こんにちは!アルメニアに5ヶ月滞在した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニアの首都・エレバンのすぐ東に位置するコタイク地方(Kotayk / Կոտայք)。
首都からのアクセスは悪くないのですが、どうしても地味なイメージがあるためか、旅行者の多くに素通りされてしまいがちなエリアです。
ここコタイク地方の最大の魅力は、古き良きアルメニア地方部らしい雰囲気が色濃く残っている点。
今回紹介するのは、そんな魅力がギュッと詰まったメグラゾール(Meghradzor / Մեղրաձոր)という小さな村です。
「メグラゾール」とは、アルメニア語で「ハチミツの谷」の意味。
その名の通り養蜂業が盛んなことで知られ、山々に囲まれた素朴な風景は「THE・アルメニアの田舎」といった雰囲気です。
メグラゾール村は観光地ではまったくなく、村内の見どころは限られています。
一見すると、よくある「寂れた寒村」といった感じですが、この村を特別な場所にしていることが一つあります。
それが、「どうにかして村を盛り上げよう!」と努力する若い村人の存在。
・村の特産品であるハチミツをアルメニア全国に広めようとする人
・村の木を加工して展示するミュージアムをオープンする人
・村の建物にカラフルなアートを施して「アートの村」として知名度を上げようとする人
などなど…
そもそもここは、アルメニアというただでさえマイナーな国のさらにマイナーなエリアのさらにど田舎にある寒村。
それにもかかわらず、若い人々の情熱や村を盛り上げようと頑張る姿勢は健在で、いち旅行者であってもメグラゾール独特のエネルギーがひしひしと感じられるはずです。
今回の記事は、計り知れないポテンシャルを秘めたメグラゾール村の観光情報を解説するもの。
日帰りで見どころをサクッとまわるスタイルでは、メグラゾール村の魅力は感じられません。
数日間のんびりと滞在して、アルメニアの田舎暮らしを五感で体験するのがおすすめです!
メグラゾール村内の見どころ
人口2500人ほどのメグラゾール村は、徒歩で十分にまわれるほどの規模。
村内には「THE・観光スポット」のようなものはありません。
素朴な村の風景を堪能しながらの散策が、最大のアクティビティーとなります。
メグラゾール観光マップ
青:見どころ
紫:おすすめゲストハウス
オレンジ:商店
アートめぐり
メグラゾール村を訪れた旅行者がまず驚くのが、村中そこかしこに描かれたアート作品でしょう。
小学校の壁や民家、倉庫やソ連時代の集合住宅にまで…とにかくありとあらゆる建物にカラフルなアートが見られるのです。
アート作品を手掛けているのは、メグラゾール村に住む若手のアーティストたちだそう。
どれも鮮やかな色使いが特徴で、素朴な村の風景とのコントラストも素敵です。
村中をアートでいっぱいにするプロジェクトは、まだスタートしたばかりなのだとか。
そうとは思えないほどに、多くの建物に大規模なアートが施されています。
特にアート作品が集中して見られるのが、村の中心部と、村の西部の共同住宅エリアの2か所。
共同住宅エリアには、メグラゾール村の隠れたシンボルとされるソ連時代のバスをまるまるアートに使ったものがあります ▼
伝統的で保守的な価値観が根強いアルメニアの地方部において、こうした若者主体のアート活動はなかなか見られないもの。
今後もどんどん新しい作品を描くプロジェクトが動いているそうで、数年後には本当に「アルメニアのアート村」として有名になっているかもしれません。
どの作品も、描いたアーティストの個性が垣間見えるものばかり。
寂れた村を明るく照らすようなヴィヴィッドな色使いが多くの作品に統一されており、見ているこちらまで楽しい気分にさせてくれました。
「ハチミツの谷」を味わう
メグラゾール村でアート活動に励むのは、若者だけではありません。
村の子供たちもこの活動に参加しているようで、ミツバチを描いたアートが多くの場所で見られます。
もはやマスコットキャラクターのようになっている、メグラゾール村のミツバチ。
日本の「ゆるキャラ」にも通じるものがあるかもしれません。
「ハチミツの谷」の名を冠するメグラゾール村の実力は、なにもミツバチのゆるキャラだけではありません。
古くから養蜂業が盛んなことで知られるこの地では、現在でも伝統的な方法でハチミツが採集されており、各家庭で自家製のハチミツが食されているのです。
のぶよが宿泊したゲストハウスでもハチミツ採集が行われており、自家製のハチミツを出してくれました。
このハチミツが、これまでの人生で食べたものの中で一番美味しいハチミツでした。(冗談抜きで)
言葉で伝えるのには限界があるので、こればかりはぜひ自分の舌で味わってみてほしいです!
木のミュージアム
カラフルなアート作品やハチミツでの村おこしに平行して、村にもともとある素材を使用した村おこしも進んでいます。
それが、メグラゾール周辺の木を使ったクラフト作品を展示する「木のミュージアム」。
村の中心部の広場の一角にあるこじんまりとした建物(ソ連時代の集会所の建物だそう)にあるミュージアムは、完全に個人で運営されているもの。
そのため、開館時間は「気まぐれ」なのだとか(笑)
のぶよが訪れたときは日曜日で閉館していたため、ミュージアムの代表がすぐ近くの自宅に招いてくれました。
代表の男性の自宅兼倉庫は、ミュージアム内に展示しきれない作品が所狭しと並ぶ異空間。
材料はほぼ100%木だけ&すべて自分の手でたった一人で作った作品だというのですから…感動を越えて驚愕でした。
ミュージアムへの訪問こそ残念ながら叶いませんでしたが、倉庫内の作品だけでもかなりの見ごたえ。
現在のところは売り物として作っているわけではないそうですが、ここまでのクオリティーだったら普通に売れるんじゃないかと思います。
ミュージアムの代表も、「アートの村」としてメグラゾールの村おこしプロジェクトに参加している一人だそう。
若い世代の人たちそれぞれの才能が活かされた、持続可能な観光プロジェクトこそがメグラゾールの強み。
この村がいずれ「アート・クラフトの聖地」として特別な場所になっていくことを確信させられました。
テジャルュク修道院
メグラゾール村の集落があるエリアの南側。
深い山々に囲まれた高台に位置するテジャルュク修道院(Tejharuyk Monastery / Թեժառույք)は、おそらくメグラゾールで最大の見どころとなるスポット。
1199年に完成したもので、後の地震によって半壊。
現在は廃墟のまま放置された状態となっています。
外観を一目見てまず驚くのが、絶妙な壊れ加減が醸し出す異世界感。
「壊れることまで予想して造られたのでは?」と勘繰ってしまうほどに、800年前の装飾に覆われた建物が芸術的です。
外からだと建物の損傷が激しいように見えますが、内部は意外にも良好な保存状態。
数本のアーチに支えられ、曲線を描いた形の天井が特徴的です ▼
テジャルュク修道院へのアクセスは徒歩で山道を登るしかないのですが、不便なロケーションにもかかわらずお祈りに訪れる人はいるよう。
溶けたロウソクの跡や比較的新しい宗教画などが祭壇部分に並んでおり、神聖な雰囲気が漂っていました。
テジャルュク修道院の内部は、聖堂部分とガヴィト(拝廊)の二つのスペースに分かれており、いずれも建設当時からそのままの姿で残っています。
きちんと整備された修道院や教会も素晴らしいのですが、こうして半ば放置された状態の中世建築こそが、アルメニアの真髄。
千年前に黄金時代を迎えたこの国の歴史や、当時の卓越した建築技術を現在に伝えているような気がします。
テジャルュク修道院へは車の乗り入れはできず、メグラゾール村中心部からは片道徒歩30分ほど。
最後の1km弱は急こう配の山道となるので、最低でもスニーカーを着用していくのが良いでしょう。
メグラゾールのおすすめゲストハウス
メグラゾール村の見どころを色々と解説してきましたが、ここまではまだ序章。
のぶよがこの村を推す最大の理由が、村に一軒しかないゲストハウスである“Eco Guesthouse Meghradzor”の存在にあります。
代々メグラゾールで暮らしてきた家族が、自宅の一部を宿泊客に提供しているスタイルの宿で、建物自体がもはや重要文化財レベル。
パンを焼くための「タンディル」という窯を備えたパン小屋や、自給自足用の畑を備えており、アルメニアの都市部では絶対に味わえない「田舎暮らし」が味わえるのです。
オプションで食事をつけることが可能なのですが、絶対につけましょう。
季節の野菜や保存食、パンなど、食卓に並ぶものの100%すべてが自分たちで栽培/作ったもの。
卵や乳製品、肉料理に至るまで自分たちの家畜由来のものを使用しているというのですから、徹底しています。
アルメニアの地方部では現在でもこうした自給自足スタイルで生活する人々が多いのですが、旅行者がそれを味わえる機会は意外と少ないもの。
その点Eco Guesthouse Meghradzorでは、まるで家族の一員になったかのような気分で、この土地の恵みに感謝しながらの滞在をすることができるのです。
食事だけでなく、日々の自給自足生活のお手伝いをさせてもらえるのも素晴らしい点。
・野菜・果物の収穫
・放牧
・保存食づくり
・乳しぼり
などなど挙げればきりがないのですが、ピュアなアルメニアの田舎暮らしを五感で楽しむことができるのです。
(観光向けの体験ではなく「お手伝い」なので、どれも無料で体験できるのも◎)
宿の一家は英語は通じませんが(アルメニア語/ロシア語のみ)、みんなとても柔らかくて世話好き。
村を案内してくれたり、伝統的な手作り刺繍を見せてくれたり、夕食もゲストと一緒に食卓を囲んだり…「自分たちの村を好きになって帰ってほしい」という気持ちが伝わってきました。
「この宿に泊まるためだけにでも、メグラゾール村に来る価値がある!」
そう断言できるほどに、とにかく素敵な空間でした。
【この宿を予約する!】
メグラゾール近郊の見どころ
メグラゾールの魅力は、村内だけにとどまりません。
近郊には知られざる穴場の見どころが点在しており、ここを拠点に日帰りで訪れることが可能です。
ここでは、メグラゾールから個人でアクセス可能なスポットを紹介します。
ツァグカゾール
メグラゾール村の南側、山を越えた場所にあるツァグカゾール(Tsaghkadzor / Ծաղկաձոր)は、人口1000人余りの小さな町。
アルメニア屈指のスキーリゾートとして開発された場所で、スキー客向けの大規模ホテルが建ち並ぶ中心街には圧倒されます。
冬以外でも名物のリフトが運行されており、広大な大地のパノラマが気軽に見られることで大人気。
特に10月初頭の紅葉の時期は、現実とは思えないほどの美しさとなるそうです。
メグラゾール村~ツァグカゾールはマルシュルートカを乗り継いでのアクセス。
日帰りでも余裕で満喫できるので、足をのばしてみるのがおすすめです!
ハンカヴァン
コタイク地方の最奥部に位置するハンカヴァン(Hankavan / Հանքավան)は、「秘境」の名にふさわしい小さな村。
住民の多くがギリシャ系で、村の中心部にあるギリシャ正教会がシンボルです。
素朴な村の雰囲気も素晴らしいのですが、ハンカヴァンに来たなら絶対に挑戦したいのが、温泉。
ハンカヴァン村では茶色がかった炭酸泉が湧き出しており、もちろん入浴可能。
アルメニアの秘境村での温泉体験は、きっと忘れられない思い出となるはずです。
メグラゾール村からマルシュルートカで日帰りでのアクセスも可能なので、滞在中にぜひ訪れてください!
メグラゾールへのアクセス・行き方
メグラゾールへのアクセス拠点は、首都のエレバンからが一般的。(ディリジャン / セヴァンからタクシーも可能)
アクセス方法には以下の2通りがあります。
エレバンからの直行マルシュルートカは存在せず、、②シェアタクシー→マルシュルートカ と乗り換えをすることになります。
とはいえ難しいことはなく、個人でも簡単にアクセス可能です!
①タクシー
最も快適&簡単な移動手段が、タクシーをチャーターしてしまうこと。
エレバンを拠点とする場合が多いでしょうが、セヴァン湖エリアの中心都市・セヴァン(Sevan)からタクシーを利用することも可能です。
・エレバン~メグラゾールの片道:8000AMD(=¥1822)~
・セヴァン~メグラゾールの片道:2500AMD(=¥569)~
正直、メグラゾール村の魅力は宿泊しないと味わえないので、他の見どころとセットで忙しく観光するプランはナンセンスだと思います。
②シェアタクシー + マルシュルートカ
エレバンから個人でメグラゾール村へアクセスする場合は直行の交通手段がないため、以下の2ステップでの移動となります。
①エレバンからコタイク地方の中心的な町・フラズダン(Hrazdan / Հրազդան)まで行く
②フラズダンでメグラゾール行きのマルシュルートカに乗り換える
ここからは「個人で行きたい!」というのぶよタイプの旅行者のために、個人でのアクセス情報を詳細に解説していきます。
(ネット上にほとんど情報がなく、かなり苦労して集めた情報なので、ありがたく思っていただきたい…)
【往路①】エレバン→フラズダン(シェアタクシー)
エレバン~フラズダン間にはマルシュルートカ路線が存在しません。
(かつてはあったそうですが、廃止になったそう)
そのため、「シェアタクシー」と呼ばれる相乗りのタクシーを利用することとなります。
アルメニアのシェアタクシーは、地元の人が自家用車を使って大都市~地元間を走っているだけのもの。
正規のタクシーは車外に”TAXI”の表示が必ずありますが、シェアタクシーには一切の表示がありません。
とはいえ危険は全くなく、バス路線がない地域における地元の人の足として機能しているので、安心して利用できます。
フラズダン行きのシェアタクシーが出発するのは、エレバン中心街の北東に位置するライコムバス停(Raykom Bus stop)です ▼
ライコムバス停は一見すると何の変哲もない市内路線バスのバス停ですが、コタイク地方の小さな町へと向かう中距離バス/マルシュルートカの発着ポイントとなっています。
エレバン中心部からライコムバス停までは4kmほどの距離ですが、中心街よりも高台に位置しているため徒歩でのアクセスは大変。
エレバン市内路線バスや市内マルシュルートカを利用してのアクセスが現実的です。
(ライコムバス停近くには地下鉄が通っていません)
・中心街(メスロプ・マシュトツ通り)から:路線バス58番
・エレバン中央駅から:路線バス58番/マルシュルートカ43番
ライコムバス停に到着したら、バス停から20mほど通りを北東に進みましょう。
フラズダン行きのシェアタクシーが数台停車しているポイントがあります ▼
この地点に来ると、シェアタクシーの運転手が「フラズダン?」と十中八九声をかけてくるので、すぐにわかります。
アルメニア語では「フラズダン」の「フ」の音がかなり弱く、「ラズダン」に近い発音になります。
いずれも同じ町のことを指すのでご安心を。
シェアタクシーはほぼすべて、5人乗りの乗用車。
乗客が4人集まった時点で随時出発するシステムですが、エレバン~フラズダン間はかなり人の行き来が多いようで、5分~10分ほどの待ち時間で出発することがほとんどです。
【往路②】フラズダン→メグラゾール
エレバンからのシェアタクシーの終点は、フラズダン中心街の北端に位置する「ミクロ・ディストリクト」(Micro district / 地元民は単に「ミクロ」と呼ぶ)というポイント ▼
この「ミクロ・ディストリクト」がフラズダンのバスステーションのような役割を果たしていて、周辺の小さな村へのマルシュルートカが発着するポイントとなっています。
メグラゾール行きの13番マルシュルートカもここからの発車です。
2022年現在の13番マルシュルートカの時刻表がこちら ▼
【復路①】メグラゾール→フラズダン
フラズダン~メグラゾール間の13番マルシュルートカは、フラズダンを出発→メグラゾール村中心部に停車→メグラゾール村内をぐるりと一周→フラズダンへ戻る といったルートをとります。
メグラゾール村内ならどこでも乗下車可能ですが、フラズダン方面の帰りの便は村の中心部のバス停【マップ 黄色】で待つのが一番確実だと思います。
【復路②】フラズダン→エレバン
フラズダンのミクロ・ディストリクトに戻ったら、往路と同様にエレバン行きのシェアタクシーを利用すればOK。
ミクロ・ディストリクトの大通り沿いには正規のタクシー(TAXIの表示あり)が客待ちしていて、「エレバンまで5000AMD!」とか、「シェアタクシーはない!」なんて言ってくる人もいますが、ちゃんとあるのでご安心を。
料金も、往路と同じ500AMD/一人です。
シェアタクシーが待機している場所は、マルシュルートカが停車している大通り沿いから西に一本入ったところの交差点付近で、VTB Bankの向かい付近です ▼
エレバンでの到着地は、往路と同様にライコムバス停付近です。
おわりに
アルメニア地方部らしい魅力がギュッと詰まったメグラゾール村の観光情報を解説しました。
日本語ではほとんど情報がないマイナーの極みのようなエリアですが、率直に「行って良かった…!」と思いました。
素朴な村の雰囲気や、絵になる廃教会、アートで村おこしをしようと頑張る人々の熱意も素晴らしいもの。
それ以上に、何よりもメグラゾールを特別な場所にしているのが、昔ながらの伝統的な生活にお邪魔することができる点だと思います。
何度も言いますが、メグラゾール村は日帰りでサクッと観光するスタイルでは楽しめません。
最低でも1泊はして、ゆっくりと田舎暮らし体験をしながら滞在するスタイルがおすすめです!
コメント