こんにちは!ジョージア滞在も2年半、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージアの中でもあまり観光客が訪れない、西部のサメグレロ地方。
地味なエリアではありますが、独自の文化や言語を有し、昔ながらの田舎の生活が残っているのは面白い点。
ジョージア地方部らしいのどかな雰囲気も魅力的です。
そんなサメグレロ地方の黒海沿岸にある町が、アナクリア(Anaklia / ანაკლია)。
「未承認国家」とされるアブハジア共和国との境界までたったの1km足らずの場所に位置しており、ジョージア側で最もアブハジア側に近づける町のひとつです。
「黒海沿岸の町」と聞くと、夏場は多くの観光客で大いに賑わうビーチリゾートなのかと思うでしょう…が…
アナクリアは「黒海のキラキラビーチリゾート」のイメージの対極にある町。
夏場のハイシーズンでも人の姿はまばらで、雑草に覆われたプロムナードや廃墟と化したホテル、窓ガラスが割れたリゾート施設が建ち並ぶ光景は、「廃ビーチリゾート」そのものです。
「いったいどうしてこんなことに…?紛争?ソ連崩壊?」と勘繰ってしまいますが、アナクリアがこうなってしまったことには、ある理由がありました。
今回の記事は、忘れ去られたビーチリゾート・アナクリアの観光情報を解説するもの。
この記事をきっかけに、アナクリアに多くの人が訪れることを願うばかりです…(まあ、もう手遅れ感があるけど)
ジョージア現代史の闇が詰まった町・アナクリアとは?
アナクリアを訪れた旅行者の第一印象は、「廃れたビーチリゾート」でしょう。
夏場の晴れた日でも人影はまばら。リゾートホテル群はほぼ廃墟と化し、潮で錆びついたモニュメントがあちこちに点在。人気のないプロムナードに寂しそうに並ぶヤシの木…
アブハジアとの境界線まで1kmほどの立地と聞くと「アブハジア紛争のせいで廃れてしまったのでは?」と思ってしまいますが、実はアナクリアがこのような状態になったのはアブハジア紛争が原因ではありません。
もともとは小さな漁村でしかなかったアナクリアにビーチリゾート開発の話が持ち上がったのは、2010年。かなり最近のことです。
親欧米路線のサアカシュヴィリ政権の下で、大型リゾートホテルの建設や、人工のビーチ敷設、海沿いのプロムナードの整備が急ピッチで進められました。
しかし、2010年代前半のジョージアは、政権交代やサアカシュヴィリ元首相の亡命など、まさに激動と混乱の時代。
政権交代によって、アナクリアのリゾート開発は中断&白紙となり、未完成のホテルやリゾート客向け施設がそのまま放置されることになったのです。
ビーチリゾートとしての発展は叶わなかったアナクリアですが、2016年に新たな希望の光が差します。
それが、ジョージア初の潜水艦港の建設プロジェクト。
ロシア、ウクライナ、トルコ、ブルガリアなどの国がひしめき合う黒海沿岸は、海上防衛における要所。
アブハジアとの境界に近い軍事的な要因と、潜水艦用の港を建設するのに適した地形的な要因から、ここアナクリアに白羽の矢がたったのです。
潜水艦港プロジェクトの発足により、再び盛り上がりを見せたアナクリアの経済。
一時中断されていたリゾート施設の整備も急ピッチで進められ、2016年~2018年にかけては、大型屋外サマーフェスティバルが開催されたほどです。
「潜水艦港の町」として、今度こそ豊かになると思われたアナクリアでしたが、再び苦難が訪れます。
2020年に、潜水艦港プロジェクトの投資家グループとジョージア政府との間で揉め事があり、まさかの計画が白紙に。
アナクリアの住民は、またもやジョージア政府の「絵に描いた餅」な無計画性に振り回されることとなりました。
たった十数年の間に、ビーチリゾート開発から潜水艦港プロジェクトの舞台となり、いずれも失敗に終わってしまったアナクリア。
合計で数億円規模の投資が行われたのですが、すべてが水の泡に…
人々に完全に忘れ去られた「ビーチリゾートになるはずだった町」を支配するのは、そこはかとない哀愁と退廃的な雰囲気のみ。現在のアナクリアの町は、見るも無残な状態となっています。
そんなアナクリアですが、またもや転機が。
2022年に勃発したロシアによるウクライナ侵攻を受け、ジョージアの国防の観点からアナクリアの潜水艦港の必要性が再び議論されはじめるようになったのです。
三度目の正直は、果たしてアナクリアに訪れるのでしょうか…。
アナクリアの見どころ
アナクリア観光マップ
黄色:ズグディディ方面バス停
The Golden Fleece Hotel
アナクリアに到着した旅行者を最初に出迎えてくれるのが、The Golden Fleece Hotel(სასტუმრო ოქროს საწმისი)。【マップ 青①】
白亜の外壁に大きなガラス張りの窓、優雅なフォルム…絵に描いたようなリゾートホテルですが、人の姿はなし。
いちおう営業はしているようなのですが、閑古鳥が鳴きわめいているような、なんとも寂しい雰囲気が漂っています。
The Golden Fleece Hotelは、アナクリアのメインストリートであるプロムナードに面して建っているのですが、プロムナードにも人の姿はほとんどなし。
リゾート気分を盛り上げるはずのヤシの木も、なんだか寂しさを感じさせます。
アナクリア中心街
アナクリアの中心街は、開いているかどうか分からないペンションや開店休業状態のレストランがぽつぽつと並ぶ、これまた寂しい雰囲気。【マップ 青②】
建設途中で放置されたままの建物や、リゾートらしい雰囲気を盛り上げるはずだったモニュメントが点在していますが、やはり人影はまばら。
ゴースト・リゾートそのままの雰囲気が感じられます。
中心街ですらこんな状態なので、この先にどんな光景が広がっているのか、なんとなく想像がつくというもの。
ハイシーズンの週末にもかかわらず、両手に収まるほどの数の人しか歩いていないプロムナードを、さらに北へと進んでいきます。
中国風廃墟
アナクリア大橋の南側。海沿いギリギリの場所には、中国風の廃墟がどーんと構えています。【マップ 青③】
いつ、誰が、何のために建てたのかは謎のままですが、おそらく中華料理レストランを作ろうとしたのでは?と予想。
正式にオープンすることは叶わなかったようで、建物の骨組みだけが残っています。
中国風廃墟の建物は、敷地の一部が黒海に突き出しており、おそらく水上レストランになる予定だったもの。
もしもアナクリアがビーチリゾートとしての成功を収めていたならば、優雅な水上テラス席で夕日を眺めながら、エキゾチックな中華料理やなんちゃってSushiに舌鼓を打つお金持ちで賑わっていたのでしょう…
見るも無残な状態となっている中国風廃墟ですが、黒海の水平線を背にたたずむ姿は、なかなか絵になります。
アナクリア・ブリッジ
アナクリア中心街とビーチエリアを結ぶ唯一の橋が、アナクリア・ブリッジ。【マップ 青④】
アナクリアのシンボルとされる建造物の一つで、ゆるやかな曲線を描く優雅なフォルムが印象的。
長さ数百メートルの橋は、歩行者専用のプロムナードの一部を構成しており、夏場はビーチへと向かう家族連れで賑わうはず…だったのですが、ここにも人影はいっさいありません。
アナクリア・ブリッジは、整備されないまま数年間放置されているよう。
黒海からの潮風を受け、腐敗が進んでいる箇所も目立ちます。
橋の上からは、アナクリア中心街を一望することができます。
天気が良い日であれば、コーカサスの山々の遠景がゴースト・リゾートの情緒に華(?)を添えます。
アナクリア・タワー
アナクリアのシンボルのような建造物が、アナクリア・ブリッジの北側にぽつりと建つアナクリア・タワー。【マップ 青⑤】
「いったいなぜこんなデザインに…?」と思うでしょう。
しかしながら、ジョージアにある程度の期間滞在している身からすると「ジョージアらしい」デザインの建物に見えるのが不思議。(この国はこういう謎センスのキラキラデザインの建造物が大好き)
高さ数十メートルのアナクリア・タワーの最上部は展望台となっており、どこまでも広がる黒海の風景を一望できる絶景スポット!
…となるはずでしたが、お察しの通り、こちらも閉鎖されています。
難破船
アナクリア大橋を渡りプロムナードを歩いて行くと、突如として目の前に現れる難破船。【マップ 青⑥】
あえてここに設置されたのか、本当に座礁してしまったのかはわかりませんが、錆びついた船体から漂う哀愁は本物。
色々な意味で「アナクリアらしい」モニュメントとなっています。
難破船周辺から北に広がるのが、アナクリアのビーチエリア。
中心街に比べて、ほんの少しだけ活気が戻ってきているのを感じます。
ガンムフリ円形劇場
ビーチリゾートとして発展するはずだったアナクリアの象徴が、ガンムフリ円形劇場(Ganmukhuri Amphitheater)。【マップ 青⑦】
2016年~2018年の3年間に渡って、サマーフェスティバルが開催された場所です。
ガンムフリ円形劇場はけっこうな規模で、最大で1000人ほどは収容できる規模。
真っ青な黒海の目の前に設置されたステージは、サマーフェスティバルにぴったりのロケーションと雰囲気です。
この場所でフェスティバルが開催されたのは、2018年が最後。
それ以降は整備がされていないようです。
ガンムフリ円形劇場の周辺は、謎のモニュメントの宝庫。
どれも潮風を受けて錆びついたものばかりで、青い海とのコントラストが絵になります。
アナクリア・ビーチ
アナクリアの最果てとなる場所には、アナクリア・ビーチが広がっています。【マップ 青⑧】
アブハジア共和国との境界線まで1kmもない地点で、一般人が立ち入ることが可能なのはこのあたりまで。
境界線に近づけば近づくほど、海水浴客の姿が多くなるのはアナクリア七不思議です。(みんなアブハジアを近くに感じたいのだろうか…?)
アナクリアビーチの水質は、ジョージアの中ではかなり良好な方。
小石がゴロゴロと転がっている箇所も多いですが、一部には細やかな砂浜もあります。
アブハジア側の海岸線が目と鼻の先に望めるのが、アナクリアビーチ最大の特徴。
簡単には行けなくなってしまった「近くて遠い大地」を眺めながら過ごすビーチデイも、なかなか趣があるものではないでしょうか。
アナクリアへのアクセス・行き方
アナクリアへのアクセス拠点となる町は、サメグレロ地方の中心都市・ズグディディ(Zugdidi)一択。
ほとんどの場合はズグディディから日帰りでアナクリアに往復することになるはず。
路線バスを利用しての移動も簡単です!
①ズグディディからタクシー
ズグディディ~アナクリア間の最も簡単&効率的な移動手段が、タクシー。
・片道:20GEL(=¥1000)
・往復チャーター:50GEL(=¥2500)
アナクリアの中心街には、数は少ないものの客待ちのタクシーもちらほら。
わざわざ往復分のタクシーをチャーターする必要はないと思います。
②ズグディディからバス
ズグディディ~アナクリア間は、個人で公共交通機関を利用しての移動も簡単。
ズグディディ市内路線バスとミニバス(マルシュルートカ)の2種類の交通機関が走っており、合計で1時間~1時間半に1本の割合で運行されています。
ズグディディ側の発着地は、路線バスとミニバスで異なる点に注意。▼
青:市内路線バス発着ポイント
アナクリア側の発着ポイントは路線バス/ミニバス共通で、中心街のバス停です。【マップ 黄色】
おわりに
独特の雰囲気を放つ廃ビーチリゾート、アナクリアを紹介しました。
正直、アナクリアだけを観光するためにトビリシなど他地域からはるばるやってくる意味があるかどうかは疑問。
しかしながら、ズグディディ滞在中のデイトリップ先としてはぴったりな場所だと思います。
今後、この町がどうなっていく運命なのかは、神のみぞ知るといったところ。
もしかしたら一大ビーチリゾートとして日の目を浴びる日がやってくるのかも…(こないか)
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