こんにちは!ジョージア第二の都市・クタイシにのんびりと滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
クタイシから日帰りで足をのばせるスポットとして、定番の一つとされるチアトゥラ(Chiatura / ჭიათურა)。
四方を切り立った岩山に囲まれた谷底に広がる町は、一部の旅行者の間で伝説的な知名度を誇ります。
一見すると、地形こそユニークではあるものの、ジョージア地方部によくある寂れた小都市といった風情のチアトゥラ。
この町の知名度を爆増させた最大の理由が、ソ連時代に敷かれたケーブルカーの存在でした。
谷底と岩山の上部をいくつものケーブルカーが結び、町の上空にはまるで蜘蛛の巣のように張り巡らされた「空の道」。
60年以上もメンテナンスされないままに運行される限界ケーブルカーが話題となり、「ソ連ケーブルカーの町」として、チアトゥラは唯一無二の存在となっていました。
何を隠そう、のぶよはソ連ケーブルカーやソ連アート、ソ連風のボロボロなレトロな町並みが大好物。
この町で限界ケーブルカーに乗りまくり、ボロボロのソ連建造物の風情を堪能することを、それはそれは楽しみにしていました。
…どうして先ほどから過去形で書いているかというと、現在のチアトゥラは、もう「ソ連ケーブルカーの町」ではないため。
ここ数年で大規模な再開発が進められ、新しい町へと生まれ変わろうとしているのです。
2019年以前とは、もはや別の町になりつつあるチアトゥラ。
名物のボロボロケーブルカーは姿を消し、モダンでスタイリッシュな新ケーブルカーが大空を背に走ります。
「なあんだ…普通の地方都市になっちゃったのか…」と思うのはまだ早い!
かつてのレトロで限界感あふれる魅力こそ無くなりつつあるものの、チアトゥラに息づく「新たな町になろう!」というエネルギーはジョージアの中でも独特なもの。
この国の激動の近代史を凝縮したかのような町の変遷を肌で感じるためだけにでも、訪れる価値は十分にあります。
今回の記事は、現在のチアトゥラの観光に必要な情報を解説するもの。
一つの町が大きく変わりつつある様子を現在進行形で見られるのは、チアトゥラの大きな魅力。
周辺にも見ごたえ抜群の見どころがありますし、クタイシから日帰り観光も可能です!
ケーブルカーの町の変遷。チアトゥラの昔と今
かつてのチアトゥラ観光といえば「ソ連時代のボロボロのケーブルカーにとりあえず乗りまくって写真を撮りまくる!」というスタイルがマニアの間では定番でした。
しかしながら、名物とされていたソ連ケーブルカーは2019年時点ですべて廃線に。
正直に言うと、ソ連レトロマニアやケーブルカーマニアの人向けのチアトゥラの魅力は半減してしまったと言えます。
現在のチアトゥラを楽しむには、この町がたどった数奇な歴史をザックリと理解しておくのがマスト。
さまざまな紆余曲折を乗り越えて新たな未来へと向かおうと模索する、チアトゥラという町の奥深さや強さが感じられるはずです。(そして無性に応援したくなるはず!)
チアトゥラのはじまり:マンガン鉱山の発見
チアトゥラの歴史はそれほど古いものではなく、町としてのはじまりは、ジョージアがロシア帝国の統治下にあった19世紀後半のこと。
もともとこの場所には町などはなく、深い山々に囲まれた谷間の風景が広がっていただけでした。
その運命を一変させたのが、マンガンの発見。
1879年にアカキ・ツェレテリ(Akaki Tsereteli)というジョージア人の詩人によって、この地域の山に大量のマンガンが埋まっていることが発見されたのです。
マンガンとは鉄の原料となる鉱物で、建物の建設や武器・兵器の製造など、あらゆる用途に使用されるものです。
当時のロシア帝国は、軍事面での近代化を推し進めていました。
この機会を逃すまいとばかりに急ピッチで鉱山開発が進められ、1905年にはこの鉱山のマンガン産出が世界シェア60%を占めるまでに急成長しました。
そう。マンガン採掘に従事するためにロシア帝国全土から集められた鉱山夫のために造成されたのが、このチアトゥラという町だったのです。
当時、チアトゥラで働く鉱夫の労働環境は劣悪だったよう。
4000人以上もの人間が、谷底に建設されたチアトゥラの町から岩山の上にあるマンガン坑まで徒歩で往復させられ、1日18時間もの長時間労働を強いられていました。
1920年代になると、ジョージアはソ連の統治下に入ります。
その後1930年代の世界恐慌やスターリンによる大粛清、1940年代の第二次世界大戦など激動の時代が続きますが、チアトゥラは鉱山の町として栄光の時代を謳歌し続けていました。
この時期にソ連の指導者の座に就いていた人物が、ジョゼフ・スターリン。
ジョージア出身のスターリンは、ソ連の軍事インフラ面の基礎となるマンガンが採掘されるチアトゥラを重要視し、特別に愛したと言われています。
そんなスターリンの意向で1954年に始まったのが、チアトゥラ中心街と岩山の上のマンガン鉱山を結ぶケーブルカーの敷設でした。
次々に建設されたケーブルカーは、最盛期には20路線にも及んだそう。
当初のケーブルカーは、谷底の中心街に住む鉱山夫たちが山上の鉱山へとアクセスするための通勤用として利用されていました。
それが徐々に、山上の鉱山に近いエリアも、鉱山夫とその家族が住むための住宅地として開発されるように。
こうして、谷底に位置するチアトゥラ中心街を取り囲むように聳える岩山の上に、ソ連風の共同住宅が建ち並ぶエリアができあがり、現在のチアトゥラの特異な町並みが出来上がりました。
現在のチアトゥラの町は、谷底に位置する中心街と岩山の上に位置する各集落で、町並みが大きく異なるのが特徴的。
マンガン発見当初のロシア帝国時代に開発された谷底の中心街は、ロシア帝国調の重厚な建築がちらほらと見られるのに対し、ソ連時代にケーブルカーが敷設された後に開発された岩山の上の集落は、無機質なソ連風の町並みがほぼ100%を占めています。
かつてのチアトゥラ:「ソ連ケーブルカーの町」として話題に
チアトゥラの運命を再び変えたのが、1991年のソ連崩壊でした。
経済的な理由からマンガン鉱山は次々に閉山されていき、それに比例するように町の人口も急激に減少していきます。
鉱山がなくなった岩山の上の集落と中心街をわざわざ行き来する人も少なくなり、残されたのは敷設から40年~50年以上が経ったボロボロのケーブルカーだけ。
利用者が少ないことや財政難を理由に、いっさいメンテナンスされないままに運行が続けられていました。
どこの鉱山町も逆らうことができない、鉱山の閉鎖にともなう町の衰退。
チアトゥラに待ち受ける運命も、その例外ではないように思われていました。
この町の契機となったのが、2000年代~2010年代にかけてジョージアが外国人観光客の受け入れ緩和に舵を切った時代。
チアトゥラを訪れた外国人によって「ソ連時代のケーブルカーがそのまま残っている町」として話題となり、マニアの間では聖地のような場所になります。
かつてのチアトゥラのケーブルカーは、おそろしくひどい状態でありながらも現役で動いており、そのスリルや限界感、レトロ感を楽しむことが観光客の間で人気となっていました。
しかしながら、敷設から60年以上経過し、メンテナンスをされないままに運行されているケーブルカーの安全性が問題視されるようになり、2016年には運行が停止。
それ以降も駅への立ち入りやゴンドラの見学は可能だったそうですが、2018年~2019年にかけて、とうとう旧ケーブルカー路線の撤去や駅の取り壊しが進められます。
かつては20以上あった路線のうち、メンテナンスされて新たに開業できたのは、たったの4路線のみでした。
現在のチアトゥラ:生まれ変わるケーブルカーの町
現在のチアトゥラには、ドイツ資本の新しいケーブルカーが4路線走っています。
いずれも中心街~岩山の上の地区を結ぶもので、住民の足としての性格が強いものです。
かつてのソ連ケーブルカー路線の多くは撤去され、発着場の建物も次々に取り壊されています。
いくつか残った旧ケーブルカー発着場のほとんどはバリケードで覆われ、内部への立ち入りは禁止されています。
ケーブルカー路線の一新とともに、チアトゥラの町が推進しているのが、町全体の再開発。
中心街の再開発はすでに終了しており、町を二分するクヴィリラ川沿いには遊歩道が設けられ、建物の外壁も綺麗に塗り替えられています。
また、岩山の上部エリアを中心に点在するソ連時代の建造物の多くでも解体工事が進められており、かつては訪問可能であったソ連建造物への立ち入りもできなくなっています。
「ソ連ケーブルカーの町」から、「新たなケーブルカーの町」へと生まれ変わろうとしているチアトゥラ。
旅行者的には、レトロなケーブルカーが町の上空を縦横無尽に走る風景がもう二度と見られないのは、少々残念なところ。
しかしながら、町をあげての大規模再開発計画は、おおむねチアトゥラ市民の支持を受けているようです。
チアトゥラの町全体に漂う開放的な空気や、町に命が再び宿ったような活力あふれる雰囲気は、この町の新たな歴史への礎となるもの。
今後、この町がどのように変化していくのか楽しみです!
チアトゥラの観光スポット
チアトゥラ観光マップ
黄色:バスステーション(長距離ミニバス)
紫:サチヘレ行きミニバス発着ポイント
茶色:ケーブルカー中央ステーション
オレンジ:新ケーブルカー路線
緑:旧ケーブルカー駅
青:周辺の見どころ
赤:レストラン
新ケーブルカー4路線を制覇
チアトゥラに来たなら絶対に挑戦したいのが、新ケーブルカーに乗車すること。
現在は4つの路線のみが運行されており、どれもモダンな車体で危険性はゼロ。
いい歳した大人でも想像していた以上に楽しい体験となったので、子供は絶対に楽しめるはずです!
ここでは、チアトゥラの新ケーブルカーのシステムや乗車方法、ケーブルカー駅周辺各エリアの情報を解説していきます。
新ケーブルカー乗り場(セントラル・ステーション)の構造&利用システム
かつてはチアトゥラ中心街にバラバラに点在していたケーブルカー駅は、現在たった1ヶ所に統一されています。
それが、中心街ど真ん中にあるセントラル・ステーション。【マップ 茶色】
モダンofモダンな外観で存在感も抜群なので、見逃すことは絶対にありません。
現在チアトゥラで運行されている4路線のケーブルカーのすべては、この場所からの発着です。
セントラル・ステーションは五層構造&別棟が一つあり、行き先によって乗り場が異なっているのがポイント。
英語での案内も一部ありますが、基本的にはジョージア文字のみで行き先が表記されている点に注意しましょう。
▲セントラル・ステーションの一階部分には、ナグティ線とレジュバニ線の乗り場が横に並んでいます。
ナグティ/レジュバニのいずれもチアトゥラ中心街の西側の高台にある地区です。
▲最上階にあたる四階を発着するのが、最も標高が高い地点に向かうサナトリウム線。
個人的には、サナトリウム線からの風景が、4本のケーブルカー路線の中で最も見ごたえがあると思います。
▲ そして、なぜか別棟に設けられているのが、チアトゥラ南側の高台へと向かうムハジェ線。
4路線のうち最も距離が短い路線ですが、チアトゥラの町上空スレスレを通るのでなかなかのスリルがあります。
ケーブルカーのチケットは、半地下階にあるチケットブースでの購入か、各乗り場でのカード払いも可能。
料金はどの路線でも共通で片道0.5GEL(=¥25)と安いです。
往復でケーブルカーを利用する場合は、あらかじめこのチケットブースで復路分のチケットも購入しておくことをお忘れなく。
高台側のケーブルカーの駅にはチケット売り場は見当たらず、購入できない可能性があるためです。
チアトゥラのケーブルカー路線①:ナグティ線
チアトゥラのケーブルカー路線で、二番目に長いナグティ線。
高台側に位置する現代アート作品のようなお洒落な駅がナグティ駅(Naguti / ნაგუთი)です。
ナグティ駅周辺は低層の公共住宅が建ち並び、ソ連時代から変わらない雰囲気。
建物の半数ほどはリノベーションされており、明るい雰囲気が感じられます。
チアトゥラのケーブルカー路線②:レジュバニ線
ナグティ駅よりやや低い位置にあるレジュバニ駅(Lezhubani / ლეჟუბანი)は、真っ青な外観が目を引く斬新なデザインが特徴的。
レジュバニ駅の周辺には再開発の波はまだ到達しておらず、数十年前の共同住宅が建ち並ぶ「THE・ソ連」な雰囲気です。
ケーブルカーのレジュバニ線は、東西に細長く広がるチアトゥラの中心街をなぞるように敷かれているのがポイント。
中心街のパノラマや、町の北側にそびえる岩山を望みながらの空中散歩が楽しめます。
レジュバニ線の途中には共同住宅すれすれを通る箇所もあり、写真撮影にはぴったり。
距離は短い路線ですが、なかなか乗りごたえがあります。
チアトゥラのケーブルカー路線③:サナトリウム線
チアトゥラのケーブルカー4路線で最長のサナトリウム線。
チアトゥラの中で最も標高が高い場所にあるサナトリウム駅(Sanatorium / სანატორიუმი)までを結びます。
サナトリウム線は、チアトゥラ中心街から南側の岩山の頂上へと向かう絶景路線。
乗車時間も長く、乗りごたえは4本のケーブルカー路線でも髄一です。
チアトゥラ名物のロープウェイの車窓から。1回0.5ラリ(25円)と安いし、楽しすぎて童心に輪廻転生してる。町全体が格安で一日楽しめるテーマパークみたいだし、子供は絶対楽しい。めざせ!全路線往復制覇!!
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) November 13, 2022
※チケット売り場のおばちゃんに「また来たこいつ…」と苦笑いされるので大人は鋼の心臓必須 pic.twitter.com/jd07tdOHji
ケーブルカー駅のすぐ後ろにあるサナトリウム(ソ連時代の結核療養施設)の建物への立ち入りはできなくなっていますが、駅からの絶景のためだけにでも訪れる価値はあり。
サナトリウム駅からは、ケーブルカーとチアトゥラの町並みを同時に眺めることができるのです。
サナトリウム駅からムハジェ駅までは、山の斜面に造られた住宅街を縫うように連なる坂道を通ってのアクセスも可能。
昔ながらの住宅街の雰囲気はなかなかに情緒があり、散策にもぴったりです。
チアトゥラのケーブルカー路線④:ムハジェ線
4本のケーブルカーのうち最短の路線がムハジェ線。
チアトゥラ中心街南側の山の中腹に位置するムハジェ駅(Mukhadze / მუხაძე)までを結びます。
乗車時間は長くはないものの、ムハジェ線の車窓からの風景は素晴らしいもの。
チアトゥラ中心街のすぐ真上を通るので、ダイナミックな風景が続くのです。
また、ムハジェ線のちょうど中間地点にはソ連時代に建てられた高層住宅があります。
ここが、午後になるとケーブルカーの影が見事に映りこむポイント。▼
ケーブルカーの影がビルに映るのはたった数秒のみなので、チャンスを逃さないよう!
かつてのケーブルカー乗り場を探訪
チアトゥラの新ケーブルカー路線4本以外はすべて廃線となり、かつてのケーブルカー駅の撤去も進んでいます。
現在チアトゥラ中心街に残る旧ケーブルカー駅は、片手に収まるほど。
鉱山の町として栄えたチアトゥラの黄金時代を象徴する存在を一つ一つ見てまわるのも楽しみの一つです。
▲ チアトゥラ中心街の東側には、川を越えて鉱山にアクセスするためのケーブルカー路線の跡が。【マップ 緑①】
ゴンドラと中心街側の駅はすでに撤去され、鉱山側の駅とケーブルだけが寂しそうに残されています。
▲ チアトゥラ中心街東側には、美しい意匠が施された旧ケーブルカー駅も。【マップ 緑②】
ソ連時代を代表する指導者であるレーニンとスターリンの横顔が描かれたレリーフが、撤去されずに残されています。
内部にはかつてのケーブルカーのゴンドラが残っているそうですが、バリケードが張られて立ち入りは禁止されていたのが残念…
▲ チアトゥラ中心街を東西に走る線路の南側には、市内で唯一完璧な状態で残された旧ケーブルカー駅があります。【マップ 緑③】
真っ赤なゴンドラが宙ぶらりんのまま放置されており、駅の敷地への立ち入りも可能。
とはいえ状態はものすごく悪く、いつ崩れ落ちてもおかしくないほどだったので、立ち入りは自己責任となります。
こんな危ない状態のケーブルカー駅がいつまでこのまま残されるのかは不明。
近い将来、ここも撤去されてしまう運命にあるのかもしれません。
▲ チアトゥラ中心街からバスステーションがある高台へと至る道路沿いにも、旧ケーブルカー駅が残ります。【マップ 緑④】
ゴンドラは撤去されていますが、駅は当時のままの状態。
立ち入りはできませんが、堂々としたたたずまいはなかなか見ごたえがあります。
ソ連の町並み散策&ソ連アートを探す
チアトゥラの中心街をひとことで表すなら「ごちゃ混ぜ」。
ソ連時代から何一つ変わらない様子の建物と、近年リノベーションされた建物、ロシア帝国自体に建てられた由緒正しい建物が混在し、唯一無二の町並みを構成しています。
とはいえ、最も割合が多いのはソ連時代の建物。
「チアトゥラを歩けばソ連建造物に当たる」といった感じでしょうか…
特にソ連感が強いのが、中心街西側エリアとクヴィリラ川南岸のエリア。
この町がたどった歴史を噛みしめつつ、ソ連時代の風景を探しながら散策してみましょう。
中心街から少しはずれると、ひと昔前にタイムスリップしたかのような光景が至る所で見られるのもチアトゥラの面白さ。
ソ連時代から続く市場や、立ち飲み屋、かつての文化施設などが点在しています。
こうしたソ連時代の建物や風景も、近い将来には別のものへと置き換えられてしまうのかも…
数十年前から変わらない光景を堪能しながら散策しましょう。
チアトゥラ中心街を散策
チアトゥラの中心街東側とクヴィリラ川沿いは、近年になって再開発が急ピッチで進められたエリア。
市庁舎や政府機関の建物は大規模改修され、メインストリート沿いの建物の外壁も美しいパステルカラーに。
「生まれ変わったチアトゥラ」を象徴する、活気あふれる風景が魅力的です。
クヴィリラ川の両岸には、再開発計画の一環で遊歩道が設置されており、市民の憩いの場として機能しています。
チアトゥラの町を取り囲む岩山と、川沿いの開放感あふれる風景…ちょっとしたお洒落な街のようにも感じさせます。
この遊歩道とメインストリートを中心に、チアトゥラの再開発が進められているよう。
明るい色の建物が並ぶ風景の中で談笑する人々の姿を見ていると、この町が数年前まで「ソ連ケーブルカーの町」として名を馳せていたことが信じられなくなるほどです。
ソ連時代を感じさせる退廃的な雰囲気のエリアと、見事に息を吹き返した開放的な雰囲気のエリア…
二つの強烈なコントラストを織りなすエリアが隣り合って存在していることに、チアトゥラという町の奥深さを感じさせられます。
チアトゥラ周辺の見どころ
チアトゥラの市内観光も魅力的ですが、せっかくなら近郊に位置する見どころにも足をのばしたいもの。
チアトゥラの周辺には、カツヒの柱とムグヴィメヴィ僧院の二つの見どころがあり、市内観光と合わせて「チアトゥラ三大観光スポット」となっています。
カツヒの柱
チアトゥラ観光とセットで訪れる定番といえば、カツヒの柱(Katskhi Pillar)【マップ 青①】
イメレティ地方の広大な大地から天に向かってのびる一本の奇岩。
頂上には1000年以上前に造られた小さな礼拝堂があり、「孤高の聖地」として人々の信仰を集めています。
カツヒの柱は、チアトゥラからミニバスを利用して簡単にアクセスすることが可能。
個人で移動&観光する場合でも2時間半~3時間ほどみておけば十分なので、チアトゥラの市内観光と組み合わせるにはぴったりです。
ムグヴィメヴィ僧院
個人的に強くおすすめしたいのが、チアトゥラ中心街から徒歩20分ほどの場所にあるムグヴィメヴィ僧院。【マップ 青②】
切り立った岩山の中腹に築かれた13世紀の建造物群で、当時の建築技術の高さに驚嘆させられます。
ムグヴィメ僧院のものすごいところは、天然の洞窟を祈りの場所としている点。▼
まるでRPGのダンジョンのような僧院の敷地内は、聖なる雰囲気に満ち溢れたもの。
カツヒの柱に比べるとマイナーで、旅行者はあまり訪れないのが不思議に思えるほどに、見ごたえ抜群です。
ムグヴィメヴィ僧院観光に必要な時間は、チアトゥラ中心街からの移動も含めて2時間程度。
カツヒの塔、チアトゥラ市内観光とあわせても、日帰り観光プランに組み込むことが十分に可能です。
チアトゥラのおすすめ?レストラン
チアトゥラの中心街には、小規模のカフェや食堂がいくつか点在しています。
しかし、のぶよが訪問した日は土曜日。飲食店の多くが結婚式の二次会に使われており、一般客の利用ができず、危うく食事難民になるところでした。(ジョージアでは土曜日に結婚式をする人が多い)
ようやく見つけたのが、こちらのZuMiという食堂。【マップ 赤】
メニューは、ジョージア料理の定番はひと通り揃っているといった感じ。価格帯はそこまで安いわけではありませんが、まあ許容範囲です。
のぶよはヒンカリ(1個1GEL=¥50)を注文しましたが、これがかなりの美味しさでびっくり。
「ジョージアで一番美味しい」とまではいきませんが、肉汁たっぷりのジューシーな味わいに大満足でした。
ヒンカリの美味しさよりなにより、もはや店の雰囲気がカオスだったのが一番の思い出。
のぶよの他に唯一の客であったお姉さま軍団が、いきなりジョージアンダンスを踊り出すのですから…▼
延々と続くジョージアンダンス大会。あとから他の客のお兄さんも入ってきたんだけど、この人も普通に踊れるのすごすぎ。この足さばきどないよ。ジョージア、まじでどうなってんの。 pic.twitter.com/dj3cm6eV1g
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) November 12, 2022
常にこういった雰囲気なのかはわかりませんが(たぶん違う)、なかなかにディープな店であることは確か。
ダンスの「ダ」の字も知らないのぶよも踊ることを強いられ、謎に気に入られて色々飲み食いさせてもらうという結末に達しましたから。
恐いもの見たさを抑えられない人(?)やチアトゥラの活気を体感したい人は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか(笑)
チアトゥラへの行き方・アクセス
チアトゥラへのアクセス手段は、以下の4通りです。
①タクシー
②現地ツアー
③マルシュルートカ(ミニバス)
④鉄道 (クタイシ発着限定)
チアトゥラの市内観光&カツヒの柱&ムグヴィメヴィ僧院の三大見どころを日帰りで観光するなら、①タクシーか②現地ツアーの利用が便利。
③マルシュルートカ(ミニバス)や④鉄道を利用してのアクセスでも三大見どころを日帰りで制覇するのは不可能ではありませんが、やや急ぎ足のスケジュールとなります。
①タクシー
ストレスなしでチアトゥラへアクセスしたい場合は、タクシーを利用するのがベスト。
多くの場合はクタイシからタクシー利用となるでしょうが、トビリシ/クタイシ方面からの鉄道が停車するゼスタポニ(Zestafoni)からのタクシー利用という裏技もあります。
・クタイシ~チアトゥラ:120GEL(=¥7000)
・ゼスタポニ~チアトゥラ:80GEL(=¥4000)
・トビリシ~チアトゥラ:250GEL(=¥12500)
・クタイシ~カツヒの柱~チアトゥラの片道を移動しながら観光:150GEL(=¥7500)
タクシーを利用すれば、クタイシを出発してカツヒの柱とチアトゥラをセットで移動&観光するのも余裕ですし、効率良く観光ができるでしょう。
②現地ツアー
限られた時間で効率良くチアトゥラや周辺の見どころをまわりたいなら、現地ツアーの利用も現実的。
トビリシ発の1日ツアーがメインとなりますが、クタイシ発の近郊ツアーも存在しています。
③マルシュルートカ(ミニバス)
個人でチアトゥラへアクセスする場合は、マルシュルートカと呼ばれる乗り合いのミニバス利用が定番。
以下のいずれかの町からのアクセスが一般的です。▼
所要時間が短く、最も利用しやすいのはクタイシ発着かサチヘレ発着の便。
これらの町からであれば、チアトゥラ&周辺を日帰りで観光することが可能です。
トビリシ発着の場合は、日帰りで往復するのは不可能だと考えておきましょう。
チアトゥラのミニバスの発着ポイントは、ほとんどの場合が町の北側の坂の上にあるバスステーション。【マップ 黄色】
サチヘレ行きの便のみ、チアトゥラ中心街の広場付近からの発着となります。【マップ 紫】
クタイシ~チアトゥラのミニバス
クタイシ~チアトゥラ間のミニバスは、1時間に1本ほど走っていて便利。
場合によっては、チアトゥラのさらに先にあるサチヘレ(Sachkhere / საჩხერე)行きの便の利用もOKです。
チアトゥラ行きのミニバスは、クタイシの中央バスステーションからの発着です。▼
チアトゥラでのクタイシ行きミニバス発着ポイントはチアトゥラの中心街ではなく、町の北側の坂の上にあるバスステーションです。【マップ 黄色】
トビリシ~チアトゥラのミニバス
トビリシ~チアトゥラ間には、直行のミニバスが走っているので便利です。
トビリシ~チアトゥラ間のミニバスのトビリシ側の発着地は、市内北部のディドゥベ・バスステーション(Didube Bus station)。
広大な敷地の北側に位置するターミナルからの発着です。▼
チアトゥラでのトビリシ行きミニバス発着ポイントはチアトゥラの中心街ではなく、町の北側の坂の上にあるバスステーションです。【マップ 黄色】
サチヘレ~チアトゥラ間のミニバス
サチヘレ(Sachkhere / საჩხერე)~チアトゥラ間は、ミニバスが頻繁に運行されていて便利。
サチヘレ中心街のバスステーションから30分~1時間に1本の割合で出発しています。▼
▲ サチヘレ行きのミニバスのチアトゥラ側の発着ポイントは、町の北側のバスステーションではなく、チアトゥラの中心街にある広場です。【マップ 紫】
④クタイシ~チアトゥラ間の鉄道
クタイシ発着に限り、鉄道を利用してチアトゥラにアクセスすることも可能です。
クタイシの発着ポイントは、中心街に近いクタイシⅠ鉄道駅。▼
チアトゥラ側の発着ポイントは、中心街南側に位置するチアトゥラ鉄道駅です。【マップ 灰色】
この鉄道は、クタイシ~ゼスタポニ~チアトゥラ~サチヘレという路線で1日2往復しています。
2022年11月現在のスケジュールは、以下の通りです。
クタイシ発 | チアトゥラ着 | サチヘレ着/発 | チアトゥラ着 | クタイシ着 |
6:05 | 8:42 | 09:27 / 10:20 | 11:00 | 13:48 |
15:40 | 18:20 | 19:05 / 20:05 | 20:45 | 23:40 |
クタイシから日帰りで往復する場合は、太字の便の利用しか選択肢がありません。
ミニバス移動に比べると本数が少なく、所要時間もやや長めな鉄道ですが、スケジュール的にはかなり便利なのがメリット。
朝一番にクタイシを出て、丸一日をチアトゥラ周辺の観光に費やし、夜遅くにクタイシに戻るという理想的なプランが組めます。
また、クタイシ~チアトゥラ間の鉄道の運賃は、たったの1GEL(=¥50)というのも魅力的。
ネット予約等には対応しておらず、クタイシⅠ駅で直接きっぷを買う必要がある点にご注意を。
(チアトゥラ駅は無人駅できっぷ売り場がないので、帰りの運賃は鉄道内の機械で直接現金払い)
チアトゥラ観光のプランニングのコツ(日帰り?宿泊?/観光モデルプラン/注意点)
チアトゥラ観光は日帰り?宿泊?
チアトゥラ観光は日帰りで済ませるか、それとも現地で一泊するか…
旅行者を悩ませるところだと思います。
チアトゥラの市内観光に必要な時間は、3時間~4時間ほど。(どこまで細かくまわるかによる)
これをベースに、周辺のカツヒの柱とムグヴィメヴィ僧院の観光を合わせることになります。
結論から言うと、クタイシからの鉄道利用&各見どころをサクサクまわるという条件であれば、チアトゥラを日帰りで観光することは十分に可能です。
逆に、クタイシからのミニバス利用でのアクセスの場合は、始発が遅め&チアトゥラ発最終が早めなので日帰りは難しいでしょう。
クタイシ以外の町からチアトゥラを日帰往復するのは、現地ツアーを利用しない限り不可能。
必ずチアトゥラに一泊することになるでしょう。
クタイシ発着の場合でも、ゆっくりとこの町を満喫したいなら、やはりチアトゥラに宿泊するのが理想的。
チアトゥラ中心街にはいくつかのゲストハウスやエコノミーホテルが点在しているので、宿泊場所には困りません。
【チアトゥラの宿を料金確認・予約する!】
クタイシ発チアトゥラ日帰り観光のモデルプラン
ミニバス移動だと、クタイシ始発が9:00と遅く、チアトゥラ発最終も17:00と早め。
移動時間だけで2時間はかかるので、ミニバスでの日帰り往復プランは無謀です。
というわけでここでは、クタイシから往復鉄道利用でのチアトゥラ&周辺の三大スポットを制覇する日帰り観光モデルプランをご紹介!
- 6:05クタイシⅠ駅から鉄道に乗車
- 8:40チアトゥラ駅着
→バスステーションに徒歩移動(20分)
- 9:15カツヒの柱へバス移動
- 9:30カツヒの柱入口到着
→徒歩で移動(20分)
- 9:50カツヒの柱到着&観光
- 11:30観光後、カツヒの柱入口に戻る
→チアトゥラ方面へのミニバスに途中乗車
- 12:15チアトゥラ着&ランチ
→ランチ後、ムグヴィメヴィ僧院へ徒歩移動(20分)
- 13:30ムグヴィメヴィ僧院到着&観光
→観光後、チアトゥラへ徒歩移動(20分)
- 14:30チアトゥラ到着&市内観光
- 19:00チアトゥラ市内観光終了&ディナー
- 20:45チアトゥラ駅から鉄道に乗車
- 23:40クタイシⅠ駅到着
このクタイシ発日帰りプランであれば、チアトゥラ/カツヒの柱/ムグヴィメヴィ僧院の三大スポットを丸一日で満喫することができます!
クタイシ~チアトゥラ日帰り観光プランの注意点
一見すると完璧に見える、鉄道を利用してのチアトゥラの日帰り観光プラン。
しかし、いくつか注意点があります。
まずは、季節によってはかなりタイトなスケジュールとなってしまうこと。
日が長い夏場であれば、20:00頃までたっぷりとチアトゥラ市内観光をすることが可能。
いっぽう、秋~春にかけては17:00を過ぎると薄暗くなってしまい、それ以前の時間までにすべてをまわりきらなければなりません。
チアトゥラの町は高い岩山に囲まれた谷間のような地形であるため、日没時刻の1時間前にはすでに町が山影に入ってしまう点もお忘れなく。
のぶよが訪れた11月半ばの日没は17:45頃でしたが、17時前にはすでに町の大部分が影に覆われていました。
また、鉄道のスケジュール的に、まだ辺りが暗い時間帯に鉄道駅へ移動&待たなければいけないというのもネック。
ただでさえ場末感たっぷりなチアトゥラ駅は、日が落ちた後はホラー映画の世界に…
無事に23:40にクタイシⅠ駅に帰着した後も、市内交通はすでに走っていないため、宿泊先までタクシーを利用するか真っ暗な街を歩くことになります。
クタイシは決して治安が悪い街ではないものの、深夜近くなると人影はかなり少なくなります。
街灯が作動していないような道もあり、たむろしている若者の姿もちらほら…夜間の一人歩きはおすすめしません。
チアトゥラからクタイシに戻る鉄道の乗客はほとんどが男性で、酔っぱらって大声で喧嘩(?)する人も。(いつもそうなのか、たまたまだったのかは不明)
決して治安が良好といった感じではないので、女性一人での鉄道移動は細心の注意を払うことをおすすめします。
おわりに
生まれ変わりつつある町・チアトゥラの現在の状況を詳しくお伝えしました。
かつてこの町を訪れてソ連ケーブルカーに感動した往年の旅行者の中には、この変化を残念に思う人もいるかもしれません。
のぶよもはじめこそ「ソ連ケーブルカーが見たかった…」なんて思っていたのですが、チアトゥラのストリートを歩くにつれ、未来に向かって進もうとするこの街の新たな魅力に気付かされました。
ケーブルカーは新しくなろうとも、その車窓からの絶景は健在。
空中から眺めた、西日に染まってオレンジに輝く鉱山の町は、なんとも言えない情緒的な雰囲気に包まれていました。
チアトゥラは周辺の見どころへのアクセス拠点としても便利で、首都のトビリシと古都のクタイシの中間に位置する地の利も見逃せません。
トビリシ~クタイシと移動する途中に、1泊して観光していくプランもおすすめです!
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