こんにちは!アルメニア滞在もすでに4ヶ月!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア北西部に位置するシラク地方をのんびりと旅している今日この頃。
他の地域から地理的にやや孤立していることもあり、旅行者があまりやってこない穴場のエリアです。
そんなシラク地方には、「世界最初のキリスト教国」であるアルメニアの長い歴史がギュッと詰まったスポットが点在しているのもポイント。
今回紹介するのは、そんなシラク地方の歴史スポットの中でも最も古く、歴史的価値が高いイェレルク聖堂(Yererouk / Երերույքի տաճար)です。
一面の荒野にどっしりとたたずむ、ピンクがかった石造りの巨大な建造物。
一目見ただけでもものすごい存在感に圧倒されますし、歴史や建築に詳しくなくとも感動すること間違いなし。
しかし、イェレルク聖堂は歴史的にも計り知れない価値があるのです。
実はこのイェレルク聖堂は、現存する中でアルメニア最古の聖堂建築の一つ。
なんと、4世紀~5世紀(1700年~1600年前)に建設されたそうで、当時のアルメニアの繁栄がどれほどのものだったのか想像できます。
今回の記事は、イェレルク聖堂の観光情報を解説するもの。
ネット上にはほとんど情報がないスポットですが、個人で公共交通を利用してのアクセスだって可能。
本当に素晴らしいので、シラク地方滞在時にはぜひ訪れてほしいです!
イェレルク聖堂の歴史と見どころ
イェレルク聖堂が建設された時期に関しては諸説あるものの、4世紀~5世紀にかけてというのが有力。
アルメニアが世界で初めてキリスト教を国教化したのが4世紀初頭(303年)のこと。
イェレルク聖堂の建造が始まったのは、それからすぐのことだった、となります。
この時代の初期キリスト教建造物が現存している場所は、世界的に見てもかなり珍しいもの。
当時はキリスト教が主流の地域であったシリアに残る、同時代の聖堂建築との共通点が多く見られるそうです。
イェレルク聖堂が完成した1600年以上前、この場所には聖堂を中心とした集落が存在していました。
聖堂周辺からは、かつての民家の土台や地下室、人工の貯水池跡などが発見されており、かなり進んだ文明的な生活が営まれていたのではないか、と考えられているそうです。
イェレルク聖堂はアニ遺跡の一部?
9世紀頃に中世アルメニア王国の首都して繁栄を極めたアニ(Ani)。
当時の教会の跡が点在する遺跡として世界遺産にも指定されているアニは、現在はトルコ領となっています。が…
実は、イェレルク聖堂とアニは直線距離で10kmも離れていません ▼
アニという地名が初めて文献に登場するのは、中世アルメニア王国が成立するよりかなり昔で、5世紀のこと。
イェレルク聖堂が完成した時期と完全に一致することから、「イェレルク聖堂と周辺の集落もアニの一部だった(or 何らかの関係があった)のでは?」という説も唱えられているそうです。
目と鼻の先にありながらも、アルメニアからは行くことができない…
アルメニア人にとって、アニは「望郷の地」そのものです。
アルメニア領として残るイェレルク聖堂も、かつては同じ町の一部だったのかも…?と考えると、何だかワクワクしてきますね。
イェレルク大聖堂が歴史的に貴重なものである理由は、その規模の大きさと独特の建築様式にあります。
高さ30m以上に及ぶ聖堂は、当時のアルメニアでは最大級のもの。
建設から1600年以上が経ち、半壊した状態ではありますが、完成した頃は相当立派なものであったことがわかります。
また、イェレルク聖堂の建築様式はとても独特。
・正面ファサード上部と正面入口部分に残る、アーチ部分を支える細い柱
・窓枠部分に掘られた装飾
などはアルメニアの教会建築においてはかなり珍しいもの。
同じ様式が見られるのは、同時代にシリア地域に建設された聖堂くらいなのだとか。
当時の初期キリスト教文化のつながりが感じられるようで面白いです。
外壁部分の美しい装飾を鑑賞したら、聖堂の内部へと足を踏みいれましょう。
完成当時のイェレルク聖堂の屋根は木製だったと考えられているそうで、その後石造りのものに置き換えられました。
現在は屋根は全く残っていない状態で、1600年前の聖域の上には雲一つない青空が広がっていました。
イェレルク聖堂の内部の壁は、色とりどりのフレスコ画でびっしりと覆われていたそうですが、年月や風雨による風化が激しく、現在ではほとんど残っていないのが残念。
正面の祭壇上部のドーム天井部分にかろうじて確認できるくらいでした。
17世紀に起こった地震によって、半壊した状態となってしまったイェレルク聖堂。
しかしながら、現在見られる部分のほとんどが1600年前のオリジナルのものである点がすごいところです。
その歴史的重要性や貴重な建築様式が評価され、UNESCOの世界遺産の暫定リストにも載っているそう。
現在は知名度はほとんどありませんが、脚光を浴びる日はそう遠くないのかもしれません。
イェレルク聖堂へのアクセス
イェレルク聖堂が位置するのは、シラク地方の中心都市・ギュムリから南に60kmほど離れたアニペムザ村(Anipemza / Անիպեմզա)の村はずれ。
アクセス拠点はギュムリ一択で、以下の3通りの方法があります。
イェレルクには聖堂がぽつりとあるだけなので、観光時間は1時間もあれば十分。
同じ方面にあるジラピ村のキャラバンサライとセットでまわるのがおすすめです!(個人でも余裕で2か所まわれるはず)
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ギュムリでタクシーをチャーターしてしまうこと。
ギュムリ~イェレルク聖堂間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台15000AMD(=¥3577)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするなら、イェレルクが位置するシラク地方南部の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
(もちろん料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
・ジラピのキャラバンサライ(Jrapi Caravanseray)
・ハイカゾル展望台(Haykadzor viewpoint)
・ハリチャヴァンク修道院(Harichavank Monastery)
・ルンバタヴァンク修道院(Lmbatavank Monastery)
とはいえ、いくらタクシーをチャーターしようと、上に挙げた見どころをすべて一日でまわるのはかなりハード。
シラク地方の道路状況はかなり悪く、上の見どころも距離的にはそれぞれ近いものの移動には想像以上に時間がかかるためです。
(特に、ハリチャヴァンク&ルンバタヴァンクは別の日にまわるのが◎)
日帰りでまわるなら、
イェレルク聖堂 + ハイカゾル展望台 + ジラピのキャラバンサライ
の3ヶ所(どれも同じ幹線道路沿い)にしておくのがおすすめ。
②マルシュルートカ
ギュムリからイェレルク聖堂があるアニペムザ村(Anipemza / Անիպեմզա)間はマルシュルートカ(公共ミニバス)が走っています…が。
1日1往復と便数はかなり少なく、早朝にアニペムザ発/13:30にギュムリのバスステーション発という旅行者的には超絶不便なスケジュール。
アニペムザ村の人がギュムリに買い物に出るための便なのでしょう。
マルシュルートカ利用の場合は、アニペムザ村に一泊することになる(そしてホテル等はない)ため、現実的には難しいかもしれません。
(後述の鉄道利用と上手に組み合わせればやってやれないことはないけど)
③鉄道
「マルシュルートカの利用が非現実的=個人ではアクセスできない」と考えるのはまだ早い!
イェレルク聖堂があるアニペムザ村には鉄道駅はないものの、6kmほど北に離れたアニアヴァン(Aniavan / Անիավան)という村には鉄道駅があり、1日3往復しているギュムリ~エレバン間を結ぶ各駅列車が停車するのです。
のぶよも実際にギュムリから鉄道を利用してイェレルク聖堂へアクセスしましたし、時刻表もかなり正確。
個人でイェレルク聖堂に訪れる人たち、やってやれないことはありませんよ!
ギュムリ→アニアヴァンの鉄道移動(往路)
まずは、ギュムリの鉄道駅からアニアヴァン村のアニ駅(Ani / Անի)へと向かいます。
ギュムリ~エレバン間の鉄道は、曜日や時期にかかわらず1日3本のみ。
タイムテーブルも固定されています ▼
ギュムリ発 | アニアヴァン着 | エレバン着 | |
普通 | 7:45 | 8:40 | 10:57 |
普通 | 11:55 | 12:48 | 15:05 |
普通 | 18:15 | 19:10 | 21:23 |
旅行者が利用できるのは、現実的にギュムリ発7:45か11:55の二つのみ。
11:55発の鉄道を利用しても、イェレルク聖堂だけを日帰りで観光してギュムリに戻ることは時間的に可能です。
いっぽう、このエリアのもう一つの見どころであるジラピのキャラバンサライもセットで訪れる場合は、ギュムリ発7:45の一択となります。
チケットの購入は、何時の鉄道を利用するかによって変わるので注意。
・7:45ギュムリ発:列車内で購入(駅のチケットオフィスが開いていない)
・11:55ギュムリ発:駅のチケットオフィスで購入
いずれも運賃は350AMDと同じ。
「もはや全部列車内で購入するスタイルに統一してチケットオフィス廃止すれば良いのに…」と思ってしまいますが、そんな非効率的な謎システムもアルメニアあるあるです(笑)
アニアヴァン→イェレルク聖堂の徒歩移動
ギュムリを出発して1時間足らず、スケジュールぴったりにアニアヴァン村のアニ駅に到着します。
アニ駅は、無人駅ではなく駅員さんが常駐しています。
念のために、帰りの電車の時刻を確認しておくのが◎(ロシア語/アルメニア語しか通じません)
アニ駅から数軒の民家が並ぶだけの田舎道を300mほど歩くと、幹線道路に合流します ▼
幹線道路に合流したら、ひたすら南方向へと歩くだけ。
アニペムザ村への分岐点まで、距離にして2.5km/35分ほどの平坦な道のりです。
車の数はかなり少ないですが、通りがかった車は高確率で停車して乗せてくれるので、甘えさせてもらうのも良いと思います。
アニ駅を出発してから40分ほどで、イェレルク聖堂があるアニペムザ村(Anipemza)への分岐点に至ります ▼
この分岐点からイェレルク聖堂までは2.5km/35分ほどの道のり。
もはや車の姿はほとんどなく、荒涼とした大地の中を歩いて行くだけです。
アニ駅~幹線道路~アニペムザ村分岐点~イェレルク聖堂を全て徒歩で移動した場合、合計で5.2km/1時間15分ほどの道のりとなります。
イェレルク聖堂→ギュムリ間(復路)
イェレルク聖堂観光後にギュムリへと直接戻る場合は、往路の行程をそのまま逆にたどるだけ。
注意したいのが、アニアヴァン村のアニ駅→ギュムリの鉄道のタイムテーブル。
エレバン発 | アニ駅発 | ギュムリ着 | |
普通 | 7:55 | 10:11 | 11:03 |
普通 | 14:25 | 16:37 | 17:30 |
普通 | 18:25 | 20:53 | 21:46 |
現実的に利用できるのは、アニ駅発16:37の便に限られるのではないでしょうか。
万が一これを逃してしまうと、何もないアニアヴァン村で夜になるまで待つことになってしまいます。(想像を絶するくらいに、何もありません)
イェレルク聖堂→アニ駅間を徒歩で歩く場合は、5.2km/1時間15分ほどはかかるので、逆算すると15:15くらいまでには観光を終えて歩き始めるのがベストです。
(まあ車が通れば十中八九乗せてくれるでしょうが、運任せはリスキーかと。)
ギュムリへと戻る列車も、アルメニアとは思えないような正確なスケジュールでアニ駅へと停車します。
チケットは駅では購入できないので、乗車後に列車内で直接係員から購入すればOK。(運賃も行きと同じ350AMDです)
ジラピのキャラバンサライとセットで観光する場合
イェレルク聖堂から15kmほど北に離れた場所に位置するジラピのキャラバンサライ(Jrapi Caravanseray)。
せっかくなので、イェレルク聖堂とセットで観光してしまうのが効率的です。
タクシーでまわる場合は深く考える必要はありませんが、個人で鉄道を利用して二つの見どころを周る場合は、綿密なプランニングが必須。
というか、鉄道の本数が限られているために、自動的に以下のスケジュールになります ▼
往路は、ギュムリ発7:55の始発一択。
このプランなら、ある程度の時間の余裕をもちながら二つの見どころをまわれます。
のぶよの場合、③ジラピのキャラバンサライで時間があり余っていたので、ヒッチハイクで⑥イェレルク聖堂まで楽々移動しました。
こればかりは個人の好みやリスク管理によりますが、このあたりの人は親指を上げずとも停まってくれるくらいなので、挑戦してみるのも良いかも。
イェレルク聖堂観光時の注意点
暑さ対策
イェレルク聖堂があるシラク地方は、夏は灼熱&冬は極寒という気候の地域。
冬にわざわざこんな僻地を訪れる人は少ないでしょうが、夏場の観光なら暑さ対策はしっかりとしておきましょう。
イェレルク聖堂やその周辺には日陰となるような人工物や木は一切ないため、帽子や日焼け止めなどは必須です。
飲食物は持参
イェレルク聖堂と最寄りのアニペムザ村、鉄道駅があるアニアヴァン村のいずれにも、食堂のような施設は一切ありません。
(アニペムザ村に商店が一軒あるだけ)
また、この辺りはとにかく一面の荒野がずーーっと続く地域。
飲料水が出ている場所も見当たりませんでした。
飲料水や軽食など、必要なものは全て持参して訪れるのが基本となります。
パスポートは絶対に携帯
地図を見れば一目瞭然なのですが、イェレルク聖堂がある場所はトルコとの国境までたった数キロという国境地帯。
最寄りのアニペムザ村にはアルメニア軍の国境監視部隊が常駐しており、外国人を見かけると身分証明書の提示を求められる可能性が大きいです。(のぶよも2回ほど止められてパスポートを提示させられました)
いらぬ問題に巻き込まれないためにも、パスポートは必ず携帯して訪れるようにしましょう。
特に問題なければ、数分のパスポートチェックで終わるので、気にすることでもありません。
(「アゼルバイジャンに渡航歴がある」とかだと100%チェックが念入りになるので面倒かも)
トルコ国境が目と鼻の先のエリアとはいえ、治安的に問題があるわけではないので、その点はご安心を。
おわりに
アルメニア北西部・シラク地方でぜひ訪れたい、イェレルク聖堂の観光情報を解説しました。
聖堂以外に見どころはなく、観光時間は30分~1時間もみておけば十分。
近くにあるジラピ村のキャラバンサライとセットで観光するプランがおすすめです!(個人でも1日でまわれます)
世界で最も長い歴史を誇るアルメニアのキリスト教文化。
そのシンボルとも言えるイェレルク聖堂の悠久の歴史を、自身の肌で感じてみてはいかがでしょうか。
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