こんにちは!セルビアに1か月間滞在した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
セルビアという国に対して、どんなイメージがあるでしょうか。
名前を聞いただけで「うわあ、オシャレ!」とか「行きたい!」と思う人は、あまり多くないでしょう。
セルビアの有名観光地の名前が答えられる人も、かなり少数派なのではないでしょうか。
バルカン半島中央部に位置する内陸国・セルビアは、現在でこそヨーロッパの小国として収まっているものの、かつてはユーゴスラビア連邦の中心的役割をはたしていた国。
ソ連とは一線を画した共産主義が敷かれ、独自に発展した社会生活が営まれていたものの、1990年代に入ると周辺国との戦争に次ぐ戦争の歴史をたどりました。
EU、NATOともに未だに非加盟で、独自路線を突き進むセルビア。
西ヨーロッパ諸国からは、いまだに何だかきな臭い国という烙印を貼られていますし、周辺の旧ユーゴスラビア諸国からは現在でもとても評判が悪い国です。
「セルビア=旧ユーゴスラビアの中心だった国」と聞いて、良いイメージが浮かぶ人は日本人の間でも多くないでしょう。
しかしです。
セルビア、本当に素晴らしい国だったんです。
実は今回の滞在がセルビア二回目となったのぶよ。
そうです、リピーターなんです(笑)
日本では全く知られておらず、西側諸国からも周辺諸国からも何となくイメージが悪いセルビア。
今回の記事では、「セルビアへの旅行&観光をおすすめする10の理由」と題して、その隠れに隠れた魅力の数々を少しでも多くの人に伝えられればと思います。
1.歴史の東西交差点・ベオグラードが深すぎるから
「東と西が交差する町」と表現される町が、一体この世界にはいくつあるのでしょうか。
「東洋と西洋が交わる町」イスタンブール
「東西文明の交差点」トビリシ
「東西が統一された町」ベルリン
どれも確かに、歴史的・文化的に東と西が交差した場所であることには間違いありません。
しかしながら「歴史の東西交差点」とも言われるセルビアの首都・ベオグラードは別格です。
西ヨーロッパ諸国、ロシア、トルコなどのちょうど真ん中に位置するこの町は、幾度となく大国間のパワーゲームの舞台となった場所。
ドナウ川を境に、オスマン帝国とオーストリア=ハンガリー帝国に町が二分されていたという歴史もあり、かつての緊張状態を表すかのように巨大なカレメグダン要塞がそびえ立っています。
その後はユーゴスラビア連邦の首都として、共産主義的な町並みが整備されたベオグラード。
現在ではバルカン半島最大の都市として新旧が交ざった町づくりが進められており、セルビア国内はもちろん海外からの観光客でも賑わうメガロポリスとなっています。
世界中から人々が集まる「東西の交差点」としての歴史はこれからも続いていくのでしょう。
2.中欧風の可愛い町並みがあるから
セルビア北部に位置するヴォイヴォディナ自治州は、オーストリア=ハンガリー帝国の影響力が強かった地域。
中欧らしい優雅な文化の名残は、その町並みに顕著に見ることができます。
セルビア第二の都市であるノヴィ・サド(Novi Sad)は、洗練された中欧風の町並みが美しい町。
人々の気質もかなり開放的であると言われ、バルカン半島の国というよりもスロベニアやハンガリーなどに近い雰囲気が感じられます。
ノヴィ・サド近郊にあるワインの名産地、スレムスキ・カルロフチ(Sremski carlovci)の可愛らしい町並みも見逃せません。
整備されすぎた可愛らしさではなく、ちょっとボロボロだけど素朴な可愛らしさがある町並みは、セルビアらしいと言えばそうでしょう(笑)
ベオグラードから1時間ほどでアクセスできる、これらヴォイヴォディナ自治州の町。
たった1時間でここまで町の雰囲気が変わる点に、セルビアという国の奥深さが感じられはずです。
3.イスラム風の町並みだってあるから
セルビア北部がおとぎの国のような中欧風な町並みだとしたら、オスマン帝国支配下にあったセルビア南部は完全なるイスラム風。
コソボとの国境に近いノヴィ・パザル(Novi Pazar)は、お隣ボスニア・ヘルツェゴビナの首都・サラエボを小さくしたような安定のイスラム感漂うエキゾチックな町並みが魅力的です。
(ノヴィ・パザルの人々は自らの町を「リトル・イスタンブール」と表現しますが、それはさすがに本家に失礼だと思います(笑))
町並みは完全にイスラム圏のものなのに、ノヴィ・パザルではキリスト教徒(セルビア正教)の人々も多く生活しています。
イスラムの雰囲気しかない町で、教会に通ったりテラスでお酒を楽しむ人々の姿が見られるという不思議な光景が広がります。
この宗教(や民族)の違いが、お隣のコソボとの紛争を始め多くの戦争を生み出してしまい、「バルカンの火薬庫」と呼ばれるほどに混迷を極める結果となってしまったのですが、現在ではかつての民族・宗教対立は目に見えないレベルにまで落ち着いてきています。
(もちろん根強く残ってはいるでしょうが)
コソボとの国境付近とはいえ、完全に安全な滞在ができるノヴィ・パザル。
「イスラムなセルビア」を感じたい人にはおすすめの町です。
4.本当の大自然が味わえるから
セルビア=自然というイメージになかなか結びつかないのは、きっとのぶよだけではないはず。
しかし、実際にいろいろとまわってびっくりしました。
セルビアは、ヨーロッパ有数の自然大国なのです。
内陸国というお国柄、ビーチなど海の自然は望めませんが、山や川、湖などの緑あふれる大自然に関しては、バルカン諸国の中で頭一つ抜きんでています。
世界遺産にも指定されている、セルビア西部のタラ国立公園が良い例。
タラ山脈の深い山々の中に点在する大小さまざまな湖や滝と、そこから湧きだした水が流れるタラ川。
こんなに人里離れた山奥でも、セルビア正教の修道院が点在していて、現役で生活をしている修道僧がいるという点も特筆すべき点でしょう。
観光地化がされていないセルビアらしく、国立公園内のトレッキングルートはしっかりと整備されているとは言い難い状態ではありますが、それこそが穴場である証。
セルビアに来たなら、誰も訪れたことがないような本当の大自然の中に身を置いてみましょう。
5.セルビア料理を食べると肉の本来の美味しさに気付けるから
「セルビア料理って、どんな料理?」
と不思議に思う日本人のみなさんに、一文字で伝えさせていただきます。
肉
です(笑)
肉しか食べていないセルビア人(冗談ではありません)。
一見、食文化が貧相なのでは?と穿った見方をしてしまいそうになりますが、それは違います。
肉しか食べないセルビアの人々は、その肉をできるだけ美味しく食べることに命をかけているのです(笑)
お隣のブルガリアやルーマニアのように、焼いておいた肉を再び温めて提供することは絶対にありませんし、南のマケドニアやアルバニアのようなトルコ料理風に煮込まれることも稀。
そこら中にあるストリートフード店では、肉を焼く専用の鉄板があり、手作りのチェヴァピ(棒状のケバブ)やプリスカヴィツァ(ハンバーグ)を豪快に焼いて提供してくれるのです。
「肉はグリル一筋!焼きたてで出す!」という男気溢れる料理、それがセルビア料理なのです。
余計な味付けがされていない焼きたての肉は、とにかくジューシーで旨味がたっぷり。
東欧、バルカン諸国、トルコと旅をしてきたのぶよですが、グリルした肉が最も美味しいのは断トツでセルビアです。
セルビアのすごいところはそれだけではありません。
なんと、この焼きたてジューシー肉料理を200円ほどで、しかも24時間いつでも食べられるのです。
飲んだ後の〆の肉という需要に対応するためか、多くのストリートフード店は24時間営業なのですが、何もベオグラードだけではありません。
地方都市へ行こうとも、必ず24時間焼きたての肉を提供している店があるのです。
焼きたて、手作り、いつでも。
と、肉好きにはたまらない三拍子揃った(肉)食文化を誇るセルビア。
セルビア旅行後は、もう他の国のお肉なんか食べられないお口になってしまっているかも…。
6.セルビア語を知れば四か国語話者になれるから
やれ、バイリンガルだ、英語教育の重要性だ、第二外国語だ、と外国語教育の大切さが訴えられて久しい日本ですが、それに全く伴わないのが英語力。
「簡単な会話すらできないのに、バイリンガルなんて絶対無理!ましてやマルチリンガルなんて…」
と思っている人は、セルビア語を勉強してみてはいかがでしょうか。
実はセルビアは、国民の100%が最低四か国語話者という恐るべき国なのです。
とは言っても、セルビア人全員が言語の才能に恵まれているわけではありません。
セルビア語が話せれば、クロアチア語、ボスニア語、モンテネグロ語の周辺諸国の三言語が自動的に話せるのです。
実はこれにはからくりが。
セルビア語、クロアチア語、ボスニア語、モンテネグロ語と、四言語の名前自体は異なるものの、実際は99%同じ言語であるためです。
大阪弁と神戸弁の違いくらいだと考えて差し支えないでしょう。
これら四つの言語が話される国々は、ユーゴスラビア連邦という一つの国を構成していたメンバー。
もともと同じ国だったのですから、同じ言葉が話されていても何も不思議ではありません。
数々の戦争や政治的・民族的対立によって、四つに分裂してしまったかのように見えるこれらの言語。
「なんだ、でも結局は同じ言語ってことでしょ?」と考えるのは時期尚早と言うもの。
というのも、セルビア風のキリル文字表記と西欧風のラテン文字表記の二つが存在し、各国の民族や世代、対セルビア感情によって、どちらの文字で表記されるか変わってくるというトンデモな言語であるためです。
知れば知るほど面白いセルビア語(正式には「セルビア・クロアチア語」と言います)。
バルカン半島の複雑な歴史や民族分布を知るための手がかりとなることは間違いありません。
7.山の中の映画の世界を旅できるから
共産主義時代のせいか、無骨で無機質なイメージがあるセルビア。
しかしながら、映画の世界に迷い込んだようなロマンティックな体験ができることはあまり知られていません。
セルビア西部、モクラ・ゴラ(Mokra Gora)村には、エミール・クストリッツァ監督が築いた映画村「クステンドルフ」という場所があり、山の中にある映画の世界そのままの町並みを訪問することができます。
クステンドルフは、クストリッツァ監督の代表作である「ライフ・イズ・ミラクル!」の撮影のために造成された人工の村。
古き良きセルビアの山村の雰囲気を演出する木造の家々が建ち並び、ファンなら絶対に楽しめる小ネタも満載な場所となっています。
撮影終了後にこの村を気に入ったクストリッツァ監督は、なんと村ごと買い取って現在でも居住しているという後日談付き。
趣味全快のミニシアターでは彼の姿が良く見かけられるそうです。
モクラ・ゴラには、他にもシャルガン8という狭軌鉄道も走っていて、こちらも観光客に大人気のアトラクション。(観光客といってもほぼセルビア人)
大自然の中をガタゴトと走るレトロで可愛らしい鉄道も、映画村と同様に非日常の旅を演出してくれる存在です。
8.本物の秘境があるから
「ヨーロッパ最後の秘境」というキャッチコピーが使われる場所のほとんどが、秘境でもなんでもないただの観光地となってきている今日この頃。
しかしながら、ヨーロッパにありながらも期待を裏切らないのがセルビアと言う国。
セルビアで「秘境」と言えば、ガチの秘境を意味します。
セルビア西部にあるウヴァツ自然保護区域もそんなガチ秘境の一つ。
切り立った山々に囲まれた谷を流れる川は、まるで大蛇が地を這っているかのようです。
公共交通手段は存在せず、最寄りの村から15kmほど歩くかヒッチハイクを上手にするかしかアクセス方法がないウヴァツ。
英語で個人での行き方を調べても「レンタカーで行きましょう」と言われるレベルです(笑)
だからこそ、苦労してたどり着いた先にある絶景は感動すること間違いなし。
「秘境(バスでアクセス可能)」を売りにするスポットが可愛らしく思えるほどの本物の秘境は、セルビア観光をきっと忘れられないものとしてくれるでしょう。
9.観光スポットの多くが無料だから
セルビアがすごいのは、観光スポットとされる場所の多くが入場無料で、自由に立ち入りができる点。
自然スポットが無料なのは言わずもがな。
(お隣の「バルカン半島一の怠け者」モンテネグロでは国立公園入場料をとってきます)
先述のベオグラードにあるカリメグダン要塞や、「川の町」ウジツェを一望する歴史ある城塞、国中に点在する修道院の多くも無料です。
周辺の国でも無料の観光スポットがある国もあるのですが、いかんせん整備がされていないのが普通。
しかしセルビアの場合は、無料なのにちゃんと整備されているのです。
落下防止用の柵があったり、遊歩道が整備されていたり。
いったいどこからそのお金が出てくるのかはセルビア七不思議の一つですが、旅人的には無料に勝るものはありません。
ガッツリ観光しても出費がゼロというのは大きなメリットだと思います。
10.全く観光地化されていない国で、優しい人々に出会えるから
セルビアの周辺国からの四面楚歌感は半端ではありません。
古くからセルビアとは犬猿の仲であるアルバニア
(セルビア的には)勝手に独立宣言をしたコソボ
戦争による憎しみが未だに癒えないクロアチアとボスニア
いい加減縁を切りたいモンテネグロ
バルカン戦争でマケドニアを取られたことを根に持つブルガリア
セルビアのEU入りは断固阻止したいハンガリー
…などなど。
バルカン諸国&東欧は全て制覇したのぶよですが、セルビアの周辺諸国からの嫌われ者っぷりはすさまじいものがありました。
周辺国から嫌われ、西側諸国からはきな臭く思われているセルビアに観光客が集まるはずもなく、全くもって観光地化が進んでいないのが現状です。(ベオグラードの一部を除く)
裏を返せば、観光地化されて久しいクロアチアやハンガリー、ボスニアなど周辺の国々とは異なり、素顔のセルビアの良さに触れるチャンスがまだ残っているということ。
実際にセルビアを旅していると、全く英語が通じないことに驚くことでしょう。
のぶよの感覚的には、ベオグラード以外のセルビア地方部で英語が話せる人に出会える確率は、九州の山奥でフランス語が話せる人に出会える確率と同じくらいだと思います(笑)
言葉が通じなくても、なんとかしてしまうのがセルビア人。
ユーゴスラビア時代に培ったリーダーシップなのかわかりませんが、とにかくよく喋ります。(セルビア語で)
ベオグラードでは外国の文化に対して開放的&興味津々な人が多いのですが、地方部でも閉鎖的な感じがせず、どこかオープンな雰囲気なのもセルビアの良いところ。
「旧ユーゴスラビアのくたびれた田舎町」をイメージしていると、そこで暮らす人々のエネルギーや温かさにびっくりするはずです。
セルビアという国が、複雑な歴史をたどってきたのは事実でしょう。
しかしながらそこで暮らす人々は、古き良きバルカン半島流のホスピタリティーあふれる人ばかり。
言葉は通じなくても、とりあえず出されたラキヤ(プラムの蒸留酒。たいがい自家製で、みんな自分の家のものが一番と思っている)をクイッと飲んでおけば、温かく迎えてくれることは間違いありません。
(そしてもう一杯出てくる)
おわりに
「怖い国」「戦争を起こした国」「そもそもどこ?」と、散々な評判&無知にさらされているセルビア。
実際に行ってみないとわからない、セルビアの魅力をお伝えできたなら嬉しいです。
ベオグラードだけを見て、この多様な文化あふれる国を語ることなど不可能。
セルビアを旅する際は、是非日程に余裕をもって行きましょう。
良い意味で想像を裏切られる国として、きっと心に刻まれるはずです。
コメント
のぶよ様
いつもツイッター拝見してます。
私は、セルビア語を独学で学んでいる者です。
スレムスキ・カルロヴィチ、懐かしいなぁ~。
セルビア、ホント、良い所ですよね!
他のブログ記事も、これから読ませて頂きます!
のぶよ様が健康で、
ますますご活躍されますように!
Keiichi様
コメントありがとうございます!
Twitterではいつもお世話になっております。セルビア語を独学とはなかなかの強者ですね(笑)
セルビア訪問時はほとんど事前知識がなく、ベオグラードくらいしか思い浮かばない程度だったのですが、実際に現地入りするとたくさんの見どころが点在していることに驚き、観光地としてのポテンシャルの高さを感じたことを覚えています。
現状ではなかなか簡単に旅行や長期滞在などがしにくいものと思いますが、一刻も早く以前のように自由に移動できる時が戻ってくることを願います!