こんにちは!ジョージア東部のコーカサス山岳地域を旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ジョージアに数ある山岳地域の中でも最も秘境感が色濃くただようエリアの一つ、ヘヴスレティ地方。
この知られざるエリアの魅力を有り余らんばかりの熱量でお伝えしている今日この頃ですが、またもやものすごい場所を見つけてしまいました。
それが、ヘヴスレティ地方の最も奥に位置する、アルドティとハハボという二つの村です。▼

アルドティとハハボが位置するのは、ヘヴスレティ地方観光・滞在の拠点となるシャティリからさらに20kmほど山奥へと進んだ場所。
チャンチャヒツカリ川が形成する深い峡谷地帯にある、石造りの要塞を中心とした小さな村です。
いずれも想像を絶するほどの山奥に位置しているのですが、いったいこの場所の何が特別なのかと言うと、現代文明から隔絶されたかのような環境と雰囲気。これに尽きます。


いずれの村にも電気は引かれておらず、数組の家族が山岳地域ならではの素朴な暮らしをしているだけ。
観光開発の波はいっさい到達しておらず、圧倒的な大自然の風景の中に昔から変わらないコーカサス地域の生活が残っているのです。
ヘヴスレティ地方自体も、トビリシなど平野部に比べるとありとあらゆるものが異次元の美しさではあるのですが、アルドティとハハボはその中でも最強の異次元さ。
せっかくこのエリアに来たなら、ぜひとも数日間かけて山の暮らしを体験してみたいものです。


というわけで今回の記事は、ヘヴスレティ地方の中でもずば抜けた秘境であるアルドティとハハボの観光・滞在情報を解説するもの。
こんなところまで苦労して訪問する日本人旅行者など皆無でしょうし、需要もない情報であることは百も承知ですが、この天国のような場所をのぶよの記憶の中だけに留めておくのはもったいない!
なかなか実際に訪問するのは難しいかもしれませんが、写真や文章を通してこの場所の美しさを追体験してもらえたら何より嬉しいです。
アルドティ&ハハボ観光マップ
紫:ゲストハウス/キャンプ場
ヘヴスレティ地方髄一の絶景村!アルドティ

シャティリから未舗装道路を延々と進むこと17kmほど。
ヘヴスレティ地方の中でも「絶景村」として名を馳せるアルドティ(Ardoti/არდოტი)という小さな集落があります。
他のヘヴスレティ地方の村々と同様に、アルドティも中世に建設された要塞がそのまま村として機能していた場所。
現在のアルドティ要塞村は半ば廃墟のようになっていますが、深い峡谷を見下ろす独特の存在感には圧倒されます。
アルドティ墓地

シャティリやムツォ方面からアルドティにやって来ると、まず最初に現れるのがアルドティ墓地。【マップ 青①】
古くからこの人里離れた山村に暮らしてきた人々が眠る場所で、数十の墓やハティ(石造りの祠)が山の斜面に点在しています。


ヘヴスレティ地方は山岳地域らしく独自の葬送文化が現在にも残っており、黒い石で造られた墓の上に白い石をのせるのが伝統であるよう。
他地域ではなかなか見られない独特なスタイルの墓が、コーカサスの緑の山々を背景にたたずむ姿は、なんとも言えないミステリアスな雰囲気です。
アルドティ要塞村

峡谷の底からも望むことができる城塞のような建造物は、アルドティ要塞村。【マップ 青②】
かつてのアルドティの住民は例外なく全てこの石造りの要塞の中で生活していました。
ヘヴスレティ地方の他の要塞村と同様に、ソ連時代の強制移住政策によって住民を失ってしまったアルドティ要塞村。
現在の要塞の敷地内には一家族が住むのみで、他の住民はさらに高い場所にあるアッパー・アルドティで生活しています。


アルドティ要塞村の敷地内は、この唯一の家族が住む場所であるため、勝手に立ち入ることはできません。
しかし要塞の少し上からはその全景を眺めることができ、峡谷を一望する美しい風景に息を呑みます。
さらに数十メートル登った先には半壊した状態の祠も残っており、こちらも必見。
なんとも芸術的な崩れ方をした祠は、異世界の雰囲気をまとっています。▼

かつてアルドティ要塞村に住民がいた時代は、キリスト教の教会として機能していたのがこの祠。
現在は要塞内に住む家族が、主にメンテナンス&日常の礼拝を行っているようです。


この山深い地においても、人々の信仰の強さが感じられるのもジョージアのコーカサス地域の興味深い点。
歴史ある要塞村の絶景と、山と一体化したようなミステリアスな聖地の雰囲気を存分に感じましょう。
アッパー・アルドティ

アルドティ要塞村からさらに上へ上へと登った先には、アッパー・アルドティという新しい集落があります。【マップ 青③】
「集落」というか、この場所に住むのは一家族のみ。
自宅の敷地の一部を、後述するArdoti GuesthouseとArdoti Innという二つのゲストハウスとして旅行者に開放して生計を立てています。


アッパー・アルドティを訪れるべき最大の理由は、その絶景。
高い場所に位置しているため、アルドティ要塞村やそのさらに下を流れる渓流を一望することができ、周囲の切り立った山々を背景にした姿はまさに「絶景村」の称号にふさわしいものです。

アルドティ村の入口からアッパー・アルドティまでは、距離1.6kmほどの未舗装道路を進んでいくだけ。
簡単に歩けてしまいそうに思いますが、この短い距離に対して標高差が400m以上あるため、ものすごい坂道を登っていくこととなります。


のぶよの場合は、アルドティ村入口から歩きはじめて100mほどの地点で、たまたま通りかかった車(※こんなところを車が通るのは激レア)のお兄さんが乗せてくれたため、このえげつない坂道を登ることなくアッパー・アルドティまでワープ移動できました(まじで自分の強運がこわい)。
下りは自分の足で歩いたのですが「これ登ってたら完全に体力尽きてたわ…」と思ったくらいの坂道なので、自力で歩いて向かう場合は覚悟の上で…!
アルドティのゲストハウス

アッパー・アルドティに住む唯一の家族が営む二つのゲストハウスのうち、のぶよがおすすめしたいのがArdoti Guesthouse。【マップ 紫】
敷地内には宿泊棟や食堂棟などいくつかの建物がありますが、いずれも全て宿のお父さんが自分で建てたものだそう。
素人仕事とは思えない美しい造りと、伝統建築がモダンさと融合した抜群のセンスには脱帽です。


Ardoti Guesthouseの家族は、なんと年間を通してこの場所に住んでいるそう。
ヘヴスレティ地方はトビリシ方面からの唯一の道路が雪で通行不可能となる11月~5月の約7か月間は、完全なる陸の孤島となります。
そのため、ヘヴスレティ地方の住民の大半は長い冬を麓の別宅で過ごすのですが、この家族はアルドティから移動することなく冬を越すのだそうです。
アルドティは、商店も電気もガスもない僻地。
ここで冬を越すのは並大抵の苦労ではないでしょうし、山の人々の強さに感服させられます。

そんなArdoti Guesthouseですが、夏場は冬の厳しさがイメージできないほどに美しい自然風景が見られます。
宿の庭はとても広々としており、宿泊客たちが思い思いの時間をのんびりと過ごしていました。


宿の家族はみんな温かな雰囲気の人たちで、この人たちの人柄もまたこの場所を特別なものとしています。
そしてそして…宿では生後2ヶ月の秋田犬が飼われていてびっくり。
まさかこんなジョージアの山奥で日本っぽさを感じる存在に出会うとは、夢にも思っていませんでした。

のぶよは当初このArdoti Guesthouseに宿泊するプランを考えていたのですが、あいにくこのときは山のベストシーズン真っ只中の8月半ば。
ハイキング目的の団体客で埋まっていて、宿泊することはできませんでした(なのでビールだけ堪能した)。
アルドティでの宿泊に関してもう一つのオプションが、村への入口近くにある無料のキャンプ場。【マップ 紫】
テントや寝袋などの装備さえあれば、自由に夜を明かすことが可能です。▼


キャンプ場からは、遥か上方の山の上に立つアルドティ要塞村を一望でき、周囲の峡谷風景とともに圧巻の眺め。
ハハボ方面へ進む場合のトレッキングコース上に位置しているため、翌日にサッと歩き始められる点もメリットかもしれません(アッパー・アルドティに泊まると、朝から例のえげつない山道を下ることになるので+40分ほど余計にかかる)。
アルドティ~ハハボ間トレッキングコース

アルドティ村~ハハボ間には車両通行ができない山道があるのみ。
車でアクセスする場合でも、行けるのはアルドティから2kmほど南にある分岐点付近までです(もしくは、トビリシ~シャティリを結ぶ道上のダトヴィスジュワリ峠からものすんごい悪路を走るという手もいちおうある)。
そんなわけで、多くの旅行者にとってアルドティ~ハハボ間は自分の足で歩くトレッキングでの移動となるはず。
コースの詳細は以下のとおりです。▼
・距離:片道7.0m
・所要時間:片道3時間半
・高低差:▲571m ▼117m
・難易度:★★★★☆

地図で見るとアルドティとハハボはそれほど離れておらず、簡単に歩けそうな気がするかもしれませんが。実際はかなりの山道をゆくことになります。
草が生い茂る道を歩いたり、つるつるした岩場を歩く場面も多くあるので、必ずトレッキングシューズを着用した状態で歩きましょう。


アルドティ→ハハボ方面は、チャンチャヒツカリ川に沿って緩やかに登っていくコースが大半。
ハハボ村手前2kmほどの区間だけ結構な急坂がありますが、それ以外は体力的には比較的楽に歩けるはずです。


▲車両でのアクセスが可能なのは、アルドティ村から1.5kmほどの分岐点まで。
ここでは道が二方向に分岐し、左の未舗装道路はアンダキ(Andaki)という別の村へ、右の山道はハハボへと続きます。
トレッキングコースは一部わかりにくい箇所もあるものの、基本的にチャンチャヒツカリ川を上流に向けてずっと歩いていくだけなので、迷う可能性はゼロ。
川を渡らなければならないポイントも多くありますが、ほぼ全ての箇所に橋が架けられているため、靴を抜いで渡らなければならない場面はありません。

アルドティ~ハハボ間のトレッキングにかかる時間は、3時間~4時間ほど。
ゴール地点のハハボ村は地形的に最後の最後までその姿を現さないのですが、長い道のりの果てにようやく見える要塞村の風景は、きっと忘れられない旅の思い出となるはずです!
ヘヴスレティ地方最果ての楽園!ハハボ

ヘヴスレティ地方の中でも最も奥。これ以上先には人は住まないような山奥にあるのが、ハハボ(Khakhabo/ხახაბო)。
標高2100m以上の場所にあり、ヘヴスレティ地方の中でも最も高い場所に位置している村の一つです。
ハハボ村にあるのは、かつて人々が住んでいたハハボ要塞村の廃墟のみ。
この要塞村を利用したゲストハウスに宿泊することが、ハハボ訪問のハイライトとなります。
ハハボ要塞村

ハハボが位置するのは、チャンチャヒツカリ川が形成する深い峡谷を一望する高台。
山の斜面を利用して中世に建設されたハハボ要塞村の廃墟が、この場所で唯一の建造物です。【マップ 青④】


アルドティ要塞村やヘヴスレティ地方の他の要塞村と同様に、かつてハハボの住人は全て要塞村の中に住んでいました。
ハハボの場合は、ソ連崩壊直前に完全に村ごと放棄されることとなり、1991年のジョージア独立後にも住民は一人も戻って来ませんでした。
そのため、ハハボ要塞村は誰にもメンテナンスされることなく30年以上放置された状態となり、保存状態はお世辞にも良いとは言えません。

人々に忘れ去られたハハボ村に転機が訪れたのは今から5年前、2020年のこと。
ソ連崩壊前にハハボで生まれて少年時代を過ごした男性と、彼に恋したトビリシ出身の女性がやって来て、男性が育った要塞住宅に住みはじめ、30年ぶりにハハボ村に人間の姿が戻って来たのです。
この男女こそが、後述するゲストハウスを経営する夫婦。
ゲストハウス自体は改修が済んでいますが、それ以外の要塞村部分までは手が回らないようで、宿周辺のかつての村の跡は30年前に住人を失ってからそのままの状態で残されています。


いくつかある要塞村の跡以外には、美しい流れを讃えるチャンチャヒツカリ川と、一面緑のコーカサスの山々の風景があるだけ。
気ままに村を散策することが、ハハボ滞在中最大のアクティビティーとなります。

一点だけ。ハハボ村の目の前に広がる渓谷地帯には、茶色っぽい石で造られた小さな祠があります。
これは「ハティ」と呼ばれる山岳信仰の聖地で、女性は何があろうとも近づいてはいけないとされています。
男性でも近づくことが許されるのは、年に数回ある山岳信仰の祭祀の日のみとされており、普段は視界に入れることさえ忌まれているそう。
旅行者であってもタブーは適用となるので、近づいたリ写真を撮ったりするのは絶対にやめておきましょう(のぶよは遠目から見たけどなんとも禍々しい雰囲気を放っていたので、ルールを破るとがちで呪われそう)。
コーカサスの楽園!ハハボのゲストハウス滞在

ハハボ村で唯一のゲストハウスであり、唯一人間の生活がある場所が、Fortress Tower Khakhaboというゲストハウス。【マップ 紫】
日本語にすると「要塞塔ハハボ」となりますが、その名の通りハハボ城塞村の建物をそのまま利用したものすごい宿です。
苦労して山道を抜けてハハボまでわざわざやって来るべき最大の理由が、このゲストハウスの存在。
もうとにかく「この世の楽園」そのものな時間を過ごすことができ、ジョージア旅行の中でも特別な思い出として心に刻まれること間違いなしです。
かつての要塞住宅を利用した「要塞宿」の設備

Fortress Tower Khakhaboの建物は、中世に建設されたハハボ要塞村の一部をそのまま利用したもの。
ヘヴスレティ地方ならではの石塔住宅に併設された造りとなっており、キッチンも部屋も水回りも、とにかく全てが石造りの要塞の中に設置されています。


「中世の要塞を利用した宿」と聞くと、多くの人が気になるのがトイレやシャワーなどの水回り。
こちらももちろん石造りの空間に設置されているのですが、設備は完全に21世紀のものなので安心です。▼

ハハボ村には電気もガスも通っていないため、この宿では調理用のガス以外は全て太陽光発電でまかなっています。
お湯も太陽光で沸かしているのですが、かなり熱々のシャワーが浴びられることにびっくり&感激しました。
いっぽうで、天候不順が続くとお湯はおろか電気すら使用できない場合もある点は理解しておきましょう。
また、宿にはWi-Fiもありますが、ネットの速度はやや難ありなので注意(特に雲が多い日は電波が不安定になる)。
こんな天国のような場所まできてネット漬け…なんて人もいないでしょうし、普通に調べものくらいなら問題なく可能です。
宿からの絶景

ゲストハウスからは、ハハボ村の敷地全体と周辺に広がる峡谷の雄大な風景を一望することができます。
どこからの眺めも圧巻で美しいのですが、おすすめは二階のテラス部分。
宿のお母さんが自分で採ってきたハーブのお茶や、他の宿泊客が置いていったというワイン(ハハボは標高が高いのでワインが作れない)などをいただきながら、コーカサス最奥部の秘境風景をひたすらに堪能できます。


ゲストハウス、というかハハボ村にあるのは、この極上の眺めとゆったりと流れる時間だけ。
この「何もないことを楽しむ」というのが、ハハボ村ならではの最高の贅沢なのかもしれません。

ヘヴスレティの名物料理だらけの食事

Fortress Tower Khakhaboでは、オプションで食事を注文することも可能です。
物資が限られた山岳地域&そのさらに一番奥の僻地村というわけで、ハハボ村では食材の一つや調味料の一つに至るまでが貴重品。
高級レストランのような豪勢な食卓!…とまではいきませんが、素朴ながらも味わい深いヘヴスレティ地方の郷土料理を中心とした食事体験は、一度は挑戦してみる価値アリです。


▲「ヘヴスレティと言えば!」といった定番の郷土料理であるクセルボは、チーズとバターを溶かしたものに小麦粉と水を混ぜて液体状にしたもの。
山で採れる山菜を塩漬けにしたものを入れるのが定番だそうで、濃厚なチーズの風味と山菜独自の風味が見事なコンビネーションです(果てしなくカロリーが高いので胃に重たいけど)。
また、ヘヴスレティ地方をはじめジョージア東部山岳地域で食されるムフロヴァニも絶品。
こちらはジョージアのチーズパン「ハチャプリ」の具にビーツの葉を混ぜて焼き上げたもので、でゅるんでゅるんのとろけるチーズと芳醇な小麦粉生地、ビーツの葉独自の苦みがとても良い組み合わせです。▼

さらに、宿のお母さんは色々とあれこれ世話を焼いてくれ、朝食オプションを利用しなかったのぶよにも朝食を作ってくれたりと至れり尽くせり。
卵もチーズも自家製だそうで、山奥の村の恵みが舌で感じられます。▼


▲そして!!!宿のお母さんが朝食に出してくれた壺入りマツォーニが、とにかくものすごく美味しかったです。
マツォーニとは、ジョージアのヨーグルトのこと。
この宿のマツォーニは自家製で、素焼きのかわいらしい壺に入っているのですが、質感も風味も濃厚さもおそらくのぶよがこれまでジョージアで食したマツォーニで断トツでした。

大袈裟でなく、この激うま壺マツォーニを食すためだけにでもハハボまで来る意味があります(さすがに大袈裟か)。
いつも置いてあるわけではないのかもしれませんが、とにかくハハボの宿ではマツォーニ。これだけは覚えておいて損はないはずです!
ヘヴスレティ文化体験

Fortress House Khakhaboでは、宿泊客の希望に応じて各種体験アクティビティーを開催してくれます。
乗馬体験や料理教室など色々とやってくれるそうですが、ぜひとも参加したいのがヒンカリ作り体験。
ヒンカリとはご存じ、ジョージア風小籠包のような料理のことで、ここヘヴスレティ地方をはじめとするジョージア東部の山岳地域が本場だとされています。


宿のお母さんのヒンカリ作りの腕前はまさに名人級。
英語も堪能なので、各ステップごとにわかりやすく工程を説明してくれ、参加者は実際に生地を伸ばしたりヒンカリを包んだりすることができます。

今回作るのは、チーズ入りヒンカリとポテト入りヒンカリ、そして羊と牛の挽き肉を使用したヘヴスルリ・ヒンカリ(=ヘヴスレティ地方風ヒンカリ)。
生地を捏ねる工程や寝かせる工程は済ませた上で開始されるので、参加者は気軽に伝統料理作りが楽しめます。


ヒンカリ作りの工程は、大きく分けて以下の3ステップ。
①生地を円形に伸ばす
②具をのせて包む
③大量のお湯で茹でる
最も難しいのは、②の具をのせて包むステップですが、宿のお母さんいわく「①の生地の伸ばし方が一番大切!」とのこと。
生地が薄すぎると茹でる際に破れてしまい、厚すぎると具の味が感じにくくもっさりとしてしまうのだそうです。


のぶよを含めた参加者4人ははじめこそ苦戦しながらも(特に②の包むステップか難しい)、お母さんの的確なアドバイスによってどんどん上達していきます。

40個ほどのヒンカリを1時間以上かけて包み終え、あとは茹でるステップ。
ぐらぐらと沸騰したお湯で茹でられること10分ほどで、お待ちかねのヒンカリ実食タイムです。


自分たちで作ったヒンカリちゃんたち…そのお味は、まさに格別のひとことでした。
粗めに挽かれた肉の風味は驚くほどに濃く、生地の中に閉じ込められた肉汁がぶしゃあっと滴り落ちるほどのジューシーさ。
本来のヘヴスレティ地方のヒンカリにはパクチー等のハーブは入らないのが基本ですが、お母さんのアレンジによってたっぷり入ったパクチーがとても良い味のアクセントです。

ヒンカリの絶品さはもちろん、山を眺めながら山の料理を食べることの嬉しさや、他の宿泊客たちとワイワイ楽しい時間が過ごせる点も魅力的。
せっかくハハボに来たなら、ヒンカリの作り方くらいはマスターして一人前の山の民への階段を上りましょう!
ハハボ村に戻ったある夫婦の愛の物語

最後に。このゲストハウスおよびハハボ村を特別なものにしているのが、ゲストハウスの経営者であり村で唯一の住人である夫婦の存在。
どちらも40代前半くらいの若い夫婦で子供はおらず、この隔絶された地になんと年間を通して住んでいるのだそうです。
旦那さん(ごめん名前忘れた)はもともとハハボで生まれ、11歳までこの要塞住宅で育ったそう。
しかし、ソ連時代の強制移住政策の波はこの山深い場所にまで到達し、同時に雪崩で村が壊滅的な被害を受けたことも重なり、家族とともに親戚の家に移住して数十年間ハハボに戻ることはありませんでした。
この旦那さんの家族が去ったことで、ハハボは完全なる廃村に。
その後30年間、夏場にちらほら元住民が戻ってくるのを除き、誰一人としてこの地に戻り定住することはありませんでした。

そんな状況が大きく変化したのが、今から5年前の2020年のこと。
当時はコロナウイルスの流行により各種規制が敷かれている中で、旦那さんは自身が生まれ育ったこの村でひと夏を過ごすべく、傷んだ要塞住宅の修復やインフラの整備に取り組んでいました。
そこにたまたま訪れたのが、奥さんであるニノ。
彼女はもともとトビリシ出身の都会っ子で、女友達と二人でヘヴスレティを初めて訪れた際にこの最果ての村に到達し、そして旦那さんと出会ったのだそうです。
旦那さんの心の清らかさと、圧倒的な大自然と、ヘヴスレティ地方ならではの伝統文化に魅了されたニノ。
ヘヴスレティ旅行の最終日には、何でも揃う大都会トビリシでの生活を捨ててハハボに移住することを決めて即座に実行に移したそうで、旦那さんと見事にゴールインを果たしました(たぶんかなりのスピード婚)。


夫婦は何度も話し合い、夏場のみならず冬場もハハボ村で生活するライフスタイルを選択したのだそう。
ハイキング客に多少の需要がある夏場は、この美しい山村の自然の恵みや山の伝統文化体験をウリにした体験型ゲストハウスとして旅行者を受け入れています。
すべては偶然と愛から始まった、ハハボのゲストハウスの物語。
現在この夫婦がハハボ唯一の住人であり、一度は捨てられ人々に忘れ去られた村に新たな息吹が吹き込まれつつあるのです。

「トビリシの便利で刺激に満ちた生活が恋しくならないの?電気も食材もなくて冬は想像を絶する厳しさのこの村での生活を、辛いと思ったことはないの?」と尋ねたのぶよに、ニノ夫人はこう言いました。
「何一つ恋しくないし、何一つ辛く思ったことなんてないわ。だって今、私の愛する全てのものはこのハハボにあるのだから」と。
アルドティ&ハハボのアクセス

ご想像の通り、アルドティとハハボへのアクセスは簡単なものではありません。
多くの場合、ヘヴスレティ地方観光・滞在の拠点となるシャティリからのアクセスとなるでしょうが、公共交通機関は一切存在しないため、基本的に自分の足で歩くことになります。
裏を返せば、「自分の足で歩いて人しかいけない本物の秘境」とも言えるはず。
ここでは、アルドティとハハボを実際に訪れようと考えている人(おらんか)向けの移動情報を解説します。
シャティリ/ムツォ方面から(徒歩のみ)

多くの人がヘヴスレティ地方での滞在拠点とするのが、シャティリの村。
シャティリ~アルドティまでは車両通行可能な未舗装道路が通っているため、比較的簡単にアクセスが可能です。
いっぽう、アルドティ~ハハボ間は車両の通行は不可能で、トレッキングをするしか方法がありません。
シャティリから直接アルドティまで移動してしまうのもアリですが、シャティリ~アルドティ間は17kmほど(&アッパー・アルドティまではさらに1.6km+急坂)とまあまあな距離。
のぶよ的には、シャティリ→途中のムツォでの観光&宿泊→アルドティ…と二日間に分けて移動するのが効率的&理想的かなと思います。
トビリシ方面から(車/徒歩/馬)

「どうしても歩きたくない!でも秘境に行きたい!」という人向けのアクセス手段のおすすめが、トビリシ~シャティリ間を結ぶ唯一の道からハハボ村へ直接アクセスすること。
ダトヴィスジュワリ峠という最高標高地点の峠からハハボ村までは、おそろしいほどの悪路ではありますが、4WD車がどうにか通れるか通れないか…といった道があります。

もしくは、ハハボ村のゲストハウスに事前にコンタクトをとり、ダトヴィスジュワリ峠まで馬で迎えに来てもらうことも可能。
料金は片道一人150GEL(=¥7500)+馬乗りのおじさんの給料100GEL(=¥5000)だそうで、意外にもリーズナブルかもしれません。
とはいえ、険しい山道を馬に乗って移動するのは初心者にはかなり難しいもの。
危険もともなうので、乗馬経験がない人は絶対にやめておきましょう。
おわりに
天国を具現化したかのように美しい、ヘヴスレティ地方最奥部の二つの村の見どころや、極上の山ステイのようすをお送りしました。
この記事の需要がいったいどこにあるのやら…まあどう考えても需要はないでしょうが、ジョージアの中でも最強レベルの秘境でののぶよの思い出を少しでもシェアできていたら嬉しいです。
ヘヴスレティ地方には他にも見ごたえ抜群なスポットが目白押し。
山の伝統文化やこのエリアならではの郷土料理など、五感のすべてを使って楽しんでもらえたら嬉しいです!
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