こんにちは!ジョージア南部のサムツヘ=ジャワヘティ地方をのんびり旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージア最南部に位置するジャワヘティ地方は、旅行者がほとんど訪れない穴場のエリア。
「旅行者が来ない=魅力がない」というわけではなく、知られざる大自然の風景や昔ながらの雰囲気を色濃く残す村々が点在しており、これから人気が出ること間違いないと思います。
そんなジャワヘティ地方において最大の見どころが、「ジョージアの湖水地方」と呼ばれる湖沼群。
大小さまざまな湖が点在しており、野鳥の楽園として徐々に知名度を上げています。
今回紹介するのは、そんなジョージア湖水地方に点在する湖の中でも最も美しいと言われるパラヴァニ湖(Lake Paravani / ფარავანის ტბა)。
パラヴァニ湖は、天然の湖としてはジョージアで最大の面積を誇る湖。
その風景はとにかく素晴らしく、「ジョージア湖水地方の宝石」の名にふさわしい風景を見せてくれます。
ほとんど旅行者が訪れないこともあり、湖畔には手つかずの大自然や昔ながらの風景を残す素朴な村々が点在しているのもポイント。
特に、パラヴァニ湖西岸の風景はどこも素晴らしく、わざわざ足をのばす価値が大いにあります。
今回の記事は、インターネット上にまったく情報がないパラヴァニ湖周辺の観光情報を解説するもの。
珠玉の見どころはもちろん、実際にこのエリアを旅した経験をもとにしたアドバイスや個人でのアクセス情報まで詳細に解説しています。
こんなジョージアの僻地まで行く人もほとんどいないでしょうが、少しでもジョージア湖水地方の美しさを感じてもらえれば嬉しいです!
パラヴァニ湖観光マップ
青:見どころ
赤:唯一の商店
ジョージアで初めてキリスト教に触れた村:ポカ
パラヴァニ湖観光の拠点として便利なのが、湖の最南端に位置するポカ村(Poka / ფოკა)。【マップ 青①】
およそ1700年前にキリスト教を布教しようとやって来た聖人が、ジョージアに到達して初めて休養を取った地として知られており、聖人が降り立った地のまさに真上に小さな教会が建っています。
ポカは小さな村ながらも2か所の修道院を有し、聖なる土地としての雰囲気でいっぱい。
ポカ村の修道院では修道女手作りのチョコレートとチーズが名物となっており、こちらも必食です!
パラヴァニ湖観光で最初に訪れることになるであろうポカ村。
訪問の前には、この地の歴史を知っておくのが絶対です!
素朴な風景が魅力的:ウラジミロフカ
ポカ村を出発してパラヴァニ湖の西岸を進んでいくと、最初に見えてくるのがウラジミロフカ村(Vladimirovka / ვლადიმიროვკა)。【マップ 青②】
これといった見どころはないものの、地方部らしいのんびりした村の雰囲気とコバルトブルーのパラヴァニ湖の風景が素敵です。
ウラジミロフカ村の民家は、暖色の石を積み上げたアルメニア風の建築様式が特徴的。
ピンクの家々のすぐ背後に広がるパラヴァニ湖の青色が南から差す太陽の光に照らされ、とても美しい風景が見られます。
ウラジミロフカ~アスパラ間の風景
パラヴァニ湖西岸エリア全体で最も美しい風景が見られるのが、ウラジミロフカ村~アスパラ村の間の4kmほどの区間。
未舗装道路からも美しい湖の風景が見られますが、すこし道路をはずれて湖沿いにのびるトラクターの轍をたどりながら歩くのがおすすめです。
進行方向右手にはどこまでも広がるパラヴァニ湖が、左手にはジャワヘティ地方の丘陵地帯がどこまでも広がり、まるで世界にたった一人になったかのような気分に。
人間の姿はいっさい見かけない代わりに、数千羽の鳥たちの姿が見られます。
特に多くの鳥が集まるのが、途中にある小島。
何千もの白い鳥たちが休んでいたり飛び交っていたりして、辺りは鳥の鳴き声に包まれています。
湖が目の前&人の姿がない&平坦な土地ということで、キャンプをするつもりならこの辺りがおすすめ。
朝目覚めると羊の群れに囲まれている、といっためったにない経験ができるかもしれません。▼
パラヴァニ湖の羊の群れはなぜか人間を怖がる様子があまりなく、こちらの存在を気にも留めることなくひたすらに草を食んでいたのが印象的。
羊だけでなく山羊の姿も見られ、まるで夢の中にいるような光景に360°囲まれていました。(まあ朝だったから、まだ半分夢の中にいたのは間違いない)
湖のダイナミックな風景も、ジャワヘティ地方の広大な大地のパノラマも、無数の鳥たちや羊の群れも…
パラヴァニ湖観光のハイライトとなる大自然の風景にきっと感動するはずです!
アルメニア教会に見守られた、儚くも美しい村:アスパラ
ポカ村を出て二つ目の村が、アスパラ村(Aspara / ასფარა)。【マップ 青③】
人口たったの十数人という絵に描いたような限界集落で、無人となり朽ちていくのを待つだけの廃屋も多く見られます。
アスパラ村を見渡す小高い丘の上には、かつてアルメニア教会だった建物の廃墟がぽつりと残っています。▼
この廃アルメニア教会は、アスパラ村とパラヴァニ湖を一望できるビューポイント。
壁の一部だけが残る教会の姿と湖のコントラストがとても絵になります。▼
完全なる静寂に包まれたアスパラ村は、まるで時が止まってしまったかのよう。
あと十年もすれば残りの村人も出て行ってしまうのではないかと言われており、完全なる廃村となってしまう日もそう遠くはないのかもしれません。
そんな儚さに包まれた村の風景は、とても幻想的で現実離れした美しさを放っていました。
ドゥホボールが築いたおとぎ話の村:タンボフカ
パラヴァニ湖周辺で最も美しく、古い建物が多く残る村がタンボフカ村(Tambovka / ტამბოვკა)。【マップ 青④】
百人少々の人口があるそうで、ポカ村を除いたパラヴァニ湖西岸の4つの村の中では最も大きな村です。(とはいえたったの百人…)
東西に700mほどのびる砂利道が、タンボフカ村のメインストリート。
通りの両側には石造りと木造の屋根が組み合わさった家々が建ち並び、まるでおとぎ話に出てくる村を思わせます。
それぞれの家を観察していくと、ジョージアの伝統的な建築とは大きく異なる様式で建てられていることに気がつくはず。
①屋根の裏側部分に施されたギザギザした木製の装飾
②青か緑で塗られた窓枠と白く塗られた壁
③屋根の上に生えた草
これらは、ドゥホボールと呼ばれる人々が建てる家の特徴です。
ドゥホボールとは、およそ200年前にロシアからジャワヘティ地方に移住してきた人々のこと。
独自の宗教観を持ち、外の人間との関わりを拒否して自給自足生活を貫くコミュニティーを形成したのが特徴で、ジャワヘティ地方に八つのドゥホボール村を拓きました。
そう。ここタンボフカは、200年前にドゥホボールが拓いた八つの村のうちの一つなのです。
ジャワヘティ地方のドゥホボールの人口は激減しており、ドゥホボールが築いた最大の村であるゴレロフカという村でもたったの40人ほど。
ここタンボフカ村ではすでにドゥホボールの人々は住んでおらず、アルメニア人住民が入れ替わるように居住しています。
タンボフカ村をはじめ、ここジャワヘティ地方の冬はとにかく極寒。
この地を開拓したドゥホボールの人々は、家畜として飼育していた牛の糞をブロック状に固めて屋根の上に敷き詰めることで断熱効果を上げようとしたそうで、それは住民が入れ替わった現在でもタンボフカ村で続いています。
タンボフカ村の民家の屋根の上に草が生えているのは、屋根の上の牛糞を養分として草が生えるためなのです。
タンボフカ村の古い民家の半数以上は廃屋となっており、建物自体が傾いたものや半壊したものも目立ちます。
「こうした建物を文化遺産として保存して屋外民俗博物館にでもすれば良いのに…」と旅行者的には思うのですが、こんな僻地の寒村では予算的に厳しいものがあるのかもしれません。
おとぎ話の世界観とゴーストビレッジの不気味さが融合したかのような、独特な雰囲気があるタンボフカ村。
かつてこの村が外界から隔絶され、ドゥホボールの人々で賑わっていた時代をイメージしながら、ゆっくりと散策しましょう。
小川の向こうの小さな集落:アハリ・フルグモ
パラヴァニ湖西岸で最も北に位置するのが、アハリ・フルグモ村(Akhali Khlgumo / ახალი ხულგუმო)【マップ 青⑤】
すぐ南のタンボフカ村とひと続きの村のようになっていますが、幅1mほどの小川が二つの村の境界となっているようです。
そういえば、パラヴァニ湖の西岸をずっと歩いて来て、湖に注ぐ川を見たのは初めて。
これだけ大きな湖の水源がこの小川だけということは考えにくいので、東岸にも川があるのでしょうか。
アハリ・フルグモから先には、もう人が住む村はなし。
4kmほど先の幹線道路まで、湖を背景にした牧歌的な風景がずっと続くだけです。
パラヴァニ湖観光のアドバイス・注意点
パラヴァニ湖が位置しているのは、ジョージアの中でもアクセスに難ありのエリア。
一般的な観光地や大きな町を旅する感覚で訪れると、現地で困ってしまうかもしれません。
ここでは、実際にパラヴァニ湖周辺を旅した経験から、観光時に役立つアドバイスや注意点を解説します!
ポカ村以外に商店は1軒だけ
まず注意したいのが、パラヴァニ湖周辺では飲食店や商店の数がとても限られている点。
エリアで最大の町であるポカ村のメインストリートには数軒の個人商店と一軒の飲食店がありますが、それ以外の村には飲食店は存在しません。
パラヴァニ湖西岸で唯一の商店があるのが、タンボフカ村の村はずれ。【マップ 赤】
基本的には通しで営業しているものの店の人の気分で閉まったりするので(ジョージアの田舎あるある)、その点はご注意を。
こういった僻地の商店は価格が高い場合が多いのですが、このタンボフカ村の商店はかなり良心的な価格でした。
宿は一軒もない
パラヴァニ湖周辺エリアには、ゲストハウスやホテルなどの宿泊施設はいっさい存在しません。
最大の村であるポカ村にすら宿泊施設は一軒もなく、これが個人の旅行者を悩ませる最大の問題となります。
解決策としては、宿泊施設があるニノツミンダかツァルカの町を拠点に日帰りですべての観光を済ませるか、湖岸でキャンプをするしかないのが現状です。
夏場は日差しに注意
パラヴァニ湖が位置するのは、標高2000m以上の高地。
森林限界を超えているためか木々はほぼ存在せず、日陰を作るものがいっさいありません。
春や秋なら問題ないでしょうが、夏場は日差しに要注意を。
気温的には涼しくても、高地の太陽光はとても強いです。
風が強い
パラヴァニ湖周辺は、一年を通して風が強いことで有名です。
風を遮る木々がないためなのかもしれませんが、のぶよが訪れた際もとにかく一日中ずっと強い風が吹いていました。
夏場でも風が吹くと夜はかなり寒く感じますし、キャンプ等をする場合はテントが飛ばされないように注意が必要です。
キャンプはどこでも可能
ジョージアでは、キャンプ場以外でのキャンプも問題なく無料で可能です。
先述の通り、パラヴァニ湖周辺には宿泊施設が存在しないため、数日間かけてこのエリアを満喫したい場合はキャンプが唯一の宿泊手段となります。
山岳地域ではないため、熊やオオカミなど野生動物への注意が不要である点も◎
午前中の羊の放牧時に群れを見守る牧羊犬にだけ注意が必要ですが、この地域では必ず羊飼いが一緒に行動しているので問題にはならないと思います。
キャンプをする場合は、すべてのゴミは持ち帰る / 残飯を放置しないなど基本的なルールは必ず守るようにしましょう。
アルメニア語を知っていると喜ばれる
パラヴァニ湖が位置するジャワヘティ地方は、ジョージアに位置していながらも人口の9割以上がアルメニア人という特殊なエリア。
今回紹介した村々も例外ではなく、むしろ人口のほぼ100%アルメニア人住民で構成されています。
彼らの間の共通語は、もちろんアルメニア語。
挨拶程度のフレーズを知っているだけでものすごく喜ばれるので、旅行時には基本のアルメニア語を知っておくと人々と触れ合える機会が増えるかもしれません。
パラヴァニ湖へのアクセス
パラヴァニ湖へのアクセスは、ジョージアでも最も難ありなものの一つ。
このエリアを個人で訪れる場合のアクセス手段は以下の3種類に限られます。
タクシーチャーターが最も簡単で難易度が低いのはもちろんですが、ゆっくりできないのがネック。
キャンプ用品がある場合や、徒歩メインでまわりたい場合は、公共交通手段を利用するのも良いでしょう。
①タクシーをチャーター
パラヴァニ湖周辺エリアへの最も簡単なアクセス手段が、ニノツミンダかツァルカでタクシーをチャーターしてしまうこと。
いずれかの町を拠点として往復でもOKですし、二つの町を移動しながらパラヴァニ湖畔を通って村々に立ち寄ることも可能です。
【ニノツミンダ拠点】
・ニノツミンダ→パラヴァニ湖一周→ニノツミンダへ戻る:150GEL~200GEL(=¥7500~¥10000)
・ニノツミンダ→パラヴァニ湖半周→ツァルカへ抜ける:130GEL~180GEL(=¥6500~¥9000)
【ツァルカ拠点】
・ツァルカ→パラヴァニ湖一周→ツァルカへ戻る:180GEL~250GEL(=¥6500~¥12500)
・ツァルカ→パラヴァニ湖半周→ニノツミンダへ抜ける:130GEL~180GEL(=¥6500~¥9000)
パラヴァニ湖西岸の道は未舗装の砂利道であるため、走るのを嫌がるドライバーもいる(=舗装道路が敷かれている湖東岸を走りたがる)点にご注意を。
料金交渉の際は、パラヴァニ湖西岸を通りながら各村に立ち寄ることを絶対条件にするようにしましょう。(東岸の風景も綺麗ですが、魅力的な村はありません)
②ニノツミンダ〜タンボフカ間ミニバス
ジャワヘティ地方南部で最も大きな町であるニノツミンダからポカ&パラヴァニ湖へアクセスする場合は、ニノツミンダ~タンボフカ(Tambovka / ტამბოვკა)を結ぶミニバスが便利。
1日1往復していますが、平日のみの運行である点に要注意です。(土日とジョージアの祝祭日は運休)
この路線のスケジュールは以下の通り。▼
・ニノツミンダ→タンボフカ方面:ニノツミンダ発13:00~ポカ経由13:35~タンボフカ着13:50
・タンボフカ→ニノツミンダ方面:タンボフカ発10:00~ポカ経由10:15~ニノツミンダ着10:50
※平日のみの運行
※最新のスケジュールはミニバス運転手に確認を
ニノツミンダの発着ポイントは、中心街南部の交差点付近。
“Ojakhi Fast Food”という食堂の向かい側からの出発です。▼
ポカを経由したミニバスは、15分ほどでタンボフカ村入口バス停【マップ 黄色】で幹線道路から未舗装道路に入り、さらに10分ほどで終点のタンボフカ村の北端にあるバス停(というかただの広場)【マップ 黄色】に到着します
③ニノツミンダ〜ポカ〜タンボフカ入口〜ツァルカ〜トビリシ間マルシュルートカ
ジョージアの首都・トビリシから南部のツァルカ(Tsalka)を経由してニノツミンダへ至るマルシュルートカも1日2往復運行されており、いずれもポカ村のバス停やパラヴァニ湖東岸のタンボフカ村入口バス停を経由します。【マップ 黄色】
この路線のスケジュールは以下の通り。▼
・トビリシ→ニノツミンダ:8:00 / 17:00
・ニノツミンダ→トビリシ:6:00 / 14:30
※最新のスケジュールはサムゴリ・バスステーションorニノツミンダのマルシュルートカ運転手に確認を!
※ポカ村の経由時間は、ニノツミンダ発30分~40分後 / トビリシ発3時間後くらいが目安です
トビリシでの発着地は、市内南部に位置するサムゴリ・バスステーション(Samgori Bus Station)。▼
ニノツミンダ側のマルシュルートカ発着ポイントは、町の中心部の警察署前の交差点付近にあるバスステーション(らしきもの)です。▼
この路線は、ポカの東に位置するツァルカ(Tsalka)を経由するため、このエリアを移動しながら観光したい旅行者には便利。
本数がかなり少ないため一日で移動と観光を済ませるのは不可能ですが、数日間かけて湖水地方を個人でゆっくりとまわりたい人にはおすすめの路線です。
おわりに
日本語はおろか、英語で探してもまったく情報が出てこないパラヴァニ湖周辺の観光情報を解説しました。
この記事を書きながらひしひしと感じていたのですが、こんな僻地エリアの観光情報を詳細に解説したところで、いったいどこに需要があるのでしょうか(笑)
それは良いとして、ここまででパラヴァニ湖周辺の魅力は大いに伝わったと思います。
実際に訪れるのは難しいかもしれませんが、ジョージアにこんな素敵な場所があると知ってもらえるだけでも嬉しいです!
(もちろん、本記事を参考に実際に行ってくれる人がいたなら、飛び跳ねて喜ぶけど…まあいないだろう。)
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