こんにちは!ジョージア滞在も1年、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
最近日本でも話題になりつつあるジョージア料理。
中でも最も有名なのが、ニンニクたっぷりの鶏肉のクリーム煮込み「シュクメルリ」。
しかしながら、実は現地の人はシュクメルリをそんなに頻繁には食べません。(何と言っても、値段が高い…)
現地の人々の間でもっと一般的なジョージア料理と言えば、ヒンカリ(Khinkali / ხინკალ)です。
安くて腹持ちも良く、冷凍で売られているので簡単に調理ができる「ジョージア風小籠包」のような存在のヒンカリ。
何を隠そう、のぶよの主食です(笑)
毎日毎日ヒンカリを食べていたある日のこと。
ルームメイトのロシア人(母親がアゼルバイジャン出身)が衝撃的なことを言いだしました。
「ジョージアのヒンカリよりも、うちらのヒンカルの方が絶対に旨い!」
…打ち間違いでも聞き間違いでもありません。「ヒンカル」です。
初めはロシアンジョークか何かだと思ったのですが、どうやら実際にヒンカルという料理は存在しているよう。
なんと、ルームメイトのロシア人が自ら作ってくれました!(感謝感激)
私たち日本人にとっては、全く馴染みのないヒンカル。
今回の記事では、この隠れたコーカサス名物料理に関するアレコレや、自宅での作り方を紹介していきます!
日本にもあるシンプルな材料で絶品のチュルチュル感を味わえるので、ぜひとも挑戦してみては?
北コーカサスの郷土料理!「ヒンカル」とは?
ヒンカルとは?
ヒンカル(Khinkal / Хинкал)とは、小麦粉をこねて作った生地を主食として、おかずとなる肉を食べる料理の総称。
最大の特徴は、チュルッチュルの生地とトロトロの肉でしょう。
生地の食感は「日本のうどんからコシを差し引いた感じ」で、もはや「飲む小麦粉」のよう。
肉は「コトコト煮込まれたビーフシチューの牛肉のホロっと感」のイメージ。
生地の切り方や付け合わせのソースの種類、使われる肉の種類などによってバリエーションが豊富なのも特徴で、地域や民族によって十数種類のヒンカルが存在します。
材料はかなりシンプルで、小麦粉と肉が基本という潔さ。
(イスラム教徒が多い地域の料理なので、豚肉は使われません)
特別なスパイスやハーブなどは必要ないので、日本でも簡単に作れてしまいます!
ヒンカルが食べられる国・地域
コーカサス地域の北東一帯で食されるヒンカル。
中でも「発祥の地」とされるのが、アゼルバイジャンの北に位置するダゲスタン共和国です。
ダゲスタンは独立国ではなく、「ロシア連邦内の自治共和国」という扱いの地域。
その民族構成はかなり複雑で、共和国内には40ほどの異なるエスニック・グループが生活しているそうです。
そのうちの一つであるアヴァール人(The Avar / аварал)の言葉が「ヒンカル」の語源となったのではないかと言われています。
いっぽうで、アゼルバイジャン以外の南コーカサス地域の国(ジョージアとアルメニア)ではヒンカルが食される機会はゼロというのも興味深い点。
(ジョージアに1年以上滞在していますが、一度も見たことがありません)
肉と小麦粉生地を分けて調理する「ヒンカル」の代わりに、ジョージアでは小麦粉生地で具を包んだ「ヒンカリ」として発展したのではないかと言われています。
ヒンカルの作り方
ここまでで、ヒンカルの基本知識はOKなはず!
「遠く離れたコーカサス地域の料理」と聞くと、スパイスやら聞いたこともない野菜やら…特別な材料が必要そうに思ってしまいますが、ヒンカルの材料は本当にシンプル。
小麦粉、卵、肉。
基本はこれら3つだけです。
付け合わせのソース等に関しても、日本の家庭に常備されているようなものしか使わないのが素晴らしい点。
余計な買い物をする必要は一切ありません!
ヒンカル作りは3つのステップに分かれるのがポイント。
こう聞くとなんだか面倒くさそうですが、
②具材の調理→放置するだけ
③ソース作り→混ぜるだけ
と超簡単。子供でもできます(笑)
最大のポイントとなるのが、①の生地作り。
というか、生地こそがヒンカルの全てだと考えておきましょう。
ヒンカルで最も大切なのは生地であることは間違いないのですが、分量に関しては、「そんなの誰も計ってないわい!」とのこと。
目分量&指先の感覚&経験がものを言うようです。
一応グラム数など記載していますが、あまりお気になさらず。
すべて「適量」で通すのもコーカサス流なのかも(笑)
ここからは、ルームメイトのロシア人直伝のヒンカルの作り方を3つのステップごとに解説していきます。
チュルチュル生地とホロホロ肉の天国へ…いざ!
ヒンカルの生地づくり
・小麦粉:500g
※現地では強力粉や薄力粉などの分類はなく、「一番安いの」でOKだそう。
・お湯:マグカップ2杯分
・塩:少々
・卵:2個
①生地の材料を全てこねて丸める
まずは、材料をすべてボウルに入れて手でこねていきます。
うどんを手打ちしたことがある人なら、同じような工程だと考えてOK。
空気を抜きながらこねるのがポイントだそうで、20分ほどで表面がつやつやのまとまりのある生地ができあがります。
②室温で40分放置
丸くなった生地を室温で40分ほど放置します。(夏場は冷蔵庫が◎)
③生地を4等分に切って薄くのばす ポイント!
生地を寝かせ終えたら、4等分に切り分けましょう。
4等分した生地の1つ分=1人前が基本ですが、コーカサスあるあるで1人前はかなり多め。
食が細い人は8等分にしてもOKだと思います。
次は、切り分けた生地を一つずつのばしていくステップ。
まな板と生地に小麦粉をまぶして、麺棒でのばしていきます。
ヒンカル作り最大のポイントは、生地を極限まで薄くのばすこと。
ここが腕の見せ所であり、チュルチュル食感の秘密なんだとか。
1mm~2mmほどの厚さになるまでのばすことができれば上出来とのことです。
④3cm×4cmほどの長方形に切る
のばし終えた生地を、3cm×4cm角(お好みで大丈夫だそう)に切り分けていきます。
こんな感じで生地の切り分けまで終わったなら、そろそろ次のステップへ。
ゆでておいた肉ができあがっている頃です。
ヒンカルの具(肉)の調理→生地をゆでる
・牛肉(羊肉も):1kg ※骨付きのものが◎
・塩コショウ:少々
・お湯:鍋いっぱい
①鍋いっぱいのお湯を沸騰させ、肉を投入
生地を40分寝かせている間に、できる限り大きな鍋にお湯を沸かしておき、沸騰したら塩コショウを入れて牛肉を丸ごと投入します。
(入りきらない場合は切り分けてもOK)
最大のポイントは、骨がついた牛肉を入れること。
骨から出るダシが味の決め手となるためです。
骨付き肉が手に入りにくい場合は、普通の牛肉を煮込んでビーフブイヨンなどで味を調節することも可能ですが、やはり骨からでるスープの味にはかないません。
②骨付き肉を1時間~2時間煮込む
牛肉は最低でも1時間は煮込みましょう。
煮込めば煮込むほど肉がホロホロの食感になり、骨から出るダシもさらに美味しくなります。
30分に一回ほどお湯の量を確認し、お湯が少なくなっていたら足します。
③肉を取り出し、ヒンカルの生地を投入 ポイント!
肉が良い具合に煮えたなら、一度鍋から取り出しておきます。
次は切り分けておいた生地をゆでていくのですが、必ず肉をゆでたスープで生地をゆでるのがポイント。
薄くのばした生地が、肉の旨味が染み出したスープを吸収しながらゆであがるので、味わい深い風味になるのです。
また、生地をゆでる際にはくっつかないようにかき混ぜながら入れるようにしましょう。
④8分茹でたらお湯を切り、肉と一緒に盛り付ける
どれくらいの厚さまでのばせたかにもよりますが、生地のゆで時間は8分ほど。
味見してチュルッチュル感があればOKです。
ゆで汁をきりながらお皿に盛りつけていきます。
ゆで終わった汁はスープとして飲むのがヒンカルの定番なので、捨てないようにしましょう。
ヒンカルのソースづくり
・ニンニク:6片
・サワークリーム(ヨーグルトでも):400g
・トマトピューレ:400g
・サラダ油:適量
・塩コショウ:適量
①ニンニクをすりつぶしたものを5:1に分ける
生地を40分寝かせている間に、ソースもちゃっちゃと作っていきましょう。
ヒンカルに必要なのは2種類のソース。
・サワークリームソース
・トマトソース
どちらにもすりつぶしたニンニクが使われます。
すりつぶした6片分のニンニクは5:1くらいの割合に分けでおきましょう。
②サワークリーム(ヨーグルト)ソース作り
①で5:1に分けたすりつぶしニンニクのうち少ない方に、サワークリーム(無糖ヨーグルトでも)を加えて混ぜます。
これだけでサワークリームソースは完成!
お好みでディルなどのハーブを混ぜ合わせて本場感を出すのも◎
③トマトソース作り
もう一つのトマトソースも、作り方は超簡単。
フライパンに油をしき、トマトピューレに火を通します。
(フレッシュトマトでもOKですが、ピュレ状になるまで炒めてください)
火が通ったトマトピューレを、5:1に分けたすりつぶしニンニクのうち多い方と混ぜ合わせ、肉をゆでた後のスープを大さじ4杯入れます。
これでトマトソースも完成!
お好みでスパイスなどを入れてピリ辛にしても美味しいと思います。
いざヒンカルを実食!コーカサス流の食べ方
こうしてできあがったヒンカル。(のぶよは一切何もしていないが)
一口食べた瞬間の感動たるや…
もうチュルッチュルの極みでした。中華料理のワンタンに近い食感です。
肉の旨味が染み出したスープでゆでられているので、生地自体に味がちゃんとついているのもポイント。
好みで二種類のソースを絡めながら食べることもでき、もう無限ヒンカルができそうです。
今回は予算の都合上鶏肉を使いましたが、本場のヒンカルは牛肉か羊肉だそう。
鶏肉なのでホロホロ…ではありませんでしたが、じっくり煮込んだ牛肉のヒンカルなら、さぞかしお口の中でとろける食感が味わえそうです。
ヒンカルの肉は、あえて骨からそぎ落とすことはしません。(種類によっては調理後に切り分ける)
両手を使って豪快にかぶりつくのがコーカサス流と、なんともダイナミックな一品ですね。
食後にはさきほど残しておいた肉と生地のゆで汁をスープとして飲むのが定番だそう。
なんだか、日本の「そば湯」に似た面白い文化だなと感じます。
おわりに
ヒンカルに関して一切の知識がなかったのぶよですが、ルームメイトのロシア人に色々と「ヒンカルうんちく」を聞かされていたら、なんだかもっと知りたくなって書き始めたのがこの記事でした。
初めてながら大満足の食文化体験となったヒンカル。
日本ではほとんど聞かない料理だと思いますが、材料も少なく、色々とアレンジもできそうです。
・未だかつてないチュルッチュル食感
・旨味がギュッと染み込んだ肉
・がっつりニンニクが効いたソース
と、エキゾチックな食体験となることをを保証します。
(まじで美味しすぎて、ルームメイトのロシア人がすごい人に見えたレベル)
家族や友達同士での料理作り会のメニューとして皆で作れば、きっと盛り上がること間違いなし!
コーカサス伝統の味を日本でも再現してみてはいかがでしょうか。
コメント
ヒンカリは知ってましたがヒンカルは全く知りませんでした。シンプルな材料なのに独特な食感になるのが不思議です。
チーズと合わせても美味しそうですが、ロシアの方からしたら邪道なんでしょうか?
タカアキ様
コメントありがとうございます!
「ヒンカル」という料理名を初めて聞いたとき、冗談かと思ったくらいです。食感のポイントは極限まで生地を薄くのばして卵を入れることなのではないかな。と。
地域によっては(アゼルバイジャン西部など)、クリームチーズのような乳製品と合わせることもあるようです。
小さなエリアながら、地域色豊富な点も面白いですね!