こんにちは!モルドバの首都、キシナウに滞在中の世界半周旅行者・のぶよです。(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ロシア生まれの詩人、プーシキンをご存知でしょうか。
19世紀の近代ロシアに生きた若き詩人は、モルドバの首都、キシナウに数年間滞在していました。
彼が滞在していた家は、キシナウの町はずれにミュージアムとして今も残っています。
今でも彼が紡いだ言葉に満ちた、「プーシキンの家ミュージアム」を紹介します。
プーシキンってどんな人?
ロシア文学に詳しくない人でも、彼の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
モスクワの裕福な家庭に生まれたアレクサンドル・プーシキンが詩の才能を表し始めたのは、少年時代のことでした。
若干20歳で初めての長編詩を発表し、成功を収めたプーシキンですが、次第に政治色が強い詩を書くようになります。
当時のロシア政府としては、作品を通して若者に直接的な影響を与えかねないプーシキンの政治思想は恐怖そのもの。
1820年に、プーシキンは当時のロシア帝国内の辺境の地であったモルドバのキシナウ (ロシア語読みはキシニョフ) に送られることになりました。
キシナウで詩人仲間を作り、のんびりと生活していたプーシキン。
1823年までのたった3年間のキシナウ滞在期間に、後の代表作となる作品を書き上げています。
クリミア半島やコーカサス地方に旅をしたり、現地で女性と恋に落ちたりと自由気ままに生きたプーシキン。
そんな彼の最期は、愛する妻ナターリアに執拗に言い寄る男との決闘の敗北によってでした。
当時の強権的な政治の下、自身の思想を貫き、自由と愛に生きた浪漫あふれる若き詩人。
彼が愛したキシナウの町に残るかつての家には、作品の下書きやメモはもちろん、彼が愛用していた家具や調度品などがそのまま残っており、現在でもプーシキンが紡いだ言葉の息吹が感じられる空間になっています。
キシナウのプーシキンの家ミュージアムに潜入
キシナウのメインストリートから徒歩10分ほど。
町はずれとも言えるような寂れた地区にぽつりと佇むのがプーシキンの家博物館です。
内部は、彼が実際に暮らした家部分と、彼が遺した作品などを展示するミュージアム部分に分かれています。
観光客の数はなんとゼロ。
受付ではおばあちゃん二人がのんびりとおしゃべりしているという、何とものどかなミュージアムです。
入場料10MDL (=¥65)を支払った後は、プーシキンの生い立ちや作品についての資料を読ませてもらい、いよいよ展示コーナーへ。
受付のおばあちゃんたちはロシア語のみ。
ジェスチャーで何とか会話が成り立つような状況でした。
展示コーナーに一歩足を踏み入れると、そこはプーシキンの言葉で溢れかえる独特な世界。
プーシキン自身が描かれた絵画や彼が実際に使用した万年筆、愛用していた生活用品まであらゆるものが展示されていて、興味深いです。
プーシキン直筆のメモ書きや、詩の下書きをした紙の数々。
ロシア語の筆記体で書かれていて、ほとんど読むことができません。
ほとんどのメモ書きには、人々の横顔を描いた落書きが。
きっと気分転換に描いていたんでしょう。
当時のプーシキンは、のちに自分が書いた詩の下書きがこのように展示されることになろうとは思いもしなかったでしょう。
何気なく残した落書きでさえ、人々の注目を集めることになるのですから…。
有名であることは大変なことです。
展示コーナーを一通り見終えると、プーシキンが実際に暮らした家部分に案内されます。
こぢんまりとした一階建ての家。
ここがプーシキンが実際に生活していた場所です。
内部には部屋が二つあるだけの質素なもの。
左側が寝室で、ベッドや机などが置かれていました。
右側はリビング兼応接間。洒落たランプなどが置かれていますが、かなり質素です。
驚くのが、トイレやお風呂などの設備がない点。
当時は水道が整備されていなかったキシナウ。
トイレは道端で、お風呂は近くの川で、というのが普通だったそうです。
日本に生まれて良かったと心から感じます(笑)
おわりに
ロシア文学好きなら見逃すことのできないスポットである、プーシキンの家博物館。
とても小さいので、30分もあれば周れてしまいます。
観光スポットや偉人の類が少ないキシナウでは、町を代表する有名人のような扱いをされているプーシキン。
(実際にはたった3年間の滞在ですが)
かつてのプーシキンのキシナウでの生活に思いを馳せながら、今も息づく彼の言葉に囲まれた空間に身を置くと、言語の壁を越えて伝わってくるものがあると思います。
キシナウ滞在中に、一度足をのばしてみてはいかがでしょうか。
インフォメーション
プーシキンの家博物館(CASA MUZEU ”ALEXANDR PUȘKIN”)
住所:Strada Anton Pann 19, Chișinău
営業時間:10:00~16:00 (木曜定休)
料金:10MDL (=¥65)
※写真撮影する場合、別途10MDLが必要
キシナウ中心街は、市内交通はもちろんモルドバ国内移動の拠点でもある場所。
トロリーバスやマルシュルートカ(ミニバス)が縦横無尽に走っているので、どこにでも簡単にアクセス可能です。
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