こんにちは!アルメニア滞在もすでに4ヶ月!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア北西部に位置するシラク地方の見どころをまわっている今日この頃。
この地域の長い歴史を象徴するような、浪漫あふれるスポットを見つけてしまいました。
それが、今回紹介するジラピ村のキャラバンサライ(Jrapi Caravanseray)。
1000年前に造られたキャラバンサライは、日本語で言うなら「隊商宿」。
アルメニアは、かつてシルクロード交易の中継地点として大いに栄えた地域。
東西を行き交う商人たちの休息地や交易地として活気に満ちあふれていた、古き良き時代を現在に伝える存在。それがキャラバンサライです。
今回の記事は、ジラピのキャラバンサライの観光情報を解説するもの。
1000年前の隊商宿の跡地は、「栄光の時代も今は昔」とばかりに物寂しさばかりがただよう場所。
異国の言葉が飛び交う喧騒に、家畜やスパイスの匂い、談笑する人々の笑い声に満ちた当時の光景が目を閉じれば浮かんでくる…
そんな浪漫あふれる場所へと、タイムトラベルに行きましょう!
ジラピ村のキャラバンサライ(隊商宿)の歴史と見どころ
キャラバンサライ(隊商宿)
シラク地方の荒涼とした大地を見渡す小高い丘の上。
立派な石造りのアーチが印象的な建造物がジラピ村のキャラバンサライです。
建造は11世紀(1000年前)のことで、中世アルメニア王国の黄金期にあたる時代。
遥か東方から西へ西へと進んできた商人たちの寝床&交易の拠点として築かれたものです。
ジラピのキャラバンサライは、この地域で採れるトゥファ(Tufa)という石で造られたもの。
黒っぽい石とオレンジの石が見事に組み合わされており、完璧な曲線を描いたアーチには圧倒されます。
キャラバンサライがあるジラピは、かつては中世グルジア王国(現在のジョージア)と中世アルメニア王国の首都・アニ(現在はトルコ領)を結ぶ、交易の要衝だった地。
多くの商人がこの場所に立ち寄り、各地域の特産品や珍しい骨とう品を見せ合ったり、交換したりしていたのでしょう。
耳を澄ませば、彼らが一日の終わりに酒を飲みながら話す声が聞こえてきそうです。
キャラバンサライは、遥か昔から多くの男たちが集っては酒を飲み明かしていた場所。
のぶよが訪れた際にも、地元のおじさんたちが昼間から酒盛りしていて、得体の知れない外国人に謎の自家製ウォッカを飲ませてくれました。
シルクロード時代から脈々と受け継がれる飲みニケーション文化、ここに健在です。
ジラピのキャラバンサライは、長さ31m/幅13m強とそこまで大きな規模ではないものの、保存状態はかなり良好。
積み上げられた石の一つ一つに、往年の人々の記憶が詰まっているよう。
そんな神秘的な雰囲気に包まれていました。
説明書き等は一切なく、どこがどのように利用されていたのかは想像に頼るしかないのが残念。
しかし、実際に訪れてみればきっと「ああ、ここで雨風を凌いでいたんだろうな」「ここで商品を交換していたのかな」なんてイメージが膨らむはず。
古き良き中世アルメニアへの、浪漫あふれるタイムトラベル体験。
ここ以外ではなかなかできるものではありません!
ジラピ教会
キャラバンサライのすぐ横に建つのが、1874年建造のジラピ教会(Jrapi church)。
黒い石造りを基調に、オレンジの石がポイントカラーのように使用された美しい外観が素敵です。
教会自体の歴史は浅いものの、シラク地方の広大な大地を見渡すロケーションが、ジラピ教会の最大の魅力 ▼
教会の内部はかなり質素な雰囲気。
現役の祈りの場として機能しており、ジラピ村の人々の信仰を集める場所となっています。
ジラピ教会のすぐ東側には、11世紀に建設されたオリジナルの教会跡が残ります ▼
こちらは、キャラバンサライと同時代の11世紀に建造されたものだそう。
その後、12世紀にこの地を支配したイスラム教勢力・セルジューク朝によって破壊されてしまったとされ、中世アルメニアの激動の時代を静かに伝えています。
ジラピ村のキャラバンサライへのアクセス
キャラバンサライが位置するのは、シラク地方の中心都市・ギュムリから南に50kmほど離れたジラピ村(Jrapi /Ջրափի)の近郊。
アクセス拠点はギュムリ一択で、以下の3通りの方法があります。
キャラバンサライ&教会観光は30分~1時間ほどみておけば十分。
同じ方面にあるイェレルク聖堂とセットでまわるのがおすすめです!(個人でも余裕で2か所まわれるはず)
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ギュムリでタクシーをチャーターしてしまうこと。
ギュムリ~ジラピのキャラバンサライ間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台15000AMD(=¥3577)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするなら、ジラピ村が位置するシラク地方南部の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
(もちろん料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
・イェレルク聖堂(Yererouk)
・ハイカゾル展望台(Haykadzor viewpoint)
・ハリチャヴァンク修道院(Harichavank Monastery)
・ルンバタヴァンク修道院(Lmbatavank Monastery)
とはいえ、いくらタクシーをチャーターしようと、上に挙げた見どころをすべて一日でまわるのはかなりハード。
シラク地方の道路状況はかなり悪く、上の見どころも距離的にはそれぞれ近いものの移動には想像以上に時間がかかるためです。
(特に、ハリチャヴァンク&ルンバタヴァンクは別の日にまわるのが◎)
日帰りでまわるなら、同じ幹線道路沿いに位置する イェレルク聖堂 + ハイカゾル展望愛 + ジラピのキャラバンサライ の3ヶ所にしておくのがおすすめです。
②マルシュルートカ
ギュムリからキャラバンサライがあるジラピ村(Jrapi / Անիպեմզա)間は、さらに先にあるアニペムザ村行きのマルシュルートカ(公共ミニバス)が経由します…が。
1日1往復と便数はかなり少なく、早朝にアニペムザ発/13:30にギュムリのバスステーション発という旅行者的には超絶不便なスケジュール。
アニペムザ村やジラピ村の人がギュムリに買い物に出るための便なのでしょう。
マルシュルートカ利用の場合は、このエリアに一泊することになる(そしてホテル等はない)ため、現実的には難しいかもしれません。
(後述の鉄道利用と上手に組み合わせればやってやれないことはないけど)
③鉄道
「マルシュルートカの利用が非現実的=個人ではアクセスできない」と考えるのはまだ早い!
キャラバンサライ最寄りのジラピ村には鉄道駅があり、1日3往復しているギュムリ~エレバン間を結ぶ各駅列車が停車するのです。
のぶよも実際にギュムリから鉄道を利用してジラピのキャラバンサライへアクセスしましたし、時刻表もかなり正確。
個人でまわってやろう!という旅人たち、やってやれないことはありませんよ!
①ギュムリ→ジラピの鉄道移動(往路)
まずは、ギュムリの鉄道駅からジラピ駅(Jrapi /Ջրափի)へと向かいます。
ギュムリ~エレバン間の普通列車は、曜日や時期にかかわらず1日3本のみ。
タイムテーブルも固定されています ▼
ギュムリ発 | ジラピ着 | エレバン着 | |
普通 | 7:45 | 8:18 | 10:57 |
普通 | 11:55 | 12:30 | 15:05 |
普通 | 18:15 | 18:47 | 21:23 |
旅行者が利用できるのは、現実的にギュムリ発7:45か11:55の二つのみ。
11:55発の鉄道を利用しても、ジラピのキャラバンサライだけを日帰りで観光してギュムリに戻ることは時間的に可能です。
いっぽう、このエリアのもう一つの見どころであるイェレルク聖堂もセットで訪れる場合は、ギュムリ発7:45の一択となります。
チケットの購入は、何時の鉄道を利用するかによって変わるので注意。
・7:45ギュムリ発:列車内で購入(駅のチケットオフィスが開いていない)
・11:55ギュムリ発:駅のチケットオフィスで購入
いずれも運賃は300AMDと同じ。
「もはや全部列車内で購入するスタイルに統一してチケットオフィス廃止すれば良いのに…」と思ってしまいますが、そんな非効率的な謎システムもアルメニアあるあるです(笑)
ジラピ駅→キャラバンサライの徒歩移動
ギュムリを出発して30分少々、スケジュールぴったりに列車はジラピ駅に到着します。
ジラピ駅は完全なる無人駅。
念のために帰りの電車の時刻を確認しておきたいところですが、まあちゃんと時刻表通りにやって来るのでご安心を。
アルメニアで最もトルコに近い駅
地図を見るとすぐにわかりますが、ジラピ駅が位置するのはトルコ国境まで2km足らずの国境地帯。
駅が設置されている場所としては、ここがアルメニアで最もトルコに近い地点となります。
ジラピ駅のホームからは、数軒の民家とアルメニア側の監視施設が見え、その向こうにある水が枯れた貯水池の向こうはもうトルコ領。
トルコ側の国境監視施設も肉眼で見えますが、トルコ~アルメニア間は国境が閉鎖されているため行き来は不可能。
「目と鼻の先に見えるのに行くことはできない、かつての大アルメニア王国の領土」を望む望郷の地となっています。
ジラピ駅からは、東へとのびる一本道を2kmほど延々と歩いて行くだけ。
ボコボコの道路を歩くこと20分ほどで、幹線道路へと合流します ▼
幹線道路に合流したら、キャラバンサライはもう目と鼻の先。
ゆるやかな丘を200mほど登れば到着です。
ジラピ駅→ギュムリ間(復路)
ジラピのキャラバンサライ観光後にギュムリへと直接戻る場合は、往路の行程をそのまま逆にたどるだけ。
注意したいのが、ジラピ駅→ギュムリ間の鉄道のタイムテーブル。
エレバン発 | ジラピ駅発 | ギュムリ着 | |
普通 | 7:55 | 10:30 | 11:03 |
普通 | 14:25 | 16:56 | 17:30 |
普通 | 18:25 | 21:15 | 21:46 |
現実的に利用できるのは、ジラピ駅発16:56の便に限られるのではないでしょうか。
万が一これを逃してしまうと、何もないジラピ村で夜になるまで待つことになってしまいます。(想像を絶するくらいに、何もありません)
ジラピ駅~キャラバンサライ間は、ゆっくり歩いても30分ほど。
逆算すると16:15くらいまでには観光を終えて、駅へと歩き始めるのがベストです。
ギュムリへと戻る列車も、アルメニアとは思えないような正確なスケジュールでジラピ駅へと停車します。
無人駅のジラピ駅ではチケットの購入はできないので、乗車後に列車内で直接係員から購入すればOK。(運賃も同じです)
イェレルク聖堂とセットで観光する場合
ジラピのキャラバンサライから15kmほど南に離れた場所に位置するイェレルク聖堂(Yererouk)。
せっかくなので、ジラピのキャラバンサライとセットで観光してしまうのが効率的です。
タクシーでまわる場合は深く考える必要はありませんが、個人で鉄道を利用して二つの見どころを周る場合は、綿密なプランニングが必須。
というか、鉄道の本数が限られているために、自動的に以下のスケジュールになります ▼
往路は、ギュムリ発7:55の始発一択。
このプランなら、ある程度の時間の余裕をもちながら二つの見どころをまわれます。
のぶよの場合、③ジラピのキャラバンサライで時間があり余っていたので、ヒッチハイクで⑥イェレルク聖堂まで楽々移動しました。
こればかりは個人の好みやリスク管理によりますが、このあたりの人は親指を上げずとも停まってくれるくらいなので、挑戦してみるのも良いかも。
ジラピ村のキャラバンサライ観光時の注意点
暑さ対策
ジラピ村があるシラク地方は、夏は灼熱&冬は極寒という気候の地域。
冬にわざわざこんな僻地を訪れる人は少ないでしょうが、夏場の観光なら暑さ対策はしっかりとしておきましょう。
帽子や日焼け止めなどは必須です。
飲食物は持参
ジラピのキャラバンサイライと最寄りのジラピ村には、食堂のような施設は一切ありません。
(商店はジラピ村内に数軒あった)
また、この辺りはとにかく一面の荒野がずーーっと続く地域。
飲料水が出ている場所も見当たりませんでした。
飲料水や軽食など、必要なものは全て持参して訪れるのが基本となります。
パスポートは絶対に携帯
地図を見れば一目瞭然なのですが、ジラピ村はトルコとの国境までたった2kmという国境地帯。
アルメニア軍の国境監視部隊が常駐しており、外国人を見かけると身分証明書の提示を求められる可能性が大きいです。(のぶよも2回ほど止められてパスポートを提示させられました)
いらぬ問題に巻き込まれないためにも、パスポートは必ず携帯して訪れるようにしましょう。
特に問題なければ、数分のパスポートチェックで終わるので、気にすることでもありません。
(「アゼルバイジャンに渡航歴がある」とかだと100%チェックが念入りになるので面倒かも)
トルコ国境が目と鼻の先のエリアとはいえ、治安的に問題があるわけではないので、その点はご安心を。
おわりに
中世アルメニア王国の繁栄を現代に伝える、ジラピ村のキャラバンサライの観光情報を解説しました。
アルメニア国内にいくつか残るキャラバンサライの中でも、個人でのアクセスが最も簡単な部類である点も嬉しいです。
キャラバンサライ&教会の観光は30分~1時間ほどみておけば十分なほど。
近郊には他にも魅力的な見どころが点在しているので、セットでまわることをおすすめします!
コメント