こんにちは!アルメニア滞在を満喫中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニアを代表する山岳リゾート・ディリジャンに滞在することすでに10日。
ハイキングに中世修道院に可愛らしい村に…と、色々な場所へと足をのばしてきました。
このエリアでのぶよが最後に訪れたのが、「ディリジャン観光の必見スポット」と名高いハガルツィン修道院(Haghartsin monastery / Հաղարծին վանական)。
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山深いディリジャン国立公園の奥の奥。
一面緑の風景の中に輝く修道院は、太陽の光を受けてまるで真珠のような輝きを帯びていました。
一目見て「これはすごい…」と言葉を失ってしまったほどに美しいハガルツィン修道院。
この場所をひとことで表すなら、「絵画の世界そのもの」といったところでしょうか。
そのロケーションも外観も圧倒的ですが、修道院の敷地内も素晴らしいのひとこと。
歴史も豊かで、中世アルメニアの文化に触れることができる場所でもあります。
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今回の記事は、ディリジャン観光の総仕上げにふさわしいハガルツィン修道院の観光情報を解説するもの。
息を吞むほどに美しいハガルツィン修道院の観光は、これでバッチリなはず!
ハガルツィン修道院の歴史
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ハガルツィン修道院は、11世紀~13世紀の約200年間に渡って徐々に建設が進められたもの。
修道院内で最も古い建造物である聖グリゴル教会は11世紀(1000年前)の完成。
当時ビザンツ帝国の支配下にあった西アルメニア(現在のトルコ東部)から逃れてきた修道僧によって、祈りの場として山深いこの地にひらかれたのがはじまりです。
「ハガルツィン」とは、アルメニア語で「飛び交う鷲」を意味します。
これは、修道院の建物が完成しつつあった12世紀頃に、周囲の山々からやってきた鷲たちが教会のドームの上を飛び交う姿が見られたためなんだとか。
現在でもハガルツィン修道院周辺の山には鷲が生息しているそうで、運が良ければ900年前と同じ光景が見られるかもしれません。
メインの教会である聖母教会の裏側の壁には、二人の僧と修道院の上を飛ぶ鷲の姿が描かれたレリーフが残っているので、こちらも注目です ▼
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13世紀(800年前)に入ると、ハガルツィン修道院はこの地域の信仰・文化の中心的な存在となり、多くの修道僧がこの地で祈りを捧げながらの生活を送るようになります。
修道僧たちが食事をした食堂も完璧な状態で残っており、中世にタイムスリップした気分になるはず。
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13世紀以降のアルメニア一帯は、モンゴル帝国やティムール朝など異民族支配を受け続けましたが、山深いハガルツィン修道院まではその支配は及ばなかったよう。
ほぼ完璧な状態で残る宗教建築の数々と、一面の緑が美しい周囲の山々の風景が素晴らしいハガルツィン修道院。
中世アルメニア王国の黄金時代にタイムスリップしたかのような感覚を旅行者に与えてくれる聖地です。
ハガルツィン修道院の見どころ
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ハガルツィン修道院の敷地はさほど大きくなく、ゆっくりと見学しても30分~1時間ほどの時間をみておけばOK。
敷地内には5つの建造物が隣り合うように並んでおり、200mほど離れた道路沿いには修道院と周囲の山々を一望できるビューポイントがあります。
①聖母教会&拝廊跡
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ハガルツィン修道院敷地内で最大規模&メインの教会となるのが、1281年完成の聖母教会(St. Astvatsatsin Church)。
アルメニア教会の多くに見られるゲヴィト(拝廊)は、屋根が崩れ落ちて半壊した状態となっています。
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数本の柱と三本のアーチだけが残る聖母教会のゲヴィトは、まるで古代ヨーロッパの遺跡を思わせる不思議な光景に見えます。
ハガルツィン修道院を象徴するゲヴィトはアルメニアではかなり有名なよう。
写真撮影スポットとして多くの観光客でにぎわっていました。
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ゲヴィト跡から聖母教会内部に入ると、厳かな雰囲気に圧倒されます。
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特別な装飾などはほとんどされておらず質素な雰囲気ですが、教会内部にただよう神聖な雰囲気はおよそ750年前から変わっていません。
②聖グリゴル教会&拝廊
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ハガルツィン修道院で最古の建造物が、11世紀建造の聖グリゴル教会(St. Grigor church)
教会完成後の12世紀に増設された立派なゲヴィト(拝廊)と内部でつながっており、こちらは完璧な姿で残っています ▼
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天井部分には自然光を取り込むための穴が空けられており、真っ黒な壁に囲まれたゲヴィト内を一筋の光が照らすように工夫されています。
また、聖グリゴル教会のゲヴィト右側の壁の奥には隠し通路があったと言われていて、敵の侵入など万が一の事態が起こった時に修道僧が隠れられるスペースとなっていたそうです。
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ゲヴィトから数段の階段を上った先の門をくぐると、そこは聖グリゴル教会。
内部はかなり狭く、装飾なども一切ないため質素に感じますが、900年前の建設当時そのままの厳かな雰囲気にはきっと圧倒されることでしょう。
③聖ステパノス教会
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ハガルツィン修道院の他の建造物とは独立して建っているのが、1244年完成の聖ステパノス教会(St. Stepanos Church)。
ドーム型天井を4本のアーチが支えており、12~13世紀当時の典型的な様式が見られます。
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聖ステパノス教会の内部にも装飾は一切なく、とても質素な雰囲気。
モノクロの空間を見守るように祭壇に置かれた聖ステパノスの宗教画が、より色鮮やかに感じられました。
④霊廟
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聖グリゴル教会の横に併設された小さな建造物もお見逃しなく。
こちらは、10世紀頃(1000年前)に中世アルメニア王国を築き上げたバグラトゥニ朝の王が眠る霊廟なのです。
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この場所で眠る王たちの中でも有名なのが、スムバット1世(Smbat Ⅰ)。
892年に即位したスムバット1世は、当時アルメニア一帯を支配していたアラブ人を撃退した人物。
その後の10世紀にはキリスト教文化が再び花開き、中世アルメニア王国は黄金時代を迎えることに。
アルメニアがキリスト教文化を取り戻すきっかけを作った人物であるスムバット1世。
現在でも人々が誇りにしているかつての王は、山深いこの地で静かに眠り続けています。
⑤食堂
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ハガルツィン修道院の入口付近にある大きな建物が、1248年完成の食堂。
アルメニア北部のロリ地方にある世界遺産のハグパット修道院の建築に携わった、ミナス(Minas)という建築家による建造です。
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食堂内部はほぼ完璧な保存状態で、二つの空間に仕切られています。
天井部分を支えるアーチが交差するように設置されている様式は、中世アルメニアにおいてはとても珍しいものなんだそう。
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はるか昔に、この場所で生活していた修道僧やこの地に訪れた巡礼者たちが、食事を通して交流する場であったハガルツィン修道院の食堂。
数百年の時が経った現在でも、当時の雰囲気を肌で感じることができます。
⑥ビューポイント
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ハガルツィン修道院に至る一本道を200mほど戻った場所には、修道院と周囲の山々を一望するビューポイントがあるので忘れずに立ち寄っておきましょう。
一面の緑の中にぽつりとたたずむ白亜の修道院の姿は、どこまでも神秘的で絵画の世界そのもの。
10月になると一面の緑の風景は赤や黄色の紅葉の風景となるそうで、さぞ美しいんだそう。
秋にディリジャン周辺エリアを訪れるなら、ぜひ見てみたいものですね!
ハガルツィン修道院へのアクセス・行き方
残念ながら、ハガルツィン修道院へアクセスできる公共交通手段は存在しません。
多くの旅行者は、①ディリジャン市内でタクシーをチャーター / ②エレバン発の現地ツアーでハガルツィン修道院を訪れますが、時間と体力があるなら徒歩でのアクセスも可能です。
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ディリジャン中心街でタクシーをチャーターしてしまうこと。
ディリジャン中心街~ハガルツィン修道院の往復 + 観光中の待機時間1時間で、1台3000AMD(=¥667)ほどが料金相場です。
せっかくタクシーを利用するなら、ハガルツィン修道院のさらに先に位置するゴシャヴァンク修道院もセットでまわるのがおすすめ。
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ディリジャンでタクシーをチャーターしてハガルツィン修道院とゴシャヴァンク修道院を周る場合の料金相場は、1台7000~8000AMD(=¥1555~¥1778)ほどです。
②現地ツアー
「エレバンから日帰りで、効率良くディリジャンを観光したい!」という人には、現地ツアーの利用がおすすめ。
ディリジャンの必見スポットはもちろん、セヴァン湖など途中にある見どころにも立ち寄るツアーがほとんどで、値段も驚くほどにリーズナブルです!
③徒歩 (orヒッチハイク)
ハガルツィン修道院が位置するのは、ディリジャンの中心街から14kmほど離れた山の中。
往復歩くとなるとかなりの距離となりますが、不可能ではありません。
ディリジャンからは、東方向に延びる幹線道路をイジェヴァン(Ijevan)方面に8kmほど歩いて行きます ▼
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幹線道路の途中には、ハガルツィン修道院方面への分岐点(標識あり)があるので、それを左に曲がって6kmほどの上り坂を歩いて行くだけ ▼
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ディリジャン~分岐点の区間は主要幹線道路であるため、交通量はかなり多いです。
そのため、全区間歩くよりもヒッチハイクしてしまうのが手っ取り早いかもしれません。(というか、歩いてたら向こうから停まって乗せてくれる場合がほとんど)
分岐点~ハガルツィン修道院間は交通量はグッと減るものの、こちらもヒッチハイクは超簡単。
ハガルツィン修道院はこの道路の一番奥に位置しているので、ここを走る車はほぼ100%修道院まで行きます。
【ディリジャンの宿をさがすなら!】
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ディリジャン国立公園の観光拠点に便利なのが、ディリジャン中心街。家族経営のゲストハウスからリゾートホテルまで…好みや予算に合わせた宿が選べます!
おわりに
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絵画の世界さながらの風景も、歴史ある修道院敷地内の建築も美しいハガルツィン修道院の観光情報を解説しました。
ディリジャン周辺のもう一つの必見修道院であるゴシャヴァンク修道院とあわせて、ぜひ訪れてみたい場所です。
ディリジャン周辺の見どころに関しては他にも記事を書いているので、そちらもあわせてチェックしてみてくださいね!
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