SNS時代初の「移住ブーム」とは何だったのか
2019年に「ジョージア移住ブーム」が成立したのは、まぎれもなくSNSの普及が最大の要因だったことは明らかです。
実際、物価が安いのは今に始まったことではありませんし、移住希望者への殺し文句となった「世界で唯一ビザなしで1年間滞在可能」という制度も、実際は2015年からすでにスタートしていました。
2019年までは「長期滞在/旅するのに穴場の国」だったものが、SNSで紹介されたことにより、一気に注目を集めることとなったわけです。
のぶよは2019年以前のジョージアとそこに滞在している人達がどのような感じだったのかは、直接は知りません。
しかし、その時代から滞在している人や、現地の人々の話を聞く限りは、街が外国人で溢れて外国人価格のおしゃれカフェでみんながパソコンをカタカタ…に励む光景は今ほどは見られなかったのでしょう。
このように、SNSのおかげで移住ブームに火がついたジョージア。
それまでのアナログ時代の移住ブームが起こった国とは、少々異なる流れがあったことは事実です。
外国に来て、日本人コミュニティーの中でしか生きられない人達の謎
ジョージアに来てすごく驚いたのですが、「移住」しているのに、外国語は全くできないという人も多いです。
別に英語が全てだとは言いませんし、ジョージア語がかなり難しい(&この国以外では全く役に立たない)のも事実。
しかしながら、移住先で現地の人たちとコミュニケーションがとれない状態で、いったいどうやって生活できるというのでしょうか。ボディーランゲージ?(旅人の必殺技)
ある国に一定期間滞在するなら、現地語をある程度学ぶことは当然だとのぶよは考えています。
どこに行こうとも話せる人がいる可能性が高い英語も同様に重要。ジョージアの場合はロシア語もかなり役に立ちます。
ジョージア語は文字すらABCではありませんし発音もかなり難しいので、たった1年やそこらの滞在で外国人が使いこなすことはほぼ無理でしょう。
だとしたら、最低限の挨拶や文字の読み方くらいはマスターしておいて、あとは英語(かロシア語)で生活するというのも一つの手。
しかし、その英語すらままならない場合は…母国語で24時間365日ぬくぬく過ごせる日本人コミュニティーどっぷりコース直行となります。
それはそれで一つの過ごし方なので良いのですが、果たしてそれをジョージアという国で実行する必要があるのかは、甚だ疑問です。
九州とかで一軒家借りてやればいいのに。
「ジョージア移住」自体が目的となっている人の出現
基本的にSNSというものは、ポジティブな意見やキラキラした写真が受け入れられやすく、拡散されやすいという性質があります。(まあネガティブ情報で炎上なんてこともありますが)
・こんなに色々食べて飲んでも○○円!
・ヨーロッパ風の町並みを毎朝散歩するライフスタイル!
・親日的なジョージア人たちと心温まるふれあい!
こうした話は(どこまで盛られているかは別として)、やはり多くの人の目を引き、支持を得やすいもの。
綺麗に加工された写真や、歯が浮くようなポジティブ情報だけを見て都合の良い解釈をしてしまう人も増えてきているのは時代柄、仕方がないことです。
表面的な情報に感化される人が増えた=その情報を自分で吟味する人が少なくなった。
ということは、つきつめれば「受け手となる人の情報処理レベルが下がった」ということになります。
そんな時代の流れの中でたまたまブームに火がついたのがジョージアだったというわけです。
2019年~2020年の1年間で強く感じたのが、「海外移住」のブランディング化。
そのロゴマークのような存在になりあがったのが「ジョージア移住」だった、と言うのは考えすぎでしょうか。
ジョージア移住ブームをつくりあげた「インフルエンサー」と呼ばれる人達が悪いわけではありません。
むしろ彼ら/彼女らのおかげで、ジョージアという国の認知度が上がったことは間違いないですし、「ジョージアを流行らせる」ことだって、立派な海外生活の目標の一つだと思います。(もはやいきすぎてはいたけど)
問題だったのは、ここ1年間のジョージアでは表面的な情報だけに感化された結果、「ジョージアに移住すること」が最終目的となっている人が多かったように感じてならないこと。
中には自分のビジネスを開くのに最適な場所として来た人や、ワインの勉強をしている人、ジョージア民族舞踊に興味がある人、ここを拠点として周辺国を旅したい人…
など、何らかの「目的」を持ってここにやって来た人だってもちろんいるでしょうし、そうした人たちは心から応援したいです。
問題なのは、SNSに氾濫していた「ジョージア移住がアツい!」という金言だけを信じて、何の目的もなくただ来てしまい、行き着く先は日本人コミュニティーで24時間日本語喋ってぬるま湯生活万歳!という人たち。
この国に来ることだけを夢見て、外国語も現地の文化も何も学ぶことなく、在住日本人経由で仕事をもらって小銭を稼いで…
それもそれで本人が良ければ良いのです。
「海外生活」の定義など十人十色ですし、「1年間の人生の夏休み!」なんて最っっ高じゃないですか。
ただ、のぶよとは価値観がもう違い過ぎて、おそらく一生分かり合えないと思います(笑)
ジョージアは、外国人の「ウチらの移住生活まじ最高!」アピールの舞台ではない
のぶよは常に主張しているのですが、わざわざよその国にやってきて、同じ文化圏の人とつるんで「○○生活最高!」と宣伝活動に励む人達が理解できません。
(日本にいる外国人で、外国人同士でつるんで六本木あたりで盛り上がっているような人も然り)
日本人のみならず、外国人が内輪で言ってる「最高!」は、その国の地元の人にとっての「最高!」と、果たしてイコールなのでしょうか。
ジョージアは裕福な国ではありません。
平均月収が2万円だか3万円だかの国で、多くの人々は粛々と日々の質素な生活を営んでいます。
そこに月収10倍以上の国から言葉も通じない外国人がやってきて、内輪でつるんだ挙句「格安ヨーロッパ!ジョージア生活最高!」なんて豪遊しているような感じ…
もしあなたが10分の1の月収で細々と生活する現地人だったら、こうした人々と仲良くなりたいでしょうか?
「日本や欧米など、ある程度裕福な国からやって来た人がお金を落とすことで、ジョージア経済に貢献してあげてるんだ!」という意見も耳にしたことがあります。
のぶよ的には、それ、いったいどんな上目線?と不思議に思います。
そもそもこんなブームになる前は、貧しくて外国人がいないながらもそれなりに国としてやってきていたわけで、完全によそ者の私たち外国人が「ここの経済に貢献してあげてる」なんて偉そうに言う権利はないのでは。
「裕福な国からやって来て、リモートワークで稼ぎつつ物価の安さを利用してコスパ高き生活!」
「働きたいときに働いて、余った時間は日本人みんなでワインパーティー!QOL高め!」
楽しい思い出は楽しい思い出のままで結構なのですが、よそから来てたった数か月~数年の滞在で「移住最高!」と連呼して、いざ「最高ではない状況」になったらどこか他の国へ行ってしまう。
そんな外国人たちによる、かりそめの「ウチら最高!この国最高!」の受け皿となるほどジョージアは開放的な国ではありませんし、それを笑顔で「グローバリズム…素晴らしい!」と受け入れてくれるほど人々の生活には余裕がありません。
どうなる?これからの「ジョージア移住」ブーム
ジョージア移住ブームは戻って来るのか
1年間の間に、大きく変化したジョージア移住を取り巻く環境。
果たして、未だに終息の兆しが見えないコロナウイルスが落ち着いた後には、再びブームは戻ってくるのでしょうか。
のぶよ的には、NOだと思います。
そもそものジョージア移住ブームの屋台骨となっていた「ビザなし1年間滞在」という制度が形骸化してしまった今日。
1年間滞在するためにはリモートワークビザの申請が必要となり、入国条件がかなり厳しくなりました。
のぶよ的には、これまでは旅人でも億万長者でも誰でもウェルカムだった「リモートワーカーの天国・ジョージア」はもう戻ることはなく、ある程度お金を落としてくれる、裕福な外国人のみ長期滞在可能というように移行していくと考えています。
(その第一歩が、2000US$/月とジョージア的には富裕層な収入証明を求めるリモートワークビザの導入)
収入の条件をクリアできる人なら何ら問題はないでしょうが、そうでない人にとってはわざわざジョージアを長期滞在先として選ぶメリットが大きく減ってしまい、結果的にジョージアへ移住する外国人は激減することになるでしょう。
日本人向け○○は成り立たなくなる
そうなると、もともとのマーケットが限られている「ジョージア在住日本人向け○○」等のビジネスは十中八九成り立たなくなります。
・日本人向けから現地人向けのサービスに舵を切る
・リモートワークビザが申請可能な、ある程度裕福な外国人向けのビジネスをする
と方向転換が必須となるでしょう。
しかし、コロナがめでたく終息した際にいったいどれほどの人が、わざわざ事前にリモートワークビザを申請してまでこの国にやって来る(価値を見出す)のかは、かなり疑問なところです。
ビザなしの「海外移住」なんてリスクしかない
また、正規のビザ等なしで海外に「移住」することのリスクも2020年のパンデミックが明らかにしたものの一つ。
滞在資格ももたない外国人は有事の際にどうしても後回しにされることとなりますし、脆弱な医療システムや紛争リスクを抱えた地域ではなおさら、何らかのビザ等を取得してあることが重要となります。
世界中が非常事態に陥った2020年をリアルタイムで体験した私たちは、「海外移住はリスクが高い」ことを身を持って学びました。
など、ジョージア国内だけを見ても、日本に居たなら味わえないほどのスリルや不安と隣り合わせだったように感じます。
また、強制退去命令→滞在期間の延長の流れでわかったように、正式な滞在資格のない立場の外国人の扱いはかなり不安定。
政府の一存によって、急に「出ていけ」となったり「しょうがない、いてもいいぞ」と大きく変わり得ますし、振り回されることになります。
SNSやらで「誰でも簡単に移住!」と謳われていた1年前がもはや別の世界線だったかのように感じてしまいますが、一度こうした世界的パンデミックによって180°変化してしまった私たちの価値観は、そう簡単に戻ることはないでしょう。
というわけで、ここから数年間はジョージアのみならず「海外移住/海外ノマド」の考え方自体が下火になっていく(もしくは完全に終結する)、とのぶよは考えています。
おわりに:結局ブームだったのは「ジョージア移住ごっこ」
これまで、ビザなしで1年間滞在可能という世界で唯一の寛大な出入国制度を誇っていたジョージア。
多くの国では外国人旅行者は最大3ヶ月間までの滞在しか認められていない中で、1年間というまあまあな期間同じ国に滞在できるとなると、どうしても「移住」「在住」という言葉で表したくなってしまうのは人間の性なのかもしれません。
しかし、結局それはただの「移住ごっこ」でしかありません。
仲間内で「ごっこ遊び」をして楽しんでいる人が、まるでそれが「本物の移住」であるかのように発信し、それを「本物の移住」だと信じた人がやって来た。…そして、誰も居なくなった。
それこそが、この1年間ジョージアという国で起こっていたことです。
何年後に世界が落ち着くのか。その際どんな状況になっているのか。
全く見当もつきませんが、未来の「海外移住希望者」にこれだけはお伝えしたいです。
自分が行きたい/住みたい国くらい自分で選んで、正規の滞在資格をとり、その国の社会や文化に溶け込む努力をしましょう。
「コスパが良い!」「ビザが取りやすい!」などももちろん重要な要因でしょうが、それは二の次。
・その国に住んで何がしたいのか→移住の目的
・他人に頼らずに生計をたてられるのか→経済的独立
・その国を好きになることができるのか→自分の意思
・その国の文化/言語/社会に溶け込めるのか→適応能力
こうした自身の肌感覚のようなものと、そこでやって行きたいという意思が最も大切だと思います。
もちろん、すでにその国に在住している人の意見は大いに参考になるでしょうが、結局その国でやっていけるのかどうかを決めるのは自分自身。
何かあった場合に、移住を煽った人や移住相談を受けた人が責任を持ってくれるわけではありません。
数年後のコロナウイルス収束後にジョージアの入国条件は当然厳しくなっているはずで、これまでのような1年間ビザフリー滞在が戻る可能性はごくわずか。
その時、これまで「ジョージア最高!ジョージア移住万歳!」と声高に言っていた人のうち、あえてこの国に戻って来ようとする「本当にジョージア移住したい人」は、果たしてどれくらいいるのでしょうか。
その頃には、のぶよはどこか遠くの国から、このコーカサスの小国で起こることをしんみりと傍観していることでしょう。
「次はクロアチアがノマドビザ導入?」
「次の移住ブームは物価激安のウクライナ?」
など、海外移住に関する話題は絶えず上がってきますが、自国以外ならどこでも、腰を据えて「移住」するならハードルが高いのは同じこと。
もうそろそろ、「移住ごっこ」に一喜一憂する時代は終焉を迎えそうな気がしてなりません。
コメント
はじめまして。
記事を読んでいたら、なんだか「日本語はまったく喋れないけど日本に移住できる?」って言っている英語圏の人たちとか、日本で日本語学校に通うという名目で出稼ぎに来ている人たち(最近厳しくなって、そういう人たちはビザの更新ができなくなったみたいですが)に似ていますね…
どちらもあまり日本人からは歓迎されてないというか、そういう人たちがコンビニやスーパーで大人数で買い物しているのを見て、嫌な顔をする日本人も結構います。やっぱり原因は筆者様が感じていることに近いと思いますよ。
私はたまたまノマドランドという映画を観て、検索していたら「ジョージアでノマド暮らし」というホームページを見つけ…その後また検索してここにたどり着きました。
ほかの記事も読ませていただきますね。
日本から応援しています。
とらちゃん様
コメントをいただきありがとうございます。
おっしゃる通り、日本でも同様の問題が生まれつつあるように思います。諸外国に比べて物価が比較的安いことや、日本旅行の人気にともない、さまざまな種類の方が訪れるようになったことも大きいでしょうし、誰もがすべて日本に興味があって日本社会に溶け込もうとする「移住者」ではない点も否めないでしょう。
ジョージアの場合は、いわゆる「ブーム」のようなものに近かったように思います。すでにそのブームは過ぎ去ったような印象を受けますし、物価の安さ等の旨味がなくなった場所からまたどこか別の場所へ…という人も多かったのかもしれません。
なかなか現地の状況を詳らかに、良いことも悪いこともいずれも表現することは難しく、特にこちらで何らかのビジネス等を開きたい人にとってはネガティブな話は禁物なのかもしれませんね。
今後とも弊ブログをご愛読いただければなにより嬉しいです。
応援のコメント、感謝しております。
小山のぶよ