こんにちは!アルメニア滞在もすでに3ヶ月!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア北西部に位置するシラク地方をのんびりと旅している今日この頃。
そもそもの観光客が少ないエリアで、日本人旅行者でガッツリとこの地域をまわる人は…まずいないかもしれません。
アルメニアというマイナー国の中でも、さらに拍車をかけてマイナーなシラク地方。
その中でも、アルメニア人からも「どこそれ?」と言われてしまうほどの壊滅的な知名度の村へ行ってきました。
その名も、アマシア(Amasia / Ամասիա)。
…最初に言ってしまいますね。
なんでこの場所が無名なのかわかりません。まじで童話の世界でした。
アマシアは、木造家屋が建ち並ぶ小さな村。
アルメニアの他の地域ではまず見られない様式の家々がすでに感動ものなのですが、注目すべきは各民家が色とりどりに塗られている点。
やや色あせたパステルカラー調の木造家屋。それらが田舎道にずらりと建ち並ぶ光景…
「アルメニアで一番カラフルな村」(勝手に名付けた)の称号にふさわしい、童話の世界の雰囲気に包まれていました。
カラフルな家々以外にも、アルメニア地方部らしい素朴な雰囲気もアマシアの魅力。
村の中心にはレーニン像がひっそりと立っているのも、好きな人にはたまらないかも。
(アルメニアでレーニン像が残るのは、のぶよの知る限り二か所だけなので超レアです)
今回の記事は、ネット上にほとんど情報がないアマシア村の観光情報を解説するもの。
個人で公共交通手段を利用してのアクセスも簡単なので、シラク地方を旅するならぜひともプランに組み込んでほしいです!
アマシアの見どころ
アマシア観光の最大のハイライトは、何と言ってもカラフルな木造家屋が並ぶ地区。
村全体にこのような民家が並ぶわけではなく、アマシア中心部から北西に位置する地区の合計50軒ほどがカラフルな木造となっています。
他にも、アマシアの村はずれや中心部をのんびりと散策したり、レーニン像を見学したり…
合計で1時間半~2時間ほどの観光時間をみておくのが◎
カラフルな民家
アマシア村で最大の見どころが、木造のカラフルな民家が建ち並ぶ風景。
村の北西の集落内の民家は100%このスタイルの民家となっており、合計3本のストリートで構成されています。
通常のアルメニアの家々は、いくら田舎へ行こうとも石造りが基本。
ここ以外のアマシアの他エリアの民家も石造りで、この集落の家々だけが例外的に木造なのです。
木造&カラフルな外観以外の特徴は、玄関が地面よりやや高い位置に設置されている点 ▼
ちょっとしたパティオのようになっていてお洒落ですが、これはおそらく冬の積雪に備えたもの。
地面より1mほど高い場所に玄関を設置することで、積雪によって出入りができなくなってしまうことを防ぐ目的があるのだと思います。
カラフルな民家の前にはソ連時代のクラシックカーが停まっていて、かなり絵になる光景。
いずれも現役で住人の足として走っているものです ▼
いったいどうして、この集落だけ木造でカラフルな民家が建ち並んでいるのか気になるのではないでしょうか。
家の住人に話をきいたところ、この集落の民家は全てユーゴスラビアのスタイルの家とのことでした。
1943年~1992年の間、バルカン半島の西側に存在していた共産主義国家・ユーゴスラビア。
1915年にオスマン帝国によるアルメニア人大虐殺が起こった際に、当時の西アルメニア地域の人々の中にはバルカン半島各地域に移住した人も少なからずいたそう。
その後、1943年にユーゴスラビア社会主義連邦共和国が建国されると、すでに現地に住んでいたアルメニア人たちも「ユーゴスラビア人」として生活することとなりました。
その後1990年代に入ってからのユーゴスラビアは、相次ぐ内戦からの国家崩壊…激動の時代でした。
かつて大虐殺を逃れ、安寧の地を求めてバルカン半島に移ったアルメニア人たち。
その子孫にあたる人々は、当時ソ連から独立したばかりのアルメニアに再移住することを決意したのです。
彼らに与えられた土地が、アマシア村のはずれのこの場所でした。
アルメニアにルーツはあると言っても、再移住してきた人々は全く別の文化圏であるユーゴスラビアで育った世代。
そのため、アルメニアらしい石造りの民家ではなく、馴染みが深いユーゴスラビア風の木造の民家を建設したのだそうです。
アマシア村が位置するシラク地方は、アルメニアで最も気候条件が厳しく、不毛な土壌であることで知られている地域。
「アルメニアのシベリア」と呼ばれるほどの寒冷地で、アルメニアの中でも最も貧しい地域であると言われています。
個人的な推測でしかありませんが、アマシア村の木造民家がカラフルに塗られている理由は、厳しい生活を少しでも明るく彩ろうとする、人間らしい感覚の現れなのではないでしょうか。
人口2000人ほどのアマシア村において、このカラフル民家地区に暮らすのは200人足らずだそう。
より良い気候条件や生活を求めてこの地を離れてしまった住民も多く、空き家となって放置されているものもいくつかありました。
ここに並ぶのは、30年前に建てられた木造の家々。
手入れが行き届いているわけではないため、どれも色褪せつつありますが、それがかえって味わい深さを醸し出しているような気がしました。
アルメニア地方部らしい素朴な風景
アマシアは決して裕福な村ではありません。(というか、アルメニアの中でも最貧レベルだそう)
農業には全く適していない土壌&気候ということもあり、村の人々の生活は決して楽なものではないでしょう。
そんな「限界集落」そのもののアマシアですが、2019年に政府主導で新たな産業が生み出されました。
それが、アマシア羊毛工場。
村人の誰もが家畜として飼う羊。その毛を絨毯や羊毛製品に加工する場がオープンし、村に新たな産業と雇用の機会を生み出しているそうです。
アマシア羊毛工場は、観光客には公開されていないため見学は不可。
しかし、のんびりした村を少し散策していると、そこらじゅうで草を食む羊たちの姿を見かけます。
「羊毛の村」として名を馳せるようになる日が、いつかやって来るのかもしれません。
カラフルな家々の地区~アマシア中心部の間には、昔ながらの田舎道がいくつも通っているので、時間があればゆっくりと散策したいもの。
のぶよがアマシアを訪れたのは10月半ばのこと。
昼間は20℃ほどまで気温が上がり、散策にはピッタリ(若干暑いくらい)でしたが、村ではすでに冬じたくが始まっていました。
▲ どこの民家の庭先でも、家畜の糞を四角いブロックのように固めたものを積み上げたうんこの塔のようなものがありました。
村人にこれは何か尋ねたのですが、のぶよのロシア語力がついていかず結局理解できずじまい…(たぶん翌春の肥料にするんだと思う)
誰か秋にアマシアに行く人がいたら(おらんか)、謎の解明をお願いします…
冬じたくに精かけられます。
ど田舎の村でありながら、閉鎖的な感じが一切ないのはアルメニア地方部のすごいところ。
アマシアの人々も例に漏れないコミュニケーション能力お化け具合で、ザクロをもらったり、自家製ウォッカを飲まされたり、一緒に写真を撮られまくったり…と楽しい思い出ができました。
アマシア中心街
ギュムリからのマルシュルートカが到着するバス停の北側の数ブロックが、アマシア村の中心部にあたる地域。
銀行の支店や携帯電話会社、広々とした公園に警察署まで…
人口2000人の村のわりには、結構ちゃんと整備されているように思いました。
▲ アマシア村の中心部でぜひチェックしたいのが、ペットボトルのキャップを集めて作られたウォールアート。
上の写真の学校の壁をはじめ、村の建物の壁でいくつか見かけました。
実はこのウォールアート、シラク地方の中心都市であるギュムリ発祥のプロジェクトの一環なんだそう。
「ゴミを捨てるのではなくアートに」というエコ精神のもと、それに共感した人たちがペットボトルのキャップを集め、シラク地方の各地でこうしたアートを作成しているそうです。
こんな辺鄙な田舎の村にまで広まっているのですから、これからアルメニア全国的に大きなムーブメントとなっていくかもしれません。注目です。
レーニン像
アマシア観光の総仕上げ(?)となるのが、中心街に建つソ連住宅の中庭にどーんとたたずむレーニン像。
レーニンとは、ご存じの通り「ソ連建国の父」と呼ばれる政治家。
ソ連崩壊から30年が経った今でも、スターリンと同様に一部の人に崇拝されています。
しかしながら、レーニンはソ連支配の象徴的な人物であるため、旧ソ連圏のほとんどの場所ではその像は撤去されているのが現状。
アルメニアでも例外ではなく、2021年にもなってレーニン像を見かける機会はほとんどありません。
ここアマシアでも、かつては村の中心の広場に堂々と立っていたレーニン。
現在では、100mほど離れた空き地(公園?)のような場所に移動されていますが(まあ、いろいろあったのでしょう)、いちおう現役で立っています ▼
のぶよ的には村の中心部よりも、現在のソ連住宅前の空き地の方がレーニン像にとって絶好のロケーションのような気がしてならないのですが…いかがでしょうか。
アマシアへのアクセス・行き方
アマシアが位置するのは、シラク地方の中心都市・ギュムリから北に30kmほどの場所。
アクセス拠点はギュムリ一択で、以下の2通りの方法があります。
アマシア観光は2時間ほどみておけば十分。
同じ方面にあるマルマシェン修道院とセットでまわるのがおすすめです!(個人でも余裕で2か所まわれるはず)
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ギュムリでタクシーをチャーターしてしまうこと。
ギュムリ~アマシア間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台8000AMD(=¥1917)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするなら、アマシアが位置するシラク地方北部の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
(もちろん料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
・マルマシェン修道院(Marmashen Monastery)
・トゥルチュカンの滝(Trchkan waterfall)
・アルピ湖国立公園(Arpi Lake)
とはいえ、いくらタクシーをチャーターしようと、上に挙げた見どころをすべて一日でまわるのはかなりハード。
シラク地方の道路状況はかなり悪く、上の見どころも距離的にはそれぞれ近いものの移動には想像以上に時間がかかるためです。
日帰りでまわるなら、アルピ湖 + アマシア + マルマシェン修道院 の3ヶ所で精一杯だと思います。
②マルシュルートカ
ギュムリから個人でアマシアを日帰り往復する場合は、マルシュルートカを利用するのが便利。
ギュムリ中心街南端のバスステーションから、アマシア行きの57番マルシュルートカが1日5~6本出ているので、終点まで乗っていくだけ。超簡単です。
2021年10月現在の時刻表はこちら ▼
ギュムリ~アマシア間の57番マルシュルートカは、途中でマルマシェン修道院の入口を通過するのもポイント。
うまくプランニングすれば、個人でマルシュルートカ利用でもアマシア&マルマシェン修道院の2か所を1日でまわることも可能です!
ギュムリ→アマシア間(往路)
アマシア行きの57番マルシュルートカが発着するのは、ギュムリ中心街最南端に位置するバスステーション ▼
バスステーションに到着したら、アマシア行きの57番のマルシュルートカを探しましょう。
カオスな雰囲気のギュムリのバスステーションですが、いちおうマルシュルートカは行き先によって停車場所が決まっているよう。
アマシア行きの57番は、上の写真の標識(アルメニア文字で「アマシア」と書いてある)の前に、出発時刻の30分前くらいから停車しています。
アマシア→ギュムリ間(復路)
ギュムリ~アマシア間の57番バスの終点は、アマシア中心街の十字路。
ギュムリ方面へ戻る際も、降りたときと同じ場所からの出発となります。
(念のため、降車時に運転手に帰りのバスの時間を確認しておきましょう)
ギュムリでの到着地は、行きと同様に市内南部のバスステーション。
ギュムリ中心街などでの途中下車も可能です。
マルマシェン修道院とセットで観光する場合
シラク地方観光のハイライトとも言えるマルマシェン修道院は、ギュムリ~アマシア間の幹線道路から2kmほどの場所に位置しているため、アマシア観光とセットでまわるのが◎
その場合は絶対に、アマシア→マルマシェン修道院の順番がおすすめ。
というのも、それぞれの写真撮影に最適な時間は、
・アマシア:午前~昼過ぎ
・マルマシェン修道院:午後
となるので、反対の順にまわると一日中ずっと逆光となってしまうためです。
アマシアからギュムリ行きの57番マルシュルートカに乗って、マルマシェン修道院入口で途中下車する場合の運賃は250AMD(=¥60)。
運転手に「マルマシェン修道院に行きたい!」と言っておけば、この場所で降ろしてくれるはず ▼
この場所から修道院までは、2.5km/40分ほどの坂道を下っていくだけ。
ギュムリに戻るバスに乗り遅れないように、観光時間と往復の徒歩時間をしっかりプランニングしておきましょう!
おわりに
知名度はほとんどゼロながらも、想像していた以上の魅力を発見できたアマシア。
ハイライトとなるカラフルな家々はもちろん、村を取り囲むシラク地方の美しい自然風景も素晴らしかったです。
アマシアの村人たちも、ほとんど見かけることのない外国人に興味津々。
話しかけられる機会もかなり多く、閉鎖的な感じも全く受けませんでした。
アルメニアの定番スポットを制覇した人はもちろん、フォトジェニックな風景に興味がある人にもおすすめ。
シラク地方滞在の思い出の1ページとなることを保証します!
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