こんにちは!2025年のジョージア旅もまもなくフィナーレ、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア北西部に位置するサメグレロ地方は、黒海からの暖かく湿った空気に育まれた亜熱帯気候のエリア。
南隣のグリア地方やアジャラ地方とともに「黒海沿岸エリア」を構成しており、トビリシなどジョージア東部とは大きく異なる地形や植生が独特です。

そんなサメグレロ地方は、ジョージアの中ではかなり地味なエリアの一つ。
有名な観光スポットが多くなく、アクセス的にも少し不便であるためなのか、この地域をがっつりと旅する人はあまり多くありません。
ジョージア全国津々浦々を色々と周りまくりあげたのぶよ的にも、サメグレロ地方は「観光」という意味では確かにちょっと地味な印象…
しかし!このエリアの魅力は、単に見どころを順番に周るだけでは味わえません。
サメグレロ地方を訪問するべき最大の理由の一つであり、この地域の独自性を形作っているもの。
それが、サメグレロ料理の存在です。

「サメグレロ」は、ジョージア語で「メグレル人の土地」という意味。
その名の通り、サメグレロ地方の人口は民族的にジョージア人とは少し異なるメグレル人で構成されており、言語やライフスタイル、そして食文化に至るまで独自の伝統を守り抜いているのです。
このメグレル人の文化を味わうことこそが、サメグレロ地方を訪問する最大の楽しみ。
中でも「メグレル料理」(=サメグレロ料理)と称されるサメグレロ地方独自の郷土料理の数々は、一般的なジョージア料理とはあらゆる面において異なり、この地域の食文化が反映された唯一無二のものとなっています。


ジョージアの他エリアとは大きく異なる食文化を誇るサメグレロ地方。
トビリシをはじめとするジョージア他エリアではまず名前すら耳にすることがない絶品料理の数々は、スパイシーな味つけと独特の食材の組み合わせで旅行者を魅了します。
…と、つらつらと書いてきましたが、こう感じる人もいるのでは。
「ジョージアって小さな国だし、正直そんなに地域ごとの料理の違いなんてないのでは?」と…
こうした夢のない人や、トビリシだけをジョージアだと思っている人、馬鹿の一つ覚えのようにシュクメルリシュクメルリ言っている浅はかな人にこそ、実際にサメグレロ地方に来てもらって、自分の舌で違いを理解してほしいもの。
サメグレロ、食に関して本当に色々と独特でものすごいです(結構ついていけないレベルで独特)。

そんなわけで今回の記事は、サメグレロ地方の食文化と、現地で絶対に食べたい郷土料理の数々を紹介するもの。
日本ではまず知られていないものばかりですが、どれも現地では「サメグレロに来たならこれ!」といった定番料理となっています。
グルメ目的でこの地を訪れるジョージア人国内旅行者も多いほどに、サメグレロ地方はジョージアで名の知られたグルメエリア。
亜熱帯気候のむんわりした空気の中で食べる、エキゾチックで激辛の料理の数々は、サメグレロ地方の旅の思い出を彩ってくれるはずです!
サメグレロ地方の食文化の特徴
まずはサメグレロ地方の食文化について少し詳しくみていきましょう。
ジョージア他エリアの人は口を揃えて「サメグレロはとにかく味つけがスパイシーで辛い!」と言うように、サメグレロと言えば激辛料理。
しかしそれだけではなく、温暖な気候に育まれた素材をふんだんに使用した料理の数々には、この地域独自の食文化が感じられます。
サメグレロ地方の食文化の特徴①:激辛文化を支える調味料「アジカ」

サメグレロ地方の料理は、赤や緑の唐辛子を乾燥させて粉末状にしたものを大量に使用するのが特徴的。
サメグレロの人々の唐辛子好きは煮込み料理や肉の下味の付け方に強く表れており、サメグレロ=激辛というイメージの要因となっています。
そんなサメグレロ地方の激辛文化を象徴しているのが、アジカ(Ajika / აჯიკა)と呼ばれる独自の調味料。
乾燥させる前の唐辛子を各種スパイスやハーブ、生のニンニクなどと合わせて練り上げたものです。

現在でこそジョージア全土に広がったアジカは、大型スーパーでも市販のものを手軽に購入できるほどにポピュラーになりました。
しかしながら本場サメグレロ地方のアジカは、市販のものとは別次元の辛さ。
ただ辛いだけではなく、スパイスの複合的な香りや旨味が強く感じられ、食材の旨味を引き立ててくれます。

アジカは緑色をしたものと赤いものの二種類に大きく分けられますが、より辛味が強いのは緑色のアジカ。
口に入れた瞬間にぶわあ~っと湧き上がってくる辛味は、かなりエクストリームながらもクセになる味わいです。
サメグレロの人々のアジカ愛は尋常なものではなく、煮込み料理の味付けに多用されるのはもちろん、なんとパンに直接アジカを塗って食べるのも定番なのだそう(やばすぎ)。
生のアジカは日持ちしにくいのが難点ですが、乾燥させた「ドライ・アジカ」(「メグルリ塩」とも呼ばれる)であればお土産にも良さそうです。▼

どうしてサメグレロ地方でのみこうした激辛文化が発達したのか…諸説あるものの、有力なのは「マラリヤ感染を予防するため」というものです。
温暖な気候のサメグレロ地方では、かつて蚊を媒介とする病気であるマラリヤが流行したそう。
その際に「辛いものをたくさん食べれば蚊に刺されにくくなりマラリヤ感染を防げる」という噂が広まり、あらゆる料理を辛く味つけするようになった…というものです。
辛い食べ物がマラリヤ予防になるのかどうかの真偽は不明ながらも、温暖な気候のサメグレロ地方ならではのエピソードだと言えます。
サメグレロ地方の食文化の特徴②:主食はパンよりもとうもろこし?

サメグレロ地方の食文化の特徴と言えば、とうもろこし粉を使用した料理の多様さ。
ジョージア西部地域全体でよく食されるとうもろこし粉料理ですが、サメグレロ地方はその中でもトップクラスのバリエーションの豊かさを誇ります。
サメグレロ地方でのとうもろこし粉というのは、小麦粉同様に水で溶いて練り上げるもの。
ゴミやエラルジといった定番のサメグレロ料理はもちろん、ムチャディのようにとうもろこし粉の生地を油で揚げたものもよく食されます。


サメグレロ地方でのとうもろこし粉料理は、準主食のような扱い。
ジョージアといえばパンが主食の国ではあり、他地域ではとうもろこし粉料理を食べる機会はそれほど多くないのですが、サメグレロ地方では日々の食卓で当たり前にとうもろこし粉料理が食されています。
とうもろこし粉料理は基本的に、サメグレロ風ハルチョーなどくるみを用いた料理とセットで食べるのが定番。
もしくは、「バジェ」というくるみソースをかけたとうもろこし粉料理を食べてからメイン料理に移るという流れもポピュラーなのだそうです。
サメグレロ地方の食文化の特徴③:スルグニチーズ王国

「サメグレロ地方と言えばこれ!」と誰もが誇らしげに言う食材が、スルグニ(Sulguni / სულგუნი)。
スルグニとはサメグレロ地方発祥のチーズのことで、現在はジョージア全国的にポピュラーになりました。
お隣のイメレティ地方発祥のチーズであるイメルリと並び、ジョージア二大チーズとして名を馳せるスルグニ。
モッツァレラのようなふんわり&ぶにんとした口当たりが最大の特徴で、豊醇な風味を存分に感じることができます。

サメグレロ地方の人はとにかくこのスルグニチーズが大好き。
名物のメグルリ・ハチャプリには生地の中にチーズを入れるだけでは飽き足らず、ハチャプリの上にもスルグニをのせてしまうくらいなので…スルグニ愛がひしひしと伝わってきます。

ジョージア他地域で売られるスルグニは、保存を効かせるためにたっぷりの塩を入れた状態のものが多いですが、本場サメグレロ地方では塩気が薄く日持ちしない「アハリ・スルグニ」が食べられるのもポイント。
郷土料理のゲブジャリアに使用されるのがこのアハリ・スルグニで、もってり&ふんわりした食感と乳製品本来の芳醇さは昇天級の美味しさです!
サメグレロ地方の食文化の特徴④:くるみ多用の濃厚な味わいなのに、薄味の不思議

もう一つ、サメグレロ料理に欠かせない食材がくるみ。
ジョージア西部地域発祥のプハリはサメグレロでもポピュラーですし、たっぷりのくるみを用いたサメグレロ風ロビオやサメグレロ風ハルチョーなど、多くの料理にくるみが用いられます。


くるみをたっぷりと使用した濃厚な味わいが好まれるサメグレロ地方では、調理に使用される油の量もやや多め。
激辛文化も相まって、使用されるスパイスの量もとても多く、こってりとした重厚で油っこい味わいはお隣イメレティ地方の料理に通ずる部分があります。
いっぽうで、イメレティ料理とは異なり、サメグレロ地方の料理は塩気が概して薄めなのがポイント。
このあたりは同じ黒海沿岸地域のグリア地方やアジャラ地方の食文化との共通性が感じられます。
「こってりしていて油がっつり&辛味が全面に出ているのに、意外と飽きずにさっぱりと食べられる」という、なんとも不思議なサメグレロ料理の世界。
塩気を薄めにしてスパイスとくるみの味で勝負するという概念こそが、激辛王国の食文化のポイントなのかもしれません。
サメグレロ地方の食文化の特徴⑤:トビリシで味わうサメグレロ料理

すでにサメグレロ料理の世界へ片足を突っ込みつつあるみなさん…ようこそ。
せっかくなら独特な料理の数々をぜひとも現地で味わってほしいところですが、サメグレロ地方はトビリシなどジョージア東部エリアの正反対に位置しており、なかなかアクセスしづらいのかネックかもしれません。
でも大丈夫。トビリシにはサメグレロ地方の郷土料理を提供するレストランが数軒あり、中には激安価格の食堂も。
それが、トビリシで知らぬ者はいない伝説のローカル食堂・マプシャリアです。


マプシャリアといえば、トビリシ最安値で食事できることで日本人旅行者の間でも超有名な店(というか、のぶよが記事にして有名にしたんだけど)。
ジョージア料理の基本がある程度揃ったメニューですが、中には本記事内で紹介しているサメグレロの郷土料理もいくつかひっそりとラインナップされており、激安価格でジョージア西部の味が楽しめるのです。

マプシャリアの味は全体的にかなり大味で、サメグレロ料理もトビリシナイズドされて辛さ控えめなものが目立ちますが、入門編としてはアリ(とにかく安いし)。
実はマプシャリアのおばあちゃん(いつもレジでどっしり座ってる愛想の良いあの人)はサメグレロ地方出身だそうで、故郷の味を格安価格で提供してくれているのです。
サメグレロ地方の郷土料理・名物グルメ20品
①サメグレロ風ハルチョー

「サメグレロ地方ならではの郷土料理」というトピックでおそらくまず最初に名前が挙がる一品が、サメグレロ風ハルチョー(Megruli Kharcho / მეგრული ხარჩო)。
赤みがかった黄金色の煮汁が特徴的で、サメグレロ地方のある程度の価格帯の店であれば必ず置かれている定番料理です。
「ハルチョー」と言えば、ジョージア全国でポピュラーな牛肉のスープのこと。
基本的には牛肉を煮込んだブイヨンをベースに、玉ねぎなどの香味野菜や少量のお米が入ります。
ハルチョーは地域差・家庭差がとても大きな料理で、味付けや具材などは大きく変化しますが、サメグレロ風はおそらく最も独特。
ベースには牛肉のブイヨンに加えて大量のくるみペーストが用いられ、濃厚な口当たりはスープ料理というよりもソースのような質感です。


サメグレロ風ハルチョーには野菜やお米が入ることはなく、牛肉とくるみ、みじん切りにされた玉ねぎが基本の具材。
味つけにはアジカが用いられるため、かなり辛めの味わいとなるのもサメグレロ地方らしい点です。
材料費が高めであることと調理に時間がかかることから、サメグレロ風ハルチョーは普段から食べる料理というよりも、特別な機会に食べるものといった位置付け。
付け合わせはパンではなく、とうもろこし粉を用いたゴミやエラルジが定番です。
②サメグレロ風スープハルチョー

ジョージア他地域で「ハルチョー」とされる牛肉のスープ料理ですが、サメグレロ地方では二種類のハルチョーが存在し、それぞれ明確に区別されます。
一つはすでに上で紹介した、くるみベースのサメグレロ風ハルチョー。
そしてもう一つが、こちらのサメグレロ風スープハルチョー(Megruli Supkharcho / მეგრული სუპხარჩო)です。
このスープハルチョーにはくるみはいっさい入らず、シャバシャバとしたスープの質感はジョージア全国で一般的なハルチョーに近いスタイル。
最大の特徴は、スープの表面を覆う油の膜と驚くほどに辛い味つけです。

スープハルチョーの具は、ごろごろの牛肉をメインに、煮込まれてどろどろに溶けた玉ねぎやハーブ類。
ハーブを仕上げにのせるのではなく他の具材とともに煮込む点も独特で、ジョージア他地域ではポピュラーな具材であるお米は入らないことが多いです。
油に染み出した牛肉の旨味とがつんと来る辛さは、サメグレロ地方の食堂で愛される庶民的な味わい。
体の芯から温まるコク深い味わいを堪能しましょう。
③メグルリ・ハチャプリ

サメグレロ地方のチーズ大好き文化の象徴が、メグルリ・ハチャプリ(Megruli Khachapuri / მეგრული ხაჭაპური)。
「ハチャプリ」とは、ご存知ジョージアを代表するチーズ入りのパン料理の総称で、地域ごとにバリエーションが豊富。
メグルリ=サメグレロ地方風のハチャプリは生地の中にスルグニチーズを挟み、さらに生地の上にもスルグニチーズをのせて焼き上げたもので、いわば「Wチーズハチャプリ」のような存在です。

メグルリ・ハチャプリの味わいは、使用されるスルグニチーズの質によって様々。
美味しい店のものは塩気が控えめのアハリ・スルグニが使用されるため、かなりあっさりと食べることができます(それでもかなり胃に重たいけど)。
全てのハチャプリ全てに言えることですが、とにかく焼きたてが至極。
とろ~りとろけるチーズの芳醇さと小麦の香ばしい風味は、冷めたハチャプリでは到底味わえません。
ベーカリーなどで売られている作り置きの安いものではなく、一度はちゃんとした店の焼きたてメグルリ・ハチャプリを食してみることを強くおすすめします!
④ゴミ

とうもろこし粉大好きなサメグレロ地方の人々にとっての心の味と言える一品が、ゴミ(Ghomi / ღომი)。
日本人的には何とも言えないネーミング&どろっとした純白の物体という謎の見た目から、敬遠されてしまいがちな料理かもしれません。
ゴミの正体は、とうもろこし粉にお湯を混ぜて炊き上げたポレンタのような主食。
日本で白米を炊く際と同様に、ゴミの調理には塩などの調味料は一切使用されず、果てしない無味&でろりんとした掴みどころのない食感は好みが分かれるかもしれません(のぶよは苦手)。

そんなわけで、ゴミは単体で食べるものではなく、他の料理と合わせて食べるもの。
サメグレロ風ハルチョーなど、くるみベースの料理との相性が良いとされています。
サメグレロ地方では器の底にスルグニチーズを敷き、その上に炊きたて熱々のゴミをかけたものが前菜として提供されるのもポピュラー。
冷めてしまう前に全体をかき混ぜて、スピード全開でゴミを食すのです。

また、クリスマスやイースターなどキリスト教の祝日の食卓でもゴミは定番。
サメグレロ地方ではこうした祝日にくるみベースの料理を食べる伝統があるため、くるみとの相性が良いゴミは欠かせないものとなっています。
⑤エラルジ

ゴミのちょっと豪華なバージョンと言えるのが、エラルジ(Elarji / ელარჯი)。
とうもろこし粉に水を加えて炊き上げるのは同じですが、炊き上がる直前に大量のスルグニチーズを混ぜて練り上げるのが特徴的です。
でろりんとした食感のゴミに対して、エラルジはチーズののび~る感が最大の特徴。
チーズがたっぷりと加わったおかげで風味も良くなっており、食感もでろりんではなくもってり&ねっとりしたものに進化(?)していて、個人的には完全にゴミよりもエラルジ派です。


エラルジもゴミと同様に単体で食すものではなく、サメグレロ風ハルチョーなどくるみ系料理と合わせて食べられるもの。
とうもろこし粉の香ばしい風味とチーズの味わい、辛旨なくるみ料理のコクが口の中で見事に混ざり合い、想像以上に抜群のコンビネーションです。
⑥サメグレロ風オーストリ

ジョージア全国で定番の牛肉トマトシチューであるオーストリ(Ostri / ოსტრ)も、サメグレロ地方スタイルは激辛。
オーストリ自体がそもそもスパイスを多く用いるピリ辛な味わいが特徴的なのですが、サメグレロ風はピリ辛ではなく激辛という表現がぴったりです。


オーストリは牛肉を油で炒めずに直接煮込んで調理されるため、サメグレロ地方の煮込み系料理の中では油っこさは控えめ。
とろとろ食感の牛肉の旨味とトマトの甘味、各種スパイスの複合的な風味が唐辛子の辛味でキュッとまとめられたような味わいで、料理としての完成度がかなり高い一品です。
⑦サメグレロ風チャシュシュリ

ジョージアの中部~西部にかけてポピュラーな煮込み料理・チャシュシュリ(Chashushuri / ჩაშუშული)は、サメグレロ地方の家庭でもよく食べられる定番料理。
仔牛肉が使用されるのが基本で、とろとろの肉の食感と煮汁な溶け出した旨味がとても美味しいです。
ジョージア、特にトビリシなど東部地域では、チャシュシュリとオーストリは混同されがちですが、西部ではこれら二つの料理は明確に区別されます。
牛肉をトマトと一緒に「煮込む」調理法のオーストリに対し、チャシュシュリは最初に仔牛肉と玉ねぎを油で「揚げ焼き」にしてから水を加えて煮込むのです。
そのため、チャシュシュリはオーストリに比べて油っこさが強く、油のおかげで旨味もさらに強いのが特徴的。
オーストリにはトマトが必須ですが、チャシュシュリでは使用されてもごく少量で、中には全くトマトの入らないバージョンも存在します。

ジョージア西部地域で広く食されるチャシュシュリですが、サメグレロ風はもちろん激辛な味つけ。
最初に仔牛肉を揚げ焼きにする際にたっぷりのスパイスを加えるため、ふんわりと鼻に抜けるスパイスの風味が食欲をそそります。
またサメグレロ地方では、激辛のチャシュシュリにハチャプリをディップして食すのも定番。
のぶよが宿泊した宿ではチャシュシュリにスプーンが付いてこず、宿のおばちゃんに「なんでスプーン要るの?ハチャプリをひたして食べないの?」と変な人を見る目で見られるという経験をしました(笑)
⑧サメグレロ風ロビオ

ジョージア全国どこでも安く食べられてお腹いっぱいになる庶民の味方が、ロビオ(Lobio / ლობიო)。
豆のスパイス煮込みのことを指し、ジョージア西部のラチャ地方やイメレティ地方が発祥だと言われる料理です。
ロビオは地域差が大きい料理で、ラチャ風ロビオは豚の脂身を溶かしたり、イメレティ風ロビオはたっぷりの油を加えて漬物と一緒に食べたりするのが定番。
サメグレロ地方ではくるみのペーストとともに豆を煮込むのが特徴的で、ロビオ界の中でも濃厚さは断トツとなっています。


くるみベースという時点で独特なサメグレロ風ロビオですが、唐辛子がたっぷり入っていてかなり辛めな味つけなのもポイント。
ロビオにはスパイスを用いはするものの、唐辛子で辛くするというのはジョージア他地域ではまずありえないことなので、知らずに食べると驚くと思います。

ロビオはムチャディ(とうもろこし粉を焼いたもの)とセットで食べるのがジョージア全国で定番ですが、それはサメグレロ地方でも同様。
ほんのりと香ばしいとうもろこしならではの風味が、ピリッと辛くて濃厚なロビオとよく合います。
⑨サメグレロ風ムチャディ

サメグレロ地方のとうもろこし粉文化を象徴する一品が、サメグレロ風ムチャディ(Megruli Mchadi / მეგრული მჩადი)。
「ムチャディ」とは、とうもろこし粉を成形した生地をフライパンで焼いた料理で、お隣イメレティ地方やラチャ地方が本場とされるもの。
焼くときに火が通りやすいように楕円形や円盤形などの平べったい形にすることが多く、塩などで味つけはされないのが基本です。

▲サメグレロ地方でもジョージア全国的にポピュラーなこのムチャディは食され、「乾いたムチャディ」という意味の「ドライ・ムチャディ」とも呼ばれます。

いっぽうで、とうもろこし大好き王国のサメグレロ地方にはもう一つ、「揚げムチャディ」なるバージョンも。
ムチャディを球体に成形し、焼くのではなく油で揚げるのが独特で、生地に砂糖が入るのも特徴的です。
一言で表すなら、とうもろこし粉の揚げドーナツのような感じ。
沖縄のサーターアンダギーに似た見た目&ほんのり甘い味わいで、単体でも美味しく食べられるのです…が。

ほんのり甘い揚げドーナツのようなサメグレロ風の揚げムチャディ。
デザートとして食べるものなのかと思いきや、激辛王国にそんな甘っちょろい概念はありません。
激辛唐辛子ペーストのアジカを付けたり、激辛のサメグレロ風プハリやピリ辛のサメグレロ風ロビオにディップしたり…と、辛いものとセットで食べるのが一般的なのだそうです。
⑩サメグレロ風プハリ(プハレウロバ)

ジョージアを代表する前菜の一つが「プハリ」。
各種野菜をくるみペーストで和えたもので、ほうれん草を用いたものが全国的にポピュラーです。
プハリの発祥はジョージア西部地域で、ここサメグレロ地方では様々な野菜を用いたプハリを総称してプハレウロバ(Pkhaleuloba / ფხალეულობა)と呼ばれます。
サメグレロ地方のプハリに使用される野菜は、ビーツやキャベツ、人参やネギがポピュラー。
中でもビーツの赤色が美しいツィテリ・プハリ(Tsiteli Pkhali / წითელი ფხალი)は、お祝い事の食卓を彩る存在でもあります。

一般的にプハリの味つけにはスパイスを用いるものの、辛くはしないのが普通。
しかしながらサメグレロ地方ではくるみペーストに粉末赤唐辛子を練り込むため、デフォルトでピリ辛な味つけとなっているのが独特です。
⑪ゲブジャリア

のぶよ的に、あらゆるサメグレロ料理の頂点に君臨すると思っている一品がゲブジャリア(Gebjalia / გებჯალია)。
サメグレロ料理あるある(?)の食欲をそそらない強めなネーミングではありますが、「これを食べずにサメグレロは語れない!」と断言できるほどの絶品です。
純白のソースにぷかぷかと浮かぶような、これまた純白の物体。
その正体は、サメグレロが誇るアハリ・スルグニをマッツォーニ(ヨーグルト)で軽く煮込み、乾燥させたミントで味つけしたものです。


若いスルグニチーズならではのふんわりした食感と、マッツォーニの酸味とコク、ミントが醸し出す清涼感が一体化したゲブジャリアは、ほんのりと塩気が感じられる上品な味わい。
各食材の最も美味しい部分を凝縮したような、芸術的な食材の組み合わせの妙が感じられます。
ケブジャリアは作りたてではなく、常温の前菜として食されるのが一般的。
見た目にも美しく、日本のお餅をやや軽めにしたようなスルグニチーズの独特の食感にきっとハマる人も多いのではないかと思います。
⑫マルトヴィリ・レモネード

サメグレロ地方の最も東に位置するマルトヴィリの名物ドリンクが、マルトヴィリ・レモネード(Martvili Lemonade / მარტვილის ლიმონათი)。
ジョージア全国でもマルトヴィリ周辺にしか出回らない、激レアご当地ドリンクです。
マルトヴィリ・レモネードには十種類ほどの多様なフレイバーがあり、どれもやや甘みが強め。
のぶよ的には、サメグレロ地方の名産フルーツの一つであるフェイホア(フェイジョア)を使用したものがおすすめです。

マルトヴィリ市内の飲食店や商店なら結構な確率で置かれているマルトヴィリ・レモネード。
価格も安く昔ながらの素朴な味わいが楽しめるので、マルトヴィリ観光の際に一度は挑戦してみましょう。
⑬サメグレロ風クパティ

サメグレロ地方を代表する珍味がクパティ(Kupati / კუპატი)。
豚の腸詰めを指し、細かく切られた各種内臓をアジカで味つけしたものが詰められています。
クパティ自体はお隣のイメレティ地方でも名物とされますが、イメレティ風とサメグレロ風の最大の違いはもちろん辛さ。
サメグレロ風はやはり激辛の味付けで、パンチの効いた味わいが特徴的です。


また、フライパンで焼いて調理されることが多いイメレティ風のクパティに対して、サメグレロ風のクパティは大量の油で揚げ焼きにされるのも大きな違い。
クパティ本来の味わいに加えて、スパイスの辛味や油の風味を楽しむことができ、ビールに合うこと間違いなしの一品です。
⑭サメグレロ風ヒンカリ

ジョージア料理の定番中の定番の一つといえば、ヒンカリ(Khinkali / ხინკალი)。
牛と豚の合挽き肉を生地に包んで茹で上げた、水餃子のような料理です。
ジョージア全国で食されるヒンカリですが、サメグレロ風はやっぱり独特。
もうみなさんお分かりだと思いますが、サメグレロ地方のヒンカリの具にはたっぷりの赤唐辛子が混ぜられるため、辛いのです。
一般的にはヒンカリの具に入るスパイスは、ジラと呼ばれるクミンに似たものが主流。
赤唐辛子を具に入れるのは、ジョージア西部地域でもここサメグレロ地方とお隣グリア地方だけだと思います。


サメグレロ風のヒンカリの辛さは店によってまちまち。
かなり激辛のところもあれば、ピリ辛くらいのところもあり、お気に入りの辛さのヒンカリ店を探すのも良さそうです。
挽き肉の塩気は薄めで、唐辛子の辛さによって肉の風味が引き立てられており、これはこれで絶品。
サメグレロ地方内であればどこの店でもある程度辛いヒンカリを提供しているのて、ぜひ一度は挑戦を!
⑮クヴェラ

サメグレロ地方ならではの水餃子といえば、クヴェラ(Kvera / კვერა)。
複数形で「クヴェレビ」とも呼ばれますが、同じものを指します。
平べったくぺちゃっとした巨大な水餃子は、ジョージアの他エリアではまず見かけない料理。
その正体は、アハリ・スルグニをたっぷりと生地に詰めてお湯で茹でたチーズ餃子です。


いわばウクライナ料理のヴァレニキに似たような料理なのですが、クヴェラの最大の特徴はその巨大なサイズと、具のチーズの風味。
塩気が薄いアハリ・スルグニが使用されているため塩辛さはいっさいなく、チーズ本来の芳醇さが存分に味わえるのです。
手作りの小麦粉生地はかなり薄めで、もちっとした弾力がクセになる口当たり。
茹で上がったクヴェラにはバターが溶かされるのが定番で、芳醇さをさらにアップさせてくれます。
⑯クチュマチ

サメグレロ料理の中でも根強い地元ファンが多い一品が、クチュマチ(Kuchmachi / კუჭმაჩი)。
牛や豚、鶏の内蔵にアジカで下味をつけ、たっぷりの油で揚げ焼きにした豪快な料理です。
レストランでは仕上げにざくろの実を混ぜるのも定番ですが、ローカル食堂では飾り気のない状態で提供されるのが普通。
いわば「激辛モツ炒め」といったところで、内臓系が好きな人にはたまりません。

現在でこそジョージア全国に広まったクチュマチですが、なぜか他エリアでは「茹でたモツをくるみペーストで和えた前菜」という位置付けになっているのがミステリー。
「サメグレロ料理=くるみ」というイメージが相まって、伝わったためなのでしょうか。
本場サメグレロのクチュマチは前菜ではなく、くるみペーストも入らないのが普通。
また、クチュマチはお湯で茹でたモツを油で揚げ焼きにして完成するものなので、他エリアのクチュマチとは完全に別物となっています。
⑰ソコス・クチュマチ

数あるサメグレロ料理の中でものぶよが「うお!美味しい…!」と感動したのが、キノコのクチュマチ(Sokos kuchmach / სოკოს კუჭმაჭი)。
すでに紹介したモツのアジカ炒め・クチュマチにキノコを用いたバージョンです。
ざくざくと細かく切ったキノコをアジカで和え、たっぷりの油でサッと炒めたもので、もちろん味つけは辛め。
しかしただ辛いだけではなく、キノコ本来の旨味が辛さによって引き立てられており、かなり美味しいです。

クチュマチ系料理のポイントは油にスパイスの風味を移すことにあると思うのですが、その点キノコのクチュマチは絶妙。
華やかでエキゾチックなスパイスの味わいが全体に行き渡り、何とも言えない極上のハーモニーとなっています。
⑱アプハズラ

サメグレロ地方名物の中でも、おそらく日本人受けが最も良さそうな料理がアプハズラ(Apkhazura / აპხაზურ)。
厳密にはサメグレロ発祥ではなくお隣の未承認国家・アブハジア共和国(ジョージア的には「アブハジア地方」)の料理ですが、サメグレロ地方とアブハジアは歴史的にずっと繋がりがあったため、ここで紹介しておきます。
アプハズラは、牛や豚の挽き肉を俵型に丸めて牛の大膜で包んだものをオーブンでグリルしたハンバーグのような料理。
挽き肉の味つけにはもちろんアジカが使用され、かなり辛みの強い味わいが特徴です。


ふっくらとした質感のアプハズラは、がっつり来る辛さと肉の旨味が舌先で混ざり合う絶品。
ちなみに、アブハジアの料理はサメグレロ地方よりもさらに激辛だそうで、アプハズラの味わい一つとってもまだ見ぬ激辛王国の意地が感じられます。
サメグレロ地方の目と鼻の先にあるのに現状では訪問できないアブハジアの地。
奥深い辛さにひたっていると、望郷の念がひしひしと湧いてくる…そんな一品です。
⑲漬けムツヴァディ

ジョージア全国でポピュラーな豚肉の串刺しBBQといえば、ムツヴァディ(Mtsvadi / მცვადი)。
東部のカヘティ地方が本場とされる料理ですが、西部地域でも広く食されており「国民的ジョージア料理」としてのポジションを確固たるものとしています。
ムツヴァディの味つけや調理法は、ジョージアの東西で大きく異なるのがポイント。
東部では豚肉に下味を一切つけずに炭火で焼き、仕上げに塩を振りかけるシンプルな調理法で、肉本来の風味が強く感じられます。
一方の西部では、豚肉を各種スパイスや蒸留酒で漬け込んで下味をつけておく「漬けムツヴァディ」が定番。
特にアジャラ地方などの黒海沿岸エリアではムツヴァディの味付けが塩だけなんてことは考えられず、サメグレロ地方でもそれは同じ。漬け込まれることで肉が柔らかくなるのと、スパイスが肉の味を引き立ててくれるのが特徴的です。

そんなわけで、サメグレロ地方に来たら漬けムツヴァディをぜひとも食したいもの。
少し田舎へ足をのばすとそこら中を豚がほっつき歩いている光景が見られる地域なので、素材の美味しさはお墨付きです。
のぶよがとにかくもう感動したのが、サメグレロ地方最南の港湾都市・ポティにある小さな食堂で食べた漬けムツヴァディでした。▼

各種スパイスに白ワインを加えたマリネ液に漬け込まれた豚肉は、フルーティーな風味と肉の旨味が見事に融合した絶品。
肉の柔らかさも信じられないほどのもので、ジョージア全国で食べたムツヴァディの中でもトップレベルの美味しさでした。
ジョージア東部ではなかなかお目にかかれない漬けムツヴァディ。
サメグレロ地方だけの料理ではありませんが、とにかく黒海沿岸に来た際にはぜひとも食べてみてください!
⑳仔牛リブ肉のアジカ和え

サメグレロ地方の名物料理のラストを飾るのが、仔牛リブ肉のアジカ和え(Khbos neknebi ajikit / ხბოს ნეკნები აჯიკით)。
その名の通り、仔牛の骨付きリブ肉をたっぷりのアジカと和えてグリルしたもので、もう間違いなく美味しいやつです。
牛肉ではなく、柔らかな仔牛肉が用いられるのが最大のポイント。
ジョージアの牛肉はとにかく筋張っていて硬いことが多く、グリルには向かないのですが、仔牛肉であればジューシーで柔らかな食感が楽しめます。

もはや説明するまでもありませんが、激辛のアジカの深い味わいが肉の旨味を最大限に引き立てており、とにかくもう絶品。
がっつりと肉を喰らいたいときにはもちろん、サメグレロならではの食材の美味しさに感動間違いなしの一品です。
サメグレロ地方の郷土料理「仔牛スペアリブのアジカ和え」を注文したらなんかすんっっっげえの出てきて側転(すんっっっげえ美味しそうな匂いする) pic.twitter.com/6UEJhHJwf5
— 小山のぶよ🇵🇹ジョージア旅行ガイドブック発売中 (@nobuyo5696) December 4, 2025
おわりに
日本ではまず話題に上がることすらないであろう、サメグレロ地方の食文化と郷土料理をたっぷりと紹介しました。
イメレティ地方やスヴァネティ地方など、隣り合う地域とも食文化が大きく異なっているのが、サメグレロ地方の面白い点です。
辛いもの好きな人は問答無用でGOですし、インド料理や中東の料理が好きな人も満足できるはず。
ジョージアという小さな国において、ここまで独自の食文化が息づいていることに、きっと驚くはずです。
というわけで、ジョージアの定番どころを行き尽くした人は、ぜひとも次はサメグレロ地方へ…!
独特な料理はもちろん、旅行者が少ないエリアならではのピュアな魅力を自分で発掘するという、旅本来の楽しみが詰まった素敵なエリアです(地味だけど)!












































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