こんにちは!ジョージアで夏の終わりを満喫している、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
2025年夏のコーカサス山旅において文句なしのハイライトとなったのが、ジョージア北東部のトゥシェティ地方(Tusheti / თუშეთი)。
2025年現在でも電気もガスも通っていないこのエリアは、「ジョージア最後の秘境」と称されるほどの圧倒的な大自然の風景と、山岳地域ならではの伝統文化が色濃く息づいているエリアです。
そんなトゥシェティ地方ですが、カズベギやメスティアなどジョージアの名だたるコーカサス山岳エリアに比べると、訪れる旅行者の数はかなり少なめ。
その最大の理由となっているのが、アクセスの難易度の高さかもしれません。

トビリシなどジョージア平野部とトゥシェティ地方を結ぶ道路はたったの一本しか存在せず、しかもこの唯一の道路は「世界で最も危険な道の一つ」として知られるほどの悪路なのです。
ぼっこぼこでがったがたの悪路を4時間ほど走らなければ、トゥシェティ地方へアクセスすることは不可能。
しかも事故や自然災害のリスクも少なくないというわけで、このあたりがトゥシェティ地方が旅行者に敬遠されがちな要因でしょう。
しかしです。
「世界一危険な道」は、本当にそんなに危険なのでしょうか。


実はのぶよがトゥシェティ地方を訪問するのは、2020年に次いで今回(2025年)が2回目。
もちろんいずれの訪問時にも「世界一危険な道」を通り、無事に生還しています(だから今こうしてこの記事が書けている)。
2020年の初回訪問時にも「世界一危険な道」の移動レポートを書いたのですが、正直あの時はまじで無理かと思いました。
前評判通りのものすごい悪路&道幅の狭さで、本当に命の危険を感じる場面も数度あったためです。
しかし、この5年間で「世界一危険な道」を取り巻く状況は大きく変化しました。
結論から言ってしまうと、2025年現在の「世界一危険な道」はかつてほどの危険度ではなく、意外にも余裕で移動することが可能です。

とはいえ、やはり現在でも想像を絶するほどの悪路ではありますし、件数こそ減ったものの死亡事故も発生しているのは事実。
移動の際に利用する交通手段もかなりトリッキーであるため、事前に知っておかなければならないことは多くあります。
というわけで今回の記事は、「世界一危険な道」を通ってのトゥシェティ地方へのアクセス情報を徹底解説するもの。
交通手段の選択肢や、移動前の基本知識はもちろん、多くの旅行者にとって需要があるトビリシ~オマロ間の移動レポートまで詳細に解説しています。
「世界一危険な道」と言われると、やっぱりためらってしまうもの。
しかしながら、長くハードな移動の先には、トゥシェティ地方の素晴らしい風景が待っています!
ジョージア・トゥシェティ地方の「世界一危険な道」とは?

「世界一危険な道」とは、ジョージア東部カヘティ地方のクヴェモ・アルヴァニ村と、トゥシェティ地方のオマロ村を結ぶ、全長72kmに及ぶ未舗装道路のこと。
標高2826mの場所に位置するアバノ峠を越える山道で、ジョージア他地域~トゥシェティ地方を結ぶ唯一の道路です。
だいたいこういった「世界で最も○○な××」という枕詞がつくものは、実際には大したことがない場合も多いもの。
しかし、トゥシェティ地方へ続くこの道は、イギリスのニュース局BBCによって「世界で最も危険な道10選」と実際に報道されたこともあるほど。
そのように取り上げられた大きな理由が、土砂崩れなどの自然災害の多さと、年間数十人が命を落とすという事故の多さでした。


「世界一危険な道」は、急峻なコーカサスの山々の急斜面を縫うように敷かれたもの。
道幅はかなり狭く車一台が通行するのがやっとという箇所も少なくありませんし、ガードレールなどはいっさい存在しないためほんの少しハンドル操作を誤れば数百メートル下の谷底にどーん…というわけです。
また、標高が高い地域に位置していることもあり、冬季は完全に雪に閉ざされて通行不可能となるのも厄介。
雪がない夏季でも、雨によって緩んだ地盤が崩れたり、谷底に流れ落ちる滝が増水して通行できなくなったりと、予測不可能な自然災害のリスクが常に存在しています。


トゥシェティ地方と下界を結ぶ道はこの一本しか存在せず、現在でもトゥシェティの人々にとってはこの道が生命線となっているのですが、人間はどうしても自然には勝てないもの。
ソ連時代には社会主義的政策の下でトゥシェティ地方へ電気を引く計画もあり、「世界一危険な道」に沿うように送電線が設置されたのですが、あまりの工事の難航具合に計画は頓挫。
結局現在に至るまでトゥシェティ地方に電気が引かれることはなく、現在でも朽ち果てた送電線が緑の山々の中にたたずむ姿が見られます。
かつての「世界一危険な道」

のぶよが初めてこの「世界一危険な道」を通ってトゥシェティ地方にアクセスしたのは、2020年のこと。
当時の道はとにかくやばすぎるくらいの悪路が延々と続くもので、柵も何もない断崖絶壁ギリギリをゆっくりゆっくりと進むような移動でした。
当時は、4WD車以外でこの道を走るのは不可能だったもの。
「道を熟知しているトゥシェティ地方出身者の運転以外では絶対に移動するな」というのが、旅行者の間でも地元の人の間でも鉄則でした。


実際に、2020年当時の「世界一危険な道」では、死亡事故がかなりの頻度で発生していたもの。
夏場の4ヶ月間しか通行不可能な道であるにもかかわらず、数十人単位が毎年この道で命を落としていたそうです。
事故を起こしたドライバーの99%は、トゥシェティ地方以外の出身で危険箇所の知識がない人だったり、4WDではない車でツアー客を運んでいたトビリシの闇ツアー会社だったり、飲酒運転をしていた人だったり…といった感じ。
当時のこの道は、大袈裟でも何でもなく「世界一危険な道」だったのです。
現在の「世界一危険な道」

あの恐ろしい記憶から5年…再びこの道を通って移動するときがやって来ました。
正直、5年前の移動の恐怖と乗り心地の悪さと移動時間の長さが若干トラウマになっていたのぶよ。
しかし、トゥシェティの地元の人はみんな口を揃えて「前ほどは危険じゃなくなった」と言います。
「世界一危険な道」の危険度が下がったと言われる最大の理由が、2022年に完了した道路の拡張工事。
それまでは車1台通るのがやっとだった道幅は1.5倍ほどに拡張され、事故が多発していた箇所には迂回路が設置され、全体的にかなり通行しやすくなったのです。


もちろん道の大半は断崖絶壁を通るものではありますが、「道幅が広くなった=対向車が来てすれ違う際のリスクが激減=事故件数の減少」という流れになっているそう。
2025年現在でも未舗装のがったがた&ぼっこぼこ状態の道ではあるのですが、2022年以前に比べればこれでもかなり改善された方。
なんと、4WD車以外でも(頑張れば)アクセス可能という水準となっており、以前はトゥシェティ地方には存在しなかった軽トラや乗用車を見かけるようになりました。

2022年を境に、リスクが大きく減少した「世界一危険な道」。
しかしながら、事故件数はゼロとはいきません。
普通車があまりの悪路に立ち往生してしまう事案や、地面の段差に激突して走行不可能となる事案、対向車とすれ違う際にぶつかる事案など、軽い事故なら1週間に1回ほど。
落石に巻き込まれたり、谷底に滑り落ちて車が大破したり…など死亡者が出ないような大きな事故なら1ヶ月に1~2回ほど、2025年現在でも発生しています。
死亡事故に関しては、2024年に発生したのが最後だそう。
こちらはトビリシ出身の3人組ジョージア人が夜間に飲酒状態で運転していて谷底に落下して2人が死亡したもので、道路状況のせいと言うべきかどうかは微妙なところです。
移動のリスクはどれくらい?

というわけで「世界一危険な道」の移動は、以前に比べてかなりリスクが下がりました。
トビリシなど下界から普通車でやって来るジョージア人国内旅行者の数も近年は右肩上がりで、天気の良い日&道路状態が良い日であれば「なあんだ、ゆうほど危険じゃないなあ」という印象を持つかもしれません。
しかし先述の通り、事故は定期的に発生していますし、現在でもトゥシェティの人々はこの道を通る前には絶対にお酒を飲みません(他の道でもそうしてくれたら良いのに…)し、地元の人の運転以外では絶対に移動しません。

また、まとまった雨が急に降り出したり、濃い霧が発生することも多いのが山岳地域であるトゥシェティ地方。
雨や霧で視界が悪い中を無理して移動するのがとてつもないリスクなのはもちろん、雨が降った翌日などに地盤が緩んで路肩が崩れたり、土砂崩れが発生することも珍しくありません。
というわけで、のぶよ的に「世界一危険な道」を通ってトゥシェティ地方へアクセスする際の鉄則は以下の3点。
①雨の日の移動は絶対に避ける
②大雨が降った翌日の移動もできれば避ける
③トゥシェティ地方出身者の運転する車に乗る
あとは、山の神に祈るか、当ブログを熟読しまくりあげてのぶよの幸運のお裾分けにあずかるくらいしかありません。
トビリシ発着のトゥシェティ地方ツアーは安全?

近年、観光客数がうなぎ上りのトゥシェティ地方。
10人~15人ほどのジョージア人団体観光客が4WDやマルシュルートカ(!)を貸し切り、エリア内の小さな村を周るようなトビリシ発着のグループツアーもよく見かけます。
外国人グループツアーも増えてきており、トビリシにはトゥシェティ旅行を扱う旅行会社もいくつか存在しています。
移動手段や旅のプランを自分で考えなくて良い点と、トゥシェティ地方の各村間の移動に苦労しなくて済む点が、ツアー利用の最大のメリットと言えるでしょう
しかしながら、のぶよ的には現地ツアーを利用してトゥシェティ地方にアクセスするのはNG。
というのも、「そもそも現地ツアーでトゥシェティ地方の各村を30分ずつ順番に見て薄~く回ったところで何の意味もない」というのは前提として、日程上悪天候でも移動するしかなかったり、自分でドライバーを選べないなど、前の項で挙げた三か条を守れないため。
また、「ツアー=参加者が多い=総重量が上がって車両が不安定に=事故のリスクが上がる」と、物理的にもリスクが跳ね上がるでしょう。

「世界一危険な道」を通行する際に何よりも大切なのは、自分で減らせるリスクは極力自分で減らすこと。
ツアーは一見効率的で便利そうですし、もちろん多くの場合は何事もなく済むでしょう(だからツアーとして成り立っているわけで)。
しかしながら、天候や道路状態と相談しながら自分で判断してアクセスする場合よりも、事故リスクが跳ね上がることは承知しておくべきです。
クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WD利用時のアドバイス&注意点

というわけで、トゥシェティ地方へのメインのアクセス手段となるのが4WDのシェアライド。
「シェアライド」と簡単に書いていますが、いったいどういうシステムで運行されているのかイメージがつかみにくい人もいるかもしれません。
ここでは、トゥシェティ地方への4WDシェアライドの基本情報を解説していきます。
料金/所要時間/システム

トゥシェティ地方の中心的な村であるオマロへの4WDシェアライド利用の基点は、麓に位置するクヴェモ・アルヴァニという小さな村。
クヴェモ・アルヴァニへの行き方や、何故この村の発着なのか…などは後述しますが、とにかく「トビリシ発着ではない」という点だけは覚えておきましょう。
クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WDシェアライドの料金や所要時間は以下の通り。
・所要時間:3時間半〜4時間
・料金:一台貸し切り400GEL~500GEL(=¥20000~¥30000) / 一人当たり100GEL〜150GEL(=¥5000~¥7500)
所要時間に関しては、天候や道路状況によって大きく変わります。
中には「6時間以上かかってようやく到着した…」なんて旅行者もいるので、こればかりは運です。
また、シェアライドに使用される4WD車の定員は車種によって変わり、4人~7人。
以前は乗客の人数によって一人当たりの料金が大きく変わるシステムだったのですが、2025年現在は一人100GEL~150GELの固定価格帯が主流となっています。
4WDの運行時間帯&シーズン

クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WDシェアライドは、トゥシェティ地方への道が通行可能となる時期限定の運行。
年によって多少前後するものの、だいたい6月1週目から9月最終週の丸4か月間しか走っていません。
そもそも、トゥシェティ地方自体が冬場は村人が山を下りてしまうため、夏以外の季節は旅行自体が不可能です。
4WDシェアライドには決まったスケジュールがあるわけではありませんが、クヴェモ・アルヴァニ→オマロ方面もオマロ・クヴェモ・アルヴァニ方面も、基本的には午前中に出発するのがメイン。
正午を過ぎるとこの区間を移動する4WDシェアライドは激減し、16時以降の移動は絶望的だと考えておきましょう。
道中の休憩

以前は「世界一危険な道」には何もなかったため、クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4時間前後をぶっ通しで移動するのが定番でした。
しかし2025年現在は、最高標高地点であるアバノ峠に小さな掘っ立て小屋カフェができたこともあり、ちょうど中間地点となるこの場所で10分ほどの休憩時間をとるドライバーがほとんどです。
このカフェ以外に飲食ができる場所は存在せず、トイレが利用できるのもここだけ。
軽食を持参する&トイレは出発前に済ませておくなどの対策は必須です。
荷物スペース

4WDシェアライドはいわば一般の車であるため、荷物スペースがあることは稀。
基本的に自分の荷物を自分の足元に置くか、車の屋根の上にくくりつけた状態で移動することになります。
問題となるのが、悪天候時に4WDシェアライドで移動する場合(まあそもそも悪天候時にこの道を移動することをのぶよは心からおすすめしない)。
屋根の上の荷物はびしょびしょになってしまいますが、スーツケース等の場合はスペースがないため、大雨だろうと車内に置くことは不可能。
トゥシェティ地方にスーツケースで行くような馬鹿な旅行者もまあいないと信じていますが、最悪の場合でも自分が抱えた状態で移動できるバックパックでの移動が鉄則となります。
クヴェモ・アルヴァニ出発前に買い物&現金を下ろしておく
4WDシェアライドとは直接関係ないのですが、とても大切なことなのでここに書いておきましょう。
クヴェモ・アルヴァニを出発する前に、トゥシェティ地方旅行中に必要となる食糧や物資はすべて購入しておきましょう。
トゥシェティ地方では物資のほぼ全てをここクヴェモ・アルヴァニからの輸送に頼っているため、ありとあらゆる物の価格がジョージアの一般価格の2倍~3倍と目が飛び出るような値段。
また、商店の数や手に入る物の種類にもかなり限りがあるので、クヴェモ・アルヴァニ以降はちょっとした買い物にも困るレベルです。
また、出発前に絶対に忘れてはいけないのが、現金を大量に下ろしておくこと。
トゥシェティ地方には銀行もATMも存在せず、宿や飲食店やシェアライド自体もとにかく全てが現金支払いのみ。
つまり、「現金がなくなる=詰む」というわけです。
トゥシェティ地方到着後に残りの現金を常に考えながら旅するのは、正直かなりのストレスを伴うもの。
節約バックパッカースタイルの旅であろうと、最低でも1日100GEL~150GEL×滞在日数分の現金は必ず持参することを強くおすすめします(まあおそらくそんなに使わないけど、念のため多めに)。
クヴェモ・アルヴァニ村の中心部にはBank of GeorgiaのATMが一台あり、最悪ここでも何とかなりますが、ハイシーズンは同じ考えの旅行者たちがトゥシェティ地方への移動前に大量に現金を下ろした結果、ATM内に現金がなく下せない…という状況も。
やはり、トビリシなど大きな都市であらかじめ下ろしておくのが最も安心だと思います。
4WDシェアライド移動How To

どの町からオマロ&トゥシェティ地方を目指すにしても、基点となるのはクヴェモ・アルヴァニ(Kvemo Alvani / ქვემო ალვანის)という小さな村。
オマロへの4WDシェアライドは基本的に、この小さな村の発着となります。
どうしてこんな小さな田舎町から4WDが発着しているのかというと、クヴェモ・アルヴァニの人口のほとんどはトゥシェティ地方出身者で構成されており、人や物資の往来が多くあるため。
トゥシェティ地方への道は雪が積もると通行不可となり、冬季は完全に孤立してしまうもの。
それを避けて、トゥシェティの人々が冬を越すための別宅を作ることで形成された村がクヴェモ・アルヴァニなのです。
クヴェモ・アルヴァニへは、トビリシはもちろん、カヘティ地方最大の都市であるテラヴィからのマルシュルートカが発着しているので、個人でのアクセスも難しくありません。
トビリシ→オマロ方面の移動
多くの場合は、首都のトビリシからオマロを目指すはず。
トビリシ~オマロ間を直接結ぶ交通手段は存在しないため、トビリシからクヴェモ・アルヴァニへ移動→クヴェモ・アルヴァニからオマロへ移動…と、2ステップで移動する必要があります。
①オルタチャラ・バスステーションへ

トビリシ〜クヴェモ・アルヴァニ間のマルシュルートカは、トビリシ市内南部のオルタチャラ・バスステーション(Ortachala /ორთაჭალის ავტოსადგური)の発着。
旅行者にとってよりポピュラーなディドゥベ・バスステーションの発着ではない点に要注意です。
オルタチャラ・バスステーションにはトビリシ地下鉄は乗り入れておらず、最寄りの地下鉄イサニ駅(Isani)から徒歩(20分)か、市内路線バスを利用してのアクセスとなる点にも注意が必要です。
②クヴェモ・アルバニ行きマルシュルートカに乗車

トビリシ~アルヴァニを直接結ぶマルシュルートカは1日3往復のみのスケジュール。
いずれもトビリシ〜テラヴィ〜クヴェモ・アルヴァニを結ぶルートですが、テラヴィでは中心街のバスステーションを経由せずに幹線道路沿いを通るだけなので、道を知らない旅行者がテラヴィで途中乗車/下車するのは難しいでしょう。
こんな感じで、トビリシ~クヴェモアルヴァニ間の移動からしてすでに色々と不便な香りが…
数人で行動するなら、トビリシ→クヴェモ・アルヴァニ間はタクシーでサクッと移動してしまうのもアリだと思います。
トビリシ~クヴェモ・アルヴァニ間のタクシー料金相場は、片道1台で100GEL~150GEL(=¥5000~¥7500)ほど。
トビリシ市内どこからでも乗車できるので、不便な立地のオルタチャラ・バスステーションまでわざわざ行かなくても良い&早朝でも移動できるので、クヴェモ・アルヴァニに早い時間に到着できて4WDシェアライドを見つけやすいという大きなメリットがあります。
③クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間の4WDシェアライドに乗車

無事にクヴェモ・アルヴァニに到着した旅行者は、みんな同じ感想を持つはず。
「な、何もない…」と。
クヴェモ・アルヴァニの町には数軒の商店があるだけで、人影もまばらで何とも寂しい雰囲気です。
(夏場は多くの住人がトゥシェティ地方にある自宅へ戻って過ごすので、冬を越すための別宅が並ぶクヴェモ・アルヴァニの町はゴーストタウンのようになるため)
クヴェモ・アルヴァニの中心にある交差点付近が、オマロ行きの4WD車のシェアライド乗り場となっています。▼

とはいえ、オマロへの4WDシェアライドは公式なものではなく、常に4WDが待機しているわけでもないのが難点。
「4WDシェアライドの時間帯」の項で触れた通り、多くの4WD車のドライバーは午前中にクヴェモ・アルヴァニを出発してオマロへの長い道のりを走りたがるためです。
一般的に、朝早いほどオマロ行きの4WD車に乗れる確率が高いと言われていますが、トビリシを始発のマルシュルートカ(9:10発)で出発してもクヴェモ・アルヴァニ着は正午ごろとやや微妙な感じも…
ここからは運になってしまいますが、大抵の場合はまあ何とかなります。
他にオマロへ向かいそうな観光客の姿があれば声をかけてみるのも良いですし、交差点付近で4WDのジープを見かけたなら、かなりの確率でオマロへ行く乗客を待っていると考えて良いでしょう。
特に、7月や8月のハイシーズンに関しては、旅行客の需要にこたえてなのか午後でも4WDが発着しているそうなので、まず間違いなく乗れるはず。
反対に、6月や9月のローシーズンに関しては4WDシェアライドの数が激減するため、できるだけ午前中の早い時間にクヴェモ・アルバニへ到着しておかないと乗れない可能性が高いです。
オマロの宿泊先にドライバーを紹介してもらう方法も!
アルヴァニでの行き当たりばったりな、運にまかせたシェアライドに賭けるのが不安な場合は、オマロの宿泊先に事前に連絡して、その日クヴェモ・アルヴァニ→オマロ間を移動する予定のドライバーを紹介してもらうことも可能です。
オマロでは住人全員が知り合いのため、シェアライド専属でやっている人以外にも、村人の買い物を請け負うドライバーなどと繋げてくれる可能性もあります。
とはいえ、こちらの場合でも条件は同じで、4人以上集まらないと走ってくれません。
④オマロ到着

かなりの悪路を走り切ったあと、ようやく到着するのがオマロ村。
天候や運転手の腕にもよりますが、だいたい4時間前後の道のりです。
オマロはアッパー・オマロとロウワー・オマロという二つの集落に分かれており、それぞれ徒歩30分ほど離れているのがポイント。
クヴェモ・アルヴァニからの4WDシェアライドは基本的に宿泊先まで送ってくれるので、運転手にゲストハウスの名前を伝えておきましょう(オマロでは全員が知り合いなので、ゲストハウス名だけで必ず通じます)。
オマロ→トビリシ方向の移動

オマロへのアクセスに関して厄介なのは、行きに関してのみと考えてOK。
トゥシェティ地方の観光を終え、オマロ→クヴェモ・アルヴァニ(もしくはテラヴィやトビリシetc)へと山を下る際は、確実に4WDのシェアライドに乗ることができます。
先述の通り、オマロ(というか、トゥシェティ地方全体)は、人々は全員が全員のことを知っているという、超・密なネットワークが構築されている土地。
物資が限られているこの地域では、「いつ/誰が/何時ごろに山を下るか」ということを住民全員が把握していて、クヴェモ・アルヴァニでの買い物を頼んだり、乗せてもらったりすることで生活が成り立っています。
なので、オマロで宿泊しているゲストハウスの人に希望の日にちを伝えておけば、その日にオマロ→クヴェモ・アルヴァニ間を移動する運転手に確実につないでくれるというわけ。
しかしながら、当日の朝起きて「今からクヴェモ・アルヴァニへ戻りたい!」と言っても、4WDの席はすでに埋まってしまっている可能性が高いです。
遅くとも、オマロを出発する前日までには、帰りの4WDのシェアライドを確保しておくのがおすすめです。
オマロから山を下る4WDがクヴェモ・アルヴァニ止まりなのか、その先の大きな町であるテラヴィまで行ってくれるかは運転手の予定次第。
テラヴィまで行ってもらえる場合は、所要時間+1時間ほど&基本的には追加料金なしで行ってくれます(が、中には追加で20GEL!とか言ってくる運転手もいるらしい)。
正直、クヴェモ・アルヴァニには何もないので、テラヴィまで行ってしまって宿泊 or そのままトビリシ行きマルシュルートカに乗り換えてトビリシへ直接戻る方が効率的。
4WDがクヴェモ・アルヴァニ止まりだったとしても、クヴェモ・アルヴァニ~テラヴィ間には1時間に1本の頻度でマルシュルートカが運行(所要30分/3GEL=¥150/最終瓶16:00)しているので、個人で移動するのも簡単です。
テラヴィ~オマロ間の4WDシェアライド

オマロへのアクセス拠点となるのは基本的にクヴェモ・アルヴァニ一択。
しかし、カヘティ地方最大の町であるテラヴィから直接4WDを利用することも不可能ではありません。
テラヴィを拠点にオマロへとアクセスする場合は、テラヴィでの宿泊先に4WD車を手配してもらう or オマロの宿泊先にあらかじめ連絡してテラヴィ~オマロ間を移動するドライバーがいないか確認してもらうことになります。
テラヴィは大きな町なので、全ての宿の人がドライバーとのコネクションがあるわけではないのと、クヴェモ・アルヴァニ~オマロ間に比べるとマイナーなルートなため人が集まりにくいのがデメリット。
しかしテラヴィにもトゥシェティ地方出身者は比較的多くいるそうなので、タイミングが合えばオマロの自宅に戻る村人や他の観光客とのシェアライドに乗せてもらえるかもしれません。
希望の日時にシェアライドが走るかどうかは微妙で、こちらも一か八か。
しかし、どう考えてもクヴェモ・アルヴァニよりもテラヴィの方が格安な宿泊施設や見どころなどが豊富です。
テラヴィは、およそ200年前にジョージア東部で栄えたカルトリ=カヘティ王国の都だったという豊かな歴史もあり、美しい街並みと美食文化が魅力的な町。
4WDシェアライドの人数が集まるのを1日や2日待ちながら、テラヴィ市内や周辺を観光するプランもアリだと思います!
「世界一危険な道」実際の移動レポート

というわけで、ここまで読んだ人はおそらく実際にトゥシェティ地方へ4WDシェアライドを利用しての移動を考えている人のはず。
知識はもうOKですが、実際の移動がどんな感じなのか気になるのではないでしょうか。
ここでは、2025年の9月中旬に実際にこの道を移動した際のレポートを解説します。
のぶよの場合、今回は往復ではなく片道のみの利用(オマロ→テラヴィ方向)&4WDシェアライドではなくオマロ村で出会った旅行者に乗せてもらった(タダ移動わーいわーい!)という条件となりますが、道の感じなどはシェアライド利用時と全く変わりません。
オマロ村~アバノ峠間

オマロ村のゲストハウスで4WDシェアライドを手配してもらった場合、だいたい朝10:00が出発時刻の目安。
ドライバーは宿の前まで迎えに来てくれるので、荷物をのせていざ出発です!
オマロ村を出てからしばらくは、渓流に向かって平坦な道が延々と続くだけのルート。
ここではまだ「世界一危険な道」の雰囲気はいっさいありませんが、徐々に未舗装道路は上り坂となっていき、道幅がぐっと狭くなってきます。


とはいえ、このあたりはまだまだ余裕。
見通しも良いですし、車窓の先に広がるトゥシェティ地方の山の美しい風景を楽しむ余裕もあるほどです。
オマロ村を出発しておよそ1時間ほどで、目の前には山の斜面をグネグネと蛇行しながら上る急坂の風景が。
この坂の先にあるのが、アバノ峠です。


アバノ峠までの上り坂は、かなりの傾斜のヘアピンカーブの連続。
道の凹凸もものすごく、縦に横にとものすごい勢いで揺られながら走ることになります(ディズニーシーのインディージョーンズのアトラクションに乗ったことがある人は、あの状態で延々と走ると考えるのが一番近いかも)。

ヘアピンカーブを登れば登るほどに、車窓からはトゥシェティ地方側の美しい風景の全体を一望できるように。
こうして見ると、今自分がものすごい場所にいることに改めて感動させられます。
アバノ峠

オマロ村を出発しておよそ2時間ほどで、標高2826mのアバノ峠に到着します。
すでにかなりの揺れで若干グロッキー状態だったのですが、峠からの風景を一目見ると気分は一気に回復。
これまで走ってきたトゥシェティ地方側の道のりと、これから走っていくカヘティ地方側の道のりを、峠の南北それぞれに望むことができるのです。


クヴェモ・アルヴァニがあるカヘティ地方側は、地形的な要因なのか雲が発生しやすいそう。
この時もカヘティ地方側だけ雲に覆われており、峠を挟んだトゥシェティ地方側は雲一つない晴天という、不思議なコントラストが見られました。
アバノ峠付近では道はかなり広くなっており、車を停めるのも余裕。
峠を一望する場所には木製の十字架がたたずんでおり、絵になる風景が見られます。▼

十字架からすぐ近くには石造りの教会もあり、こちらも威厳が漂うたたずまい。
眼下に広がる雲の波と青い空を背景に、この危険な道を移動する人々を静かに見守っているかのようです。


十字架と教会は2020年当時にもこの場所にあったのですが、2025年のアバノ峠には何やら見慣れない建物が。
標高3000m近いこの場所には似つかない粗末なプレハブ小屋が掘っ立て小屋カフェとなっており、コーヒーや紅茶などの温かい飲み物から、コトリ(トゥシェティ風ハチャプリ)やスイーツなどの軽食類までを購入できます。

この掘っ立て小屋カフェは昨年(2024年)にオープンしたばかりだそう。
長い道のりのちょうど中間地点に位置していることもあり、この道を移動する車の大半がここで休憩をしていきます(ここで商売するの、結構スマートかもしれない)。


カフェからの眺めはとにかく最高のひとことで、トゥシェティ地方側の山々もカヘティ地方側の山々も一望する絶景がウリ。
ドリンクやフード類の料金も立地を考えるとかなり良心的な方なので、何か購入してほっこりしていくのも良いかもしれません。

なにより驚かされたのが、この掘っ立て小屋カフェを一人で経営している若い女の子は、なんとこの小屋の中に住んでいるのだそう。
小屋の中には生活感がただよい、外に山積みになった薪の量を見るだけでもかなり過酷な住環境であることは間違いありませんが、人とは違うビジネスで成功するためには仕方のないことなのかもしれません…
アバノ峠~クヴェモ・アルヴァニ間

アバノ峠の絶景と掘っ立て小屋カフェでの時間を楽しんだら、いよいよカヘティ地方側へと下っていくとき。
トゥシェティ地方側とは異なる、深い谷間となっている地形のためか、こちら側は霧の発生率が高いことで知られています。
のぶよが移動した際も、アバノ峠から30分ほどの区間は結構な霧が立ち込めており、なかなかに恐怖でした。


霧が薄まった後も、油断は禁物。
トゥシェティ地方側に比べて、道路の状態はましではあるものの道幅が狭い箇所がかなり多いため、対向車が来た際などはヒヤリとさせられます。
実際に「世界一危険な道」における死亡事故の半分以上は、このカヘティ側で発生しているのだとか。
車窓のすぐ先でぽっかりと口を開ける深い谷間を眺めていると、「一寸先は闇」という言葉が頭に浮かんできます。
アバノ峠を出発してからおよそ1時間。
それまでのがったがた&ぼっこぼこの道が急にスムーズになり、すいすいと走れるようになります。
そう。以前はなかった舗装道路区間に入ったのです。▼

もうここからクヴェモ・アルヴァニまでの15kmほどの区間は完全に舗装道路。
全区間が舗装されるのはまだまだ先のことでしょうが、たったの5年で大きくインフラ面が向上していることに驚かされました。
トゥシェティ地方が「ジョージア最後の秘境」と呼ばれなくなる日もそう遠くはないんじゃないかと、嬉しいような寂しいような気分に…

のぶよの場合は、乗せてくれた旅行者がクヴェモ・アルヴァニではなくテラヴィに行くというので、そのまま乗せてもらうことに。
アバノ峠での15分ほどの休憩も含め、オマロを出発してからテラヴィに到着するまでだいたい4時間半ほどの旅でした。
おわりに
トゥシェティ地方への唯一の道である「世界一危険な道」に関する最新情報アレコレと、実際にこの区間を移動したい人向けの超詳細な情報をまとめてきました。
以前なら「トゥシェティ地方へ行くなら命の覚悟を…」とややネガティブ気味に言っていたのですが、2025年になった今は「トゥシェティ地方、格段に行きやすくなったのでぜひ!」と大声でおすすめできます。
かつては、この道のスリルやリスクも含めてのトゥシェティ地方旅行だったのですが、もはや「世界一危険な道」とは呼べないような気も。
それほどに、つい5年前とは比較にならないレベルで道路状況は改善しています。
というわけで、「トゥシェティ地方、行ってみたいけど事故で死にたくない…」とためらっていた人へ…今はもう(たぶん)大丈夫です!
しかしながらリスクはゼロではないので、本記事で解説したアドバイスや注意点はしっかりと理解した上で、ジョージアに残る秘境エリアの旅を存分に満喫してください!
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