こんにちは!冬のエレバンにのんびり滞在中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニアの首都・エレバンは、ピンク色の石造りで統一された建物が連なる、美しい中心街を有する町。
漂う空気もなんだか洗練されているようで、ちょっとお洒落をして散策したくなる…そんな雰囲気が感じられます。
中心街こそちょっと気取った感じがするかもしれないエレバンですが、この町で暮らす人の生活感やローカルな雰囲気が感じられる場所もちゃんと存在しているのが奥深いところ。
そんな「素顔のエレバン」が垣間見える場所の一つが、今回紹介するGUMマーケットです。▼
なんともソ連時代の雰囲気が色濃く感じられる、体育館のような外観のGUMマーケット。
アルメニア語では「シュカ」(=市場)と呼ばれ、エレバン市民の日々の食事を支えるあらゆる食材が売られる場所です。
その雰囲気は、エレバン中心街のお洒落で洗練されたものとはまるで別物。
数十年前から何一つ変わっていない、レトロで埃っぽい感じがちゃんと残っています。
「市場を歩けば、その町の人々の暮らしや食文化が感じられる」とはよく言ったもの。
GUMマーケットもその例外ではなく、エレバンのフードカルチャーを五感を通して感じることができます。
また、市場と言えば、新鮮な食材を用いた市場グルメも楽しみの一つ。
GUMマーケットにも地元の人が通う食堂タイプのお店が併設されており、市場散策時の腹ごしらえにはぴったりです。
というわけで、今回の記事はエレバンのGUMマーケットの訪問レポート。
市場で売られているアルメニアンな食材たちの紹介はもちろん、おすすめの市場グルメスポットや伝統のワインを売る店など、訪問時には絶対にチェックしたいポイントをすべて押さえています。
お洒落で優雅な中心街だけではない、エレバンの奥深い魅力を感じに行きましょう!
GUMマーケットの基本情報
GUMマーケットが位置しているのは、円形を描くように整備されたエレバン中心街のすぐ南。
エレバン鉄道駅へと続く大通り沿いに堂々と構えているので、初めて訪れる場合でも見逃すことはありません。
外観を観れば一目瞭然ではありますが、GUMマーケットの開設はもちろんソ連時代のこと。
かつてはエレバン中心街ど真ん中にも「パク・シュカ」と呼ばれる市場があったそうですが、そちらは現在は閉鎖され、Yerevan cityというスーパーマーケットに生まれ変わっています。(現在のブルーモスクの向かいにある建物がそれ)▼
内部に一歩入ってみると気が付くのですが、GUMマーケットは「市場」の割にかなりスッキリとした雰囲気。
ごちゃごちゃしたカオス感や喧騒とは無縁で、やや閑散とした印象を持つかもしれません。
多くの旅行者は(のぶよと同様に)ジョージアのトビリシからエレバンにやって来ると思いますが、カオスと喧騒が極まったトビリシの市場に比べると、あまりの雰囲気の違いにきっと驚くはずです。
ローカルスポットとは言え、どことなくエレバンらしい「シュッとした感じ」が漂うのも面白いところ。
ごちゃごちゃ感はかなり少なめで散策しやすいので、市場初心者にもおすすめです!
アルメニアの食文化が詰まった、GUMマーケットの食材たち
GUMマーケットがどんな感じの場所であるのかなんとなく分かったところで、いよいよ実際に足を踏み入れてみるとき。
内部は売られている食材ごとにきっちりとゾーンが分かれており、目当ての食材があるなら一直線しやすいです。
ここでは、市場内で売られている代表的な食材と、各ゾーンについて解説していきます。
アルメニアと言えばこれ!極彩色のドライフルーツ売り場
GUMマーケット北側の入口を入るとまず目に入るのが、色とりどりのドライフルーツを売る店がずら~~~りと並ぶ光景。
ざっと数えただけでも二十軒以上。どこも同じような商品をこれまたずら~~~りと並べており、圧巻のカラフルさに感動します。
(この「同じ商品を売る店がずらりと並ぶ光景」は旧ソ連のどこにでもあるのだけど、果たしてどこも同じものを売っていて儲かるのだろうか…?なんて考えてしまうのは、資本主義島国出身民の野暮な考えなのだろうか…)
ドライフルーツは、アルメニアを代表する食材の一つ。
国土の大半が標高1000m以上の高地に位置するアルメニアでは、長く厳しい冬を乗り越えるためのビタミン源として、夏から秋にかけて収穫した果物を天日干しにしたドライフルーツが古くから愛されてきました。
アルメニアのナショナルフルーツとして名高いアプリコットや、洋ナシ、干し柿にぶどうにりんごに…
とにかく、冬場の保存食になる果物はすべて、じっくりと乾かしておいて有効活用するのです。
そのままスイーツとして食べるのはもちろん、ドライフルーツはアルメニア料理にも欠かせない食材。
肉とドライフルーツのシチューや、ドライフルーツのスープ、果てにはドライフルーツの炊き込みご飯まで…
現在でこそ物流の発達により、冬場でも新鮮な野菜や果物が手に入るようになったものの、伝統のドライフルーツは現在でもアルメニアの人々の食卓に強く根付いているのです。
GUMマーケットのドライフルーツ売り場は、見た目だけでも極彩色で華やかな美しさを放ちますが、実際に食べることができるのも嬉しい点。
各売り場の人たちが、客が来るやいなやものすごい勢いで試食させてくれるのです。
数十軒のドライフルーツ屋が、あれもこれもと各種類のドライフルーツを試食させてくれるので、10分ほど歩けばもう一日のビタミン摂取は完了(笑)
「試食したら買わないといけないのでは…」とのぶよは考えていたのですが、どこも全く商売っ気がなく単に余ったドライフルーツを来た人に出しているような感じだったのも印象的でした。
アルメニアならではの「わんこドライフルーツ」体験。GUMマーケットの洗礼を浴びましょう!
どこまでもずらりと並ぶアルメニアの主食!ラヴァシュ売り場
GUMマーケットの奥には、何やら白く薄い巨大な物体が文字通り山積みにされている光景が広がっています。
ここが、アルメニアの主食であるラヴァシュを売る店が連なるゾーン。
ラヴァシュとは、小麦粉生地を極限まで薄く伸ばして、地中に掘られた窯の内壁に貼り付けて焼き上げた、紙のようにぺらっぺらに薄いパンのことです。
アルメニア全国津々浦々、どんなど田舎に行こうとも、手作りのラヴァシュを売る店は必ず存在するもの。
飲食店でも必ず提供されますし、ドライフルーツ以上にアルメニアの人々の日々の食卓に欠かせない食材と言えるかもしれません。
GUMマーケットのラヴァシュゾーンは、十軒以上の店がこれまたずら~りと、数十枚重ねになったラヴァシュを並べているのが圧巻。
ラヴァシュは日持ちしないので、「こんなにたくさん売っていて、果たしてさばききれるのか…?」と思ってしまいますが、どうやら心配はご無用のよう。
客たちはみんな数十枚単位でラヴァシュを購入していき、文字通り「飛ぶような勢いで」売れまくっていました。
アルメニアの美食文化を支える!ハーブ&乾物類売り場
ラヴァシュゾーンの並びには、豆類や穀物などの乾物とハーブを売る店がずらりと並んでいます。
どこも量り売りで好きな乾物/ハーブを売ってくれ、その種類の豊富さにも驚かされます。
ジョージアの市場では、乾物類を売る店ではだいたいスパイスがずらりと並んでいるのが定番なのですが、ここアルメニアの市場ではスパイスもあるものの種類は少なめ。
その代わりに、乾燥させた各種ハーブがものすごいバラエティーの豊富さでずらりと並んでいるのが特徴的です。
ミントやタイムなど多くの国で見られるものから、乾燥バジルや乾燥タラゴンなど珍しいものまで。
名前すら聞いたことのないようなハーブも並び、アルメニアという国に根付いたハーブ文化の奥深さが感じられます。
また、ハーブゾーンにはアルメニアの冬の食卓を支える「アレ」もちゃんと鎮座していました。▼
神社のしめ縄を思わせる不思議な外観のこれは、「アヴェルーク」と呼ばれるもの。
日本語では「ギシギシ」という雑草で、基本的に食用とはみなされていません。
しかしここアルメニアでは、雑草アヴェルークは立派な食材。
冬が来る前にその辺の野原で採ってきたアヴェルークを乾燥させてしめ縄のようにし、お湯で戻してサラダにしたりスープにしたりして食べるのです。
「雑草のスープ」であるアヴェルークは、エレバン各所のレストランのメニューにもあるほどにポピュラー。
酸味と苦みがあり好き嫌いが分かれる味ではありますが、せっかくなら挑戦してみるのもおすすめです!
肉食王国の台所!肉類・チーズ類売り場
GUMマーケットの敷地の中央~南側にかけての広いスペースを占めるのが、肉類を売るお店が並ぶゾーン。
新鮮な肉をその場で捌いて量り売りする精肉店と、ソーセージやバストゥルマ(干し牛肉)などを専門的に売る加工肉店に分かれており、いずれも多くの客で賑わっています。
アルメニアはとにかく肉料理が美味しく、人々の間でも肉を食べない日はないと言えるほどの肉食王国そのものなのですが、その肉食王国の台所たる場所がこの肉ゾーン。
牛、豚、鶏、羊などの定番の肉はもちろん、七面鳥やウサギまで…ありとあらゆる新鮮な「肉」が手に入るのです。
肉ゾーンを抜けてGUMマーケット南側に入ると、今度は乳製品ゾーンに。
名産のマツォン(アルメニア風ヨーグルト)や自家製のスメタナ(サワークリーム)を売る店や、各種チーズを売る店が数軒ずらりと並びます。
肉食王国アルメニアは、実はかなりの乳製品王国でもあります。
特にアルメニアのチーズは種類が豊富で、塩気が控えめなマイルドな味わいと濃厚な口当たりはきっと日本人受けする味。
市場では100gほどの少量で購入することは難しいので、まずはスーパー等で売られている各種チーズを色々試してみてから、気に入ったものをどーんと大量買いするのが良いかもしれません。
GUMマーケットの敷地外には、生きた魚を売る店も数軒あり、中にはザリガニがうようよしている水槽を有する店も。
アルメニアでは、ザリガニはビールのお供として愛される食材。
単に塩茹でしたものが食べられるのですが、飲食店ではある程度の値段がするので、気になる人はここで購入して自分で茹でるのも良いかもしれません(のぶよはこういうの絶対に無理)。
GUMマーケットのおすすめグルメスポット【KER U SUS】
GUMマーケットをぐるっと散策してアルメニアの食文化を感じまくったら、次は腹ごしらえ。
マーケットの敷地の外側には軽食を提供する店やBBQ店がいくつか点在しているのですが、のぶよのおすすめがこちら。KER U SUSというという名前の食堂です。
▲KER U SUSはGUMマーケット北側入口すぐ脇に位置しており、市場併設の飲食店といった感じ。
しかしながら内装はリノベーションされたのか、とても明るく綺麗な雰囲気です。(食堂ですらこんなお洒落な感じなのは、やっぱりエレバンって感じがする)
KER U SUSのメニューはこんな感じ。
アルメニア語&ロシア語併記のものしかない(アルメニアあるある)なので、まあその辺は頑張ってください(投げやり)▼
アルメニアのどこの飲食店でもそうなのですが、KER U SUSの店内にも巨大な炭火焼き器が設置されています。
ホロヴァツやキャバブなどBBQ系も間違いなく美味しいはず…
それ以上にこの店で特徴的なのが、スープ料理や煮込み料理系が多くメニューにあること。
せっかくなら、他ではあまり食べられない珍しい料理に挑戦してみるのも良いでしょう。
愛想の良い店員さんにおすすめを尋ねると「うちで一番よく出るのはソウス!」とのこと。
確かに、隣の席の人も奥の席の人も「ソウス」と呼ばれるスープらしきものを食べています。
というわけで、せっかくなので注文してみました。どどん▼
オレンジっぽい色のスープに油の膜とごろっと入った牛肉…
一見すると、お隣ジョージアの国民的料理の一つである「ハルチョー」のようなビジュアルです。
しかしながら、熱々のスープをすくってひと口食べてみるとびっくり。
そこはかとない牛の旨味とトマトの芳醇な風味が口の中いっぱいに広がり、濃厚なコクが舌先で感じられます。
ひとことで言うなれば「牛肉が持つ旨味を150%出し切ったスープ」といった感じ。
雑味や臭みなどはいっさいなく、牛肉本来の良いところを全て液体にしたといったような…とにかく、めっちゃくちゃ美味しいですこれ。
スープの美味しさはもちろんのこと、具の牛肉自体の美味しさにもびっくり。
ほろっほろを極めたような食感で、口の中に入るやいなやとろけてしまうほどの柔らかさなのですから…
正直、ここ数年間のジョージア滞在で牛肉を敬遠するようになっていたのですが(ジョージアの牛肉は硬くて筋ばっててまじで美味しくない)、「これまで食べていた牛肉はいったい何だったの…?」と哲学にふけりそうになるほどの、極上のお肉でした。
初回の訪問で食べたソウスの美味しさに感動したので、間を空けずに再訪したのぶよ。
店名にもなっている「ケルウスス」という料理に挑戦してみました。
ケルウススとは、細切りにした牛肉と各種パプリカをトマトペーストとともに炒め、フライドポテトと合わせたボリューム満点の一品。
店によっていくつかスタイルがあるようですが、ここKER U SUSのものは煮汁多めの餡かけのような質感のものです。
「茶色い食べ物=正義」というのはどこの料理においても当てはまるようで、このケルウスス、とにかく絶品でした。
青椒肉絲の食感&風味に、酢豚っぽい甘味と酸味を加えたような不思議な味わいが特徴的で、そこはかとないアジアの香りが漂います。
そしてもう一つ…料理名の「ケルウスス」とは、アルメニア語で「黙って食え」という意味なのですが、どうしてそんな名前がついているかと言うと…ケルウススはとにかく激辛だからです。
激辛の理由はスパイスの辛さではなく、大量に入った青唐辛子。
牛肉やパプリカを炒めるステップでフレッシュな青唐辛子をたっぷりと投入するそうで、これこそがケルウススの味の決め手なのだそうです。
生でかじっても激辛な青唐辛子に火が通って辛さがパワーアップ…
「言われなくても黙って食うしかない…」と思ってしまうほどの、話せなくなるレベルの辛さが口内に広がり、辛い物好きにはきっと歓喜の一品でしょう。
上で紹介したもの以外にも、美味しそうな料理がたくさん揃ったKER U SUS。
店内はテーブル席6席ほどと広くはなく、ローカルなお店ではありますが、初心者でも一人でも入りやすい雰囲気が嬉しいです。
GUM市場散策の際には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか!
アルメニア名産のワインを量り売り!【謎のワイン屋】
極彩色のドライフルーツの美しさに心満たされ、市場グルメでお腹も満たされたら、いよいよGUM市場を後にするとき…いいや、まだです!
最後に忘れてはいけないのが、アルメニア名産のワイン。
市場の西側の通り沿いの一角でひっそりと営業する謎のワイン店では、伝統のアルメニアワイン各種を量り売りしてくれるのです。
六畳間ほどの狭いスペースの店内には、木製の壺がずら~り。
中には各種ワインがたっぷりと詰まっており、好きなワインを1Lから購入することができます。
アルメニアのワインの里として名高いアレニ産のセミスイートや、名物のざくろのワイン、果てはりんごのワインにウォッカにコニャックまで…
アルメニアを代表するアルコール類の基本が揃っています。
欲しいワインを店のおじさんに伝えると、ペットボトルに並々と注いでくれます。
「エレバンでこのペットボトルワインに出会うとは…」と感動してしまうかも(アルメニアではこういう自家製ワインを売る店は本当に少ない)。
お洒落なワインボトルとは異なり、見た目は全くもって洗練されていませんが、味はどれも確かなもの。
のぶよはアレニのセミスイートを購入しましたが、すっきりとした後味の奥深さが特徴的で、とても美味しかったです!
おわりに
エレバンを訪れるなら絶対に足をのばしたい、GUMマーケットの魅力を徹底解説してきました。
お洒落で洗練された雰囲気だけではない、エレバンのもう一つの顔を感じてもらえたなら嬉しいです。
正直、GUMマーケットは「カオス感にひたる」「ごちゃごちゃした埃っぽさを楽しむ」といった市場ならではの楽しみはやや薄め(というか、トビリシの市場たちが混沌としすぎている)。
しかしながら、エレバンという町に息づくフードカルチャーを五感で感じられる場所はそれほど多くはないので、貴重な場所ではあります。
中心街の外側に位置しているとはいえ、GUMマーケットは観光エリアからも十分に徒歩圏内。
中心街南部のヴェルニサージュなどの定番スポット訪問と合わせて楽しむのもおすすめです!
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