こんにちは!ジョージア西部のアジャラ地方にのんびり滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アジャラ地方の中でも、旅行者がほとんど訪れない山間部エリアを探索している今日この頃。
滞在拠点としているフロ村の民俗博物館を訪れた際に展示されていた、この地方伝統の木造建築の模型に感動していたところ、係員のおばちゃんがこんなことを言いました。
「ああ、これはベシュミ村の家ね!」と。
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はじめは「バトゥミ」かと空耳したのですが、そうではなく「ベシュミ」という村があるんだそう。
地図で確認してみるとびっくり。
アジャラ地方の最も東側、見るからに深い山の中にある集落といった感じでした。
一度興味が湧いてしまうともう戻れないタイプなので、行ってきました。
とにかく見てください、これがベシュミ(Beshumi / ბეშუმი)です。▼
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アジャラ地方最奥部の、なだらかな山の頂上付近。標高2000m近い地点に位置するこの村に広がっていたのは、おもちゃ箱をひっくり返したかのように散らばる民家でした。
博物館で展示されていたものそのままの木造家屋の庭先で、家族みんなでのんびりと過ごす家族の姿。
アジャラの深い山々を見下ろすベシュミ村の空気は、どこまでも澄みきっていました。
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正直、何の事前知識もなく訪れたので、この桃源郷さながらの村の風景にはとにかく感動しました。
この国の色々な場所を訪れましたが、「ジョージアで最も美しい村の一つ」と呼んでも問題ないでしょう。
というわけで、今回の記事はベシュミ村の美しい風景や見どころをただひたすらにお見せするもの。
「実際に行ってみたい!」という人向けに、個人でのアクセス情報も詳細に解説しています。
時間をかけて足を運ぶ価値は間違いなくアリ!
ジョージアの知られざる桃源郷村の魅力を堪能しましょう!
ベシュミ観光マップ
青:見どころ
ベシュミ村への唯一のアクセス方法。「恐怖の山道」を延々と進む。
ベシュミ村が位置しているのは、ジョージア西部・アジャラ地方の最奥部にあたる山岳地域。
エリア内最大都市であるバトゥミから東へ120km。なんと5時間もかかる長~い道のりです。
距離のわりに移動時間が長めである最大の理由が、ベシュミ村に至る道のコンディション。 ▼
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ほんの一部だけ舗装道路が整備されているものの、99%はこんな感じの未舗装道路。
ボッコボコ&ガッタガタで土ぼこりが舞い上がる道を、延々と走らなければならないのです。
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ガードレールなどが設置されているはずもなく、ちょっと運転を誤ればぽっかりと口を開ける谷底へ真っ逆さま…
ジョージア東部のトゥシェティ地方へ至る「世界一危険な道」には及ばないものの、それでもかなりの恐怖です。
ぼっこぼこの道を、遊園地のアトラクションばりの縦揺れ&横揺れで走る、ベシュミ行きのミニバス。
ちょうど1時間ほど走った地点にあるリケティという村で、休憩をとるのが一般的なようです。
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リケティ村は、ベシュミへ向かう際に必ず通ることになる村。(というか、道路がこれ一本しかない)
道路沿いは村人たちが集まる集会所&売店のようになっており、ジョージア地方部らしいのんびりとした光景が見られます。
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もはやこんなところまで来る外国人は相当限られているようで、かなり注目を浴びます(し、話しかけられます)。
露店で売られているキュウリやブドウ果汁を固めたお菓子をくれたりと、まるでスーパースターになったかのよう…
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露店のおじさんたちいわく、「このあたりのじゃがいもはジョージアで一番美味しい!」とのこと。
話半分で聞いていたのですが、どうやら本当にアジャラ地方山間部のじゃがいもは美味しいことで有名なんだそうです。
せっかくの名物じゃがいも。お土産に買っていくのも良いかも…?(旅行者でこんなバケツいっぱいの芋を買っていく人などいないだろうけど)
高原地帯の自然美を堪能。「ベシュミ・アルピンガーデン」を散策
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ヒイヒイ言いながら耐えてきた悪路も、ベシュミ村手前8kmほどのゴデルジ峠付近からは新しく舗装された道路となり、それまでのボッコボコが嘘のように快適な乗り心地になります。
そのまま終点のベシュミ村まで乗って行っても良いのですが、のぶよ的には4kmほど手前のベシュミ・アルピンガーデンで途中下車するのがおすすめ。
近年整備された植物園のような場所で、その名の通りベシュミ周辺地域の高山植物が多く植えられていることで(ひそかに)人気を博しています。
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アルピンガーデンの入場料は、なんと無料。
そうとは思えないほどに園内は綺麗に整備されており、案内標識なども充実していました。
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ゆるやかな起伏を利用して遊歩道が敷かれた園内は、ぐるりと一周しても30分ほどで周れてしまうほどの規模。
時間が許すなら、園内にいくつか点在するピクニックエリアでお弁当にするのも良いでしょう、
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アルピンガーデン内には、もともと自生していた高山植物に加え、多種多様な植物が植えられています。
しかし8月半ばという時期は、高山植物鑑賞にはやや遅かったよう。
一面のお花畑こそ見られませんでしたが、ちらほらと美しい花々が見られました。
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花畑やアルピンレイク、ミネラルウォーターの湧く泉など、園内にはいくつかの見どころがあるのですが、散策ハイライトとなるのがこちらのビューポイント。 ▼
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ベシュミ村周辺の素朴な村の風景を、木々の間から一望することができます。
辺りには人の姿はなく、時折鳥の鳴き声が聞こえて来るだけ…
アジャラ地方山間部の手つかずの自然と澄みきった空気を堪能します。
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アルピンガーデンの見学を終えたら、観光ハイライトとなるベシュミ村までは4kmほどの道のり。
ゆるやかな坂道に舗装道路が敷かれている一本道で、徒歩で移動しても1時間もかからないくらいです。
この4kmほどの区間ですが、絶対に自分の足で歩くのがおすすめ。
視界がひらけてベシュミ村の遠景が目に入ったときの感動は言葉になりませんし、ベシュミの村はずれ(中心部よりもさらに美しい)の風景を眺めながら歩けるためです。
観光のハイライト。「ベシュミ村」の風景に息を呑む
ベシュミの村はずれ
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アルピンガーデンから舗装道路に沿って歩くこと20分ほど。
それまでの木々に囲まれた風景が急にひらけ、木造の家々が丘の斜面に点在する風景が目の前に現れます。
これがベシュミ村の村はずれ。
絵に描いたような風景が視界いっぱいに広がっていることに、言葉にならない感動を覚えます。
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中心部に向かって歩いて行くにつれ、村の人々の姿もちらほらと見えるようになってきました。
やたらと子供の姿が多く見られ、「こんな山奥にこんなに子供がいるなんて…?」と不思議に思いましたが、そこにはちゃんと理由がありました(後述)。
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ベシュミ村の家々は、全木造が2割 / 半木造が4割 / その他プレハブ造りが4割といった感じ。
全木造の家は思っていたほど多くはありませんが、ちゃんと残っていますし、人の姿も見られます。
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ベシュミ村は、どこもかしこも美しい風景が見られる絶景ポイントだらけ。
なだらかな丘にひらけているため、どこを切り取っても絵になりますが、特にこの村はずれエリアは「見るもの全部が桃源郷」とキラキラ感ただよう表現を使っても言い過ぎではないはず…!
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歩を進めていくにつれだんだんと民家の数が増えていき、「村の中心」らしい雰囲気になっていきます。
夏限定の村?ベシュミの人々の独特なライフスタイル
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年間を通して湿度が高い気候のアジャラ地方山間部では、風通しが良く食料の保存がしやすいことから、伝統的に木造建築が好まれてきました。
現在でもアジャラ地方の山村には多くの木造建築が残るのですが、それらの村の標高はせいぜい500m~900m。
冬になれば雪が積もることこそあれど、「極寒」というほどの気候にはならないものです。
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しかしここベシュミ村の標高は、1900mほど。
同じアジャラ地方とはいっても、標高が低い村とは気候条件が比べ物にならないほど厳しいですし、すぐ近くにスキーリゾートがあるくらいの豪雪地帯です。
ではいったい、ベシュミ村の人々は断熱性に乏しい木造家屋でどうやって冬を越しているのでしょうか。
答えは単純明快。ここで冬を越さないのです。
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ベシュミ村に残る木造の伝統家屋は「ヤルヤ」(yalya)と呼ばれるもので、この地域独自の文化に根差したもの。
夏場の数ヶ月間を過ごすための「サマーハウス」のような存在なのです。
6月に入って沿岸部の気温がぐんぐんと上がって夏めいてくると、ヤルヤの出番。
アジャラの人々は家族みんなで続々と街を後にして、涼しく新鮮な空気に満ちた山間部で残りの夏をのんびりと過ごすのです。
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ベシュミ村でやたらと子供の姿を見かけたのも、家族みんなでヤルヤに長期滞在しているから。
日本で言う「お盆の里帰り」の超絶長いバージョンのような感じだと理解するのが良いかもしれませんね。
ベシュミ村中心部
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ベシュミ村の中心部に向かって歩いていくにつれ、徐々に民家の数が増えていくことに気がつきます。
庭を畑として利用している民家も数軒あり、年間を通してこの村に住む人も多少はいるのかもしれません。
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中心部まであと1kmほど。「周囲360°すべて桃源郷さながら!」という地点で感動に包まれていると、「パコッ パコッ」という音と共に颯爽と現れたのは、馬に乗った少年たちでした。
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彼らがこの村に住んでいるのか、それとも夏場だけヤルヤで滞在しているのかはわかりませんが(言葉が通じなかった)、当たり前のように馬を操る姿は、映画のワンシーンのようでした。
ようやく到着したベシュミ村の中心部は、それまでの村はずれの「散村」といった風景に比べ、民家が密集しているのが特徴的。
思った以上に民家の数が多く、結構栄えている村のような印象を受けます。(先述の通り、冬はほぼ無人になるのだろうけど)
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ベシュミ中心部は、ここまで歩いてきた村はずれ地区に比べると人の数がやや多く、活気が感じられます。
人々がこんな山奥まではるばるやって来た謎外国人を放っておくはずもなく、際限なく話しかけられます(笑)
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村の中でも少々低い場所に位置しており、民家が密集しているベシュミ村中心部。
村はずれ地区の広大なジオラマのような風景とはひと味異なった風景が広がります。
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フロ / バトゥミ方面のミニバスが発着するバス停付近にはいくつか商店があったので、ちょっとした買い物にも困らなそう(価格は山価格なのだろうけど)。
ベシュミ村には、伝統のヤルヤを改築したコテージ一棟貸切タイプの宿が数軒あるのもポイント。(逆に、普通のゲストハウスやホテル等はない)
せっかくこんな山奥まで苦労してやって来たわけなので、宿泊して桃源郷村の魅力をさらに深く感じるのも良いと思います!
ベシュミへのアクセス・行き方
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ベシュミ村が位置するのは、アジャラ地方の最果ての山の中。
この地へ至る道は一本しかなく、当然アクセス方法も限られてきます。
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ベシュミ村へのアクセス拠点となる町には、以下の3通りがあります。
日帰りで観光するのであれば、③フロを拠点としてのアクセスが無難。
ベシュミ村に宿泊する場合は、①バトゥミか②アハルツィヘを拠点としてのアクセスもできます。
①バトゥミ~ベシュミ
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アジャラ地方最大都市であるバトゥミ~ベシュミ間は、夏季のみ1日2本の直行ミニバスが走っています。
・バトゥミ発:7:00, 15:00
・ベシュミ発:8:00, 15:00
ベシュミ行きのマルシュルートカが出発するのは、バトゥミ旧市街近くの「オールド・バスステーション」の敷地内北側。
“Mayakovsky 通り”に面した一角からです。(その辺の人に尋ねれば一発でわかるはず)
バトゥミから直行の交通手段があると聞くと、日帰りも余裕でできそうな気がしますが、正直やめておくのが良いと思います。
・片道5時間ほどかかる
・ベシュミ村手前の2時間はかなりの悪路
・現地での観光時間が2時間少々ほどしかとれない
…と、何のメリットもありません。
ベシュミ村やその周辺に宿泊する場合のみ、バトゥミから直行でのアクセスを考えるのがおすすめです。
②アハルツィヘ方面~ベシュミ
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アジャラ地方の東側にあるサムツヘ=ジャワヘティ地方の中心都市・アハルツィヘ(Akhaltsikhe)は、ベシュミ村から距離にして50kmほどの場所に位置しています。
アハルツィヘをはじめ、アディゲニ(Adigeni)などの町~フロ間を結ぶミニバスを途中下車して、ベシュミ村へアクセスすることも不可能ではありません。
・バトゥミ(8:00頃発)~フロ(10:30頃発)~アハルツィヘ(14:00頃着):1日1本
・フロ(11:00発)~アハルツィヘ(14:30発)~ニノツミンダ(17:00発)~ツァルカ(19:00着):1日1本
・フロ(11:30発)~アディゲニ(14:00着):1日1本
しかしながら、フロ~アハルツィヘ間は未舗装の山道が続く区間で、かなりの悪路であることで有名。
さらに、この路線のミニバスはベシュミ村まで行かず、その手前7kmほどのゴデルジ峠付近で途中下車→ベシュミまで徒歩という行程になってしまいます。▼
このように、いちおうアハルツィヘ方面から/へのミニバスでのアクセスも可能ではありますが、長時間&悪路なので上級者向け。
日帰り往復などとんでもありません…
③フロ~ベシュミ
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というわけで、ベシュミへ日帰り往復&観光したいならフロ(Khulo / ხულო)を拠点としてのアクセスが便利。
フロはアジャラ地方山間部の中心地的な存在の村で、食堂や商店、ATMにホステルなど、旅行者に必要な施設がひと通り揃っていることもおすすめする理由です。
フロ~ベシュミ間は、夏季限定で1日2本~3本のミニバスが往復しています。
・フロ発:10:00*, 11:00, 12:00
・ベシュミ発:9:00, 14:00*, 16:00
*がついた便は、日によって運行されないことがあるようなので注意。
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ベシュミ行きのミニバスが発着するのは、フロ中心部の広場。
周辺の小さな村へのミニバスがひしめき合っているので、その辺の人に尋ねて教えてもらいましょう。
のぶよの場合は、フロ発11:00→ベシュミ着13:15 / ベシュミ発16:00→フロ着18:15といったスケジュールで日帰りしました。
ベシュミ滞在時間は約3時間ほどでしたが、本記事で紹介している場所はすべてゆっくりとまわれましたし、逆に時間を持て余すこともなく、ぴったりの滞在時間だったと感じました。
おわりに
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アジャラ地方最奥部まで足をのばした人しか見られない、ベシュミ村の美しい風景。
正直、どうしてこんなに素晴らしい場所がまったく知られていないのか謎でしかありませんが、とにかく行って良かったと思います。
交通の便は不便で、日程に余裕がある人向きの場所ではありますが、わざわざ訪れる価値は十分にあり。
風景が最も美しく見られる晴れた日を狙って、桃源郷へと迷い込んでみては?
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