こんにちは!アルメニアに5ヶ月滞在した、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
エレバンからほど近いアラガツォトゥン地方(Aragatsotn / Արագածոտն)は、アルメニア国内最高峰のアラガツ山(Mt. Aragats)の裾野に素朴な村が点在するエリア。
首都からすぐそばに位置するにもかかわらず、山々の絶景や渓谷などの大自然が感じられるアラガツォトゥン地方は、旅行者に人気のデイトリップ先です。
今回紹介するのは、ダイナミックな自然美と歴史が感じられるアンベルド城塞(Amberd / Ամբերդ)。
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三方を断崖絶壁に隔てられた場所にどっしりと構える、真っ黒の廃城塞。
まるで魔王が棲んでいそうな貫禄と不気味な雰囲気に包まれています。
「アンベルド」とは、アルメニア語で「雲の上の城」という意味。
標高2300mの場所に位置し、いつも雲に包まれてその全景がなかなか見られないことでも知られ、灰色の曇り空を背景にした黒い城塞はまるで「悪魔城」さながらです。
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アンベルド城塞はエレバンから距離的には近いものの、アクセスはなかなか不便。
「アンベルド城塞には個人では行けない」なんて話を聞いて諦める旅行者も多いのですが、実際はやる気と元気があれば個人でもアクセス可能です。
今回の記事は、アンベルド城塞の観光情報を解説するもの。
アルメニアの中でも指折りの異世界感が広がるアンベルド城。
エレバンからのデイトリップも不可能ではないので、ぜひ多くの人に訪れてもらい感動してほしいです!
アンベルド城塞の歴史と見どころ
アンベルド城塞の歴史をザックリと。
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アンベルド城塞がはじめて建設されたのは、7世紀(1400年前)のこと。
三方を断崖絶壁に隔てられた天然の要塞のような地形が注目され、防衛用の城壁などが築かれます。
その後、10世紀~11世紀にかけての中世アルメニア王国黄金時代に大規模な増設が行われ、聖母教会などの新しい建物が敷地内に建設されました。
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1070年代にはイスラム勢力のセルジューク朝の支配下に入ったものの、およそ100年後の1197年に再びキリスト教勢力により奪還されます。
キリスト教勢力によるアンベルド城塞の支配は長くは続かず、1236年にコーカサス地域に襲来したモンゴル軍による攻撃で廃墟となり、そのまま20世紀に入るまで放置された状態でした。
現在のアンベルド城塞は観光地として整備されつつあり、千年以上の時を超えた姿が訪れる人に感動を与えます。
アンベルド城塞
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アンベルド城塞は、かつては三層構造の巨大な城だったそう。
現在では四方の外壁部分のみが残っており、見る角度によって大きく印象が異なる点が不思議です。
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アンベルド城塞が大規模に増築された10世紀~11世紀は、中世アルメニア王国の黄金期にあたる時代。
当時の城塞内部の部屋は贅を尽くした造りだったそうで、高級な骨とう品や調度品も発掘されているのだとか。
内壁には優雅な彫刻が施され、シルクや銀をあしらった装飾の跡も見つかっています。
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城塞部分以外にも、敷地を取り囲む城壁が補強されたのも11世紀のこと。
敷地内へのアクセスは東西二か所の城門のみに限られ、鉄壁の要塞としての機能を持っていました。
城塞北側ビューポイント
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城塞のまわりに整備された遊歩道の最も北には、観光客向けの駐車場があります。
この駐車場付近は、アンベルド城塞を北側から一望できるビューポイント。
三方を崖に囲まれたアンベルド城塞において、唯一の出入り口となるがこの北側。
敵の襲来に備えた見張り用の塔などがいくつも設置されており、南側から眺めるのとは印象が大きく異なります。
聖母教会
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アンベルド城塞から南に100mほどの場所にぽつりと建つ聖母教会は、1026年に完成したもの。
当時の聖堂建築の典型的なスタイルで、傘のような形をした屋根の装飾が特徴的です。
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教会自体はそれほど大きなものではありませんが、近くで見ると堂々とした姿に圧倒されます。
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聖堂の外壁も内部も、アンベルド城塞と同様に黒っぽい石で統一されたもの。
人工の明かりはいっさいなく、窓から差し込む自然光だけが教会内部を照らしていて、とても厳かな空気が漂っていました。
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教会の南側にはまだ100mほど崖が続いており、最先端のビューポイントまでアクセスすることが可能です。
ビューポイント
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聖母教会からさらに南にのびる崖を先端まで歩いて行くと、アンベルド城塞の敷地を一望できるビューポイントがあります。
城塞と教会を同時に眺めることができるのは、敷地内でここだけです。
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ビューポイントの南側には、深い谷間がずっと続くだけのダイナミックな絶景が広がります。
この場所に城塞を建設した理由も一目瞭然。
断崖絶壁で見通しが良く、敵が簡単に侵入できないように考えられたのでしょう。
アンベルド城塞への行き方・アクセス
アンベルド城塞へのアクセスは、以下の3通りです。
ほとんどの旅行者はタクシーか現地ツアーを利用すると思いますが、体力のある人はハイキングで訪れることも可能。
ハイキングコース上には、渓谷の絶景やアンベルド城塞の遠景を望めるポイントもあり、いずれも歩いた人だけが見られる特別な風景です!
①タクシーチャーター
最も快適&簡単な移動手段が、タクシーをチャーターしてしまうこと。
アンベルド要塞への単純往復 (+観光時の待機時間1時間)でもOKですが、せっかくなら周辺の見どころもセットでまわるのが良いと思います。
・エレバン~アンベルド城塞間の単純往復:16000AMD(=¥3677)~
・エレバン~アンベルド城塞~カサフ渓谷の見どころ~エレバンと周遊:20000AMD~25000AMD(=¥4597~5746)
特に、個人でのアクセスにやや難ありのカサフ渓谷の各見どころもセットで訪れるのが◎
アンベルド城塞とカサフ渓谷を組み合わせても、丸一日あれば余裕で観光できます。
②現地ツアー
「交通手段をあれこれ考えるのが面倒!」という人は、現地ツアーに参加するのもおすすめ。
ほとんどがエレバン発着のツアーで、周辺の見どころとセットでアンベルド城塞を訪れるものばかり。
効率的に観光することが可能です!
③ミニバス + ハイキング
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エレバン発着のミニバスでややこしいのが、行き先によってバスターミナルが異なる点。
アンベルド城塞に最も近いのが、アンタルト(Antarut / Անտառուտ)という村。
ビュラカン経由アンタルト行きのミニバスが発着するのは、エレバン中心街の西に位置するキリキア・バスステーション(Kilikia Bus statuon / 「セントラル・バスステーション」とも呼ばれる)です ▼
アンタルト行きのバスは519番。
バスステーションの建物右側の近郊路線プラットホームの最奥部からの出発です。
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519番バスは、エレバン→ビュラカン(Byurakan / Բյուրական)→アンタルト(Antarut / Անտառուտ)と走り、アンタルト村中心部のバス停が終点です。
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アンタルト村のバス停に到着したら、アンベルド城塞に向かってハイキングのスタートです。
エレバン~ビュラカン~アンベルド間の519番バスの時刻表(2022年現在)はこちら ▼
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時刻表によるとアンタルト村発の最終は18:30とのことですが、ここにはある落とし穴があります。
それは、金曜・土曜・日曜は18:30のアンタルト発のバスはなぜか運行されず、16:00発が最終となる点。
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のぶよがアンベルド城塞を訪れたのは金曜日でしたが、そんなことはつゆ知らず…
最終バスを見事に逃し、完全にアンタルト村で詰みました。
わけわからんど田舎の村で最終バス逃して知らないおじさんに泊めてもらうことになったんだけど、おじさんの家が場末感煮詰めたような状態で、なんかもうアルメニアすげえわってなってる。 pic.twitter.com/tedNEjMGgk
— 小山のぶよ🇵🇹世界半周中の翻訳してる人 (@nobuyo5696) November 5, 2021
まあ人間どうにかなるものではありますが、とにかく要注意。
アンタルト村には本当に何もないので、すぐ隣のビュラカンで宿泊するプランも一つの選択肢だと思います。(ビュラカンにもいくつか見どころがあるので、宿泊するのがベターかも)
【ビュラカンの宿をチェックする!】
アンタルト~アンベルド城塞のハイキング情報
アンベルド城塞ハイキングマップ
青:アンベルド要塞
緑:アンタルト~ハイキングコース入口間徒歩ルート
オレンジ:ハイキングコース入口~アンベルド城塞間徒歩ルート
赤:分岐点・目印等
ハイキングの基本情報
所要時間・距離・難易度
アンタルト村までマルシュルートカでやって来たら、いよいよ自分の足で歩いてアンベルド城塞を目指すとき。
ハイキングコースはこんな感じです ▼
・距離:片道9.3km
・所要時間:片道2時間半
・高低差:▲▼520m
・難易度:★★★☆☆
アンベルド城塞までは高低差がものすごく、特に前半の舗装道路を歩く区間はひたすら上り。
ヒッチハイク等してしまうのも良いと思います。
歩く時間だけなら、往復で5時間~6時間ほど。
ここに観光時間の1時間~1時間半を合わせて、合計7時間くらいみておきましょう。
持ち物・注意点
アンタルト村~アンベルド城塞まで、途中には飲食店や商店はいっさいありません。
水や食料の持参は必須です。
上り坂こそ多いものの、そのほとんどは幹線道路沿いの区間。
ハイキングコース自体は難しいものではないので、スニーカーでも問題なく歩けるレベルです。
また先述の通り、金曜~日曜は18:30アンタルト発のバスが運行されず16:00が最終となるため、どう考えても間に合いません。
日帰りで強行する場合は、月曜~木曜に訪れるのがマストです。
必須の地図アプリ
アンタルト~アンベルド城塞間は正規のハイキングコースとなっており、“Hike Armenia”というアプリ(無料)で確認することが可能です。
Hike Armeniaはデザインも秀逸ながら、実用性も抜群なのが素晴らしいところです。
・リアルタイムでハイキングルート(&現在位置)が見られる
・高低差や所要時間など詳細な情報を掲載
・オフラインでも位置情報を取得可能(事前のダウンロードが必要)
・すでに歩いた人からのコメントを参考にできる
アルメニアでハイキングをするなら、ぜひともダウンロードしてフル活用しましょう!
アンタルト~ハイキングコース入口
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アンタルト村からは、北へとのびる幹線道路をひたすらたどっていくだけ。 【マップ 緑線】
一本道なので迷うことはありません。
・距離:片道5.6km
・所要時間:片道1時間半
・高低差:▲440m
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出発してすぐのところに、黄色い標識が出ているポイントがあります。
これが、正規のハイキングコースへの分岐点【マップ 赤①】
Hike Armeniaというアプリで紹介されているコースを歩く場合は、この分岐点を標識方向に曲がって歩いて行きましょう。
のぶよはヒッチハイク狙いだったので幹線道路をそのまま歩くことにしました。
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この道路、アンベルド城塞に行くためだけの道であるため、とにかく交通量が少なめ。
30分ほど歩いたところで1台の車が停車してくれ、楽々と分岐点【マップ 赤②】まで移動することができました ▼
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「アンベルド城塞まで乗せて行ってくれる」とのことでしたが、せっかくなのでハイキングコースを歩きたいもの。
お礼を言ってこちらの分岐点で降ろしてもらい、左側のハイキングコースへと続く道を歩きます。
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分岐点から歩くこと5分ほどで、上の写真の標識があります。
ここまできたらハイキングコースの入口はもう目と鼻の先です。
ハイキングコース入口~アンベルド城
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上の写真のポイントがハイキングコース入口【マップ 赤③】
ここからは車両通行不可の未舗装道路&山道となります。【マップ オレンジ線】
・距離:片道3.7km
・所要時間:片道1時間
・高低差:▲▼110m
ハイキングコース入口からは、ずっと平坦な道が続きます。
こちらも一本道なので、迷う心配はありません。
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ハイキングコース入口から20分ほど歩いた場所には、ハチュカル(石の十字架)【マップ 赤④】が転がっているポイントがあります ▼
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ハチュカル付近は、断崖絶壁の向こうにたたずむアンベルド城塞の遠景を望めるポイント。
休憩にもぴったりなので、体力を回復させましょう。
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ハチュカル付近からは、一度谷底まで下り、アンベルド城塞がある崖の上まで登っていくコースになります。
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ガッツリと下った先の谷底には、ボロボロの橋【マップ 赤⑤】 が架かっています ▼
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底板は抜け落ち、錆びついた橋を渡るのはかなりの恐怖。
ハイキングコース最大の難所かもしれません。
橋を渡った後は、正面に見えるアンベルド城塞に向けて斜面を登っていくだけ ▼
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距離的には目と鼻の先なのですが、かなりの急斜面のため意外と時間がかかります。
ようやく登りきった先にあるのが、城塞敷地内の東側の入口となる城門 ▼
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ここまで来れば、城塞敷地内はもう目の前。
ハイキングコース入口からおよそ1時間ほどでの到着でした。
おわりに
エレバンからのデイトリップ先にもおすすめな、アンベルド城塞の観光情報を解説しました。
日本語での情報はほとんどありませんが、アルメニアではかなり知名度があるスポット。
週末は家族連れやグループで賑わうので、独特の不気味な雰囲気を味わいたいなら平日に訪れるのが良いと思います。
アンベルド城塞近郊のカサフ渓谷の見どころについての記事も書いているので、ぜひあわせて読んで参考にしてください!
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