、この場所の最大の見どころが「ジョージアで一番小さな教会」です。▼
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「え?教会?この大木が?」と思うでしょう。(のぶよも思った)
実はこの大木、樹齢400年を誇るもの。
その幹の部分がくり抜かれ、小さな教会となっているのです。
木が燃えてしまうといけないので、蝋燭は外の燭台で灯さなければなりませんが、大木の内部は宗教画でいっぱい。
現役の祈りの場として機能しています。
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いつ、誰が、どうして、この木の中に教会を作ろうと考えたのか定かではないものの、この木に対して何か天啓のようなものがあったのかもしれません。
日本の「ご神木信仰」に似たものを感じなくもないかも…?
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名実ともに「ジョージアで一番小さな教会」は、クタイシでも知る人ぞ知るといった穴場。ジョージア全体ではまったく知られていません。
一人入るのがやっとなほどに狭い空間しかありませんが、ここでしか見られない光景という意味ではかなりユニークなスポットだと思います。(いちおう「教会」なので、映え写真とかはやめておくのが◎)
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植物園を後にしたら、あとはゴールのバグラティ大聖堂を目指して歩いて行くだけ。
この散策コース最大の難所となる急坂を歩き、小高い丘の頂上にたたずむ聖地を目指します。
ゴールはクタイシのシンボルで!:バグラティ大聖堂
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急坂を上りきったあとにどーんと目の前に現れるのが、クタイシを象徴する存在であるバグラティ大聖堂(Bagrati Cathedral)。【マップ 青⑨】
11世紀の中世ジョージア王国興隆期に建設されたもので、当時の建築技術のノウハウすべてが注ぎ込まれた傑作です。
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バグラティ大聖堂はクタイシ観光の定番として有名ですが、今回の散策コースのゴール地点としたのは、これ以上ない眺望が広がるから。
・フレンチ・クオーターにたたずむ聖母受胎告知寺院と聖ギオルギ教会
・ジューイッシュ・クオーターのシナゴーグ
・パンテオンの丘に建つムツヴァネクヴァヴィラ寺院
など、ここまで歩いてきたエリアの多くを一望することができるのです。
バグラティ大聖堂からの眺めは、午後遅い時間が最もきれい。
西日に照らされてキラキラと輝く古都の風景は、クタイシ旅行で忘れられない思い出となるはずです!
バグラティ大聖堂からは、クタイシ中心街に向かって下り坂を15分ほど歩いていくだけ。
旧市街の散策を楽しむのも良いですし、名物グルメ&ビールで腹ごしらえもおすすめです!
おわりに
クタイシの市内観光にぜひとも組み込んでもらいたい、「裏クタイシ」エリアの散策ガイドをお送りしました。
クタイシ自体が歴史や文化的な香りに満ちている町ですが、今回紹介したエリアはその真髄のような存在。
昔ながらの飾らない町並みや、絶景の数々、点在する宗教建築の荘厳さは、ジョージアに長く滞在している身からしても圧巻でした。
クタイシの滞在拠点として便利な中心街すぐそば&数時間あればのんびりとまわれる、といった手軽さも、この散策コースをおすすめする理由。
「実際に歩いてみた!」という人は、ぜひ感想をきかせてください!
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