こんにちは!ジョージア南部のサムツヘ=ジャワヘティ州をのんびり旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア南部最大の観光スポットと言えば、800年以上前の洞窟住居群が残るヴァルジアでしょう。
切り立った岩山の斜面を利用して造られたかつての住居と修道院は、見るものを圧倒する文句なしの必見スポットです。
多くの旅行者はヴァルジアへ日帰り観光で訪れて数時間滞在して去っていくのですが、実はヴァルジア周辺には他にもたくさんの見どころが点在していることはあまり知られていません。
中でも、ヴァルジアの北6kmほどの場所にあるトモグヴィ村(Tmogvi / თმოგვი)の周辺には、かつてのこの地域の歴史を感じさせられる美しい見どころがあります。
三方を険しい谷に囲まれた難攻不落の「天空の城」・トモグヴィ城や、高原にぽつりと中世初期の教会が残るゼダ・トモグヴィ村などがあり、いずれも歴史的価値が計り知れない場所。
それだけでなく、ジョージアという国を特徴づけるような絶景が見られることも素晴らしい点です。
これらトモグヴィ村周辺の見どころには公共交通手段は通っていないため、自分の足で歩いて回るしか観光手段がないのですが、絶対にその価値はあります。
のぶよ的に、有名なヴァルジアよりもこちらの方が、心が震えるような感動を覚えたほどでしたから。
今回の記事では、ほとんど知られていないトモグヴィ村周辺の見どころをハイキングでまわるプランを紹介します。
観光拠点となるヴァルジアやアハルツィヘからの個人でのアクセス方法も詳しく解説しているので、「行ってみたい!」と思った人のお役に立てるはず…!
トモグヴィ城塞&トモグヴィ村には2023年8月に再訪しました。
ハイキングルートやマルシュルートカの時刻表など微妙に変わっている点が見られたので、色々と追記しています。
トモグヴィ・ハイキングコース詳細
ハイキングの拠点となるのは、クラ川沿いにひらけたトモグヴィ村。
アハルツィヘ~ヴァルジア間を走るマルシュルートカが通る場所なので、ここまでは個人で公共交通手段を利用してのアクセスも可能ですが、そこから先はくねくねと曲がった未舗装道路が通るのみとなっています。
レンタカーの場合は、この未舗装道路を通ってトモグヴィ村~トモグヴィ城~ゼダ・トモグヴィへとアクセスすることは不可能ではありませんが、とにかく道がボコボコなので全くおすすめしません。
トモグヴィ村~ゼダ・トモグヴィまでは片道10km/高低差660mと結構ハードな道のりですが、未舗装道路を歩いていくだけで山道などを登る場面は一切ないため、意外に簡単に歩けてしまいます。
トモグヴィ村~ゼダ・トモグヴィ村ハイキングコース詳細
・距離:片道10km
・所要時間:片道2時間半~3時間
・高低差:▲660m
「さすがにゼダ・トモグヴィまで往復20kmは歩けない…」
という人も、せめてトモグヴィ城までは歩いてみてください。
トモグヴィ城までは片道5kmほどで坂も緩やかなので、半日あれば往復できてしまうほどです。
歩いた苦労に見合う絶景が待っていることを保証します!
ハイキングの拠点となるトモグヴィ村は、数十軒の民家が建つだけの小さな村。
しかしながら商店やゲストハウスはいくつかあるので、滞在に困ることはないでしょう。
かつてはジョージア地方部によくある、開いているのか開いていないのか分からないようなローカル商店しかなかったトモグヴィ村ですが、2023年の再訪時にはやや近代的&ちゃんと常に開いている商店が新しくオープンしていました。
飲み物や軽食、パンやインスタントラーメンなど基本的な食材は揃っているので、もし何か必要な際には便利です。(とはいえ、アハルツィヘから持参するのがベター)
天空の城!トモグヴィ城
トモグヴィ村の南に位置する切り立った岩山の頂上に建つのが、今回紹介する二つの見どころのうちの一つであるトモグヴィ城です。
三方が断崖絶壁でかなりの高さの場所に位置しているため、クラ川が形成する谷間の風景を一望することができる廃城。
まさに「天空の城」の呼び名にふさわしい堂々たる佇まいを誇ります。
山の頂上の限られた敷地を最大限に利用して建設されたトモグヴィ城に関しては、「誰が、いつ、どのように」といった詳細が未だ解明されていないミステリアスな一面も。
9世紀頃(1100年前)にはすでにこの場所に建っていたことが証明されており、当時はアナトリア(現在のトルコ)とジョージアを結ぶ交易路を見守る役割を果たしていたとされています。
その後、中世ジョージア王国の領土となり、12世紀にはこの地域の名前の由来となったトモグヴィ家の居城となります。
幾度となくこの地で起こった地震のたびに再建されてきたトモグヴィ城ですが、19世紀初頭にジョージアの支配権がオスマン帝国からロシア帝国に移った際にその重要性が失われ、以後放置されることとなります。
200年以上に渡って再建作業が行われていないこともあって、年々建物の一部が崩落しつつあるというトモグヴィ城。
頑張れば城の敷地内に入ることもできるのですが、かなり危険に感じたので外から眺めるだけにしておいた方が良いと思います。
のぶよ的にトモグヴィ城は、近くで見るよりも少し遠くから眺めた方がより美しく感じられました。
ハイキングコースをさらに上(ゼダ・トモグヴィ方面)へ登っていくと、トモグヴィ城の全景と周囲の山々を一望する絶景が視界に開けるので、ぜひそこまでは歩いてみることをおすすめします。
特に美しいのが、西から指す日光に城全体が照らされる午後の時間帯。
静寂の中で光を浴びてオレンジ色に輝く廃城の風景には神々しさを感じるほどでした。
トモグヴィ村~トモグヴィ城は、直線距離では2kmほどしかなく、簡単にアクセスできるように思えますが、実際はかなり遠回りしないとならないのがネック。
地図アプリで表示される最短ルートにはもはや道がなく(ロッククライミングばりの急斜面ならありますが)、ショートカットできそうな橋の先には鉄条網が張り巡らされているのでアクセスできないためです。
トモグヴィ村~トモグヴィ城間ハイキングコース詳細
・距離:片道5.2km
・所要時間:片道1時間15分
・高低差:▲220m
のぶよははじめ、トモグヴィ村の南にあるこちらの橋を渡ってトモグヴィ城に向かいましたが、橋を渡った先に鉄条網があって先に進めなくなっていました。
なので、もう一つの橋であるトモグヴィ村の北2kmほどの場所まで回り道をしなければなりません。
トモグヴィ村→橋と歩いた先にあった鉄条網は撤去され、木製のゲート(手で開閉可能)が設置されていました。
このゲートを通れば、トモグヴィ城塞へと登る未舗道路までかなりショートカットできます。
トモグヴィ村の北2.5kmほどの場所にある橋へと迂回するよりも、短い距離で済みます。
橋を渡って川の対岸に着いたら、あとは未舗装道路にそってひたすら南へ歩いていくだけ。
一本道なので間違えようがありません。
出発から1時間ほどで、かつての城壁の一部が残る丘に到着します。
ここからトモグヴィ城は目と鼻の先(というかここもかつては城塞の一部)ですが、岩山の頂上のかなり足場が悪い道を数百メートル歩くこととなるので、道を踏み外さないように注意が必要です。
トモグヴィ城まで歩いてゼダ・トモグヴィを諦めるなら、帰りは来た道をただ戻るのみ。
合計で11km/2時間~2時間半ほど見ておけば問題ないので、半日あれば可能です。
中世の教会が残る隠れ里!ゼダ・トモグヴィ
トモグヴィ城でもすでに秘境感満載の絶景が見られたのですが、さらなる「自分だけの秘境」を求める人には、さらに上に位置するゼダ・トモグヴィ(Zeda Tmogvi/ ზედა თმოგვი)という廃村へと足を進めるのがおすすめです。
「ゼダ・トモグヴィ」とは、この地域の言葉で「トモグヴィの上」という意味。
その名の通りトモグヴィ村の西側にそびえる山の頂上付近に広がる高原地帯にあった集落の跡地で、現在では数人の村人が生活しているだけ(現役の民家は1軒のみ)という、「秘境 of 秘境」です。
その集落跡は、全ての家が半分地中に埋まったような状態で造られているのが特徴的です。
これはトルコとの国境に近いジョージア南部のメスヘティ(Meskheti)地方の山奥にのみ見られる独特な建築様式。
かつてオスマン帝国の侵攻を恐れた人々は、人里離れた山奥に移り住んだ上に用心を重ねた結果、外から見ても家だと分かりにくい半地下の石造りの家に住むようになったのです。
半地下の家の内部は一年を通して温度があまり変わらないようになっていて、各家の寝室部分には入口とは別に秘密の地下通路が必ずあったそう。
これは夜間に敵が攻めこんできた際にこっそりと逃げるためのものでした。
のぶよはトビリシにある野外民族博物館で、すでにジョージア各地の伝統的な家屋について少し知識をつけていたのですが、実際にこの目で本物を見ると感激。
むしろその知識のおかげで、この場所が人々の隠れ里であったことがわかったわけですが。
ジョージア地方部を旅するなら、かなりおすすめです。野外民族博物館。
ゼダ・トモグヴィ村が廃村になった理由
かつてはオスマン帝国の支配下にあったゼダ・トモグヴィ村を含む山村地域では、住民のほとんどがトルコ系やイスラム教に改宗したジョージア人でした。
細々とした生活が営まれていたこの村が現在のような廃村となったのは、オスマン帝国からロシア帝国へとジョージアの支配権が移り、その後を継いだソビエト連邦時代の1944年のこと。
中央政府によって、ジョージアなどのキリスト教地域に居住するイスラム教徒を、同じソ連の構成国であった中央アジアの国へと強制移住させることが決定されたのです。
これによってほぼ全員がイスラム教徒であったゼダ・トモグヴィ村の人々は村を後にすることを強いられ、ゼダ・トモグヴィは廃村となってしまいました。
過去にこの場所にあった家々の跡だけがかろうじて残る、いわば「死んだ村」であるゼダ・トモグヴィにおいて、唯一生きている場所がこちらの教会です。
村に唯一住み続けている家族が管理しているようで、内部への立ち入りも可能です。
実はこの教会、かなりの歴史があるもので、その建設時期は11世紀後半(900年前)にまで遡るそう。
ジョージア正教の教会と言えば、鉛筆を縦に置いたような三角柱の屋根を持つ建物が有名ですが、それらは12世紀以降に流行した建築様式。
それ以前の中世初期の建築様式で建てられた教会が現存している場所は、あまり多くありません。
かつては真っ白に塗られていたであろう内部の塗装は落ち、時の流れを感じさせます。
しかしながら、新しい宗教画やろうそくを灯した跡が見られ、現在でも村人によってちゃんと管理されていることが分かります。
教会以外には何もない「かつての隠れ里」の秘境感ただよう雰囲気に包まれたゼダ・トモグヴィ。
かつてこの場所で営まれていた人々の生活に思いを馳せながら、その素朴な絶景を鑑賞しましょう。
トモグヴィ城からゼダ・トモグヴィまでは、未舗装道路をただひたすら登っていくだけ。
こちらも分岐点が一切ない一本道なので、間違えることはありません。
トモグヴィ城~ゼダ・トモグヴィ間ハイキングコース詳細
・距離:片道4.8km
・所要時間:片道1時間半
・高低差:▲470m
途中には日陰や水場は一切ないため、夏場に歩く場合はかなりハードだと思います。
ゼダ・トモグヴィ村にも飲用可能な水はなかったので、出発前に準備しておきましょう。
観光の拠点!トモグヴィ村の宿情報
今回紹介した二つの見どころへのアクセス拠点となるのがトモグヴィ村です。
ホテルやホステルはありませんが、民家を改装した数軒のゲストハウスがあり、どこも同じような値段で宿泊可能です。
レストランの類がないトモグヴィ村では、食事は宿泊先ゲストハウスで作ってもらうのが基本。
・朝食:15GEL(=¥700)
・夕食:20~30EL(=¥1000~¥1500)
これくらいが食事代の相場だと考えておきましょう。
(宿によっては宿泊料金に食事代が含まれている場合もあるので、要確認)
ここでは、のぶよが宿泊したゲストハウスを紹介しますが、正直微妙だったので別のところでも良いと思います。
Tirebi Guesthouse
・料金:30GEL(=¥1029)
・部屋:トリプルルーム(シャワー・トイレ付)
・立地:7/10
トモグヴィ村の中心部からは徒歩5分ほどで、周囲には何もありません。
今回紹介したハイキングコース沿いにあるので、観光目的なら便利だと思います。
・アクセス:2/10
不満だったのが、宿へのアクセス。
予約していたにも関わらず、到着してみると誰もいない&鍵がかかっているという最悪なパターンでした。
同じ系列のTmogvi Farmhouseという2kmほど離れた場所に家族が住んでおり、一度そちらに足を運んでまた戻るという最悪な状況になりました。
・スタッフ:7/10
家族経営のゲストハウスなのですが、同じ場所に住んでいないためコミュニケーションは最低限です。
娘さん以外は英語が全く通じないため、やりとりに苦労します。
・清潔さ:6/10
ジョージア的には結構いい値段なのですが、部屋のクオリティーはかなり低め。
ベッドシーツも粗末で、床は誇りが溜まっていました。
バスルームの排水溝は全く水が流れず、こちらも長い間ちゃんと掃除されていない印象。
・設備:6/10
個室部分とキッチンがある共用部分は別棟になっており、誰か宿の人がいないと鍵がかけられるため、朝や夜の時間帯には利用できないのがマイナス。(まずはコーヒーを飲みたいタイプなので)
食事は朝と夜をお願いしましたが、こちらは手作りの絶品料理で満足でした。
・wi-fi:0/10
なんとこの宿、インターネットがありません。(Booking.comにはあると書かれていたのに)
「インターネット・プロブレム」とのことでしたが、宿やってるならさっさと直せよという感じ。
・雰囲気:7/10
せっかくの田舎の家族経営の宿なのに、温かいおもてなしなどが期待できないのが残念なところ。
湖を望む庭の雰囲気はとても良く、のんびりと一人でくつろぐには良いかもしれません。
・総合:5.3/10
Booking.comで最も安い宿だったので予約しましたが、正直宿としてはかなり微妙だと思います。
家族は良い人たちですが、それ以上にゲストハウスとしての体をなしてすらいない気がします。
村には他にもいくつかのゲストハウスがあるので、できればそちらに宿泊することをおすすめします。
【この宿を料金確認・予約する!】
【トモグヴィ村の宿をすべて見る!】
トモグヴィ村の温泉ゲストハウス
トモグヴィ村には自家源泉を持つ温泉ゲストハウス”Guesthouse Geno“があり、2023年の再訪時にはこちらに宿泊しました。
宿のクオリティー的にはまあまあでしたが、宿泊客は敷地内の温泉を無料で利用し放題なのは大きなメリット。
温泉で一日の疲れを癒したり、朝風呂で一日を始めたり…温泉三昧のトモグヴィ滞在がしたい人にはおすすめです!
トモグヴィ村&周辺エリアのアクセス・交通情報
今回紹介した見どころへのハイキングの拠点となるトモグヴィ村は、アハルツィヘ~ヴァルジア間を結ぶマルシュルートカが通る場所。
公式な停留所などはないものの、待っていれば停車して乗せてくれます。
しかしながら、この区間のマルシュルートカは1日4本しかないのでかなり不便。
ヴァルジアなど他の周辺観光スポットとトモグヴィ村周辺のスポットを個人でセットでまわる場合は、日帰りは絶対に不可能な上、マルシュルートカのスケジュールを考えたプランニングが必要となります。
アハルツィヘ~ヴァルジアのマルシュルートカのスケジュール
アハルツィヘ~ヴァルジア間のマルシュルートカがややこしいのは、
・アハルツィヘ→ヴァルジア:1日4本
・ヴァルジア→アハルツィヘ:1日3本
と、方向によって便数が異なると言う点。
(現地で色々な人に確認しましたが、こういうものなんだそう。)
アハルツィヘから幹線道路を走ったマルシュルートカは、ヘルトヴィシ村(Khertvisi) でヴァルジア方面へ至る道路に入り、その後は終点のヴァルジアまで1本道となります。
上の図で赤字はアハルツィヘ→ヴァルジア方面の時刻表 / 青字はヴァルジア→アハルツィヘ方面の時刻表となっています。
ヴァルジア観光→トモグヴィに移動する場合
最も早いアハルツィヘ発10:30の便を利用しても、ヴァルジア到着は12時すぎ。
13:00ヴァルジア発のマルシュルートカにはどう考えても観光の時間が足りないため、15:00発のものを利用するか徒歩でトモグヴィ村まで移動(5km/1時間)したら、もうハイキングに行くには遅すぎるため、必然的にトモグヴィ村に宿泊することになると思います。
トモグヴィ観光→ヴァルジア観光する場合
アハルツィヘ発10:30の便を利用し、トモグヴィ村に到着するのは12時前。
すぐにハイキングをスタートして、最も遠いゼダ・トモグヴィまで往復すると5~6時間ほどとなるので、18:45分頃にトモグヴィを通過するヴァルジア行きのバスにも間に合うでしょう。
(もし逃してしまったら、最悪7kmプラスで歩くことになります)
ヴァルジア到着後はもう入場可能時間は過ぎているので、ヴァルジア村に宿泊して観光は翌日にまわすこととなります。
おわりに
穴場スポット感が強いトモグヴィ村周辺の見どころ&ハイキングコース、個人でのアクセスに便利なマルシュルートカのスケジュールを詳細に解説しました。
日本人でこんな奥地にまで興味をもってやって来る人は、相当な物好きだと思いますが(笑)、そんな数に限りがある人々のお役に立ったなら嬉しいです。
トモグヴィ村周辺には超有名観光スポットのヴァルジアがあるのはもちろん、他にも観光スポットが点在している魅力あふれるエリア。
まだまだ知られていない、隠れた見どころの数々へと足をのばしてみることをおすすめします!
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