こんにちは!ジョージア東部カヘティ地方にのんびり滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
カヘティ地方と言えば、ジョージアの一大ワイン産地として名を馳せるエリア。
世界的な大規模ワイナリーから家族経営の小さなワイナリーまで、とにかく数多くのワイナリーが点在しており、好みの場所を数ヶ所まわるワインツーリズムが人気となっています。
今回紹介するのは、そんなカヘティ地方のワイナリーの中でも一風変わったTemi communityという場所です。

Temi communityがどんな場所であるのかを一言で説明するのは難しいもの。
伝統のクヴェヴリ製法で作られたワインと自家製のグルメが楽しめる一般的なワイナリーという側面もありますが、「community =共同体」というネーミングに見られるように、普通の商業ワイナリーとは異なる側面もあります。
そのあたりは後で解説するとして、私たち訪問者側にとっては「クヴェヴリワインと自家製料理が楽しめるグルメスポット」という認識でとりあえずOK。
ここのワインはどれも素晴らしい品質で、敷地内で栽培された食材を用いた食事も素晴らしいのです。


今回の記事は、ジョージアのワイナリー初心者にもおすすめなTemi communityの訪問レポートをお送りするもの。
ピースフルで気取らないな雰囲気の中で、ジョージアならではのグルメ体験をしたい人にはおすすめです!
Temi communityとは?

Temi communityがあるのは、カヘティ地方で最大の人口を有するテラヴィの町の郊外。
歴史ある大聖堂を有するグレミの村はずれに位置しています。▼
Temi community訪問前には、ここがどんな場所であるのかを知っておきたいもの。
訪問のシステムやアクセスなど、実際に行く人向けの情報も含め、まずは基本的なことを解説していきます。
ジョージアでは珍しいコミュニティースペース

Temi communityは、その名の通り、ひとつの「共同体」として機能している施設。
簡単に言うなら「ジョージア国内の障害がある人たちや身寄りのない人たちが、ワイン作りや農業を通して共同生活を送るための場所」というのが大きなコンセプトとなっています。
Temi community内の施設は主にヨーロッパ諸国、特にスロバキアやバルト三国など、旧東側地域とされる共産主義時代を経験した国々の援助によって整備されたもの。
運営は主に各国からのボランティアによって回っているそうです。


Temi communityの敷地内には現在60人ほどの住人がおり、それぞれが役割を持った上で生活しているそう。
その役割は多岐に渡り、パン作り担当や家畜の世話担当、農業担当から洗濯担当まで…住人それぞれが自身の役割を果たすことで共同体が回っており、一つの「村」のようなものが形成されています。

Temi communityでは、一般旅行者の訪問もウェルカム。
訪問者はワインの試飲やクヴェヴリワイナリー見学、食事を楽しむことができ、この小さな共同体の日常にお邪魔することができるのです。
Temi communityのシステム&予約方法
Temi communityへの訪問自体は自由に行えますが、ワインテイスティングや農園見学をしたい場合は事前にコンタクトして予約するのが◎
食事がしたい場合は、準備の関係で2日前までの予約必須となっています(まあのぶよは前日に電話して予約したけど普通にいけた)。
訪問およびボランティアによる敷地内ツアーは無料で、ワインテイスティングは3種類の試飲&おつまみ付きで15GEL(=¥750)とリーズナブル。
食事に関してはメニューが用意されていてどれも価格が明記されているので、注文したい料理をあらかじめ伝えておくだけ。
メニューはこんな感じです。▼


食事の予約の際には訪問日時を指定することになり、当日は直接現地に向かえば注文しておいた食事が出てくる…というシステムです。
他にも、工作体験や調理体験などのアクティビティーも事前予約することが可能。
最新のフードメニューやアクティビティーに関してはTemi communityの公式ホームページにて確認できます。
Temi communityへのアクセス

Temi communityがあるのは、人気の観光スポットであるグレミ大天使聖堂から2kmほど離れた場所。
テラヴィなどからタクシーでサクッとアクセスすることも可能ですし、グレミ大天使聖堂までテラヴィからのマルシュルートカで移動→徒歩と個人でのアクセスも余裕です。


グレミ大天使聖堂からTemi communityまでは、のんびりした田舎道をひたすら真っ直ぐ歩くだけ。
大天使聖堂からは徒歩およそ30分ほどです。
Temi communityの生活

Temi communityの敷地内に入って最初に目を引く大きな建物は、住人のコミュニケーションスペースとして機能しているもの。
ソ連時代に建設された工場を改装したもので、オリジナルのレトロさを活かしながら実用面も考えられています。
コミュニケーションスペースは主に冬の寒い時期に活用されるそうで、みんなでボードゲームを行ったりコンサートが開かれたりするのだそうです。


コミュニケーションスペースの建物を中心にして、敷地内にはパンを焼くための建物や洗濯を行う建物が点在しており、担当の住人が日課をこなす姿が見られます。

Temi communityの住人は人によって障害の重度が異なるそうで、それぞれできることとできないことがあるそう。
できる人はできない人の分まで自分ができることを行うことで、できない人の分もカバーしているのだそうです。
Temi communityの農場見学

続いては、Temi communityの農場を見学していきます。
広大な敷地はワイン用のぶどう畑をはじめ、りんごやざくろの果樹エリアなどに分かれており、中でも印象的なのが温室。
ジョージアと同じ旧ソ連圏であるエストニア政府の援助によって建設されたものだそうで、内部ではハーブ類やなす、トマトなどの野菜が栽培されています。


Temi communityで提供される食事に使われる食材は、ほぼ全てがこの農園で栽培されたもの。
農業担当の住民が収穫した野菜を調理担当の住民が料理する…という感じで、共同体の人々みんなが参加して一つの料理が出来上がるというわけです。

野菜や果物の栽培エリアの他にも、敷地内には興味深いものがたくさん。
「トネ」と呼ばれるジョージア伝統の窯焼きパンを焼くためのスペースや、豚や牛などの家畜が暮らす小屋など、この場所での生活を構成する施設が緑いっぱいの敷地に点在しています。


タイミングが合えば、野菜の収穫の様子を見学したりお手伝いすることも可能だそう。
のぶよの訪問時は、残念ながら収穫の日ではなかったようで、農園に人影はまばらでした。
Temi communityのワイナリー見学&試飲

ボランティアガイドに敷地内を案内してもらったあとは、いよいよお楽しみのワインタイム。
まずは「マラニ」と呼ばれるワイナリーの建物に案内されます。


マラニ内部の地面には、十数個のクヴェヴリが埋まった穴が空いており圧巻。
ほぼ全てのクヴェヴリが現在進行形で使用されており、それぞれ品種や熟成期間の異なるワインが作られています。
Temi communityの住民にはもちろんワイン担当がおり、敷地内で採れたぶどうから愛情を込めてワインが作られます。
ぶどうを収穫して搾った後の一週間ほどはかなりの頻度でクヴェヴリ全体をかき混ぜなけれはならないそうで、これが結構な重労働なのだとか。

こんな感じでマラニの見学を終えたら、いよいよ試飲タイム。
Temi communityでは常時3種類のワインが作られており、全てがジョージア伝統のクヴェヴリ製法です。
・ルカツィテリ:クヴェヴリ内で熟成された琥珀色のワイン。すっきりした味に複雑な風味が絡む。
・サペラヴィ(2023):ジョージア定番の品種をもちいた赤ワイン。深く濃厚な風味。
・サペラヴィ(2013):上のサペラヴィを長期熟成させたもの。スモーキーな風味に驚く。
こんな感じ。のぶよはワインのことなど全く何もわからないのですが、クヴェヴリ製法ならではの複雑な味わいが混ざり合う感じは舌で感じられました。


Temi communityの試飲に関して良かった点が、蘊蓄などが少なく自分なりのスタイル&ペースで楽しめる点。
ワイン好きの人なら、ワインに関するあれやこれやの知識だったり、作り手の情熱やプライドも含めてワイナリー見学の魅力なのかもしれません。
しかしのぶよのようなワイン初心者&個人訪問客にとっては、正直あのワイン界隈ならではの蘊蓄ごちゃごちゃ~こだわりどーん~な感じが苦手という人も少なくないはず。
このワイン文化特有の面倒な感じを敬遠して、ワイナリーになかなか足が向かないという人もいると思います。
しかしTemi communityの試飲は、蘊蓄は最低限である程度自由に自分のペースで、肩の力を抜いてワインが楽しめるのが◎
もちろんこちらが質問したことには的確に答えてくれるので、ワインについてもっと知りたい人でも満足できるはずです。
Temi communityのランチ

絶品ワインの試飲を終えたら、次はランチタイム。
事前に予約しておいたメニューが次々に用意され、テーブルの上がどんどん豪華になっていきます。
のぶよが注文したのは、チャカプリ(牛肉と梅とタラゴンのシチュー)、ムツヴァディ(豚肉BBQ)、トマトときゅうりのサラダ。
いずれも大量に作られたものではなく、各訪問客が注文した分だけ少量で調理されている(だからこそ事前に予約が必要)そうで、かなり手間と時間がかかっています。


そして驚いたのが、Temi communityのパン小屋で焼かれているという自家製パンの美味しさ。
小麦の風味がとても強く、ワイルドな味わいが感じられます。
自家製パンには「ドリ」というジョージア固有品種の希少小麦が使用されているそう。
小麦の栽培も敷地すぐそばの畑で行われているそうで、完全自給自足のオリジナルパンです。


ドリは、テラヴィで最もお高級なお洒落レストラン(その名もDoli)が「ドリを使用した小麦粉料理」をウリにしているほどに、評価が高い小麦品種。
レストランだとパン一つでもまあまあな値段がしますが、Temi communityなら普通のパンと同価格で食べられるのが嬉しいです。
そして、デザートにはカヘティ地方ならではのスイーツ「タタラ」を。▼


タタラとは、ぶどうを搾った果汁に少量の小麦粉を混ぜて固めたもの。
砂糖は一切使用されていませんが、天然100%のぶどう本来の甘味に驚きます。
タタラは日本の羊羮に似たつるりん&もってりした食感で人工的な甘さではないため、おそらく日本人受けも良さそう。
Temi communityのタタラにはもちろん敷地内で収穫したぶどうが使用されています。

こんな感じで、全体的に大満足だったTemi communityでのランチ。
価格もかなりリーズナブルで、ほぼ全てが自家製オーガニック食材の手作り料理という点も魅力的。
ワインだけでなく、食事目的で訪問する価値も大いにあると思います!
おわりに

Temi communityは日帰り訪問客はもちろん、様々な目的を持った少人数グループの短期滞在も受け入れているそう。
のぶよの訪問時にはジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンのコーカサス三国の若者たちが1週間滞在しながら、平和や相互協力に関するディスカッションをするというプロジェクトが行われていました(アルメニアとアゼルバイジャンの人が同じ場所に集まって何かを共同で行うなんてとてつもなく奇跡的なこと)。
このように、ワイナリー農園としてだけでなく、障害者も、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちも、そして私たち旅行者も、みんなそれぞれの目的で滞在できる場所。
それがTemi communityであると言えるのかもしれません。

訪問して少しでもお金を落とすことで、この小さな共同体の支援ができるのはもちろんのこと。
そういった高尚な精神抜きにしても、単に「自然に囲まれて美味しいワインと自家製料理が楽しめるグルメスポット」として訪問するのも良いでしょう。
個人的には、「誰が働いていようが関係なく、素敵なグルメ体験がリーズナブルにできる場所」と捉えての訪問がおすすめ。
それこそが、真のボーダーレスなのではないかと思うわけです。
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