こんにちは!冬のエレバンにのんびり滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
「コーカサスのパリ」と(のぶよの中では)名高い、アルメニアの首都・エレバン。
石造りの重厚な町並みに瀟洒なストリートが連なり、お洒落な恰好をしたエレバンっ子たちが行き交う風景は、まさにアルメニアの「美」が詰まった町。
モダンで整然とした風景に、アルメニアの伝統的なエッセンスが加わり、世界でも他になき魅力を放っています。
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多くの旅行者が滞在拠点とするエレバン中心街だけを見ていれば、確かに「お洒落で綺麗な首都」といった印象を抱くでしょう。
しかしのぶよの場合は、なんとなくフラストレーションを抱いていました。
エレバン、とても美しいのですが、ディープでローカルで埃っぽい感じがどうも足りないのです。
そんなのぶよがつい最近発見したのが、エレバン中心街の西側に位置する「マラティア・セバスティア」という郊外エリア。
地元の人は、この謎の郊外エリアをこう呼びます。
「エレバンのバングラデシュ」と。
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「バングラデシュ」とは、もちろん南アジアに位置するバングラデシュ共和国のことではありません。
マラティア・セバスティア地区の中央の広大な敷地を占めるバングラデシュ・マーケットと呼ばれる巨大市場と、その周辺のエリアをひっくるめて、「バングラデシュ」と呼ばれるのです。
ここまで読んでも「なんでバングラデシュ…?」と思うでしょう。(のぶよも意味が分からなかった)
しかし。実際に足を運んでみるとその理由が分かるはず。
中心街の雰囲気とは完全に異なる、果てしないローカル感とコテコテ感は、まさにエレバンのバングラデシュそのものなのです(まあバングラデシュに行ったことないのであくまでもイメージだけど)。
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エレバン中心街からほど近い場所にも、なかなかのローカル感が漂う「GUMマーケット」と呼ばれる巨大市場があるのですが、正直バングラデシュ・マーケットとは比べ物になりません。
GUMマーケットが「ソ連時代の雰囲気が強く感じられはするものの、初心者でも散策しやすい観光スポット」だとしたら、バングラデシュ・マーケットは「ソ連時代そのままの、初心者は躊躇するほどのディープ感しかないガチ市場」といった感じです。
まさに、こうした場所を求めていたのぶよ。
さっそく路線バスを利用してバングラデシュ・マーケットに訪問してきました。
というわけで、今回の記事はバングラデシュ・マーケットとその周辺エリアの散策レポート。
市場内外のようすはもちろん、市場ならではの激安グルメや周辺の見どころも押さえています。
エレバン滞在中にローカルなスポットを訪問してみたい人には心からおすすめ。
中心街に居るだけでは絶対に見えない、エレバンのローカルな魅力を五感で感じに行きましょう!
バングラデシュ・マーケットとは?基本情報&アクセス
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先述の通り、「バングラデシュ」とは、同名の巨大シュカ(=アルメニア語で「市場」)とその周辺エリアの総称。
正式名称はマラティア・セバスティア(Malatia-Sebastia)と言いますが、エレバンの地元民の多くは「バングラデシュ」と俗称で呼びます。
「エレバンのバングラデシュ」が位置しているのは、円形のエレバン中心街の外側。
市内最大の国内交通ハブであるキリキア・バスステーションを越え、さらに西に行ったエリア一帯を指します。
「バングラデシュ」の由来
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そもそも、誰が、いつ、何故このエリアを「バングラデシュ」と呼び始めたのかははっきりしていません。
のぶよは「バングラデシュ人移民が多いから?」と思ったのですが、どうやらそうではないよう。
アルメニアにはバングラデシュ人はほとんどいないそうですし、移民としてはかなりの人口があるインド人に関しても、このバングラデシュ地区にはそれほど住んでいないそうです。
ではなぜ、この地区が「バングラデシュ」なのか…
のぶよが宿泊している宿で働くアルメニア人女子(そもそもこの子が「エレバンのバングラデシュ」の存在をのぶよに教えてくれた)によると、
エレバン中心街から遠くて、裕福でなくて、ごちゃごちゃしていて、安いものが色々売られていて、でもみんなそこに何があるのかよく知らない地区
=アルメニアから遠くて、喧騒に満ちた雰囲気で、物価が安くて、アルメニア人が誰も行ったことがないような国
=バングラデシュ
ということだそう。
なんともバングラデシュに失礼な気もしないでもないですが、もはや正式名称以上に人々の間に定着してしまっているので、そのあたりはまあ触れないようにしましょう。
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他にも「バングラデシュ」の理由とされる説はいくつかあるようですが、人によって言うことが結構変わってくるので、もはやどれが真実でどれが嘘なのかわからない状態。
ひとつ確かなことは、「エレバンのバングラデシュ」とエレバンっ子に言えば、「ああ、あの巨大マーケットがある地区ね」と100%通じるほどの、絶大な知名度を誇る点です。
「エレバンのバングラデシュ」のアクセス
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バングラデシュ地区は中心街から5kmほど離れているため、徒歩でアクセスするのは困難。
地下鉄駅は周辺にないため、中心街からはタクシーか路線バスを利用することになります。
・Yandexのタクシー等:1100AMD(=¥440)~
・路線バス:150AMD(=¥60)
→中心街中心部(Mesrop Mashtots通り等)から:路線バス23番/43番/47番/77番
→中心街南部(エレバン中央駅等)から:40番/44番/53番/56番
バングラデシュ・マーケット潜入レポート
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さてさて。バングラデシュ・マーケットおよびバングラデシュ地区の基本情報がなんとなく分かったなら、いよいよ実際に足を運ぶとき。
地区の大半を占めるバングラデシュ・マーケットの敷地はいくつかに分かれており、とにかくごちゃごちゃですが、大きく分けると以下の通りです。
・場外市場エリア
・屋内市場エリア
・野菜・果物市場エリア
それぞれ雰囲気が微妙に異なるのと、売られている商品が異なるのが最大の特徴。
全てのエリアをぐるっと周るなら、2時間ほどはみておきましょう。
ソ連時代そのままの場外市場
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中心街から路線バスやタクシー等でバングラデシュ地区に到着した旅行者が最初に目にする光景が、屋内市場の南側のストリート沿いにびっしりと店が並ぶ屋外市場エリア。
食品の店はほとんどなく、主に衣料品や日用雑貨、インテリアや家具の店が連なっています。
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期待通りの、いや、期待以上のごちゃごちゃした感じではあるのですが、どうにも人の数が少ないのが不思議。
「バングラデシュ=人口が多い=常に多くの人で大混雑」と勝手にイメージしていたのですが、もはやアジアの熱気はほとんど感じられません。
その代わりに漂っているのが、どうしようもなく退廃的な雰囲気。ひとことで言うなら「ソ連」です。
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屋外市場エリアのメインストリートには謎のクオリティーの衣料品を売る店が並びますが、どこも開店休業状態。
店の人が店頭に座って暇そうに煙草を吸っていたりするだけで、特に呼び込みされるわけでもありません。
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なんとも活気がない雰囲気ではあるものの、ごちゃごちゃした感じは確かにバングラデシュっぽいかも?
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衣料品の価格はもちろんエレバン中心街の店に比べると安めではあるものの、正直質を考えるとかなり割高に感じます。
そもそもアルメニアは衣類や雑貨類が意味の分からぬほどに高額な国なのですが、こんな場末のローカルマーケットでさえ謎のスウェット一着4000AMD=¥1600ほどするのには驚き。
これからアルメニアに来ようとしている人、衣類や雑貨類はとにかく全てお隣のジョージア(激安の服屋多数)でそろえておきましょう。
場末感Maxの場内市場
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屋外市場エリアのなんとも言えない場末感を吸収したなら、いよいよ屋内市場エリアへ入っていきましょう。
トタン屋根で覆われた広大な敷地への入口はいくつかあり、内部は迷路のようになっています。
もっと所狭しと小さな店が並んでいる感じかと思っていたのですが、実際に中に入ってみるとかなりがらんとした雰囲気。
こちらも客の姿は少なく、ただひたすらに退廃的な空気が漂っています。▼
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屋内市場で売られているのは、相変わらずの衣類や靴がメイン。
いちおう敷地内にはストリートがあり、帽子店エリアやカーテン屋エリア…といったように区画別になっているようです。
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屋内市場の最奥部はさらに細かく区画が分かれており、カバン屋エリア、ベビーカー屋エリア、工具店エリア…といった感じ。
相変わらずどこも人の姿は少なく、コーヒーを飲みながら煙草を吸う店のおじさんたちが暇そうにしているだけです(アルメニア人はびっくりするくらいに常にコーヒーを飲んでる)。
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のぶよがイメージする「バングラデシュ」という国とは正反対の、人影が少なく活気が皆無でエネルギーのかけらもない雰囲気の屋内市場。
もはや呼称を「ソヴィエト」にした方がしっくり来るような…
野菜・果物市場
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屋外・屋内ともに果てしない場末感だったバングラデシュ・マーケット。
しかし、その南側の大通りを渡ったところに広がる野菜・果物市場に足を運ぶと、ようやくマーケットらしい活気と人影が見られます。
まるで体育館のような屋内スペースとその前の屋外スペースに、色とりどりの野菜やフルーツを売る露店がずらりと並ぶ光景。
…そうそう。まさにこういう光景が見たかったわけで。
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バングラデシュ・マーケットの野菜・果物売り場で最大の特徴が、各露店の人は自家用車で市場の敷地内に直接乗り込み、車に積んできた農作物をその場で販売しているという点。
つまり、この場所で露店を出している人はみんなエレバン近郊や地方部に住む農家の人で、自分が収穫した農作物をエレバンまで運んで売っているというわけです。
言わば「生産者直売」システムで、今風に言うなら「ファーマーズ・マーケット」といったところでしょうか。
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集まる人の多くが地方部出身者であるためなのか、野菜・果物市場に漂う雰囲気は独特。
エレバンっ子のようなすました感じではなく、どことなく人と人の距離が近いような感じがします。
外国人が一人で歩いていると、ものすごい眼力で見られますし、ものすごい勢いで声をかけられるので、その辺は覚悟の上で。
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市場内を散策していて気が付いたのは、各露店の人が乗り入れている車の多くがソ連時代のクラシックカーである点。
ここ数年でエレバンを走るソ連車は驚くほどに激減してしまった感じがしますが、地方部ではもちろん数十年前の古い車が現役。
色とりどりの野菜や果物と、年季の入ったレトロな車体のコントラストが、なんとも絵になります。
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この野菜・果物市場において驚くべき点がもう一つ。とにかく価格が安いのです。
どの野菜や果物もエレバンのスーパーマーケットの半額やそれ以下で売られており、見た目からして新鮮さもこちらが圧勝。
料理が好きな人にとっては天国かもしれません。
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敷地の3分の2ほどを占める野菜・果物の露店の他にも、スパイスを専門に売る店や加工食品をメインに売る店も多くあるのもポイント。
アルメニアの日々の食卓に欠かせないものは全て揃いそうです。
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特に目を引くのが、アルメニアを代表する食材であり冬場の保存食としても重宝されるドライフルーツ。
自家製のドライフルーツをきれいに並べたものや、果物を糖蜜漬けにしたもの、ぷっくりとした干し柿まで…色とりどりで見ているだけでも元気になりそうです。
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こうした市場は、季節によって並ぶ商品が大きく異なってくるもの。
のぶよが訪れたのはまだまだ春までは先が長い…といった2月の中旬のことですが、冬の定番の果物であるざくろと、春の訪れを感じさせるいちごが多く並んでいました。▼
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ぐるりと一周して色々な露店を眺めたのですが、総合的にどの野菜も果物もかなり新鮮で質が良さそうに見えた印象。
スーパーとは比べ物にならないレベルですし、エレバン中心街のGUMマーケットよりも質が良い感じがしました。
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色とりどりの野菜や果物に元気をもらった後は、敷地内最奥部の一角へ。
チーズやヨーグルトなどの乳製品を売る店や新鮮な肉を売る店などが連なっています。
驚いたのが、魚を専門に売る店が結構あったこと。
日持ちするように加工されたものも多いですが、とれたて新鮮な魚を生の状態で売る露店もいくつかありました。▼
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ご存じの通り、アルメニアは海のない内陸国。
ではこの魚たちはどこからやって来ているのか…それは、エレバンから車で1時間弱の場所にあるセヴァン湖からです。
アルメニア最大の湖であるセヴァン湖は、アルメニアが誇る湖水魚であるシグや、高級魚イシュハンなど独自の固有種を有することでも有名。
露店の人に価格を尋ねるとかなり良心的だったので、買って帰って自分で調理するのも良いかも…?
バングラデシュ・マーケットの市場グルメ!場末ホロヴァツ店でランチ
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バングラデシュ・マーケットの各エリアをぐるりと周ったら、そろそろ腹ごしらえの時間。
市場周辺にはシャウルマ店やバーベキュー店がいくつか点在しているのですが、せっかくなら市場の敷地内にあるディープな雰囲気の店に挑戦してみるのもおすすめです。
のぶよが散策中にたまたま発見したのが、こちらのホロヴァツ屋。
屋内市場エリアにいくつかある入口の一つを入ってすぐの場所にあります(Mapで正確な位置を示そうにも載っていないので、頑張って探しておくれ)。
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レトロな看板はアルメニア文字表記オンリー。やたらと主張が激しい巨大な串刺し肉と、店の雰囲気的には立派すぎるほどの炭火BBQ機材。
絵に描いたような場末のホロヴァツ店です。
「ホロヴァツ」とは、アルメニアの国民食と言っても過言ではない、炭火で焼かれた肉料理の総称。
アルメニアでは「ホロヴァツ=豚肉」が基本で、大きな塊に切った豚肉を串刺しにし、そのまま炭火でじっくりと焼き上げます。
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炭火で焼かれた肉はそのまま食べるのではなく、「ラヴァシュ」と呼ばれる紙のように薄い小麦粉生地(こちらもアルメニアの国民食)の上に並べ、フレッシュハーブや生玉ねぎをトッピングし、くるくるっと巻きあげて提供されるのが一般的。
この場末のホロヴァツ店でも、店を一人で切り盛りするおばちゃんが慣れた手つきで肉を焼き、ラヴァシュでくるりんしてくれます。
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この店のメニューは、豚肉のホロヴァツ800AMD(=¥320)とキャバブ500AMD(=¥200)の二つだけ。
キャバブは、牛挽き肉を棒状に固めて串刺しにして焼いたものです。
下味がしっかり目につけられた豚肉は、炭火ならではの香ばしさが口内にじわりと広がるパンチの効いた味わい。
どこの国でも市場で食べる庶民の味というのはやや味付けが濃い目であることが多いですが、この店もやや塩加減は強めです。
店の外観的に店内に飲食スペースがなさそうだったのですが、おばちゃんいわく「良かったら店の奥で食べていきな」とのこと。
よくよく店の奥を見てみると、ちょっとしたキッチンのような空間におばちゃんの休憩スペースらしきものがあり、ここがいちおう飲食スペースとしても機能しているようです。
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ちょうどのぶよの後に来た客がおばちゃんに「奥で食べて良いか」と尋ねていたのですが、なぜか「あんたはあかん!」と拒否していたのも謎。
どうやら、おばちゃんに選ばれ気に入られた人しか、この謎のスペースで飲食していくことは許されないシステムのようです。
なぜのぶよが選ばれたのは謎ですが(まあ十中八九顔面だろう)、運が良ければ市場ビューの謎空間でパンチの効いた肉を喰らう体験ができるかもしれません。
市場以外の見どころ
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バングラデシュ・マーケットの周辺には、「定番観光スポット」のようなものはいっさいありません。
ごちゃごちゃした市場以外は、ひたすらにソ連時代の集合住宅が並ぶだけの町並みが広がります。
もしバングラデシュ・マーケット散策で時間が余ったなら、地区の北側にある第二次世界大戦メモリアルを訪れてみるのもおすすめ。▼
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バングラデシュ・マーケットに負けず劣らずの場末感と退廃的な雰囲気が漂う公園には、アルメニアがソ連時代に経験した第二次世界大戦での勝利を記念したメモリアルと広大な噴水が整備されています。
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一目見れば分かる通り、この公園が整備されたのはソ連時代のこと。
滝のように段差が設けられた噴水の最上部には、メインの記念碑がぽつりとたたずんでいます。
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人影のない公園自体の雰囲気もある意味では味わい深いものですが、公園の西側に広がるバングラデシュ地区の町並みもまた、時が止まった感。
エレバンには他にもソ連時代の建造物が多く点在しているのですが、この公園もまたのぶよのソ連コレクションに加えることにしました。
おわりに
普通の観光客はまず訪れない「エレバンのバングラデシュ」と呼ばれるエリアの散策のようすをお送りしました。
エレバン広しと言えども、ここまでディープでローカルでソ連的な雰囲気が漂うスポットはなかなか存在しないもの。
エネルギッシュさや活気こそほとんどなく、バングラデシュ本国の雰囲気とはおそらく全く違うのでしょうが、これはこれで他にはなかなかない独特の雰囲気です。
市場(特に野菜や果物)に関しては、価格帯が安めで質も良いので、エレバンにある程度の長期間滞在するなら買い物目的で訪問するのも◎
単に市場めぐり目的やローカルグルメ目的でも、こうした雰囲気が好きな人はかなり楽しめると思います!
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