こんにちは!ジョージア滞在も二年半!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
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ジョージアに関しては、ニッチな旅情報から文化関連のアレコレまで、さまざまな記事を発信している当ブログ。
グルメに関しても多くの記事を書いており、地域ごとに大きく異なるジョージアの食文化についての記事も充実させてきました。
今回紹介するのは、数々の郷土料理を有するジョージア料理の中でも独特な存在であるメスヘティ料理について。
「メスヘティ料理?何それ?」という人がほとんどでしょうし、ジョージアの食文化にある程度詳しい人でも、実際に食べたことがある人は限られるのではないかと思います。
ジョージアの食文化といえば、「スパイスたっぷり + こってり + 重い」の三箇条が定番ですが、メスヘティ料理はその対極をゆく存在。
・小麦粉と乳製品を多用
・スパイスをあまり用いずあっさりした味つけ
・アルメニア北部の食文化の強い影響
地理的に近く、歴史的にも深い関わりがある、お隣アルメニアの食文化の影響が強く感じられるのがメスヘティ料理。
ジョージア料理の枠にとらわれないエキゾチックさと、珍しい食材を用いる点が特徴的です。
日本では(というか、ジョージア国内でさえも)ほとんど知名度がないメスヘティ料理。
この魅力あふれるエリアの食文化と、代表的なグルメを紹介していきます!
はじめに:メスヘティとは?
「メスヘティ」(Meskheti / მესხეთი)とは、ジョージア南部に位置する地域の歴史的な呼称。
現在の行政区分では、サムツヘ=ジャワヘティ地方(Samtskhe-Javakheti / სამცხე-ჯავახეთი)とされているエリアの北部にあたります。
メスヘティ地域で最大の人口を誇るのは、エキゾチックな雰囲気の城塞を有するアハルツィヘの町。
他にも、温泉リゾートのボルジョミや、中世の洞窟住居群・ヴァルジアなど、知名度が高い見どころがいくつも点在しており、観光エリアとしての注目も年々高まってきています。
メスヘティ地域は、歴史的にアルメニア人住民が多い地域。
中世~近代にかけてはオスマン帝国(現在のトルコ)による支配が強かったこともあり、イスラム教徒のジョージア人住民の割合が多かったことでも知られています。
ジョージア、アルメニア、トルコの異なる文化が混ざり合うメスヘティ地域は「コーカサス南部の交差点」そのもの。
ジョージアの中でも異色のエキゾチックな雰囲気が漂っており、訪れる旅行者に感動を与えます。
小コーカサス山脈によってジョージアの他エリアと地理的に隔絶されたメスヘティ地域では、民族の多様性もあいまって、独自の文化が発展してきました。
最も特徴的なのが、メスヘティ地域の伝統的な住居。
丘陵地帯に穴を掘って、その内側に石を積み上げて内壁を作り、半地下のようなスペースに居住エリアを設けているのです。▼
ジョージアの他エリアとは完全に異なる町の雰囲気や建築様式は、ジョージアでありながらも別の国に来たような感覚を与えます。
すでに「裏ジョージア感」がぷんぷん漂うメスヘティ地域ですが、その文化的なユニークさの象徴がメスヘティ料理。
「ジョージア料理」の一般的なイメージとは大きく異なる独自の食文化は、地理的に近いトルコ東部やアルメニア北部の食文化の影響を強く受けた、エキゾチックなものです。
というわけで、ここからはのぶよが実際に食したメスヘティ料理を一挙公開していきます!
本記事で紹介しているのは、メスヘティ料理のほんの一部だけ。
滞在期間が足りず、コンプリートすることができていません…
次回の訪問時に新しいメスヘティグルメを発掘次第、追加していきます!
メスヘティ料理①:ペノヴァニ・ハチャプリ
メスヘティ地域発祥のグルメの中で最もポピュラーなものが、ペノヴァニ・ハチャプリ(Penovani Khachaprui / ფენოვანი ხაჭაპური)。
「ハチャプリ」とはご存じ、ジョージアのチーズ入りパンのこと。
地域によって形や具が大きく異なり、ジョージアのご当地グルメの王様のような存在です。
メスヘティ地域のペノヴァニ・ハチャプリは、パンというよりもパイのようなサクサクの生地が一番の特徴。
薄くのばした小麦粉生地を何層にもなるように重ね、地元産のチーズを挟んでオーブンで焼き上げます。
ひと口食べてまず驚くのが、独特の食感。
一般的なハチャプリの食感の「もっちり」とは対照的な、サクサクとしたクロワッサンのような心地よい食感が楽しめます。
焼きたてのペノヴァニ・ハチャプリは、香ばしさが極んだ生地のサクサク感と中のチーズのとろ~り感が融合した絶品。
作り置きのものとは別次元の美味しさなので、ぜひ一度は体験してほしいです!
メスヘティ料理②:チャカプリス・ヒンカリ
「メスヘティ料理」の枠に含めて良いのかわかりませんが、ジョージアの他エリアで見たことがないグルメに出会ってしまったので、ここで紹介しておきます。
その名も、チャカプリス・ヒンカリ(Chakapulis Khinkali / ჩაქაპულის ხინკალი)。
「チャカプリ」とは、ジョージア山岳部の伝統料理の一つで、羊肉とタラゴンと梅のシチューのこと。
「ヒンカリ」とは、ジョージア風小籠包のことです。
字面だけ見ると「チャカプリのヒンカリ」と謎なことになっており、チャカプリのスープにヒンカリが入った状態のものが出てくるのかと思いきや…
登場したのは、ヒンカリの中に入る具がチャカプリになったものでした。
牛豚の合挽き肉(そこはさすがに羊肉ではない)に、フレッシュなタラゴンがたっぷり。梅の甘酸っぱい風味もふんだんに…肉汁のスープも含め、味は完全にチャカプリそのものです。
ほど良い塩気も、タラゴンの独特の風味も、梅の酸味も、すべてがバランス良く絶妙な美味しさ。
ジョージアの他地域では見たことがないレアなグルメなので、メスヘティ地域に来た際はぜひ!
メスヘティ料理③:アポフティス・ヒンカリ
続いて紹介するのは、メスヘティ地域らしさ100%の郷土料理。
その名も、アポフティス・ヒンカリ(Apokhtis Khinkali / აპოხტის ხინკალი)です。
ヒンカリといえば、ジョージア風の茹で小籠包のこと。
肉まんをひと回り小さくしたくらいのサイズが普通ですが、アポフティス・ヒンカリはひと口大のミニ餃子のような見た目です。
20個ほどの量で提供され、お隣トルコの「マントゥ」(ミニ水餃子)を思い出させます。
ジョージアでヒンカリの具の定番といえば、牛豚の合挽き肉。
いっぽうのアポフティス・ヒンカリの具は、「アポフティ」(Apokhti / აპოხტი)と呼ばれる牛の干し肉を1cm角に切ったものです。▼
ジョージア広しといえども、干し肉を使った料理はかなり珍しいもの。(というか、干し肉自体があまりポピュラーではないかも)
いっぽう、お隣のアルメニアやトルコでは「バストゥルマ(パストゥルマ)」という牛の干し肉が名物で、日常的に食されるもの。
こんなところからも、メスヘティ地域への隣国の食文化の影響を強く感じます。
アルメニアも、トルコ東部も、ここメスヘティ地域も、標高が高く冬の寒さが厳しい点は共通。
干し肉は冬場の保存食&タンパク源として重宝されてきた食材で、昔の人々の生活の知恵が感じられます。
アポフティス・ヒンカリには、マツォーニ(ヨーグルト)とニンニクを蒸留酒につけた液体をかけて食べるのがメスヘティ流。
ヨーグルトをソースに使う文化はジョージアにはほとんど根付いていないので、こちらもアルメニア風の食文化が感じられます。
ちゅるちゅるの生地と干し肉ならではの旨味と食感、ヨーグルトの酸味とニンニクの風味が見事にマッチして、もはや飲み物のよう…めっちゃくちゃ美味しいです。
スタミナもバッチリつくので、旅行のおともにはぴったり!…ですが、ニンニクの入れすぎにはご注意を。(のぶよは入れすぎて、自分の体から発せられるニンニク臭に数日間悩まされた…)
メスヘティ料理④:ソミニ
小麦粉文化が根付くメスヘティ地域の食文化の象徴が、ソミニ(Somini / სომინი)。
「メスヘティ風パン」とも称され、さまざまな形のものがあるそうですが、最もポピュラーなのは写真のようなドーナツ状のものです。
お隣トルコでポピュラーなゴマベーグル「スィミット」(Simit)に似ているように思いますが、メスヘティのソミニはふんわりと柔らかい食感が特徴的。ゴマが使われることもありません。
メスヘティは古くから小麦の生産がされてきた地域で、この辺りでしか採れない固有種もあるくらいなのだとか。
もっちりとした生地をひと口かじれば、小麦の芳醇な風味が口いっぱいに広がる天国へ…
「メスヘティ風ベーグル」としてジョージア全国展開してほしい!と願ってしまうほどに絶品でした。
メスヘティ料理⑤:トゥトマジ
メスヘティ地域の食文化の独自性が際立つ一品が、トゥトマジ(Tutmaji / თუთმაჯი)。
ヨーグルトベースのスープに、小麦粉生地を1cm角にちぎって油で揚げたものがトッピングされ、ディル(香草)が彩りを添えます。
「ヨーグルトのスープ」の時点で、すでにジョージアの食文化においては異色の存在のトゥトマジですが、驚くのはここから。
トゥトマジの具は、長くひらべったい小麦粉生地の麺が使用されるのです。
その様子はまるで「ヨーグルトうどん」そのもの▼
こんなジョージアの僻地でうどんに出会うことがまず驚きなのですが、完全なる麺料理である点にもびっくり。
ジョージア料理には固有の麺料理は他にいっさい存在せず、おそらくこのトゥトマジが唯一かもしれません。
「ヨーグルト × うどん」という組み合わせに拒否感を抱く人も多いかもしれませんが、これが意外とイケます。
例えるなら、豆乳ベースのスープに酸味を加えたような味わい。
麺の食感はもはや日本のきしめんそのもので、ちゅるっとしたのど越し&コシも感じられます。
日本人としてはぜひチェックしたい、ジョージアで食べるうどん。
新たな味への扉を開いてしまいましょう!
メスヘティ料理⑥:タタールベラギ
メスヘティ地域の小麦粉文化を象徴する料理がタタールベラギ(Tatarberagi / თათარბერაგი)。
薄くのばした小麦粉生地を小さく切り分けてお湯で茹で、バターで揚げた玉ねぎをトッピングした豪快な料理です。
好みでニンニクのチャチャ(蒸留酒)漬けやマツォーニ(ヨーグルト)、サワークリームをトッピングして全体を混ぜ合わせながら食べるのがメスヘティ流。
ちゅるんちゅるんの小麦粉生地と揚げ玉ねぎの香ばしい風味、ヨーグルトの爽やかさとニンニク独自の刺激が絶妙に混ざり合い、見た目からは想像できない美味しさに驚きました。
アルメニアの「タタール・ボラキ」
サムツヘ地方から地理的に近いアルメニア北部のシラク地方の郷土料理には、メスヘティ料理ノタタールベラギによく似た名前の「タタール・ボラキ」という郷土料理が存在します。
似ているのは名前だけでなく、材料や調理方法もほぼ同じです。
唯一の違いは、アルメニアのタタール・ボラキには揚げ玉ねぎはのらないこと。
その代わりにギー(ghee:溶かしバターの一種)やマツォン(ヨーグルト)、すりおろしニンニクをたっぷりとかけて食べます。
メスヘティ地域にはアルメニア系人口も多いため、もしかしたらアルメニアから入って来た食文化が「タタールベラギ」としてこの地に根付いたのかもしれません。
…が、ジョージアとアルメニアは常に食べ物や歴史の起源を争っている感があるので、ここは黙って「美味しい!」とだけ言っておくのが◎
メスヘティ料理⑦:メスヘティ風カダ
メスヘティ地域伝統のパンの一つが、メスヘティ風カダ(Meskhetian Kada / მესხური ქადა)
「え~?また小麦粉料理?」という声が聞こえてきそうですが、またまた小麦粉料理です(笑)
「カダ」(Kada / ქადა)とは、スヴァネティ地方やカズベキ周辺などジョージア北部の山岳部地域でポピュラーなパン(もしくは焼き菓子)のこと。
一般的には「カダ=甘い菓子パン」といった認識で、食事のメニューというよりもデザートの一種という位置づけです。
いっぽうのメスヘティ風カダは、まったく甘くないのが大きな違い。
薄いパイ生地に豚の脂身(もしくはバター)を溶かしたものを塗っては重ね、オーブンで焼き上げたものです。
その食感は、もっちり感とサクサク感が同時に味わえる不思議なもの。
パンのようでもあり、パイのようでもある…なんとも言えない独特の食感がクセになります。
豚の脂のほのかな甘みは感じられるものの、砂糖の甘味はゼロ。
とても芳醇な風味が特徴的で、あらゆる料理に合いそうです。
メスヘティ地域では、お祝い事の際にカダを焼くのが定番。
ドライフルーツを上にのせて焼き上げ、華やかな見た目にすることもあるそうです。
メスヘティ料理⑧:ロコキナ
メスヘティ地域の伝統料理、ラストを飾るのがロコキナ(Lokokina / ლოკოკინა)。
「ロコキナ」とは料理名ではなく食材名。
ある生き物を指すのですが、ジョージア国内ではここメスヘティ地域だけで食されます。
その正体は…▼
そう、ロコキナ=カタツムリのこと。
メスヘティ地域では、その辺の野山に生息している野生のカタツムリを採取し、お湯で茹でたり、ニンニク&ハーブでグリルしたりして調理するのです。
のぶよはこういう系の料理がダメな人間なので挑戦しませんでしたが、イケる人にはぜひ食べてみてほしいもの。
フランスのエスカルゴとメスヘティのロコキナ、どちらが美味しいのか感想を聞かせてほしいところです…(感想によっては次回のメスヘティ訪問時に頑張ってチャレンジしてみようかな…)
おわりに
日本ではほぼ知名度ゼロなメスヘティ料理について解説してきました。
まだまだ情報が少なく、観光客は少なめのメスヘティ地域。
グルメをきっかけとして、謎に包まれた部分が多いこのエリアに興味をもってもらえたら嬉しいです!
今回紹介したメスヘティ料理以外にも、まだまだ未知の料理がいくつかあるそう。
再訪した際には、全品コンプリートを目指そうと思います!(でもカタツムリはなあ…)
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