こんにちは!ジョージアで夏の終わりを満喫している、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
全部で53の小さな村々が点在している、ジョージア最奥部に位置するトゥシェティ地方。
人里離れた山奥で伝統的な生活が息づいており、独自の信仰や建築スタイルにも独自の文化が見られます。
トゥシェティ地方観光・滞在の中心となるオマロ村から、日帰りハイキングで訪れることができるシェナコ村も、伝統を色濃く残した村の一つ。

コーカサス山脈を背景に佇む教会を中心にひらけた村は、まるで屋外博物館さながら。
トゥシェティならではの伝統的な造りの民家が多く残り、集落内には古い映画の世界のような情緒が漂います。


また、シェナコから4kmほど東には、ジョージア側で最後の人が住む村であるディクロの集落があります。▼

現在ロシア領となっているダゲスタン共和国との国境までたったの3kmの場所にあるディクロ。
異民族の侵攻に備えて築かれたディクロ要塞が村のシンボルとなっており、コーカサスの深い山の向こうにあるダゲスタン共和国の風景を間近に眺められ、「国境の村」ならではの最果て感にひたることができます。


というわけで今回の記事は、シェナコとディクロの観光情報をまとめたもの。
二つの村の見どころはもちろん、トレッキングコースや極上ゲストハウス情報まで…大ボリュームの記事となっています。
シェナコ&ディクロは、オマロからの日帰りトリップの定番。
日帰りでも十分に満喫できますし、宿泊して山村らしいのんびりとした雰囲気にひたるのもおすすめです。
シェナコ&ディクロ観光マップ
紫:ゲストハウス
灰色:国境警備隊基地
緑線:オマロ~シェナコループトレイル(愛の要塞経由)
オレンジ線:オマロ~シェナコループトレイル(アゲウルタ経由)
シェナコの見どころ

オマロから深い谷間を挟んだ山の頂上に広がるのが、シェナコ(Shenako / შენაქო)。【マップ 青②】
「トゥシェティ地方で古い建物がもっとも多く残る」と言われる村であり、その評判通り村には築二百年を越えるような民家がいくつも点在しています。


また、シェナコのシンボル的存在が、村でもっとも高い場所にある教会。
トゥシェティ地方で唯一、完全な形で現存しているキリスト教会であり、現役の祈りの場としても機能しています。
シェナコのシンボル!聖ギオルギ教会

標高1930mの高地に位置するシェナコ村のシンボル的存在が、村を見下ろす小高い丘の上に建つ聖ギオルギ教会。【マップ 青①】
その古めかしい外観とは裏腹に、建造されたのは19世紀と比較的最近のこと。
トゥシェティ地方では元々精霊信仰が主流であり、ジョージア他地域よりもかなり遅れてキリスト教が入ってきたため、近代に至るまで教会は建設されなかったのです。

キリスト教が人々の間に根付いた現在であっても、トゥシェティ地方にはジョージア正教の教会は二つしかありません。
その一つはダルトロ村入口にある教会ですが、あちらは半壊した状態で、聖地としての機能をほぼ失っています。
残りのもう一つの教会がここシェナコの聖ギオルギ教会であり、完全な形で残っている現役の祈りの場としてはトゥシェティ地方唯一のキリスト教教会となります。

シェナコの教会の特徴的な点は、時間帯や見る角度によって色が変化して見えるという点。
正面は黒っぽく、東側はやや黄色味がかかり、裏側は緑がかった色…と微妙に各側面の石壁の色が異なり、太陽光の当たり方によっても全く異なる印象を与えるのです。


教会内部への入場は自由で、パステルブルーが美しい静かな空間が広がっています。
内部に関しては、比較的最近改装されたような印象を受けます。▼

教会の見学を終えたら、裏手にある「ハティ」と呼ばれる聖域へと足をのばしてみましょう。

ジョージアの多くの地域ではジョージア正教が信仰されているのですが、山々によって下界と隔てられたトゥシェティ地方の信仰は独特。
キリスト教と、お隣のチェチェン共和国で信仰されているイスラム教、古くからの精霊信仰などが混ざり合った独自の宗教観が現在でも生き残っているのです。

どこの村でも見られる、こちらの平たい石を重ねた「ハティ」という祠が、トゥシェティ地方の人々の信仰の中心となる場所。
シェナコ村の祠の上部には、牛や羊の角が飾られているのが特徴的で、これはジョージア北東部の山岳地帯に共通してみられるものです。
ハティ周辺にはどことなく神聖な雰囲気が漂っているのが感じられ、村の人々が聖地として崇めるのにもきっと納得できるはず。

祠付近から丘を登ると、教会とシェナコ村を一望できるビューポイントがあります(※こちらも女性は立ち入ることはできないので注意!)。
精霊信仰の祠とキリスト教の教会、その先に散らばる古い民家が織り成す風景…
シェナコならではの神秘的な雰囲気を満喫したら、集落内へと足を進めていきましょう。
まるて屋外博物館!伝統建築だらけのシェナコ村を散策

教会がある丘のふもとに広がるシェナコの集落はとても小さく、数十軒の家が建ち並んでいるだけのもの。
端から端まで歩いても15分もかからないほどの規模ですが、建ち並ぶ伝統建築の美しさにはきっと心奪われるはずです。


トゥシェティ地方の伝統的な建築スタイルは、この地域でとれる平たい石を積み上げて壁を造り、その二階部分に装飾を施した木製テラスを設けたもの。
二階部分の外壁は白い漆喰で塗るのが伝統だそうです。
改装されて新しい外見の家屋もいくつかありますが、ほとんどの建物はかなりくたびれた状態。
言ってしまえば「ボロボロ」なのですが、それも逆にシェナコならではの味わいとなっています。

こうした木製のテラスを設ける建築スタイルは比較的新しいもので、19世紀頃に見られるようになったそう。
それまでは、高さ数十メートルの見張り塔に家族そろって居住し、山を越えてやって来る外敵の侵入に備えていたのだそうです。


「比較的新しい」とはいえ、どれも築150年以上の建物。
毎年トゥシェティ地方に訪れる長く厳しい冬は、容赦なく家屋を傷めてしまいます。
ぼろぼろの建物を綺麗に整備すれば、「屋外博物館村」として観光の起爆剤となるはず。
しかしそれをせずに(予算的にできずに?)ありのままの雰囲気をそのままに残しているあたりも、シェナコの良いところなのかもしれません。

トゥシェティ地方観光の中心となるオマロやダルトロなど知名度がある村では、多くの古い家屋がリノベーションされていますが、シェナコの家屋は良くも悪くもオリジナルのままの状態。
もはや人が住める状態でないような家も多く見られ、人里離れたこの地で朽ちていくのを待つだけの状態となっていました。


シェナコの集落内はあてもなく散策するのが醍醐味ですが、一つだけ絶対に見逃せない建物がMinimoの家。▼【マップ 青④】

Minimoとは、ソ連時代に公開されたジョージア・アルメニア合作の映画のこと。
興行的に大成功を収め、旧ソ連圏では知らない人はまずいないほどの知名度を誇り、現在でもジョージアでは根強い人気があります。
そんな有名映画のワンシーンが撮影されたのが、シェナコ村に残るこの民家なのです。


Minimoの家には現在住人はおらず、空き家となり放置された状態。
手入れされていない建物はかなり傷んでいますが、それでも映画内に登場するレトロな美しさは健在です。

Minimoの家はシェナコ集落のやや奥まった場所にあり分かりにくいですが、村の人に尋ねれば一発で教えてくれるはず。
数十年前から時が止まったような伝統建築の美しさを堪能しましょう。
ウシャロ・チャイの民家

シェナコの集落内には、Usharoというブランドのハーブティーを生産&販売している民家があります。【マップ 青④】
Usharoで作られているのは、トゥシェティの山で採れるハーブや花を乾燥させたトゥシェティ・ティー。
かつてはトゥシェティ地方内の各家庭で飲まれていただけの「隠れた名物」だったのですが、2016年にこの民家の人が初めてジョージア全国向けに販売を始めたのだそうです。


Usharoのお茶の種類は多岐に渡り、トゥシェティ名物のコンダリ(サマーセイボリー)はもちろん、ヤマツツジや山ミントなど山岳地域らしいラインナップ。
プラスチックの小袋に分けられたものから、お土産用の可愛らしい箱に入ったものまであるので、トゥシェティの味を持ち帰るのもありです!
シェナコ周辺の見どころ

村自体も魅力的なシェナコですが、その周辺には隠れたスポットがいくつか点在している点も見逃せません。
いずれの場所もオマロ~シェナコ間ループトレイル上に位置しているので、オマロ~シェナコを移動する際に立ち寄るのが効率的です。
オマロビューポイント

オマロ~シェナコ間を結ぶ未舗装道路沿いには、オマロビューポイントがあります。【マップ 青⑥】
深い谷の向こうに広がるロウワー・オマロの全景を望むことができ、ジオラマのような美しい景観には感動必至。
西向きのビューポイントなので午後はかなりの逆光となるため、訪問は午前中がベストです!
愛の要塞

シェナコ村がある山の斜面にひっそりとたたずむ中世の要塞跡は、「愛の要塞」と呼ばれる隠れスポット。【マップ 青⑦】
敷地内には半壊した石造りの見張り塔と、城壁の一部が残るだけ。
眺めは素晴らしいですが、見ごたえ抜群かと問われると、そこまでではないかもしれません。


一見すると、トゥシェティ地方の多くの村にある石造りの要塞跡でしかありませんが、ここにはある伝説が根付いています。
今から約200年前のこと。
タブヴェリジェという男がシェナコ村で開催された乗馬レースで優勝し、その賞として村の近郊にある中世の要塞の所有権を得ました。
タブヴェリジェには養子として育ててきたラガジという息子がおり、シェナコ村で生まれたタマルという女性と恋に落ちます。
タマルにはすでに両親が決めた別の結婚相手がいましたが、ラガジとタマルはそれに従わずに愛を育んだため、シェナコの村人は大激怒。
二人の若者を村八分にしてシェナコ村から追放します。
シェナコを追い出された二人の男女は、タブヴェリジェ亡き後にすでにラガジに所有権が移っていた山の中の要塞に居を移し、この場所で二人の息子に恵まれます。
ラガジ家族は相変わらずシェナコ村に戻ることは許されていませんでしたが、まだ小さな息子たちを不憫に思ったタマルの母親は、シェナコの村人に内緒で火のついた薪を夜な夜な要塞へと運び、ラガジ家族が寒さに凍えないようにしていたと言います。
その後十数年の時が流れた19世紀前半は、トゥシェティ地方にとって戦乱の時代でした。
山を越えて侵攻してきたダゲスタン人によってディクロ要塞村が占領され、トゥシェティの男たちは常に異民族との戦いに駆り出されます。
そんな戦いにおいて、ラガジと二人の息子は大活躍。
彼らの活躍と貢献は、かつて家族を村八分にしたシェナコの村人にも認められ、ラガジ一族はふたたびシェナコ村へ戻ることを許されました。
現在でも夜にオマロからシェナコ方面の山を眺めると、ぼんやりとした光がゆっくりと要塞に向かって移動しているのが見られることがあるそう。
人々はこの不思議な現象を「タマルの母親が火のついた薪を運んでいる」と捉え、村八分になっても愛を貫いた男女の愛と母親の愛が交わるこの場所は、いつしか「愛の要塞」と呼ばれるようになりましたとさ。めでたしめでたし

愛の要塞へのアクセス方法は、徒歩のみ。
シェナコを拠点に往復しても良いですが、オマロ~シェナコ間ループトレイルで移動しながら立ち寄るのが最も効率的です。
アゲウルタ

シェナコ村から南に2kmほど。
オマロとシェナコを隔てる深い谷間を見渡す場所にあるのがアゲウルタというかつての集落の跡です。【マップ 青⑧】
山の斜面を利用して石造りの民家が数十軒点在していたアゲウルタ。
現在は完全なる無人となっており、半壊した民家や城塞が残るだけとなっています。


アゲウルタは、地形的に谷底から発生する霧や雲に包まれることが多いそうで、のぶよが訪れた際ももくもくと湧き上がる雲が石造りの廃村を包み込んでゆく風景が見られました。
神秘的な雰囲気とどこか禍々しさすら感じる風景は、なかなかに見ごたえのあるものです。

アゲウルタへは、シェナコからであれば未舗装道路が敷かれているので4WDでアクセスも可能。
オマロ方面からは道路はないのでトレッキングコースを登っていくしかありません。
シェナコから単純往復しても良いですが、オマロ~シェナコ間ループトレイルで移動しながら立ち寄ることも可能です。
ダゲスタンまで目と鼻の先の国境の村!ディクロ

シェナコからさらに東方向へとのびる未舗装道路を4kmほど歩いた先。
ジョージア側で最後の人が住む集落であり、国境の村として知られるのがディクロ(Diklo / დიკლო)です。【マップ 青④】


現在のディクロの村は19世紀(150年前)以降に造成された比較的新しいもので、元々ディクロの人々は現在のディクロ要塞がある岩山に集落を形成して暮らしていました。
国境の村ならではの複雑な歴史と、山村らしいのんびりとした雰囲気が絡み合うディクロ。
この地に立てば、「とうとうここまでやって来たのかあ…」と感動を覚えるはずです。

シェナコ~ディクロ間には車両通行可能な未舗装道路が敷かれており、簡単に移動することが可能。
ディクロの方がシェナコよりも300m近く標高が高い地点にあるため、行きは上り坂/帰りは下り坂となります。
・距離:片道3.8km
・所要時間:片道1時間~1時間半
・高低差:▲279m ▼49m
・難易度:★★☆☆☆
シェナコを出発してすぐに、道はがっと下って再びがっと上るルートに。
この最初の上り坂さえ歩ききってしまえば、あとは緩やかな坂道がディクロまでずっと続きます。


往路なら1時間半ほどで、ディクロの集落入口に到着します(復路なら下り坂なので1時間くらい)。

ディクロ村入口からそのまま目と鼻の先の集落内に入っても良いですし、集落観光は後に回してさらに2.5kmほど先にあるディクロ要塞まで40分ほど歩いてもOKです。
ディクロ要塞

ディクロ村のシンボルであり、この地の歴史が詰まっているのが、ディクロ要塞(Diklo fortess / დიკლოს ციხე-სიმაგრე)。【マップ 青⑤】
ディクロの集落からさらに国境方面に2.5kmほど歩いた場所にあり、村からも要塞の遠景が見えます。


以前はディクロ要塞への立ち入りの際には、ディクロ村の国境管理所にて特別な許可証を取得する必要がありました。【マップ 灰色】
しかし2025年現在は許可証の取得もパスポートの提示も必要なくなっており、誰でも要塞まで簡単にアクセスできるように。
ただ、こうした情勢やシステムは流動的である場合があるので、ディクロ要塞訪問前に地元の人に確認しておく/念のためディクロの国境管理所に立ち寄って、職員に許可証が必要ないか確認するようにすることを強くおすすめします。

ディクロ集落から要塞までは、アップダウンがほぼない未舗装道路を40分ほど歩いていくだけ。
最後の100mほどの地点で道路が途切れ、要塞までの山道(といっても大したものではない)が続きます。▼


ディクロ要塞の建設は9世紀(1200年前)に遡るそう。
コーカサスの山々が形成する深い谷間を一望する立地が防衛拠点としてぴったりだったことから、岩山の頂上に石造りの要塞が建設されたのです。
その後中世に入ると、人々は要塞がある岩山の斜面に石を積んで家を建てて居住しはじめるように。
こうして出来上がったのが、ディクロ要塞を頂上にした要塞村・ディクロというわけです。

ディクロの歴史は、目と鼻の先の山を越えてやって来る異民族との戦いの歴史。
ディクロ要塞がある地点からたったの3km先は、北コーカサスのムスリム民族であるダゲスタン人が住むエリアとなっており、何度も侵攻されそうになっては防いできました。


そんな国境の村の状況が大きく変わったのが、19世紀初頭(200年前)のこと。
数千人単位で侵攻してきたダゲスタン人によってとうとうディクロ要塞村は陥落し、占領されてしまったのです。
それまで先祖代々居住してきた要塞村から追い出された人々は、数km離れた山のなだらかな斜面に居を移すことに。
こうして形成されたのが現在のディクロ集落というわけです。

ダゲスタン人によるディクロ占領は長くは続きませんでしたが、ダゲスタン勢力撤退後もディクロの人々が要塞村へふたたび戻ることはありませんでした。
百年以上もの間手入れされることなく放置されたディクロ要塞は廃墟となっており、かつて城塞を構成していた壁の一部と、かつて人々が住んでいた民家の土台が残るだけ。
しかし、この場所から眺める急峻な谷間と山々の風景は、息を呑むほどのダイナミックさです。


折り重なるようにして聳える山々のすぐ向こうは、現在ロシア領のダゲスタン共和国。
ダゲスタン側の山々のディテールも見えますし、ロシア側の国境警備隊の基地まで小さく確認することができます。
ディクロ要塞自体の見ごたえや保存状態はまあ…といった感じではありますが、この唯一無二のロケーションからの圧倒的な眺望のためだけにでも、わざわざ足を運ぶ価値が十分にあります。
ディクロ村を散策

国境の地ならではの歴史に翻弄されてきたディクロの人々が築いた集落は、ロシア領と目と鼻の先という立地にもかかわらず、のんびりとした山村らしい風情。
数十の民家が並びますが、半分ほどは廃屋のようになっており、人口の流出が激しい印象を持ちます。


シェナコと同様に、ディクロにもトゥシェティ地方らしい伝統家屋がいくつか残っています。
しかし状態はあまり良いとは言えず、半壊したような民家もちらほら。
上手に保存すればディクロにも観光客が増えると思うのですが、そこは予算の問題で難しいのかもしれません。

ディクロの集落はどこからでも、ディクロ要塞とその向こうのダゲスタン側の山々が望めます。
現在のディクロの人々の祖先が住んでいた要塞を遠くに眺めると、郷愁のような不思議な気持ちになります。


ディクロには飲食店はありませんが、ゲストハウスとして営業している民家や手作りの羊毛製品を売るお土産屋が数軒。
ディクロはオマロから日帰りでサクッと観光するのが定番なので、わざわざこの村に滞在する旅行者も少ないと思うのですが、旅行者向けの商売もいちおうは成り立っているようです。

ディクロ集落は端から端まで歩いても15分ほどの規模なので、ゆっくり散策しても30分ほどみておけばOK。
国境の村ならではの最果て感を存分に味わいながら、伝統的な村の雰囲気にひたりましょう。
シェナコ/ディクロの宿情報

シェナコとディクロへはオマロから日帰りで訪れる旅行者が大半ですが、のぶよ的には宿泊するのがおすすめ。
シェナコ/ディクロのいずれにも民家を改装したゲストハウスが数軒点在しており、どの宿も飾らない家族経営の暖かな雰囲気。【マップ 紫】
各ゲストハウスの価格帯もトゥシェティ地方の中では平均~やや安めとなっており、払った値段以上の宿泊体験ができます。
シェナコ/ディクロのどちらの村に泊まっても良いのですが、個人的にはどん詰まりにあって見どころが限られているディクロよりも、シェナコ拠点の方が断然おすすめ。
オマロへのアクセスがしやすく、周辺の見どころを訪問する拠点としてもシェナコの方が便利なのはもちろん、シェナコの方が村自体の雰囲気が良いためです。
というわけでここでは、のぶよがシェナコ村で滞在したゲストハウスを紹介します。
宿泊予約サイトには出ていないのですが、かなりの良宿だったので心からおすすめ!
【Guesthouse Old Tusheti】

・部屋タイプ:ツインルーム一人利用 ※トイレ&シャワー付き
・料金:50GEL(=¥2500)
・食事:朝食20GEL(=¥1000)/夕食30GEL(=¥1500)
・宿泊予約サイト:非対応なので電話して空室確認
・立地:8/10
シェナコ村の入口から100mほどの場所にある宿です。
少し坂を登らなければいけませんが、それはシェナコ全体に言えること。
村の散策にも周辺へ足をのばすにも便利な立地です。
・アクセス:8/10

宿の入口には看板が出ているものの「カフェ」と大きく書かれていて、「ゲストハウス」の文字はかなり小さめ。
一見すると宿だと分かりにくいかもしれません。
敷地内に入ると宿のおばさんが常にいて、スムーズにチェックインできます。
・スタッフ:8/10
柔らかな態度のおばさんが基本的に一人であれこれ切り盛りしています。
おばさんには英語は通じずジョージア語かロシア語のみとなりますが、まあ人柄でカバーしている感じ。
そこまでがっつり絡んでくるわけではないですが、こちらがお願いしたことにはちゃんと応えてくれます。
・清潔さ:9/10

この宿の素敵なところが、カフェを兼ねた半屋外のスペース。
石造りの空間には伝統のラグやドライフラワーがたくさん飾られており、華やかな雰囲気です。

宿のおばさんは一日数回掃除してきれているので、いつでも清潔感たっぷりなのも◎
部屋も掃除が行き届いていますが、そもそも建物自体の建て付けが悪いようで、壁が歪んでいたり扉の鍵が閉まりにくかったりしますが、その辺りは個人的には気になりませんでした。
・設備:8/10
驚いたのが、各部屋にコンセントがあること。


トゥシェティ地方の宿は例外なくソーラーパネルを利用した太陽光発電で電気をまかなっていて発電量が限られているため、基本的に個室にコンセントはなく共用エリアで充電しないといけない場合がほとんど。
好きなタイミングで自室で充電できるのはかなり珍しいです。

キッチンもあるにはあるのですが、宿泊客は使用できないため、お湯などをもらう際にいちいちおばさんに声をかけないといけない点がマイナス。
電気ポットなどにお湯を貯めておいて自由に使えたら良いのになあと思いました。
・ベッド:9/10
ベッドはかなりふかふかで軋む音もなく、快適に眠ることができます。
枕がちょっと柔らかすぎたのがマイナスと言えばマイナスでしょうか。
・Wi-Fi:10/10
共用エリア、部屋、庭など宿の敷地内どこでも電波が強く、サクサク接続できます。
大きなファイルのアップロードも問題なくでき、ストレスフリーで作業可能です。
・雰囲気:10/10

おばさんがこだわっている宿の雰囲気作りは大成功していて、とにかく居心地が良いのが素敵。
共用エリアとなっているカフェ部分ののんびり感は素晴らしいですし、温かみのあるウッド調の部屋も、周辺の風景を一望する庭も、敷地内すべてが良い感じです。
・食事:10/10
そして、この宿で絶対に付けたいのが食事。
夕食30GEL(=¥1500)とトゥシェティ地方の平均プライスなのですが、驚くほどに質の高い料理をたくさん出してくれるのです。

カフェを兼ねていることもあってか、料理の味の良さや盛り付けのセンスは確かなもの。
ジョージアの定番料理からここトゥシェティ地方ならではの郷土料理まで堪能でき、こちらのリクエストにこたえてくれるのも嬉しいです。
宿泊せずとも食事のためだけにでも立ち寄る価値があると言えるほど。
ランチやディナーをお願いする場合は調理に時間がかかるため、食事の数時間前までに一度立ち寄って予約しておくのがベストです。
・総合:8.8/10
シェナコで、というかトゥシェティ地方全体でも指折りの良宿です。
専用バスルーム付きでこの部屋代はかなり安いですし、食事もクオリティーを考えるとかなりリーズナブル。
とにかく雰囲気が良く、トゥシェティ地方らしい伝統が香る空間にどっぷりとひたれます。
宿のおばさんの感じや距離感も絶妙で素晴らしく、「あまり宿の人とがっつり絡む宿は苦手…」という人でも問題なし。
総合的に、万人におすすめできる天国のようなゲストハウスです!
シェナコ&ディクロへのアクセス

シェナコとディクロは同じ方面にあるため、多くの人がセットで観光するプランを組むことでしょう。
いずれの村も、アクセス拠点となるのはトゥシェティ地方最大の村であるオマロ。
公共交通機関は存在しないため、基本的には歩いてのアクセスとなります。
①オマロで4WDチャーター
歩きたくない人にとってのトゥシェティ地方内での移動手段は、4WDをチャーターするしかありません。
料金の相場は以下の通りです。▼
・オマロ~シェナコ間の片道:1台100GEL(=¥5000)~
・オマロ~シェナコ~ディクロ間の片道:1台150GEL(=¥7500)~
・1日チャーター:1台400GEL~500GEL(=¥20000~¥25000)
4WDの手配は、オマロの宿泊先の人に相談してお願いするのが定番。
前日までにドライバーを確保しておくのが安心です。
②オマロから徒歩(未舗装道路)

オマロ~シェナコ間を単に歩いて移動するだけなら、未舗装道路に沿って歩くのが最適解。
トレッキングコースに比べると距離こそやや長くなるものの、谷底までの傾斜はまだましなので、体力的には断然楽です。
・距離:片道6.4km
・所要時間:片道2時間半
・高低差:▲329m ▼308m
・難易度:★★☆☆☆

オマロから谷底部分のアラザニ川に架かる橋までは、とにかくずつと下り坂。
反対に、この橋からシェナコまではとにかくずっと上り坂が続きます。

延々と続く上り坂はまあまあ体力的にきついものの、道沿いには木が多くあるため影ができるので、夏場でも比較的暑さがましなのは嬉しい点。
オマロを出発しておよそ2時間ほどで、シェナコ村の風景が見えてきます。
③オマロ~シェナコループトレイル

未舗装道路を歩く退屈な道ではなく、自然を感じながらトレッキングして移動したい場合は、シェナコループトレイルと呼ばれるルートを歩いてオマロ~シェナコ間を移動することも可能。
ループトレイルはその名の通り、オマロ~シェナコ~オマロ間に円を描くように敷かれたルート。
オマロから日帰りで歩くことも可能ですが、オマロ~シェナコ間の片道ずつ別のルートを通ることで、このエリアの魅力を余すところなく楽しめます。


行きと帰りのどちらにどのルートを歩くかは完全に自由。
いずれのルートにも途中にちょっとした見どころがあるので、単に移動するだけではなく観光もセットでできる点が嬉しいです。
オマロ~愛の要塞~シェナコルート

オマロ~シェナコループトレイルのうち北側のルートが、愛の要塞を経由するルート。【マップ 緑線】
オマロとシェナコを隔てる深い谷の底まで下り、ふたたび対岸の斜面を登っていく道のりです。
・距離:片道6.0km(愛の要塞に行かない場合は片道4.6km)
・所要時間:片道2時間半~3時間(愛の要塞に行かない場合は片道1時間45分)
・高低差:▲288m ▼265m
・難易度:★★★☆☆


オマロから最初の数百メートルは未舗装道路を下っていきますが、途中に山道への分岐があり、ここがトレイルの入口。
分岐から先は完全なる山道でかなりの急斜面なので、足元に注意しながら歩きましょう。
谷底まで下りきると比較的新しい橋が架かっているので、これを渡ってシェナコ側へ。
ここからは急坂をひたすらに登ります。▼

橋から300mほどの場所には、愛の要塞方面とシェナコ方面に道が分かれるポイントが。▼

ここを左に曲がって微妙なアップダウンが続く山道を片道700mほど行くと愛の要塞に到着します。

愛の要塞分岐点から山道を登っていくと、オマロ~シャティリ間の未舗装道路に合流するので、あとはふたたび未舗装道路沿いに歩いていくだけ。


オマロビューポイントを過ぎたあたりから道は平坦になり、シェナコ村まで気持ちの良い平原の中を歩いていけばOKです。
オマロ~アゲウルタ~シェナコルート

シェナコループトレイルのうち南側にあるのが、アゲウルタを経由するルート。【マップ オレンジ線】
オマロとシェナコを隔てる谷間の絶景を眺めながら歩くことができ、かなりおすすめです。
・距離:片道6.6km
・所要時間:片道2時間半~3時間
・高低差:▲399m ▼336m
・難易度:★★☆☆☆
オマロからは未舗装道路を下っていき、谷底の橋を渡ってシェナコ側の斜面を登っていくと、途中に山道への分岐点が。
ここがアゲウルタへの山道の入口となります。▼


分岐点→アゲウルタ方面は断続的な上り坂となっており、足場が良くない箇所もいくつかあるので注意。
とはいえ難しいコースではなく、マーキングもおおくされているので迷うこともありません。


未舗装道路との分岐点から50分ほどで、アゲウルタの廃集落が見えてきます。▼

アゲウルタで休憩&散策を済ませたら、あとはシェナコまで緩やかな上り坂を歩くだけ。
アゲウルタ~シェナコ間は山道ではなく、車両通行可能な未舗装道路が敷かれているので歩きやすいです。


オマロを出発してからシェナコに到着するまでの所要時間は、約2時間半ほど。
未舗装道路をずっと歩く場合とさほど変わらず、こちらの方が風景がかなり良いので、オマロ~シェナコ間の移動のうち片道はこのルートを歩くのがおすすめです!
おわりに
不思議な教会と伝統建築が美しいシェナコと、最果て感漂う国境の村・ディクロの観光情報を解説しました。
いずれの村にもそれぞれ異なる魅力があり、アクセスも(トゥシェティ地方にしては)そこまで不便ではないので、オマロを拠点としての最初の村めぐりにはぴったりです。
のぶよ個人的にはシェナコのゲストハウスにぜひとも宿泊してほしいところですが、日程が限られている旅行者でもオマロから日帰り可能なのは大きなメリット。
この山深い地の伝統を感じたい人にら心からおすすめです!
コメント
こっそりブログ記事を楽しんでおります。
トゥシェティ周辺のトレッキングルートや女性が近寄る事が出来ない場所・・・などの情報、とても助かります。
現地でないと分からない風習などは、ともすれば禁を犯しがちなので・・・。
限られた日数での旅が多いのでゆっくり周る事が出来ないのですが、
いつか予定のない旅い出られるようになったら、歩きに行きたいです。
引き続き良い旅をなさってください!!
清水ソウコ様
コメントいただきありがとうございます(そして返信が遅れて申し訳ありません!)
トゥシェティ地方などは日本語の情報がほとんどないので、自分自身で見たものや訪れた場所を少しでもシェアできれば良いなと考えています。
同じジョージアという国とはいえ、異なる信仰やルールなどがあり、何も知らなければ禁を犯してしまうことになりかねませんよね。
この世界的なコロナ禍が終息したら、きっと予定も立てない気楽な旅ができるようになる非が戻ってくると信じています!