こんにちは!ジョージア山間部のラチャ=レチュフミ地方をのんびりと開拓中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア西部の山岳地帯であるラチャ地方。
その最南部の標高1200mほどの高地に位置するエリアには、ジョージア人の間で人気の自然スポットがあります。
それが、シャオリ湖(Shaori Reservoir / შაორის ტბა)。
鬱蒼と生い茂った木々に周囲を囲まれたシャオリ湖は、季節を問わず美しい風景が見られることで有名。
春は新緑、夏は極上の湖ビーチ、冬は一面の雪景色…と、どの季節に訪れても楽しめるのですが、特に有名なのが秋のシャオリ湖。
「ジョージア髄一の紅葉の名所」とされ、赤や黄色、オレンジがグラデーションになった山々が青い湖面を彩る風景は、この世のものとは思えないような美しさです。
シャオリ湖へのアクセス拠点として便利なのが、ニコルツミンダ(Nikortsminda / ნიკორწმინდა)という小さな村。
ラチャ地方の典型的な田舎町といった雰囲気の小さな村には、中世ジョージアの宗教建築の傑作とされるニコルツミンダ聖堂が堂々とたたずんでいます。
ニコルツミンダ聖堂は、建造された千年前から現在に至るまでほとんど姿を変えていない、ジョージアにおいては稀有な建造物。
UNESCOの世界遺産候補リストにも入っており、近い将来に大きな注目を浴びることになるかもしれません。
今回の記事は、ラチャ地方を代表する見どころであるニコルツミンダ聖堂とシャオリ湖の観光情報を解説するもの。
ラチャ地方の自然も、中世から続く文化面も…存分に楽しめるおすすめのエリアへ、いざ!
ニコルツミンダ&シャオリ湖観光マップ
青:見どころ
紫:おすすめ宿
黄色:ニコルツミンダ中心部のバス停
ニコルツミンダの見どころ
ニコルツミンダ村の美しい風景
ラチャ地方の最も南に位置するニコルツミンダ(Nikortsminda / ნიკორწმინდა)は、標高1200mほどの高地で百数十人ほどの人々が暮らす小さな村。
イメレティ地方のトキブリとラチャ地方のアンブロラウリを結ぶ幹線道路沿いに位置しています。
かつてはこの道路が、山岳地域のラチャ地方と下界のイメレティ地方を結ぶ数少ない道の一つでした。
しかし2021年にサチヘレ~オニを結ぶ新しい道路が開通したことにより、この道路の交通量は激減。
幹線道路沿いの中継地点としてある程度栄えていたニコルツミンダ村の経済に、大きな打撃を与えているそうです。
ニコルツミンダ村の風景は、そんな人間の都合なんてお構いなしとばかりに、燦然と色めく木々に覆われた美しいもの。
昔ながらの民家が山の斜面に点在し、まるで童話に出てくる村のようなファンタジー感が漂います。
このときは11月初旬でしたが、まさに紅葉のピークそのもの。
鮮やかに彩られた小さな村は、絵画の世界そのものでした。
天気が良い日であれば、ニコルツミンダ村から北方向にコーカサスの峻険な峰々の姿を望めます。
雪をかぶった山々の向こうはもうロシア領。
コーカサス山脈に抱かれた山岳地域のラチャ地方に居ることを実感させられます。
ニコルツミンダ村の中心部はちょっとした広場のようになっており、他都市からのバスが停車するポイント。【マップ 黄色】
数軒の商店が営業していますが、銀行やATM、レストランの類は存在しません。
ニコルツミンダ観光&滞在時に必要なものや現金はすべて、大きな町から持参するのが鉄則です。
ジョージアで一番感動した聖地!ニコルツミンダ聖堂
ニコルツミンダを訪れる旅行者が100%足をはこぶことになるのが、村の中心部すぐそばに建つニコルツミンダ聖堂。(Nikortsminda Cathedral / ნიკორწმინდის ტაძარი)。【マップ 青①】
ニコルツミンダ聖堂の建設が始められたのが1010年のことで、完成は4年後の1014年。
クタイシを首都として中世ジョージア王国が成立したのが1010年なので、まさに中世ジョージア王国の興隆とともに誕生した建造物です。
ニコルツミンダ聖堂の正面上側のレリーフに描かれている人物は、バグラット3世。
聖堂の建設を命じた人物であり、中世ジョージア王国を成立させ初代国王の座に就いた人物でもあります。
11世紀以前のジョージア地域はアラブ人の支配下にありましたが、1010年に中世ジョージア王国として独立を成し遂げ、キリスト教文化の復活とジョージア地域の統一の礎を築き上げたのがバグラット3世。
ジョージアの歴史における超重要人物ですし、この人がいなければ現在のキリスト教国・ジョージアは存在していなかったかもしれません。
ニコルツミンダ聖堂の外壁部分はオリジナルのものがリノベーションされていますが、鉛筆型のドーム屋根部分は1000年前のオリジナルそのままという点に驚き。
中世以降は異民族の支配を受け続けたジョージアにおいて、ここまで建設当時のままの姿を残している宗教建造物は他に例がなく、たいへん貴重なものなのだそうです。
また、ニコルツミンダ聖堂の内部の造りも、やや独特な点が見られます。
それがガヴィト(gavit)と呼ばれる拝廊が設置されていること。▼
ガヴィトとは、かつてメインの聖堂部分に立ち入ることを許されなかった人々(身分が低い/洗礼を受けていないetc)でも、祈りを捧げることができるように造られた空間のこと。
12世紀以降のジョージアの教会建築ではガヴィトはほとんど見られませんが、お隣アルメニアの教会建築では定番の造り。
実は、中世ジョージア王国が成立する直前の10世紀後半まで、すぐ南で中世アルメニア王国が黄金時代を迎えており、ジョージアの大部分を支配下に置いていました。
そのため、中世ジョージア王国成立直後(11世紀初頭)の教会建築には、中世アルメニアの建築文化の名残が見られるものも多く、ニコルツミンダ聖堂もそれに当てはまります。
ドラゴンを退治した伝説で有名な聖ギオルギの姿が描かれたレリーフの扉を抜け、ガヴィトからメインの聖堂へと入っていきましょう。
黒い石を基調として閉塞感があったガヴィトの空間から、天井が高くのびた開放感あふれる空間に。
なによりも、周囲の壁すべてを覆いつくすフレスコ画が圧巻です。▼
壁や柱、天井のドーム部分の内壁にいたるまでとにかく360°すべて、びっしりと色とりどりのフレスコ画で覆いつくされているのです。
このフレスコ画は、聖堂の完成からおよそ600年後の17世紀になってから描かれたものだそう。
いずれも保存状態は良好で、色褪せたパステルカラーの作品の数々が素晴らしいです。
ニコルツミンダ聖堂のドーム屋根部分は六本の柱に支えられており、優雅なフォルムが目を引きます。
屋根の内側にもフレスコ画が描かれ、窓から差し込む自然光に優しく照らされる光景はとても幻想的。
聖堂の敷地はそれほど大きくはなく、30分ほどあれば見学は済んでしまうはず。
それでも、あまりに圧倒的なフレスコ画と神聖な雰囲気は、この場所を去ってしまうのがもったいないような気持ちを訪れる旅行者に抱かせます。
ニコルツミンダ聖堂は、UNESCOの世界遺産の暫定リストに入っているそう。
その理由も納得。圧倒的な聖地感と建築の素晴らしさに、ただただ感動させられてばかりだったので。
ジョージアの修道院や聖堂などはこれまで数多く訪れてきましたが、ニコルツミンダ聖堂は文句なしのBEST3に入る傑作。
ぜひこの場所に実際に立って、千年前からずっとこの場所に息づき続ける聖地の雰囲気にひたってほしいです。
↑ニコルツミンダ聖堂の外観と内部の動画。中に入ってフレスコ画が視界の限りにぶわあ〜って広がる瞬間は、何度見ても鳥肌立つ。 pic.twitter.com/nCOi9T1x5j
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) November 1, 2022
ジョージア有数の紅葉の名所!シャオリ湖
ニコルツミンダ村の南10kmほどの場所にある巨大な湖が、シャオリ湖(Shaori Reservoir / შაორის ტბა)。
シャオリ湖は、もともとこの場所にあった二つの天然の湖に手を加え、一つの巨大な湖としたもの。
南北に7.1km、東西に2.7kmの巨大な湖は、ラチャ=レチュフミ地方で最大。最も深い地点は14.5mの深さにもなるそうです。
年間を通してアクセス可能なシャオリ湖ですが、個人的にはやっぱり秋がおすすめ。
「ジョージアでも有数の紅葉の名所」と称されるその言葉に偽りはなく、どこを切り取っても絵画の世界そのままの風景が広がるためです。
シャオリ湖はとにかく広大なのですが、地元では有名なビューポイントがいくつか点在しており、日帰りならそれらを順番にまわるのが◎
ここでは、絶対に見逃したくない「シャオリ湖三大絶景ポイント」を紹介します!
シャオリ湖絶景ポイント①:ラチャ・スウィング
近年、ジョージア人の若者の間で話題沸騰中のRacha Swing。【マップ 緑①】
シャオリ湖の湖畔に設置されたブランコのことで、”I Love Racha”を意味するジョージア語が目印です。
「湖に向かってブランコを漕ぎながら、絶景映え写真が撮れる!」として、クチコミで話題となっているこの場所。
シャオリ湖西岸を走るメインの道路から800mほど脇道を入った場所にあります。
Racha Swingの周辺には名物のブランコ以外には何もなく、「写真撮影のためのスポット」といった感じ。
シャオリ湖の魅力の真髄は、まだまだこれからです!
シャオリ湖絶景ポイント②:湖中央の橋
「シャオリ湖の中で最も美しい風景が見られる」と言われるのが、湖中央部分に架かる橋付近。【マップ 緑②】
シャオリ湖には二本の橋しかかかっておらず、そのうち北側に架かるものを指します。
この橋付近を境目に、かつては二つの天然の湖が存在していました。
湖の形はこの橋の部分で大きくくびれており、その名残が感じられます。
湖中央部分の橋の周辺は、深い木々に覆われた神秘的な雰囲気のシャオリ湖のパノラマが広がる絶景ポイント。
紅葉のピークにあたる時期は、まるでマーブルチョコレートをこぼしたかのような色とりどりの木々が湖面を彩り、この世のものではないような美しい風景が見られます。
シャオリ湖絶景ポイント③:湖南側の橋
シャオリ湖の南端近くには、二本の橋のうちのもう一本が架かっています。
この湖南側の橋付近も、美しい風景が見られるポイント。【マップ 緑③】
先ほどの湖中央の橋付近の開放感にあふれた景色とは対照的に、どこかミステリアスな風景を見渡すことができます。
この橋から2kmほどさらに南に行くと、ラチャ地方とイメレティ地方を隔てるナケララ峠(Nakerala Pass / ნაქერალა)があります。【マップ 青②】
ナケララ峠には展望台があり、山の反対側のイメレティ地方のパノラマがどーん。
そこから5kmほど先には、ラチャ地方最南端に位置する「十字架の崖」ツフラジュヴァリがあり、時間に余裕があればぜひ足をのばしてみるのがおすすめです!
ニコルツミンダのおすすめゲストハウス
タクシーや車を利用すれば、ニコルツミンダとシャオリ湖を日帰りで観光するのは余裕。
しかし、この楽園のような風景が広がる小さな村でのんびりと宿泊していくのも良いものです。
個人でミニバスを利用してニコルツミンダとシャオリ湖、その先にあるツフラジュヴァリなどを訪れたい場合は、ニコルツミンダに宿泊するのが鉄則。
他都市から個人での日帰り観光は、スケジュール的にかなり厳しいためです。
ここでは、のぶよがニコルツミンダ村で宿泊したゲストハウスを紹介します。
【Guesthouse in Racha Mero】
・部屋タイプ:ダブルルーム1人利用
・料金:30GEL(=¥1500)
Guesthouse in Racha Meroは、ニコルツミンダ村でおそらく最安の宿。
村の中心部から幹線道路を1kmほど東に進んだ場所にあります。【マップ 紫】
一般の民家の二階部分を宿泊客向けに改装したもので、部屋も共用部分もとても清潔。
「どうせど田舎の村だから」と期待していなかったのですが、デコレーションもなんだかお洒落で、全体的に開放的な雰囲気が漂っています。
トイレとシャワーはいったん外に出てのアクセスとなり、冬場の夜は寒い思いをしてしまうのがややマイナス。
バスルームの設備ももうひと頑張りほしいところでしたが(シャワー用のカーテンがない等)、まあこの値段ならOKな範囲です。
二階には暖房設備はないものの、電気ヒーターを貸してくれるのでオフシーズンの滞在も安心。
キッチンは一階にあり、宿泊客でも自由に使用することができます。
ゲストハウスの家族は、お母さんと若い息子の二人暮らし。
どちらもとても柔らかく優しい人で(息子にだけ英語が微妙に通じる)、色々気にかけてはくれるもののガッツリ絡んでこないという、ちょうど良い距離感が心地良かったです。
ニコルツミンダ聖堂の観光にはもちろん、ゲストハウスの目の前をクタイシ行き/アンブロラウリ行きのミニバスが通過するので途中乗下車も余裕。
シャオリ湖やツフラジュヴァリ方面へ足をのばしたい場合は、理想的な滞在拠点となるはずです!
【この宿を料金確認・予約する!】
ニコルツミンダ&シャオリ湖のアクセス・行き方
ニコルツミンダ村へのアクセス方法は限られており、以下の2種類がメインとなります。
アンブロラウリorクタイシからこのエリアを日帰りで観光する場合はタクシー / ニコルツミンダに宿泊しながら数日間かけてじっくりまわりたい場合はミニバスの利用がおすすめ!
①タクシー
快適に移動したいなら、近郊の町からタクシーを利用するのがおすすめ。
ニコルツミンダ聖堂はもちろん、シャオリ湖に点在するビューポイントに立ち寄りながら移動できるのもメリットです。
・アンブロラウリ~ニコルツミンダ片道:20GEL(=¥1000)
・アンブロラウリ~ニコルツミンダ往復:40GEL(=¥2000)
・トキブリ~ニコルツミンダ片道:50GEL(=¥2500)
・トキブリ~ニコルツミンダ往復:100GEL(=¥5000)
・クタイシ~ニコルツミンダ片道:100GEL(=¥5000)
・クタイシ~ニコルツミンダ往復:200GEL(=¥10000)
イメレティ地方のトキブリ~ニコルツミンダ~アンブロラウリ間には、今回の記事で紹介している以外にもいくつかの見どころが点在しているのもポイント。
各見どころに立ち寄って観光しながら移動する場合は、タクシーを半日~一日チャーターしてしまうのが良いでしょう。
・アンブロラウリ~ニコルツミンダ~トキブリ間半日チャーター:200GEL(=¥10000)
・アンブロラウリ~ニコルツミンダ~トキブリ~クタイシ間一日チャーター:300GEL(=¥15000)
料金相場は時期や交渉、起点とする町によって大きく変わってくるので、上手に話し合いましょう。
②ミニバス(マルシュルートカ)
ニコルツミンダへ個人でアクセスしたい場合は、マルシュルートカと呼ばれるミニバスを利用します。
ニコルツミンダを経由する路線は、以下の2通りのみとシンプルです。▼
最も利用しやすいのはアンブロラウリ~ニコルツミンダ路線。
いっぽうで、クタイシやトキブリ方面からアンブロラウリ~ニコルツミンダ~トキブリ~クタイシ路線を利用して北上することも不可能ではありません。(タイムスケジュール的に不便ではあるけど)
アンブロラウリ~ニコルツミンダのミニバス
ラチャ地方最大の町であるアンブロラウリ~ニコルツミンダ間は、1日2往復のミニバスで結ばれています。
【アンブロラウリ~ニコルツミンダ便】
・運行頻度:1日2便
・所要時間:20分
・料金:2GEL(=¥100)
・スケジュール:
▶アンブロラウリ発:11:30 / 17:00
▶ニコルツミンダ発:9:00 / 15:00
アンブロラウリでの発着地は、町の中心にあるバスステーション。
ニコルツミンダ側では、聖堂近くの村の中心部の広場が発着地です。
イメレティ地方(クタイシ/トキブリ)~ニコルツミンダのミニバス
ラチャ地方の南側に位置するイメレティ地方の町(トキブリやクタイシなど)~ニコルツミンダ間を移動したい場合は、1日1往復のミニバスを利用します。
【アンブロラウリ~クタイシ便】
・運行頻度:1日1便
・料金:ニコルツミンダ~トキブリ7GEL(=¥350) / ニコルツミンダ~クタイシ10GEL(=¥500)
・スケジュール:
▶往路アンブロラウリ9:30発→ニコルツミンダ9:50通過→ツフラジュヴァリ入口10:15通過→トキブリ10:45通過→クタイシ12:00着
▶復路:クタイシ発16:00→トキブリ通過17:15→ツフラジュヴァリ入口通過18:00→ニコルツミンダ通過18:30→アンブロラウリ着19:00
クタイシでの発着地は、市内南部に位置する中央バスステーション。▼
トキブリで途中乗車/下車する場合は、鉄道前のバスステーションを経由しない点に要注意。
鉄道駅から50mほど西に離れた幹線道路沿いを通過するだけなので、合図して停車してもらう必要があります。▼
おわりに
ラチャ地方南部観光のハイライトとなる、ニコルツミンダとシャオリ湖の観光情報を徹底解説しました。
外国人旅行者の間ではまだまだ知名度が高くはありませんが、ジョージア人の間ではいずれも有名なスポット。
ニコルツミンダ聖堂が世界遺産候補となっていることもあり、今後脚光を浴びる可能性も大いにあります。
今回紹介した場所の周辺にも、見どころがいくつも点在していることも、おすすめする理由。
特に、シャオリ湖のすぐ南側にある「十字架の崖」ツフラジュヴァリに立ったときの感動(と恐怖)はものすごいです。
旅行者があまり訪れない穴場感も大きな魅力。
ラチャ地方を旅する際は、ぜひともゆっくりと時間をかけてこの地域の魅力を堪能してほしいです!
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