こんにちは!アルメニア滞在もすでに4ヶ月!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニアの中でも旅行者に見過ごされがちなコタイク地方。
地方部らしいのんびりとした雰囲気の村で、自然に囲まれながらの滞在を楽しんでいます。
知られていないだけで、実は極上のスポットに溢れているのがコタイク地方の素晴らしいところ。
ずっと前から「ここは絶対に行きたい!」と思っていた場所へ行ってきました。
それが、ハンカヴァン(Hankavan / Հանքավան)という小さな村。
コタイク地方の中でも最奥部に位置するハンカヴァン村は、まさに「秘境」と呼ぶにふさわしい雰囲気。
地理的に他地域から隔絶されており、人口はたったの100人ほど…
限界集落そのものなハンカヴァン村ですが、実は旅行者を魅了する要素がたくさんあるのです。
そのうちの一つが、天然温泉。もちろん入浴可能です!
「温泉」と聞くだけで日本人の血が騒ぐのぶよにとっては、行かないという選択肢はありませんでした。(そして行って本当に良かったと思ってる)
温泉以外にも、ハンカヴァンはとてもユニークな村。
アルメニアに位置していながら、住民の大多数がギリシャ人の子孫という「ギリシャ人村」としても知られているのです。
今回の記事では、ネット上にほとんど情報がないハンカヴァン村の観光情報を徹底解説していきます。
日本人はおろか、外国人旅行者にもほとんど知られていないアルメニアの秘境。
他にまたとないこの村の魅力を知って(&実際に行って)いただければ嬉しいです!
ハンカヴァンの見どころ
青:見どころ
緑線:ハンカヴァンの滝徒歩ルート
ハンカヴァン村の規模はかなり小さく、徒歩でまわるのが基本となります。
温泉とギリシャ正教会は、いずれも村の中心部に位置しておりアクセスも簡単。
いっぽう、ハンカヴァンの滝は中心部から2kmほど離れた場所に位置しており、車の通行は途中で不可能となる点に注意しましょう。
ハンカヴァン温泉
ハンカヴァン村を訪れる旅行者の最大の目的は、村の中心街にあるハンカヴァン温泉ではないでしょうか。
正真正銘の天然温泉で、大きな浴槽を備えた温泉施設(のようなもの)が整備されており、気分はまるでスパリゾートに来たかのよう…!
ハンカヴァン温泉には6つの個室があり、それぞれが石壁に仕切られたプライベートな空間となっています。
料金帯は2種類あり、利用する時間の長さによって変わります。
・30分:2500AMD(=¥599)
・1時間:5000AMD(=¥1200)
この料金は人数ごとではなく、一つの個室ごとのもの。
一人ではやや高くついてしまいますが、複数人で利用すればかなりお得かもしれません。
10人ほどの団体でやって来て酒盛りをしながらワイワイ利用するのが、地元の人々の間ではポピュラーだそうです。
30分か1時間か…迷いに迷いましたが、そこはどケチ精神が働いて30分にとどめておくことに。
ザーッと浴場の写真を撮りまくって、いよいよ入湯のとき…
さきほどから鼻腔を刺激してやまない硫黄の香りに、期待値は限界突破。
ひとことで言いますね。幸せが極みました。
シュワシュワと炭酸がはじけるまろやかな湯ざわりのお湯は、体感で39℃くらい。
季節によって湯温は変化するそうですが、冷え込みが激しくなってきた11月でもかなり快適な温度だったので、冬場でも問題なく入浴できそうです。(逆に夏場は暑いかも)
視界に映るのは緑がかった黄金色のお湯と、硫黄の匂いたっぷりの湯気、その向こうには石造りの浴槽の壁…
ここはもはやアルメニアではありません。日本です。
なんでもいいから日本酒ほしいわ。(お盆にのせてお湯に浮かべるアレ)
お湯をぺろりと舐めてみると、かなり鉱物感強めなあの苦い風味が。
どうして温泉というものは、ここまで人間を五感で満たしてくれるのでしょうか…
ミネラルたっぷりで、湯上がりはお肌もすべっすべ。
30分でも満喫できましたが、できれば1時間にしてのんびりと異国での温泉体験を楽しむのもアリかもなあと思いました。
ハンカヴァン温泉は、なんと24時間営業。
「こんなド田舎で24時間営業する意味って…?」と思ってしまいますが、実は夜の方が多くの人で賑わうんだとか。
敷地内には浴場が6つしかないため、土日や祝日は満員となってしまうことも多いそう。
特に、冬季の夜間は、近郊のスキーリゾート帰りの旅行客で連日埋まってしまうほどに人気なのだそうです。
いっぽう、基本的に待ち時間なしで利用可能なのは平日の午前中。
のぶよが訪れたのは朝の9時過ぎでしたが、他に利用客は誰もいませんでした。
アルメニアのギリシャ人村を散策
ハンカヴァン村で興味深い点は、温泉だけではありません。
なんと、この村の人口の多くはギリシャにルーツを持つギリシャ人というのだから驚き。
アルメニアとギリシャ…
地理的にも離れていますし、あまり接点がなさそうに思えます。
そこには、大国の間で激動の近代史を経験したアルメニアという国独自の事情がありました。
「アルメニア最大のギリシャ人村」として栄えた時代から、人口100人ほどの半ゴーストタウンと化した現在まで…
この場所がたどった歴史を感じながら、小さな村を散策してみましょう。
およそ200年前の19世紀初頭のこと。
当時オスマン帝国領(現在のトルコ)だったギリシャでは、オスマン帝国からの独立を目指すギリシャ独立戦争が起こっていました。
当時のアナトリア半島(現在のトルコのアジア側地域)にはギリシャ系住民も多く居住していましたが、本国ギリシャとの戦争によってオスマン帝国による虐殺や迫害が起こることを恐れ、当時はロシア帝国領であった南コーカサス地域一帯に逃れてきます。
当時は何一つなかったこの地に、7組のギリシャ人家族が逃れてきたのが1827年のこと。
これがハンカヴァン村のはじまりでした。
それからハンカヴァン村のギリシャ人の人口はどんどん増え、最盛期には250組ほどのギリシャ人家族が暮らしたほど。
アルメニアで最大の人口を誇るギリシャ人コミュニティーとなりました。
その後、1991年にアルメニアがソ連より独立を達成すると、他のアルメニア地方部と同様にハンカヴァン村にも不況の波が訪れます。
ソ連時代には社会主義的な政策のもと、村の誰にも仕事があり生活が保障されていたのが一転。
急激な資本主義経済の導入によって、それまで築いてきたものが一気にひっくり返ってしまったのです。
何一つ目立った産業がなく、気候もかなり厳しいハンカヴァン村からの人口流出はすさまじかったそう。
アルメニア独立からたった7年後の1998年には、50組ほどのギリシャ人家族が残るだけの限界集落となってしまいました。(現在はおそらくもっと減っているでしょう)
ハンカヴァン村を散策していると、民家の数はかなり多いのに人の気配がほとんど感じられないことに気が付くはず。
半分以上の民家には住民がもうおらず、空き家となってしまっているのです。
ハンカヴァン村の住民の多くは、アルメニア語とロシア語に加え、自分たちのルーツであるギリシャ語を話します。
彼らの先祖たちがこの地にやってきてから、およそ200年。
現世から切り離されたような山奥に位置するこの場所で、自分たちのアイデンティティーを守り抜いてきた人々の努力は、想像を絶するものがあります。
ソ連時代には天然温泉が注目され、この場所にサナトリウムやホテルを建設して一大温泉リゾートとする計画もあったそうです。
そんな時代もいまは昔。
また一人、もう一人…と、村人がこの地を去っていくのを待つだけのハンカヴァンは、村全体が哀愁に包まれているような気がしました。
ギリシャ正教会
ハンカヴァン村散策の際に必ず目に入るのが、村の中央部に位置するギリシャ正教会。
この村に暮らしてきたギリシャ人たちの心の支えであり続けてきた場所で、現役の祈りの場として機能しています。
教会を管理しているのは、すぐ目の前の民家に暮らす住人だそう。
この時は留守で会うことができず、教会の内部には入ることができませんでした。
ギリシャ正教会の前の斜面は墓地となっており、かつてこの村に生きたギリシャ人住民が安らかに眠っています。
墓石に刻まれた没年の多くは1970~80年代のものでしたが、中には1870年と刻まれたものも。
どの墓石もかなり立派で、美しい装飾が施されたものも多々。
比較的手入れも行き届いていたことから、現在でも先祖たちの墓を守り続けている住人がいるのでしょう。
ギリシャ正教会と墓地からは、ぴんと張った静寂に支配された村を一望することができます。
この場所がアルメニアのギリシャ人コミュニティーの中心として栄えた時代に思いを馳せてみましょう。
ハンカヴァンの滝
ハンカヴァン村から西に2.5kmほどの山の中には、ハンカヴァンの滝があります。
規模こそそれほど大きくはないものの、ちょっとしたハイキング気分で訪れることができるので、時間に余裕がある人はぜひ足をのばしてみるのがおすすめ。
Google Mapにも載っていないような隠れた滝で、正規のハイキングコースが整備されているわけでもありませんが、ハンカヴァン村の周辺の自然風景を満喫するには◎
村の中心~滝までの往復には、合計で1時間~1時間半ほどの時間をみておきましょう。
ハンカヴァン村のマルシュルートカ発着ポイントからハンカヴァンの滝までは、片道2.5kmの道のり。
徒歩コースの大部分は平坦な舗装道路ですが、最後の200mほどは岩場を歩く場面があるので、履き慣れた靴で歩くのがおすすめです。
ハンカヴァン村から2km少々歩いたところに位置するのが、ソ連時代のサマーキャンプ施設 ▼
現在は完全なる廃墟となっているキャンプ施設の敷地内を通って、さらに南へと歩きます。
舗装道路はキャンプ施設までで途絶えてしまうので、ここからは200mほどの獣道のような区間 ▼
ハンカヴァンの滝まであと20m!といった地点で岩場をガッツリ登る場面があるので、滑らないように十分ご注意を。(普通の身体能力があればまあ大丈夫)
Google Mapにはもはや滝の存在すら認識されていないため、念のためにMaps meなどのオフラインGPSアプリを使用しながら歩くのが◎
ハンカヴァンへのアクセス情報
ハンカヴァンが位置するのは、エレバンの東に位置するコタイク地方の山奥。
アクセス拠点となるのは首都のエレバンか、このエリアの中心都市であるフラズダン(Hrazdan)のいずれかとなり、アクセス方法は以下の2通り。
ハンカヴァンの観光に必要な時間は、温泉の入浴を含めて2時間~3時間ほど。
途中にあるメグラゾール村(Meghradzor)や、マウンテンリゾートとして名高いツァグカゾール(Tsaghkadzor)とセットでまわることも可能です!
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、エレバンでタクシーをチャーターしてしまうこと。
エレバン~ハンカヴァン間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台15000AMD(=¥3577)ほどが料金相場です。
また、ハンカヴァンにより近いフラズダンという町まで公共交通手段で行き、そこでタクシーをチャーターすることも可能。
その場合の料金相場は、フラズダン~ハンカヴァン間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台10000AMD(=¥2398)ほどです。
エレバン発にしろフラズダン発にしろ、せっかくタクシーをチャーターするなら、ハンカヴァン周辺にある見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
(もちろん料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
②シェアタクシー + マルシュルートカ
コタイク地方最奥部に位置するフラズダンには、エレバンからの直行マルシュルートカは走っていません。
公共交通手段を利用してアクセスする場合は、このエリアの中心的な町であるフラズダン(Hrazdan / Հրազդան)が拠点となります。
・フラズダンでの乗り換えが絶対に必要
・各町での発着地が少々複雑
であるため初心者にはやや難しいかもしれませんが、うまくプランニングすればエレバンからの日帰りだって可能です。
ここからは「個人で行きたい!」というのぶよタイプの旅行者のために、個人でのアクセス情報を詳細に解説していきます。
(ネット上にほとんど情報がなく、かなり苦労して集めた情報なので、ありがたく思っていただきたい…)
【往路①】エレバン→フラズダン(シェアタクシー)
エレバン~フラズダン間にはマルシュルートカ路線が存在しません。
(かつてはあったそうですが、廃止になったそう)
そのため、「シェアタクシー」と呼ばれる相乗りのタクシーを利用することとなります。
アルメニアのシェアタクシーは、地元の人が自家用車を使って大都市~地元間を走っているだけのもの。
正規のタクシーは車外に”TAXI”の表示が必ずありますが、シェアタクシーには一切の表示がありません。
とはいえ危険は全くなく、バス路線がない地域における地元の人の足として機能しているので、安心して利用できます。
フラズダン行きのシェアタクシーが出発するのは、エレバン中心街の北東に位置するライコムバス停(Raykom Bus stop)です ▼
ライコムバス停は一見すると何の変哲もない市内路線バスのバス停ですが、コタイク地方の小さな町へと向かう中距離バス/マルシュルートカの発着ポイントとなっています。
エレバン中心部からライコムバス停までは4kmほどの距離ですが、中心街よりも高台に位置しているため徒歩でのアクセスは大変。
エレバン市内路線バスや市内マルシュルートカを利用してのアクセスが現実的です。
(ライコムバス停近くには地下鉄が通っていません)
・中心街(メスロプ・マシュトツ通り)から:路線バス58番
・エレバン中央駅から:路線バス58番/マルシュルートカ43番
ライコムバス停に到着したら、バス停から20mほど通りを北東に進みましょう。
フラズダン行きのシェアタクシーが数台停車しているポイントがあります ▼
この地点に来ると、シェアタクシーの運転手が「フラズダン?」と十中八九声をかけてくるので、すぐにわかります。
アルメニア語では「フラズダン」の「フ」の音がかなり弱く、「ラズダン」に近い発音になります。
いずれも同じ町のことを指すのでご安心を。
シェアタクシーはほぼすべて、5人乗りの乗用車。
乗客が4人集まった時点で随時出発するシステムですが、エレバン~フラズダン間はかなり人の行き来が多いようで、5分~10分ほどの待ち時間で出発することがほとんどです。
【往路②】フラズダン(メグラゾール)→ハンカヴァン
エレバンからのシェアタクシーの終点は、フラズダン中心街の北端に位置する「ミクロ・ディストリクト」(Micro district / 地元民は単に「ミクロ」と呼ぶ)というポイント。
この「ミクロ・ディストリクト」がフラズダンのバスステーションのような役割を果たしていて、周辺の小さな村へのマルシュルートカが発着するポイントとなっています。
ハンカヴァン行きの11番マルシュルートカもここからの発車です。
フラズダン~ハンカヴァン間の11番マルシュルートカは、二つの町を単純に往復するルートをとり、1日3本走っています。
どの便も必ず、途中のメグラゾール村(Meghradzor / Մեղրաձոր)の中心部を経由するので、メグラゾール村を拠点にハンカヴァンへとアクセスすることも可能。
2021年11月現在の、フラズダン~メグラゾール~ハンカヴァン間11番マルシュルートカの時刻表は以下の通りです ▼
フラズダン発 | メグラゾール停車 | ハンカヴァン着 | ハンカヴァン発 | メグラゾール停車 | フラズダン着 |
8:00 | 8:20 | 9:00 | 9:30 | 10:10 | 10:30 |
13:00 | 13:20 | 14:00 | 14:20 | 15:00 | 15:20 |
17:00 | 17:20 | 18:00 | 18:00 | 18:40 | 19:00 |
【復路①】ハンカヴァン→フラズダン
ハンカヴァン→フラズダン方面へと戻る際は、行きで終点となったバス停で帰りのマルシュルートカを待つだけ。
多くの場合は、14:20ハンカヴァン発の便を利用することとなるでしょう。
【復路②】フラズダン→エレバン
フラズダンのミクロ・ディストリクトに戻ったら、往路と同様にエレバン行きのシェアタクシーを利用すればOK。
ミクロ・ディストリクトの大通り沿いには正規のタクシー(TAXIの表示あり)が客待ちしていて、「エレバンまで5000AMD!」とか、「シェアタクシーはない!」なんて言ってくる人もいますが、ちゃんとあるのでご安心を。
料金も、往路と同じ500AMD/一人です。
シェアタクシーが待機している場所は、マルシュルートカが停車している大通り沿いから西に一本入ったところの交差点付近で、VTB Bankの向かい付近です ▼
エレバンでの到着地は、往路と同様にライコムバス停付近です。
おわりに
ネット上にほとんど情報がないハンカヴァンの観光情報を解説しました。
温泉も、ギリシャ人たちが生活した跡も、迫力満点の滝も…
どうしてこの場所が知られていないのか不思議に思うほど、美しい村の風景が印象的でした。
旅行者がほとんど訪れないコタイク地方。
その最奥部に位置する秘境は、きっとアルメニア旅行の思い出として強く残るものとなるはずです。
ハンカヴァン周辺には他にもさまざまな見どころが点在しているので、数日間かけてのんびりとまわるのもおすすめですよ!
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