こんにちは!ジョージア山間部のラチャ=レチュフミ地方をのんびりと開拓中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
旅行者の間ではまだまだ知名度が高くはないラチャ地方。
レトロな雰囲気の町や、至極の郷土料理と名産のワイン、雄大な自然風景が残り、ジョージアの中でも穴場のエリアです。
魅力たっぷりのラチャ地方ですが、忘れてはいけないのが山岳エリア。
有名どころのカズベキやスヴァネティ地方に比べてマイナーではあるものの、ラチャ地方にはコーカサス山脈を間近に望む村々もあるのです。
ラチャ地方の山岳エリアを代表する村が、今回紹介するショヴィ(Shovi / შოვი)とグローラ(Glora / გლოლა)。
ソ連時代にマウンテンリゾートとして開発されたショヴィと、昔ながらの人々の暮らしが息づくグローラは、それぞれ2kmほどしか離れていないものの、異なる魅力を放ちます。
いずれの村もアクセスは便利とは言えず、ジョージア旅行の日程に組み込むのはやや難しいためなのか、こんなところまでやって来る旅行者はほぼゼロ。
観光地化が激しいジョージアの山岳エリアにおいて、「まだ見つかっていない場所」といった雰囲気が強く感じられるのが最大の魅力です。
のぶよは実際に4日間ほど滞在しましたが、本当に行って良かったです。
特に、観光地っぽい雰囲気が好きではない人には心からおすすめ。
ピュアなジョージア山岳部の良さがこれでもか!とばかりに詰め込まれているような気がしました。
今回の記事は、ラチャ地方最奥部の美しい村の魅力をお伝えするもの。
見どころやアクセス、宿情報など、旅行に必要な情報をすべて網羅しています!
「ジョージアの定番どころはもう行きつくした!」という人は、ぜひ!
昔ながらの山岳エリアの良さがまだ根強く残っていることに、きっと感動するはずです。
ショヴィ&グローラ観光マップ
緑線:タマル女王の塔徒歩コース
紫:おすすめゲストハウス
黄色:バス停
赤:商店
ショヴィの見どころ
ラチャ地方の最果てに位置するショヴィ(Shovi / შოვი)。
南オセチアとの境界線まで2kmほどしかない場所に位置していますが、2022年現在は問題なくアクセスすることが可能です。
ショヴィは、その空気の良さとミネラルウォーターが湧いていることで有名な村。
そのため、100年以上前のロシア帝国時代からソ連時代にかけてマウンテンリゾートとして開発され、結核療養のためのサナトリウムや、富裕層の避暑地としてのサマーハウスが次々に建設されました。
しかしながら、およそ30年前のソ連崩壊とともに人々に忘れ去られてしまい、当時の建物のほとんどは廃墟となってしまいました。
人影はまったくない廃マウンテンリゾートは、まるでホラー映画のような不気味な美しさを放ちます。
スターリンのダーチャ
ショヴィにおける最大の見どころといえば、「スターリンのダーチャ」と呼ばれる建物。【マップ 青①】
「ダーチャ」とは、ロシア語で「別荘」のこと。
ジョージアがソ連統治下に入って間もない1920年代に建設されたもので、石造りの一階の土台部分以外は総木造建築です。
当時の富をふんだんにつぎ込んだような独特の風情と、凝った装飾が目を引きますが、現在では完全に廃墟と化しています。
この建物の名前にもなっている「スターリン」とは、ご存じジョージアが生んだソ連時代の指導者のこと。
大国ソ連の礎を築いた人物であるいっぽうで、大粛清などに代表される恐怖・強権政治を敷いたことから、出身地のジョージアにおいても評価が大きく分かれる人物です。(否定的な人の方が圧倒的に多い)
スターリンが実際にこの場所に足を運んだのか、滞在したのかは定かではないそうで、そもそも建物自体が完成していたのかどうかも不明なのだそう。
コーカサスの山奥に残るミステリースポット…なんともワクワクしますね!(しないか)
スターリンのダーチャの内部は、文字通り荒れ放題。
100年前に建てられてからいっさいメンテナンスされていない様子で、今でも建ち続けていられることが奇跡に思えるほどです。
ところどころ床板が抜けている箇所もあり、不気味な音を立てながらきしむ床板も多数。
体重が重い人は、内部探索はやめておいた方が良いかも…
スターリンのダーチャの建物は三階建て+屋根裏部屋の四層構造となっており、現在アクセス可能なのは三階部分まで。
どの階も非常に状態は悪く、完全なるお化け屋敷の様相です。
ジョージアの地元の若者の間では結構人気のスポットとなっているようで、落書きも目立ちます。
アクセス可能な最上部にあたる三階には、数か所のテラスが設置されており、深い山々に囲まれたかつてのサマーリゾートの風景が一望できます。
見渡す限り、人の姿はゼロ。どんよりとした曇り空もあいまって、まるでホラーゲームの世界に迷い込んだかのよう…
陰鬱とした雰囲気と果てしない静寂だけが、辺りを支配していました。
↑「スターリンのダーチャ」の内部に潜入してみたら、ものすごいことになってた。 pic.twitter.com/qnxR2SnAip
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) October 24, 2022
廃リゾート
すでに紹介した「スターリンのダーチャ」も含めて、ショヴィは村全体が「廃リゾート・コンプレックス」のようになっています。【マップ 青②】
幹線道路沿いのゲートを抜けると、そこはかつてのリゾートの敷地。
相変わらず人の姿はいっさいなく、とにかく不気味です。
リゾート敷地内には、かつてのサナトリウムやサマーハウスがいくつか残っており、どれも完全なる廃墟。
メンテナンスもいっさいされておらず、朽ち果てるのを待つだけの建物が点在しています。
かつては、富裕層が夏のひとときを家族みんなで過ごす場所であったショヴィ。
子供向けの遊具が残る公園や、林に囲まれた広場、売店の跡…
当時ここで過ごした人々の息づかいが染み込んだような施設が、広々とした敷地内に数多く残ります。
ショヴィには、サマーリゾート以外にも、結核療養地としての一面もあったそう。
多くの木々に囲まれていて空気が澄んでいることはもちろん、至る所でミネラルウォーターが湧き出しているのも、この地が注目を浴びた理由でした。
ソ連崩壊によって廃リゾートと化したショヴィですが、ジョージアの独立回復後に再開発の動きもあったそう。
しかしながら、資金難や南オセチアとの境界にあまりに近すぎる地理的リスクなどから、計画はことごとく頓挫。
敷地内にいくつかある比較的新しい建物は、この再開発の一環として建てられたものだそうですが、これらも廃墟となっています。
このときは10月も後半に入った秋真っ盛りの時期。
廃リゾートの周囲では山々の木々が黄色や赤、オレンジに色づき、紅葉のピークそのものでした。
数週間後にやって来る冬を待つだけの廃墟群。
落ち葉に覆われた地面にかろうじて原型を残す建物たちからは、独特の儚さや情緒のようなものが感じられ、不気味ながらも美しい雰囲気に魅了されます。
かつてのリゾート地が廃墟と化した場所は、ショヴィのみならずジョージア国内にいくつかあるのですが、以前訪れた「廃温泉リゾート」・ツカルトゥボに似た雰囲気を感じました。
ミネラルウォーター
ショヴィがマウンテンリゾートとして名を馳せた理由の一つが、この地に湧き出る鉱泉でした。
現在でもミネラルウォーターの泉が一ヶ所だけぽつりと残っており、なぜかここだけちゃんと整備されています。【マップ 青③】
廃リゾートと化した村の物寂しい雰囲気などお構いなしとばかりに、ミネラルたっぷりの水がこんこんと湧き続けます。
ミネラルウォーターの味自体は、ジョージアによくある鉱泉といったところ。
強い鉄の味と微炭酸のシュワシュワが口の中に広がり、確かに健康に良さそうな味がするかも…?(まあこういうのは気持ちの問題だと思う)
わざわざこの場所まで車で水を汲みに来る人もいて、地元ではかなり有名な「万病に効く水」であることを目の当たりにしました。
ちなみに、この泉に車で水を汲みに来ていた一組のジョージア人以外に、ショヴィで出会った人間は皆無でした…。
グローラの見どころ
果てしないほどのサイレント・ヒル感に支配されていたショヴィとは対照的に、現在でも人々の生活がちゃんとあるのが、ショヴィから2kmほど手前のグローラ(Glora / გლოლა)。
人口200人少々の小さな山村は、雪をかぶったコーカサスの山々を間近に望むロケーション。
ただ散策しているだけで、絵になる風景に出会える素敵な村です。
グローラにはラチャ地方山岳部の昔ながらの生活が色濃く残っており、人々の感じも温か。
この場所で生活しているような気分で、ゆったりと滞在するのがおすすめです!
アッパー・グローラ
東西に広がるグローラ村のうち、標高が高い東側に位置する集落がアッパー・グローラ。【マップ 青④】
村の人口のほとんどはこちらに集まっており、山を背景に伝統的な造りの民家が点在する光景は、まるで桃源郷そのものです。
アッパー・グローラには特筆すべき見どころがあるわけではなく、村の雰囲気自体を楽しむエリアといった感じ。
ぐるりと一周しても30分足らずで歩けてしまうほどの規模の集落には、美しい風景が盛りだくさん。
ゆっくりと堪能しながら散策しましょう。
アッパー・グローラには数軒のゲストハウスがあり、旅行者にとっては滞在の中心となるはず。
このエリア唯一の商店も、アッパー・グローラにあります。
「コーカサスの山奥にある、観光地化されていない村」と聞くと、いかにも閉鎖的な雰囲気だろうと思ってしまいますが、ここグローラ村の人々は、なぜだかそんな感じではなかったのも不思議。
笑顔で挨拶してくれたり、何やら話しかけてきたり(ジョージア語で)と、ジョージア地方部らしい温かさが感じられます。
アッパー・グローラから幹線道路沿いを西に20分ほど歩いて行くと、もう一つの集落であるロウワー・グローラに到着します。
ロウワー・グローラ
グローラ村の西側に位置する集落が、ロウワー・グローラ。【マップ 青⑤】
その名の通り、アッパー・グローラから坂を下った川沿いに位置しており、十軒ほどの民家が建ち並ぶだけの小さな集落です。
ロウワー・グローラに住むのはたった数組の家族だけだそう。
集落内の大半の民家は空き家となっており、人の姿はほとんど見られません。
土台の石だけが残る建物もいくつかあり、廃村となってしまうのも時間の問題に思いました。
ロウワー・グローラの集落のすぐ東側の丘の中腹には、中世に建てられた城塞の跡が。
地元では「タマル女王の塔」と呼ばれ、グローラ髄一の絶景が見られるので、ぜひ登ってみましょう。
タマル女王の塔
アッパー・グローラとロウワー・グローラのちょうど中間あたりにある丘。
その中腹に残るのが、タマル女王の塔と呼ばれる城塞の跡です。【マップ 青⑥】
タマル女王の塔へのアクセスは、ロウワー・グローラ側からのみ。
小さな集落を抜けた先に架かる橋を越え、丘を登っていきます。
▲ この小さな橋が、タマル女王の塔に至る徒歩コースのはじまり。【マップ 緑線】
傾斜はきつくなく、10分ほどで登れてしまいます。
橋を越えて丘を登りはじめてすぐの場所には墓地があり、ここがロウワー・グローラを一望する絶景ポイント。▼
秋色に包まれた小さな集落と、その背後にそびえるコーカサスの山を一度に眺めることができます。
絶景ポイントから5分ほど斜面を登ると、石造りの建物跡が目の前に。
これがタマル女王の塔です。▼
「タマル女王」とは、およそ800年前に中世ジョージア王国の黄金時代を築いた女性国王のこと。
とはいえ、彼女が実際にこの場所に足を運んだ記録は残っておらず、その名を冠しただけだそうです。
半ば崩壊しているタマル女王の塔ですが、ここからの眺めはグローラ全体で一番。
東側にはアッパー・グローラののどかな風景が、西側にはロウワー・グローラの絵画のような風景が広がります。
グローラのおすすめ宿
ここまでショヴィとグローラの見どころを解説してきましたが、のぶよがこの場所を気に入った最大の理由が、グローラ村で滞在したゲストハウスの存在によるもの。
それが、アッパー・グローラに位置するGuesthouse Tsknari Odaという宿です。【マップ 紫】
一般の民家の二階部分を宿泊客向けに開放したもので、ジョージア地方部ではごく一般的なスタイルのゲストハウスです。
二階に位置する部屋からは、グローラの村とコーカサスの山々を一望するパノラマが。
毎朝毎晩、この風景を眺めながらぼうっと過ごすことができるのです。最高すぎる…▼
宿の造りや設備自体は、ジョージア地方部で定番のもの。
高級ホテルのような滞在とは無縁ですが、必要なものは全て揃っています。
素晴らしかったのが、オーナー家族のホスピタリティーでした。
頼んでもいないのに、毎日夕食と朝食に(半ば強制的に)招いてくれるのです。しかも、無料で。
よくゲストハウスで食事をつけた際に出てくるような「宿泊客向けの特別メニュー」というわけではなく、あくまでもここの家族と一緒に食事をする感じ。(というか、無料で出してくれるので、豪勢な食事を期待するのがナンセンス)
ジョージアの地方部ではどこもそうですが、日々の食事はかなり質素。
飾り気こそありませんが、この地で暮らす人々の生活の一部に入り込んだかのような気持ちになります。
広々とした庭には、ブランコやベンチが設置されており、何をするわけでもなくのんびりと過ごすことが可能。
携帯の電波が届かないグローラ村ですが、この宿にはWi-Fiがちゃんとあるので(奇跡的だと思う)、暇を持て余すこともありません。
10月末の滞在でしたが、太陽が当たる時間帯は寒さを感じることはなく、とても快適で気持ちの良い時間が過ごせました。
山岳地域なので夜は冷え込みますが、一階のリビングにある薪ストーブはガンガンに焚かれ、宿泊客でも家族と一緒に団らんすることができます。
また、二階の宿泊客スペースには電気ヒーターがあるので、夜の冷え込みもまったく問題ありませんでした。
二階部分はまだ改装途中といった感じでざっくばらんとしていましたが、宿泊客用の簡易キッチンがあり、自分でちょっとしたものを作ることも可能。(何も言わずともご飯を作ってくれるので、キッチンの利用機会は多くないけど)
コーヒーや紅茶も用意されており、自由に飲むことができます。
何よりも、オーナー家族の人柄がとにかく最高。
おじいさんおばあさんと息子夫妻とその弟の五人暮らしで、とにかくみんな笑顔で色々と世話を焼いてくれるのです。
言葉の壁こそあれど、全員が宿泊客を歓迎してくれているのが肌で伝わってくるほど。
ジョージアでさまざまなゲストハウスに宿泊してきましたが、トップレベルで素敵な家族でした。
これで1人1泊30GEL(=¥1500)という値段は、驚愕そのもの。
色々飲み食いさせてもらって申し訳なく感じてしまうほどでした。
ショヴィ&グローラ観光の拠点にはぴったりの立地ですし、むしろこの宿に泊まるためにグローラに来る意義があると言っても過言ではないほど。
ジョージア地方部の良いところを凝縮させたような、素敵な滞在となるはずです!
ショヴィ&グローラへのアクセス・行き方
ショヴィとグローラへのアクセス方法は、以下の3通りのみです。
いずれの場合もこの辺りでは最大の町であるオニ(Oni / ონი)が拠点となります。
①タクシー
ショヴィとグローラへの最も簡単&快適な移動方法は、タクシーを利用すること。
ラチャ地方の山岳地域の玄関口となるオニの町か、ラチャ地方最大の町であるアンブロラウリの町からのタクシー利用が現実的です。
・オニ~グローラ/ショヴィ間片道:50GEL(=¥2500)
・オニ~グローラ/ショヴィ間同日往復:100GEL(=¥5000)
・アンブロラウリ~グローラ/ショヴィ間片道:80GEL(=¥4000)
・アンブロラウリ~グローラ/ショヴィ間同日往復:160GEL(=¥8000)
②路線バス
オニ~グローラ間には、週に1日(水曜日)のみ2往復の路線バスが走っています。
・オニ発:8:00 / 16:00
・グローラ発:9:00 / 17:00
これは、毎週水曜日にオニの中心街で開催される市場に向かう村人のための路線バス。
そのため、水曜日以外の運行はいっさいありません。
オニでの発着地は町の入口のバスステーション(橋のたもとのロータリー)ではなく、市場が開かれる中心街のストリート沿いである点にもご注意を。▼
このバスはグローラ村の最東端にあるバス停が終点となり、その先のショヴィまで行かずにオニへと折り返すルートをとります。【マップ 黄色】
もしグローラ/ショヴィへの移動日を水曜日にできるなら、路線バスは格安のアクセス手段ですが、プランニング的にはやや不便。
・水曜日にオニから日帰り往復
・グローラに宿泊して帰りは別のアクセス方法で移動
のいずれかとなってしまいます。
③徒歩orヒッチハイク
のぶよのように「自分の足で行けない場所などない!」と信じてやまないタイプの人は、オニ~グローラ間を徒歩で移動することも可能です。
距離26km / 高低差600mほどの道のりで、5時間~6時間ほど。
山道を歩く場面はいっさいなく、舗装道路が延々と続くだけの簡単な道のりです。(距離はかなり長いけど)
グローラ村の手前6kmほどの場所に分岐点が一ヶ所ある以外は完全なる一本道なので、迷う可能性はゼロ。
交通量も意外とあるので、ヒッチハイクも余裕です。(のぶよの場合は途中で2回拾ってもらいました)
おわりに
ラチャ地方の魅力がギュッと詰まった山岳地域の二つの村を紹介しました。
個人でのアクセスには難ありですが、わざわざ足を運ぶ価値は十分すぎるほど。
自然に囲まれた素朴な村の風景はもちろん美しいですが、なによりも人の温かさを存分に感じられるのが素晴らしかったです。
せっかく行くなら、やっぱり夏から秋にあたる6月~10月がおすすめ。
特に目立った見どころがあるわけではないものの、来年再訪したいなと思っているくらいに良かったので、日程に余裕がある人はぜひとも訪れてみてください!
コメント