こんにちは!ボスニア・ヘルツェゴビナに2週間滞在した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ボスニア・ヘルツェゴビナと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。
1990年代に起こったボスニア内戦や、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれたボスニア・ヘルツェゴビナには、暗く悲しい歴史があるのは事実です。
しかし、内戦終結後のボスニア・ヘルツェゴビナは、観光業の発展とともに着実に復興への道のりを歩んでいます。
オスマントルコ時代の雰囲気が色濃い町や、切り立った山々を流れるエメラルドグリーンの川など、その文化や自然に魅了された多くの観光客が訪れるようになりました。
今回は、ボスニア・ヘルツェゴビナに2週間滞在した経験をもとに、ボスニア・ヘルツェゴビナの治安を都市別に解説していきます。
結論から言うと、とにかくスリに注意!
特にサラエボのトラム内では、実際にこの目でスリ未遂を目撃しましたから。
また、内戦が続いたボスニア独自の注意点としては、地雷に対する知識を持っておくことも不可欠です。
記事後半では、現地でトラブルに遭わないためのアドバイスを「ボスニア・ヘルツェゴビナ旅行の注意点」としてまとめているのでこちらもご参考いただきたいです。
サラエボの治安
壮絶なボスニア内戦終結から25年。
再び首都として活気を取り戻しているサラエボは、治安面で問題なく旅行することができます。
ただし、観光客を狙ったスリなどの軽犯罪はかなり多いらしく、アジア系や西欧系の旅行者がターゲットとされているよう。
のぶよがリュックサックを後ろに背負って歩いていると、親切なボスニア人に声をかけられ、「お願いだから財布だけは身に付けて。」とお願いされてしまったほどです。
地元の人でも注意しているほどなのですから、観光客である私たちも注意するに越したことはありません。
サラエボ旧市街の治安
オーストリア風の優雅な建物が連なっていると思ったら、オスマントルコ調のエキゾチックな街並みが姿を現すサラエボの旧市街。
その独特な雰囲気に惹かれて、近年多くの観光客でにぎわうようになってきました。
サラエボ旧市街は常に多くの人で賑わっていますが、それはスリにとって絶好のチャンスということ。
特に、狭い路地にトルコ調の建物が連なるバシャチュルシヤ地区では十分な用心が必要です。
犯罪とは関係がありませんが、バシャチュルシヤ地区のオープンテラスのカフェやレストランで一服していると、次から次へと物乞いがやって来てお金をねだっています。
中には子供の姿もちらほらと。
人によってポリシーが違うので何とも言えませんが、のぶよは「かわいそうだから」といってお金をあげることはしません。
なぜなら、結局子供にお金を渡したところで、どこかで見守る親の懐に入ってしまうからです。
サラエボ新市街の治安
内戦時の銃弾やミサイルが着弾した跡が多く残るサラエボ新市街。
ヨーロッパの国では、旧市街よりも新市街の方が治安が悪く、なんだか嫌な雰囲気が漂っていることも多いのですが、サラエボに関してはそんなことはありません。
広く見晴らしのいい通りが連なる新市街では、物乞いの姿を見かけませんし、観光客を狙ったスリなどの犯罪も少ないのではないかと感じました。
サラエボ郊外、東バスステーション周辺の治安
セルビアやセルプスカ共和国方面とサラエボを結ぶバスが到着するサラエボ東バスステーション。
一般的に、バスステーションや鉄道駅周辺にはいろいろな種類の人が集まるため、あまり良くない雰囲気が漂っている都市が多いです。
しかしながら、中心街から11kmほど離れたサラエボ東バスステーションにおいては、どこか郊外の地方都市のようなのんびりとした雰囲気が漂っています。
実は、ボスニア・ヘルツェゴビナと言う国は一つの国ではありません。
セルビア人が居住するセルプスカ共和国(下の地図濃緑色)
ボスニア人・クロアチア人が居住するボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(地図内薄緑色)
という二つの地域に国内が分断されているのです。
(厳密には三つなのですが、話がややこしくなるのでここでは二つとします。)
これのなにがややこしいかと言うと、セルプスカ共和国側~ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦側を直接結ぶバス/鉄道は存在しないという点。
セルプスカ共和国側の町にはセルプスカ共和国の町から、連邦側の町には連邦側の町からしか基本的にはアクセスできないのです。
話をさらにややこしくしているのが、首都のサラエボにはこれら二つの地域の境界線がある点。
なので、
セルプスカ共和国側:東バスステーション
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦側:メイン・バスステーション(鉄道駅に隣接)
と二つのバスステーションが存在するのです。
サラエボ東ステーションはセルプスカ共和国側にあり、他のセルプスカ共和国の町へのバスが発着します。
一方で、観光の中心となるサラエボ旧市街はボスニア・ヘルツェゴビナ連邦側にあります。
それぞれ違う地域に位置しているため、東バスステーション~旧市街・中心街間を直接結ぶ交通機関は存在しません。
東バスステーション~サラエボ旧市街の移動は、徒歩で「越境」して、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦側にあるDorinjaバスステーションへとアクセスし、旧市街方面への路線バスに乗車しなければなりません。(とは言っても歩く距離は400mほどです)
そう聞くと何だか不穏な感じがするものの、両地域間で緊張感など全くないのでご安心を。
たとえ夜に東バスステーションを利用する場合でも、おそらく安全だろうと思います。
実際に遭遇!サラエボでトラム移動中はスリに要注意。
人が多く集まる場所は、スリにとって格好の仕事場。
中でも、常に混雑しているサラエボ市内の路面電車(トラム)では、多くのスリ被害が報告されているそうです。
のぶよが実際にトラム3号線に乗った時、おそらくスリであろう女性二人組を目撃しました。
見た目は普通の20台前半、とても見かけではスリになんて見えない今風な感じの女子二人組。
微妙に混雑していた午後4時代のトラムの車内で、アジア人女性観光客二人組の後ろにぴったりくっついている不審な態度から、「ああ~多分こいつらスリだわ」と確信しました。
アジア人の女性二人組は、リュックを後ろにかけてスマートフォンに夢中。
ちょうどのぶよからスリの手が見える位置だったので、実際に行動に移ったら教えてあげようと思っていました。
スリのうち、一人は他の乗客から仲間が見えないように死角を作る役目で、もう一人が実行犯という感じ。
トラムが揺れるたびに、アジア人女性のリュックに不自然に触れていますが、チャックを開けるまでには至っていませんでした。
それに気づいたのが、アジア人女性の左後ろ(スリ実行犯のすぐ隣)にいた欧米系の寸胴なおばちゃん。
太い腕でスリとアジア人女性のバッグの間にある手すりをつかむように、スリをブロックしました。
おばちゃん、グッジョブ!(笑)
結局アジア人女性はそのあとすぐにトラムを降りたので、自分がまさかスリ被害に遭いそうになっていたことなど知る由もないでしょう。
スリ被害に遭わないためには、
財布・パスポートの貴重品は、簡単に取り出せないポケットやポーチに入れて肌身離さず持つ。
バスやトラム内で変にくっついてくる人に出会ったら最大限の注意を払う
クレジットカードや現金などを一つの財布に入れず、分けて管理する
などの予防策が必須。
ちょっとした注意で防ぐことができるスリ被害。
「せっかくの旅行が台無しになった…」なんてことにならないように、用心するに越したことはありません。
モスタルの治安
ボスニア・ヘルツェゴビナを代表する観光都市・モスタル。
ネレトヴァ川のほとりに広がる旧市街と、有名なスタリィ・モスト(古い橋)を見に、連日多くの観光客が訪れます。
そんなモスタルの治安は平穏そのもの。
観光客であふれる小さな旧市街は完全に安全ですし、地元の人々も観光客疲れを感じさせない温かな笑顔の人が多かったのが印象的でした。
ただし、貧しい人は少なからずいるようで、観光客相手にお金をねだっている子供もしばしば見かけました。
その他ボスニア地方都市の治安
ボスニアの地方部は、裕福ではないものの治安面の問題は全く感じられません。
「橋の町」ヴィシェグラードや、滝の上にある古都ヤイツェなど、個性に満ちた魅力的な小さな町が点在しているボスニア・ヘルツェゴビナの地方部。
アクセスは便利とは言えないものの、ゆっくりと旅行するには最適です。
ボスニア・ヘルツェゴビナ旅行の注意点
スリや置き引きなどの軽犯罪に関する注意は、すでに述べました。
それ以外にも、自分自身の身の安全を守り、現地の人と快適に過ごすために、ボスニア・ヘルツェゴビナ旅行に関するいくつかのアドバイスをさせていただきます。
ハイキングする際は、決められた道以外に入らない
ボスニア・ヘルツェゴビナならではのアドバイスが、「ハイキング時にはハイキングコースから絶対に外れない」ということ。
自然保護や熊などの動物に会わないためでもありますが、一番の理由はどこに地雷が埋められているかわからないためです。
4年間続いたボスニア内戦時に、ボスニア人が他地域へ逃げるのを防ぐためにセルビア人民軍によって無数に埋められた地雷。
撤去作業はあまり進んでおらず、未だに多くが残されているのが現状です。
上の画像の赤色の部分は、現在でも地雷が埋まっていると考えられているエリア。
国土全体にどれだけの地雷が残されているのか一目瞭然です。
特に、内戦時に激戦となった中部ボスニアやセルプスカ共和国内の北東部の町の山林には、いまだに多くの地雷が残っていると言われています。
サラエボやモスタルなどの観光地ならばまず問題ありませんが、地方に行って道路沿いを歩かなければならない場合や、自然の中でハイキングを楽しむ場合は、細心の注意を払いましょう。
現地の観光案内所などで、安全かどうか確認するのがいいかもしれません。
セルビア人、ボスニア人、クロアチア人など民族や宗教に関する話題は避ける
元をたどれば99.9%同一民族であり、同一言語を話す、セルビア人、ボスニア人、クロアチア人の三民族。
(加えて、モンテネグロ人も彼らと同一民族です。)
彼らが別民族として区別される理由は、宗教の違いでしかありません。
セルビア人はセルビア正教、ボスニア人はイスラム教、クロアチア人はカトリックと、それぞれが違う信仰を持っているのです。
とはいっても、各民族内で宗教的過激派は少なく、ユーゴスラビア時代はみんな仲良くやっていたのです。
そんな状況を180度変えてしまったのがボスニア内戦でした。
三民族がそれぞれ争い、「民族浄化」の名のもとに、ある町で多数派の民族が他の民族を追い出したり殺害したりしたため、現在のボスニア・ヘルツェゴビナではそれぞれの民族の居住区域が比較的はっきりしています。
戦争から25年経った現在。
内戦時子供だった世代や、その下の内戦を知らない若い世代においても、他民族間でのコミュニケーションは少なく、お互いにマイナスの感情を抱えていることも少なくありません。
サラエボの戦争に関する資料を展示する博物館などに行くと、基本的にボスニア人の視点から解説されています。
ボスニア人的には、「自分たちはセルビア人による大量虐殺の被害者であり、クロアチア人は自分たちを見捨てて挙句の果てに敵に回った裏切り者」ということなのですが、セルビア人にはセルビア人の、クロアチア人にはクロアチア人の言い分があるはず。
一つの視点だけで歴史を見て、善と悪を決めつけてしまうのは危険なことです。
もちろん自分なりの意見を持つことは大切です。
しかし、ボスニア・ヘルツェゴビナの民族問題はとにかくややこしく、一筋縄で語れるものではないので、部外者である私たち旅行者が首を突っ込むべき話題ではありません。
現地でボスニア人と出会って、内戦時の話をされることもあるでしょうが、できるだけ聞き手にまわるのが得策だと思います。
変に議論したところで、お互いにもやもやしか生まれません。
バスの時間、バス停の確認はしっかりと
ボスニアだけでなく、バルカン諸国全域に癒えることなのですが、誰もバスの正確なスケジュールを知りません(笑)
特に田舎に行くと顕著なのですが、みんないったいどうやって生活しているのか不思議になるほどです。
ネットに乗っていたバスが時間通りに来ない
というかそもそもそのバスは存在しない
なんてことは日常茶飯事なのでご注意を。
また、地方ではバスステーション自体が存在しないことも珍しくなく、普通の商店の前で降ろされたり、掘っ立て小屋らしきものがバス停だったりすることも。
行き先やバス会社によって、どこのバス停に停車するか変わることも多いので、ボスニア・ヘルツェゴビナでの長距離バスの利用に関しては、必ず現地の観光案内所で確認するようにしましょう。
ホステルでバスの時間を調べてもらっても、全く合っていなかったことが数回あったので。
また、ボスニア・ヘルツェゴビナでは、絶対にバスチケットをネット購入してはいけません。
プリントアウト必須なことが多いくせに、町に印刷屋がとても少ないせいでもありますが、そもそもネットのバススケジュールが信用できないためです。
ネットでチケットを購入したのに、その時間にはバスはやって来ず、次のバスにはチケットが違うため乗車できず…なんてかわいそうな旅人にも出会いました。
とにかく、ボスニア・ヘルツェゴビナではチケットは直接バスステーションに行って購入するか、運転手から直接購入しましょう。
小額紙幣・硬貨の用意を忘れずに
意外に盲点となるのが、少額紙幣や小銭を用意しておくこと。
ATMで現地通貨を引き出したり、両替所で100ユーロなどの高額紙幣を両替すると、ほとんどの場合100KM(=¥6306)札などのボスニア的には高額紙幣が渡されることが多いです。
しかし、この100KM札が曲者で、かなりの確立で使えません。
小さな商店やローカルレストランではもちろん、スーパーマーケットですら断られることも。
その下の50KM紙幣でさえ、出すとすごく嫌な顔をされることが多いです。
(じゃあそんな紙幣作んなや、馬鹿と言いたくなります。)
サラエボのバスステーションから市内へ向かうトラムの料金は1.8KM。
トラム内で直接購入する場合は、まず5KM以下の硬貨くらいしか使えないと思っておきましょう。
お札しかない場合は、トラム乗車前に停留所近くのキオスクでチケットを事前購入するようにしましょう。
10KM札や20KM札くらいなら使えるはず。(50KM札や100KM札はまず無理)
しかも、キオスクでチケットを買った方が、1.6KMと安くなるのでおすすめです。
硬貨至上主義のボスニア・ヘルツェゴビナでは、みんなポケットに小銭をジャラジャラさせています。
ほぼどこでも、20KM札を出すと、「もっと小さい額のコインはないの?」と毎回のように聞かれるのでかなりイライラします。
「ないからこれで払おうとしてるんやろ馬鹿」と言いたいのをぐっとこらえて、お札で通しましょう(笑)
お釣りの確認は絶対!
ユーロが導入されておらず、独自の通貨である兌換マルク(KM)が使われているボスニア・ヘルツェゴビナ。
1兌換マルク=¥63ほどで、10KM以上は紙幣、1KM、2KM、5KMなどは硬貨が使用されます。
ここで注意したいのが、お釣りをもらう際に、兌換マルクの硬貨かどうか絶対に確認することです。
というのも、1KM硬貨はクロアチアの通貨であるクーナの2クーナ硬貨と、2KM硬貨はトルコの通貨であるトルコリラの1トルコリラとそっくりだからです。
上の写真の左側がボスニアの通貨である1KMと2KM硬貨。
右側が2クーナと1トルコリラです。
ぱっと見ではほぼ区別がつきません。
ちなみに、1KMは63円なのに対して2クーナは33円、2KMは126円なのに対して、1トルコリラはたったの18円ほどの価値しかありません。
つまり、間違えた硬貨をもらった場合、確実にこちらが損をしてしまうのです。
わざと価値の低い通貨をお釣りとして渡してくるのか、単純に間違えたのかは定かではありませんが、のぶよの場合はいずれもバスステーションや鉄道駅のチケット売り場で、これらの硬貨をもらいました。
損した気分にならないためにも、お釣りのチェックはお忘れなく。
おわりに
全体的に、治安面の問題なく旅行ができると言えるボスニア・ヘルツェゴビナ。
テロ事件や凶悪事件なども少なく、民族間の対立も表面化することは少なくなってきています。
しかし、首都のサラエボでは、ヨーロッパの他の都市以上に、スリなどの軽犯罪に十分な注意が必要です。
最低限の注意を怠らなければ、安心して楽しめるボスニア・ヘルツェゴビナ旅行。
親切で声をかけてきてくれる人も多いので、あまり警戒しすぎるのも楽しみが半減してしまいそう。
個人的に、旅行者相手にぼったくったり騙したりしようとする人には一度も会いませんでした。
貴重品の管理には十分に気を付けながらも、地元の人との触れ合いを楽しむのがおすすめです。
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