こんにちは!ジョージア南部のサムツヘ=ジャワヘティ地方をのんびり旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
「湖水地方」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはイギリス中部の緑あふれる自然風景ではないでしょうか。
ピーターラビット生誕の地とされるイギリスの湖水地方のゆったりとした自然風景に憧れる日本人はとても多いようで、旅行先として根強い人気と知名度があります。
…しかし!
湖水地方が存在するのはイギリスだけではありません。
ここジョージアにも、旅行者にはほとんど知られていない湖水地方が存在しているのです。
「ジョージアの湖水地方」が位置するのは、この国の定番観光ルートからはずれた南部エリア。
標高1600m~2200mの高地に点在するアルピンレイク群の湖畔に小さな村々が点在している風景の美しさは、本家・イギリスの湖水地方にも負けていません。
ジョージア湖水地方の魅力は、ダイナミックな自然風景だけにとどまりません。
この国が誇る豊かな歴史を現在に伝えるスポットも多く点在しており、大自然も伝統文化も歴史も同時に味わうことができるのです。
「世界で二番目のキリスト教国」のはじまりの地となった湖畔の村や、この国の激動の近代史の舞台となった村、ジョージアで一番の多民族村…など、ジョージアの湖水地方は多くの魅力にあふれています。
なのに、大勢の旅行者が訪れるイギリスの湖水地方とは異なり、このエリアを訪れる旅行者は限りなくゼロに近い数。
実際に旅してみて「こんなに素晴らしいエリアに観光地化の波がいっさい到達していないなんて…」と衝撃を受けたくらいです。
というわけで、知名度がないなら布教していこうじゃありませんか…!
日本で初めて、この地域を実際に旅した人間による「ジョージア湖水地方観光情報まとめページ」をお送りします!
詳細な観光情報やアクセス情報に関しては、各見どころの項に別記事へのリンクを貼っているので、より詳しく知りたい場合はそちらもチェック!
関連記事も含めて、ジョージア湖水地方を実際に旅する際に必要な情報はすべてコンプリートしています。
こんなド僻地をガッツリ旅しよう!なんて日本人など居るわけもないとは思いますが、知名度皆無のジョージア湖水地方の素晴らしさを知ってもらえるだけでも嬉しいです。
「ジョージア湖水地方」とは?
「ジョージア湖水地方」とは、その名の通り大小さまざまな湖が点在するエリアのこと。
多くの湖は雨水が溜まって自然にできたものです。
イギリス湖水地方の「丘陵地帯の緑あふれる森林と湖の風景」のイメージとは大きく異なる風景を見せるのがジョージアの湖水地方の特徴です。
ひとことで表すなら「異世界の風景」。
すべてのエリアが標高1600m~2200mの高地に位置しているため、湖の風景はまるで荒野に点在するオアシスのよう。
森林限界を超えているためか、木々がほとんどない丘陵地に広大な湖が広がる光景は、まるでこの地球上のものとは思えない異世界感を放ちます。
ジョージア湖水地方の魅力は、ダイナミックで非現実的な自然風景だけではありません。
この地域独自の歴史を背景とした伝統建築が連なる村や、異文化が交わった建造物、太古の時代からの歴史を感じる見どころなど、文化的な角度からもジョージアの他地域とは大きく異なるユニークさも大きな魅力なのです。
地理的にジョージアの他のエリアとは隔絶されているジョージア湖水地方は、すぐ南隣に位置するアルメニアとの関わりがとても強いエリアでもあります。
湖水地方エリアの住民のほとんどはアルメニア人で、ジョージア国内にいながらもアルメニアの文化が強く感じられる点も興味深いところ。
実際に訪れてみると分かりますが、湖水地方エリアにはもはやジョージア感はいっさいなく、ほぼアルメニアのような地域だと思います。
自然も、歴史も、建築も、文化も、食も…何もかも「コーカサス山脈に抱かれた東西文明の十字路・ジョージア」とは完全に異なるジョージア湖水地方。
まだ旅行者に見つかっていない超穴場エリアに眠る、限りない魅力を発見する旅へ…いざ!
ジョージア湖水地方の見どころ
ジョージア湖水地方は、以下の3つのエリアに大きく分けられます。▼
エリアによって雰囲気が大きく異なる点も、ジョージア湖水地方の魅力。
ここでは、3つのエリア別に主な見どころを紹介していきます!
①ツァルカ周辺エリア
ジョージア湖水地方の東側の玄関口となるのが、ツァルカ湖を中心としたエリア。
最大の町であるツァルカの西側に、個性あふれる見どころが点在しています。
ツァルカ
ツァルカ湖周辺で最大の町が、ツァルカ(Tsalka / წალკა)。
もともとはギリシア人によってひらかれた町ですが、現在のツァルカは「ジョージアで一番多民族な町」として知られるほどに、住人のバックグラウンドは多岐に渡ります。
ツァルカの町自体の見どころは限られてはいるものの、このエリアの観光拠点としてはこれ以上なく良い町。
リーズナブルに名物グルメが食べられるレストランや食堂もいくつかあり、湖水地方旅のスタート地点/ゴール地点にぴったりな町です。
ティクリサ村のペトログリフ
ツァルカ湖周辺には古代から人類が居住していたことが分かっており、ジョージア国内で最も長い歴史を持つと言われているほど。
そんな遥か昔の人々の生きた痕跡が感じられるのが、ティクリサ村郊外に残るペトログリフです。
ペトログリフとは、古代の人々が岩に刻んだ絵文字のようなもの。
ティクリサ村のペトログリフはなんと7000年前のものであることが判明しており、想像もつかないような長い歴史に圧倒されます。
ペトログリフが描かれた岩がある谷間の風景は、7000年前の人々が眺めたものと同じもの。
古代と現代が交錯する、不思議なスポットです。
ベルタ教会
ツァルカ湖の西岸エリアに位置するベルタ教会は、ジョージアの人々から「これ以上ないほどの聖地」とされる神聖な場所。
一見するとよくある宗教建築に思えますが、この場所の最大の特徴が、小さな教会の床下から湧き出る水です。
湧き出た水は小さな泉を形成し、その中にはなんと野生のマスが生息しています。
このマスに触れればどんな病気でもたちまち治ってしまうという言い伝えが根付いており、その効果を信じる人々が多く巡礼しにやって来ます。
②パラヴァニ湖周辺エリア
天然の湖としてはジョージアで最大の面積を誇るパラヴァニ湖は、まさに「ジョージア湖水地方の宝石」という言葉がぴったり。
手つかずの大自然の風景と、湖畔に点在する素朴な村々の美しさは、言葉に表せないほどに素晴らしいです。
タンボフカ村
パラヴァニ湖周辺で最も美しい村が、タンボフカ(Tambovka / ტამბოვკა)。
人口百人少々の小さな村は、一階が白く塗られた石造り/二階が木造の三角屋根という伝統的なスタイルで統一されています。
透き通るようなブルーの水を讃えるパラヴァニ湖と、おとぎ話の世界から出てきたような可愛らしい家々のコントラストは、他ではなかなか見られないもの。
パラヴァニ湖西岸では最もアクセスしやすい村なので、ここだけはぜひとも訪れたいものです。
パラヴァニ湖西岸
パラヴァニ湖西岸には4つの村が点在しており、どれも湖を目の前にした素朴な風景が魅力的。
各村の間には人間の姿がいっさい見られず、ただただ大自然が広がっています。
ジョージア湖水地方の中でも、観光のハイライトとなるのがパラヴァニ湖西岸。
車窓からの観光でも感動の風景が見られますが、ここはぜひ自分の足で歩いて大自然を全身で感じてほしいです。
ポカ
パラヴァニ湖周辺エリアで最大の村が、湖の南岸に位置するポカ(Poka / ფოკა)。
広大な湖を背景とした村の風景はまさに絵画の世界で、のんびりとした雰囲気が素敵です。
実はこのポカ村、ジョージアの歴史においても重要な場所。
およそ1700年前にキリスト教布教の旅をしていた聖ニノという人物が、ジョージアで最初に到達して休養をとったのがまさにこのポカ村なのです。
聖ニノが休養したとされる場所のまさに真上に建つ聖ニノ教会は、ポカのシンボルそのもの。
ターコイズブルーのパラヴァニ湖を背景にたたずむ聖地は、宗教の違いを超えたものすごいパワーを放っています。
ポカ村には女性修道院があり、修道女手作りのチョコレートとチーズはこの村の名物。
いずれもオーガニックの素材のみを使用したもので、可愛らしいパッケージも含めてお土産にはぴったりです
③ニノツミンダ周辺エリア
ジョージア湖水地方の西側の玄関口となるのが、ニノツミンダを中心としたエリア。
多くの湖が点在しており、いずれも野鳥の楽園としてバードウォッチャーの間では話題になっているそうです。
人口の95%を占めるアルメニア人住民たちが形成する文化も、このエリアの魅力のひとつ。
ジョージアにいながら、本場と変わらないアルメニア料理を堪能することもできます!
サガモ湖
パラヴァニ湖とニノツミンダのちょうど中間に位置するのが、サガモ湖(Saghamo Lake / საღამოს ტბა)。
湖畔には同名のサガモ村があり、ピンクの石造りを基調としたアルメニア建築が湖水のブルーによく映えます。
サガモ湖の静かな湖面と、その奥に広がるベルベットのような緑が美しいジャワヘティ地方の大地の風景は、まさに絵画の世界。
どこかミステリアスな雰囲気を放つ湖沿いを、のんびりと散策しましょう。
ニノツミンダ
ジョージア湖水地方観光の拠点となる町のひとつがニノツミンダ(Ninotsminda / ნინოწმინდა)。
町自体にはこれといった見どころは少ないですが、周辺に点在するスポットへのアクセス拠点にはぴったりです。
ニノツミンダの町並みは、ジョージアというよりも完全にアルメニアの地方都市そのもの。
明るく人懐っこいアルメニア人住民たちとの触れ合いも、絶品のアルメニア料理も楽しみです!
ハンチャリ湖
ニノツミンダの町の中心から徒歩30分ほどでアクセスできるハンチャリ湖(Khanchali Lake / ხანჩალის ტბა)は、野鳥の楽園として注目を集めつつある場所。
まるで湿原のような湖と、ジャワヘティ地方の丘陵風景がとても美しいです。
ハンチャリ湖とその周辺の風景は、のぶよ的には北海道。
気候的に近いものがあるのかもしれませんが、広大な大地の風景はどこか日本を思わせるものでした。
ゴレロフカ
ニノツミンダの南に位置するゴレロフカ(Gorelovka / გორელოვკა)は、「ジョージアで一番かわいい村」とされる穴場のスポット。
白壁とパステルブルーが組み合わさった伝統建築がとても可愛らしく、まるで童話の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。
実はこのゴレロフカ村、ジョージア人の村ではなく「ドゥホボール」と呼ばれるロシアからの移民によっておよそ200年前にひらかれた地。
独特の建築様式は、ドゥホボールの人々が守って来た伝統文化の象徴なのです。
現在、ゴレロフカ村のドゥホボールの人口は激減しており、その伝統文化はもはや風前の灯。
ジョージアの近代史に振り回された人々の数奇な運命をしっかりと理解した上で訪れたい場所です。
ジョージア湖水地方のまわり方・交通情報
ジョージア湖水地方は観光客がほとんど訪れないこともあり、個人での移動はなかなかに難ありなのがネック。
しかしながらちゃんと公共交通手段は存在しているので、時間があるなら個人で移動&周遊することも不可能ではありません。
時間に限りがある人や歩くのが嫌な人は、タクシーをチャーターしての観光一択となってしまいます。
①タクシーチャーター
ジョージア湖水地方を最も簡単に周遊する方法が、タクシーをチャーターすること。
トビリシから丸一日チャーターしてジョージア湖水地方を往復移動+観光もすごく急ぎ足になりますが可能。
もしくは複数日チャーターして、ジョージア南部や中部の見どころとセットでぐるりと周遊するルートもおすすめです。(その場合はドライバーの宿泊費や食費などもあるので料金は跳ね上がりますが)
・トビリシから1日チャーター:300GEL~400GEL(=¥15000~¥20000)
・ツァルカorニノツミンダから1日チャーター:200GEL~250GEL(=¥10000~¥12500)
少しでも移動費を節約したい場合は、湖水地方観光の拠点となるツァルカかニノツミンダまで公共交通手段で移動してからタクシーをチャーターすることも可能です。
②ミニバス/マルシュルートカ
個人でのんびりとジョージア湖水地方をまわりたいなら、マルシュルートカ(乗り合いのミニバス)で移動することも可能です。
湖水地方はジョージアの中でも個人での移動に難ありなエリアですが、ちゃんと各町を結ぶマルシュルートカ路線は存在しています。
旅行者が利用するであろうジョージア湖水地方のマルシュルートカ路線は、以下の4本。▼
いっぽう、マルシュルートカの便がないツァルカ湖西岸の見どころやパラヴァニ湖西岸、ゴレロフカなどへは、最寄りの町からタクシー移動か徒歩で移動するしか方法がありません。
ここでは、ジョージア湖水地方のマルシュルートカ4路線をザックリと紹介します。
各便の発着ポイントなどの詳細は、リンク先で確認を!
トビリシ~ツァルカ~ニノツミンダ便
ジョージアの首都・トビリシからツァルカを経由してニノツミンダへ至るマルシュルートカは、1日2往復運行されています。
トビリシ~ツァルカ便
ツァルカへのアクセスに最も便利なのが、首都・トビリシからのマルシュルートカ。
時間帯にもよりますが1時間~2時間に1本の割合で出発しており、比較的利用しやすいです。
ニノツミンダ~タンボフカ便
ニノツミンダからパラヴァニ湖周辺エリアへアクセスする場合は、ニノツミンダ~タンボフカを結ぶミニバスが便利。
1日1往復していますが、平日のみの運行である点に要注意です。(土日とジョージアの祝祭日は運休)
アハルツィヘ~ニノツミンダ便
サムツヘ=ジャワヘティ地方最大の町であるアハルツィヘ(Akhaltsikhe)~ニノツミンダ間は、1日2往復のマルシュルートカが走っており、移動時間も短く比較的移動しやすいです。
ジョージア湖水地方旅行時のアドバイス・注意点
インターネット上にはほとんど情報がないジョージア湖水地方。
旅行のプランニング時には、色々と分からない点や不安になる点も多いかもしれません。(のぶよもそうだった)
ここでは実際に旅した経験をもとに、ジョージア湖水地方を旅行する際のアドバイスや注意点を解説していきます。
ジョージア湖水地方旅行におすすめの季節
エリアの全てが標高1600m以上、そのうち大部分が1900m以上の高地に位置するジョージア湖水地方は、一般的な旅行や観光ができる時期がものすごく限られています。(おそらくジョージア国内でも最も旅行に適した時期が限られる地域の一つ)
「ジョージアの極地」との異名を持つエリアというだけあり、冬場の寒さは尋常ではないもの。
最低気温マイナス30℃を下回ることもあるそうで、10月~4月にかけては完全なるオフシーズンとなります。
ジョージア湖水地方の観光ベストシーズンは、ズバリ8月。
降水量が最も少ない月にあたり、気温も旅するにはぴったりの温かさであるためです。
7月や9月も良いですが、8月に比べると夜間の気温がグッと下がる点にご注意を。
ベストシーズンの8月でも風が強い日がとても多いので、温かい服は必須となります。
ジョージア湖水地方は日帰りでまわれる?
ジョージア湖水地方を日帰りでまわるのは、物理的には可能。
トビリシや、ツァルカ/ニノツミンダなどの町からタクシーをチャーターし、見どころに立ち寄りながら移動&観光をすれば良いのです。
しかしながら、このエリア独自の自然風景や伝統的な村々をしっかりと観光したいなら、タクシーをチャーターする場合でも最低2日間に分けてプランニングするのがベスト。
各見どころ間の距離は想像以上にひらいているため、日帰りだとどうしても移動ばかりでものすごく忙しくなってしまうためです。
個人で公共交通手段を利用してまわる場合は、エリアごとに以下の日数が目安。
・ツァルカ周辺エリア:2日~3日
・パラヴァニ湖周辺エリア:2日
・ニノツミンダ周辺エリア:2日
合計で1週間の日程がとれるなら、移動&観光をふくめてゆっくりと満喫できるはずです。
宿泊地の選択肢はものすごく限られている
ジョージア湖水地方を旅する際に最大のネックとなるのが、宿泊施設の少なさ。
旅の基点となるツァルカとニノツミンダにはいくつかのゲストハウスがありますが、ホステルなど格安の宿泊施設はほとんどありません。
また、観光ハイライトとなるパラヴァニ湖周辺エリアでは、最大の町であるポカも含めて宿泊施設はいっさい存在しない点にご注意を。
パラヴァニ湖周辺エリアに関しては、宿泊施設があるニノツミンダorツァルカ拠点で日帰り往復するか、湖畔でキャンプするかの選択肢しかないのが現状です。
アルメニア語ができると喜ばれる
ジョージア湖水地方の東の玄関口となるツァルカの町を過ぎると、西の玄関口であるニノツミンダまではアルメニア人住民が多数派を占める地域となります。
なんと人口の95%以上がアルメニア人で、ジョージア国内に位置していながらもこの地域の共通語はアルメニア語です。
住民の多くは、ロシア語やジョージア語も解するマルチリンガルである場合がほとんどですが、彼らの言語であるアルメニア語であいさつするだけでもとても喜ばれるのがポイント。
英語はとにかくまったく通じないので、アルメニア語の基本表現だけでも覚えておくと役立つはずです!
おわりに
実際に旅した人間による日本語での情報としてはおそらく初の、ジョージア湖水地方観光に関する情報の総まとめ記事をお送りしました。
知名度ゼロ&アクセスしにくい&観光インフラが整っていない と、ジョージアの中でも穴場中の穴場のエリアとなりますが、本当に旅してよかったと心から思っています。
湖水地方の自然風景は、「コーカサスの山国」というジョージアに対するイメージを大きく変えてくれること間違いなし。
ジョージアの定番系見どころを行きつくした人や、普通の旅行者が行かないような地域を探している人には、これ以上ぴったりなエリアは他にありません!
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