こんにちは!ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
時は大航海時代真っ只中の1543年。
ヨーロッパから日本に初めてやってきたのはポルトガル人でした。
当時は植民地から入る莫大な収益によって、栄華を誇ったポルトガル。(今は見る影もないけど)
当時の日本人は、初めて触れる西洋の進んだ文明にさぞ感銘をうけたことでしょう。
鉄砲やキリスト教、果ては世界地図まで、ポルトガルからさまざまな新しい物が日本に伝えられたことは、歴史の授業で学んだ通りです。
「鉄砲伝来、いごよさん(1543)」の語呂合わせで覚えさせられたものです。
しかし、ポルトガルから伝わったものは物や技術だけではありません。
当時の日本には無かった物の名前はそのままポルトガル語が使われ、今でもそのまま残っているんです。
今回の記事では、いまではすっかり日本語になっているポルトガル語由来のことばを11個紹介します。
現在でも本来の意味で使われているものもあれば、長い時間の中で意味が転じたものもあります。
遠く離れたポルトガルという国が、少し身近に感じられること間違いなし!
本来の意味と同じ意味で使われているポルトガル語
1 .たばこ (Tabaco)
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まずは有名どころである、「たばこ」という言葉の由来から。
ポルトガル語では”Tabaco”といい、ほとんど同じ発音です。
日本語ではひらがなやカタカナで書かれたり、「煙草」という当て字で書かれることもありますね。
遠い異国の地からやってきたポルトガル人が、なんだかわけのわからないものを吸って煙をふかしている姿は、当時の日本人にはどう映ったのでしょう。
ちなみにポルトガルでのたばこの値段は€4.2~と、日本より少し高いくらい。
他のヨーロッパの国と比べてみるとかなり安い価格です。
そのためかポルトガルの喫煙率は高め。
屋内で喫煙できるバーなどもあり、喫煙者にとってはうれしい限りです(笑)
2.かっぱ (Capa)
いわゆるレインコートを指す「かっぱ」という言葉はポルトガル語由来で発音もほぼ同じです。
日本語では「合羽」という当て字で書かれることもありますね。
しかし、日本ほど雨が降ることが多くないポルトガルでは、かっぱを着ている人を見る機会はあまり多くありません。
3.ボタン (Botão)
洋服についている「ボタン」という言葉はもともとポルトガル語。
発音は日本語のものとは異なり、“ボタォ”のような感じ。
ポルトガル語の特徴である鼻母音が使われます。
ちなみに、英語の”Button”も、もともとはポルトガル語が由来です。
4.ビロード (Veludo)
「ビロードのような」といった比喩でも使われる「ビロード」という言葉は、ポルトガル語で”Veludo”。
発音は「ヴルードゥ」といった感じで、日本語読みでは確実に通じません。
よくカーテンなどに使われている、滑らかな手触りの絹の織物のことを指すのは、日本語もポルトガル語も同じです。
5.金平糖 (Confeito)
こちらも有名なポルトガル語由来の日本語。
「金平糖」という当て字で書かれることが多い「こんぺいとう」は、ポルトガル語の”Confeito” (コンフェイトゥ)という言葉が由来です。
ポルトガルのConfeitoも、金平糖のように砂糖から作られるカラフルなお菓子である点は同じですが、現在ではあまり目にする機会が少なくなりました。
リスボンやポルトなどの大都市では、ポルトガル人でも「コンフェイト?何それ?」という人も多いくらい。
現在ではポルトガル中部のコインブラ周辺やアソーレス諸島など限られた場所でしか生産されていないコンフェイトゥ。
500年前に日本に伝わったオルジナルの味を求めて旅してみるのもいいかもしれません。
6.コップ (Copo)
飲み物を飲むときに使う「コップ」がポルトガル語由来であることを意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
ポルトガル語では”Copo”と書かれ、“コォポゥ”と発音されます。
確かに”コップ”って聞こえるかも。
日本語では、「コップ」や「グラス」、「湯呑み」など、飲み物を入れる容器にそれぞれ異なった名前がありますが、それはポルトガル語も同じ。
ポルトガル語の”Copo”は、主にジュースやビールなどの冷たい飲み物を入れる容器を指します。
ややこしいのは、コーヒーや紅茶などの温かい飲み物を入れるものを指す、英語の”Cup”という言葉は、ポルトガル語では”Chávena”と言い、”Copo”とは言わないことでしょうか。
お茶(Chá)を入れる容器を指すこの言葉は、日本語では「ティーカップ」と英語由来の言葉が使われます。
なんだかもうめちゃくちゃ。
日本人の英語やらポルトガル語やらなんでもかんでも取り入れる精神はすごいと思います(笑)
ポルトガル語本来の意味と違う意味で使われている言葉
7.マーマレード (Marmelada)
パンに塗って食べられるマーマレード。
何となく英語からきた言葉だと思っている人も多いでしょうが、実はポルトガル語由来なんです。
これを知ったときの驚きといったら…。
ポルトガル語では、”Marmelada”と書かれ、“マルムラーダ”と発音されます。
マーマレードといえば、オレンジなどの柑橘類を使ったジャムのことを指しますが、ポルトガル語のマルムラーダは完全なる別物。
マルメロ(Marmelo)という、カリンのような果物を使ったジャムのことを指します。
のぶよも一度、マルムラーダを口にする機会があったものの、柑橘感はゼロでした。
かなりおいしかったけど。
8.じょうろ (Jarro/Jorro)
花に水をやる際に使う「じょうろ」。
なんだかとても日本語っぽい言葉のような気がしないでもないですが、立派なポルトガル語由来のことばです。
日本語でいうじょうろは、主に植物に水をあげるのに使われますが、 ポルトガル語での元々の言葉は“Jarra”(ジャーハ)といい、水や飲み物を入れておく大き目の容器のことを指します。
夏に麦茶を作って入れておく容器をイメージするのが一番近いと思います。
ポルトガル語にはもう一つ、“Jorro”(ジョーホ)という言葉があり、語感はこちらのほうが日本語に近いですが、意味は英語でいう”Jet”、水の流れを指します。
じょうろから流れる水の流れを指して、こちらの言葉が取り入れられた可能性もあるのかも。
JarroかJorroか、真相は闇の中です。
9.おんぶ (Ombro)
「ママー!疲れたー!おんぶー!」と小さい子供がしてほしがる「おんぶ」。
実はポルトガル語の“Ombro”(オンブロゥ)という言葉が由来なんです。
確かに、「だっこ」が「抱く」どいう動詞から派生した言葉であることは想像しやすいものの、「おんぶ」に対応する動詞って…?
ポルトガル語の”Ombro“の意味は、「肩」。
おんぶが子供を肩にぶら下がらせて背負う行為を指すので、理にかなっていますね。
10.かるた (Carta)
お正月といえば、凧あげ、羽子板、そしてかるた遊び。
なんだか古くから存在する日本古来の言葉のような気がしますが、実は立派なポルトガル語由来の言葉です。
ポルトガル語の”Carta”(カルタ)は、「カード類全般」や「手紙」など幅広い意味を持ちます。
一方で日本語の「かるた」という言葉は、五十音ごとに始まる言葉を読み上げて、対応する絵札をとる遊びのことだけを指しますね。
11.天ぷら (Temperar)
世界中で人気のある日本食。
そのうちの代表的な料理の一つである「天ぷら」ですが、じつは語源はポルトガル語なんです。
室町時代にポルトガルから日本に伝わった天ぷらは、「高級品である油を大量に使って食べ物を揚げる」という、当時の和食ではありえなかった画期的な調理法だったのでしょう。
確かに、伝統的な和食にはあまり油を使わないものが多いですね。
天ぷらの語源であるポルトガル語の“Temperar”(テンプラール)は、「味付けをする」という意味の動詞。
「油で揚げる」という意味はありません。
どこかで意味が取り違えられて伝わってしまったんでしょう。
ちなみにポルトガル語で「油で揚げる」は”Fritar”(フリタール)。
もし正しい意味が伝わっていたら、天ぷらは「ふりた」と呼ばれていたのかも。
あまり食欲をそそられなさそうな名前です(笑)
もしかしたらポルトガル語由来?な日本語の言葉
1 .「ありがとう」
「ありがとう」という言葉は日本古来の言葉で、「なかなかあり得ない(有難い)ことだ」が転じて感謝を伝える表現となった。
そう信じてやまない日本の皆様。
ポルトガルでは、日本語の「ありがとう」という言葉はポルトガル語由来というのが半ば常識です。
日本語の「ありがとう」という言葉は、ポルトガル語で同じ意味の”Obrigado”(オブリガード)から来ているという、この説。
ポルトガル人の間では、以下のように囁かれています。
というもの。
本当かどうかわかりませんが、かなり興味深い話です。
ポルトガル人はほぼ100%この話を知っているのが面白い点。
(そしてやたら誇らしげ)
日本とポルトガルの「ありがとう」が同じだという、大陸の端っこにある二つの国をつなぐこのエピソードをポルトガルで披露すると、必ずその場が盛り上がるというおまけつき。
ポルトガル在住日本人の鉄板ネタの一つです(笑)
2 .「〜ね?」
これは完全に個人的な主張なんですが、日本語の終助詞「〜ね」(同意を求めるときや確認したいとき) は、日本語と全く同じ意味で、ポルトガル語で使われています。
特にブラジルのポルトガル語において顕著で、ポルトガルでは”não é?(ナォン エ?)”と綴られるのですが、カジュアルな会話ではこれが縮んで “né?(ネ)”と発音されます。
英語でいう”〜, isn’t it?”、フランス語でいう”〜, n’est-ce pas?”なんですが、日本語だと「〜だよね?」が一番近いと思います。
とにかくみんな何か確認したいときに、「〜、ネ?」と言います。
初めて聞いたときは、のぶよが日本人だからちょっと日本語で話されてるのかと思ってしまったくらいですから。
おわりに
「ポルトガル語」と言われてもなかなかピンとこない人も多いと思いますが、ポルトガル語由来の言葉は、わたしたち日本人の生活の意外なところで使われています。
英語やフランス語などに由来する外来語はカタカナで書かれますが、ポルトガル語由来の言葉はもはや完全に日本語化して、ひらがなや漢字を使った当て字で書かれるものも多いのも特徴です。
天ぷらを食べるとき、ボタンをとめるとき、たばこを吸うとき…。
遥か500年前に海を越え、これらの言葉を伝えてくれたポルトガルのことを少しでも思い出してもらえたら。
地球の反対側でのんびりと佇む小国が、もっと身近に感じられること間違いなし!…かも。
コメント
「「おんぶ」に対応する動詞って…」
ありますよ。「負う」です。
和語で、「おふ」が東日本で「おぶ」「おんぶ」に転化しました。
背に負う。
肩は関係ありません。
長崎からポルトガル語が流入したとすれば、九州で「おんぶ」が分布していなければおかしいでしょう。
「おんぶ」の分布は関東です。
関東周辺に「おぶう」などがあります。
西日本は「おう」です。
江戸時代までの言語の伝播速度は年速1kmなので、1500年に伝来したら、2000年には長崎から半径500kmの範囲で話者が認められないとおかしいでしょう。
日本語に詳しくない人が外来語を音だけでこじつけないでほしいと思います。
民間語源ですよ。
他の多くのポルトガル語ブログも同様です。