こんにちは!アルメニア南部のヴァヨツ・ゾール地方をのんびりと旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ヴァヨツ・ゾール地方の最も東、標高2500m~3000mの山々に囲まれたジェルムックは、
アルメニアはもとより、旧ソ連を構成していた国々では絶大な知名度を誇る町。
その最大の理由が、アルメニアを代表するミネラルウォーターの産地であるためです。

同名の”Jermuk”という名前で売られるミネラルウォーターは、ジェルムックを取り囲む山々から湧き出す微炭酸の味わいが特徴的。
アルメニアで最もポピュラーなミネラルウォーター銘柄としての座を確固たるものとしています。

そんな名水の町・ジェルムックには、ミネラルウォーターとは別に温泉が湧いていることでも有名。
古くは10世紀にこの地を治めたシュニク王国の王たちに愛された黄金色の温泉は、ジェルムックの町全体に引かれ、旅行者でも入浴することが可能なのです。
ジェルムックで温泉三昧の滞在をするなら、温泉ホテルやお洒落スパリゾートもありますが、アルメニアならではの体験をするならサナトリウムという施設に宿泊してみるのがおすすめ。
ソ連時代に建設された長期療養用の滞在施設で、まるでソ連時代にタイムスリップしたかのような雰囲気の中でジェルムックが誇る温泉を五感で満喫することができるのです。


サナトリウムのシステムはやや独特で、馴染みのない日本人旅行者には少し難しい部分も。
英語はいっさい通じず、ロシア語かアルメニア語のみですし、一般的なホテル滞在とは色々と異なる部分が多いです。
…というわけで、のぶよの出番!
今回の記事は、ジェルムックのソ連サナトリウムでの宿泊に関してがっつりと解説するものです。
どんなトリートメントが受けられるのか、食事のシステムはどうなのか、そもそもサナトリウムとは何なのか…といった基本的な部分もしっかり解説。
これを読めば、言葉が分からずともとりあえずサナトリウムでの滞在が問題なくできる!といった内容になっています。
サナトリウム宿泊は、まさにアルメニアならではの体験。
ユニークな滞在は、アルメニア旅行の鮮烈な思い出となるはずです!
ソ連時代の保養地・サナトリウムとは?

日本人にとってはあまり馴染みのない「サナトリウム」という言葉。
ひとことで言うなら「長期療養施設」といったところです。
かつては不治の病とされていた結核患者の隔離&療養施設として建設されたのがはじまりで、ヨーロッパ~旧ソ連圏にかけてポピュラーになりました。
医学の発展により結核の猛威が落ち着くと、サナトリウムはそれまでの「結核療養所」という性格の場所から、あらゆる体の不調や病気を自然療法で改善するための長期滞在施設といった性格に。
喘息や各種アレルギー、骨の異常などを、自然にあふれた環境の中で自分のペースで治していくことが、サナトリウム滞在の第一の目的になっていきます。


サナトリウムが建設された場所にはいくつかの条件があり、まずは空気が良い高原や適度な湿度がある海沿いがメイン。
他にも、ミネラルを含む水/温泉が湧いていることも大切な条件とされ、水や温泉を用いた各種トリートメントを定期的に受けながら、綺麗な空気の中でリフレッシュすることが奨励されています。
分かりやすく言うなら、日本でも伝統的に行われてきた「湯治」に似た滞在スタイルで過ごすのがサナトリウム。
日本の湯治とは、健康増進に効果があるとされる温泉が湧く地に長期滞在しながら、温泉の効能で病気を療養しようとするもの。
ソ連時代に広まったサナトリウムも西洋医学の力に頼るのではなく、自然療法で病気の改善を目指すという点で、日本の湯治と共通している部分があります。
ジェルムックのソ連サナトリウムに泊まってみた

というわけで、自然の力をふんだんに用いた各種セラピーで、心身ともに健康になれるのがサナトリウム。
ジェルムックにはソ連時代に建設されたサナトリウムがいくつかありますが、今回のぶよが宿泊したのはArarat Health Spaという場所。
1泊3食付き+各種温泉療養トリートメント付きで15000AMD(=¥6000)と破格の宿泊費でした。
ここからは、実際にサナトリウムに滞在したようすを解説していきます。
初めての人には分かりにくいトリートメントの流れやその他のシステムに関してもしっかりと解説しているので、実際に訪れる人には参考となるはず!
そもそもサナトリウムをどうやって予約する?

ジェルムックの場合、いくつかのソ連サナトリウムはBooking.comなどの宿泊予約サイトにも掲載されています。
料金は直接予約でも宿泊サイト経由でも変わらない場合がほとんどですが、1週間単位の長期滞在の場合は専用のパッケージが用意されている場合も。
長期滞在パッケージを利用したい場合はネット上では予約できないので、直接電話予約等をする必要があります。
宿泊予約サイト経由で予約を済ませたら、あとは当日サナトリウムへ直接向かうだけ。
予約は向こうにもちゃんと伝わっているので、問題なくチェックインができます。
ソ連感ただよう部屋

Ararat Health Spaの客室には、利用する人数や価格によっていくつかのグレードがあるよう。
お洒落な調度品が置かれたスイートルームや、家族向けのファミリールームなど色々とありますが、一人用の最もベーシック(&最も安い部屋)はこんな感じです。
ソ連時代からそのままの年季の入った空間ながらも、綺麗にはされており、清潔さには問題なし。
設備は老朽化が目立ちますし、壁紙が一部剥がれた箇所なども見受けられますが、まあその辺もひとつの「味」だと思います。


サナトリウムの客室というのは、どこも周辺の自然風景を存分に味わえるような眺望があるもの。
Ararat Health Spaに関しても例外ではなく、大きな窓の外には施設の目の前に広がるジェルムックの雄大な自然風景が広がります。

昼間でも微妙に薄暗い廊下の感じも含め、そこはかとないソ連時代の雰囲気が漂う館内。
なんとも言えないレトロな感じは、日本の昭和の温泉ホテルに少し似たような雰囲気です。
サナトリウム内の施設

ソ連時代のサナトリウムは「施設から一歩も出ずとも滞在できる」ことがウリの療養施設。
ここArarat Health Spaにおいてもその伝統は受け継がれているようで、館内には温泉浴場や食堂、軽食類や飲み物を売る売店…など、滞在時に必要な施設がすべて揃っています。
多くの宿泊客は長期滞在&疾患を抱えているためあまり外出ができない…というサナトリウム特有の事情があってなのか、遊戯施設も充実しているのが興味深いところ。
日本では「温泉旅館=卓球」という絶対条件(?)がありますが、ここアルメニアでもサナトリウム=卓球であるようす。
また、アルメニアの国民的スポーツでもあるチェスの遊技場も用意されています。▼


他にも、長期滞在の宿泊客を退屈させないようなイベントもしばしば開かれているよう。
ここArarat Health Spaでは毎晩「ダンス大会」が開かれているそうで、アルメニアンな音楽に合わせてみんなでひらひら踊るという謎の状況を楽しむこともできます。

内装のセンスだったり、カーテンの感じだったり、「なぜこの場所にこれを置いた?」と疑問に感じるような物の配置だったり…サナトリウム内のセンスは総合的にソ連。
まずは、医者の問診

サナトリウムに到着してチェックインを済ませると、まずは医者による問診を受けるように受付の人に言われます。
サナトリウム=療養施設であるため、健康な人であっても各種トリートメントの利用には問診が必須。
医者と一対一で会話しながら、体の不調の詳細や必要な療養について相談することができます。


医者による問診は、10分ほどの短いもの。
「アレルギーはあるか」「呼吸器の疾患はあるか」「心臓の疾患はあるか」「筋肉痛はあるか」…といった基本的な質問が続きますが、あいにくのぶよは何一つ問題のない健康体。
「なんでこいつはここに来たんや…」とばかりに笑いを隠せない医者によっておすすめされたのは、以下の三つのトリートメントでした。▼

のぶよが受けることになったのは、ハーブティー治療(すんごくソ連っぽい)、温泉蒸気吸入セラピー、温泉入浴の三つ。
人によっては磁力治療やマッサージ、超音波セラピーなど、必要に応じた施術が受けられるのだそうです。
Ararat Health Spaでは、日曜日は全てのトリートメントがお休みとなります。
そのため、土曜日~日曜日にかけての宿泊だと、時間的にトリートメントが受けられない可能性も。
満足のゆくサナトリウム体験のためにも、宿泊する曜日はよく考えてプランニングしましょう。
温泉づくしのトリートメント
医者に発行してもらったトリートメントの紙には、受ける施術の内容と部屋番号、時間が記載されています。
あとは指定された時間にこの紙を持って指定された部屋に行くだけ。
流れ作業のような感じで、指定されたトリートメントを受けることができます。

▲のぶよの場合は、ハーブティー療法から。
旧ソ連圏ではハーブティーの効能が強く(行きすぎなほど)信じられており、「体調が悪い時はハーブティー!」「ニキビができたらティーバッグを顔に当てる!」といった謎の民間療法が、現在でも広く行われています。
そんなハーブティーですが、とにかく激マズでした(笑)
なんとジェルムックに湧き出る温泉水で山のハーブ数十種類を煮出して作っているのだそうで、もう苦すぎて変な味すぎて…
まあ「良薬口に苦し」とはよく言いますし、これも健康のためです…
激マズハーブティーで若干げんなりしたところで、お次は温泉蒸気吸入セラピーへ。
その名の通り、ジェルムックに湧く温泉の蒸気にエッセンシャルオイルを混ぜたという液体を熱し、その蒸気を10分ほどかけてひたすら吸うというものです。▼


こちらは、ハーブティーとは異なり、かなり快適な体験。
鼻の通りがスッキリするような気がしますし、体の内側からリフレッシュしたような気分になりました。
そしてラストは、お待ちかねの温泉!
Ararat Health Spaには自家源泉を有する温泉療養コーナーがあり、専門家の指導の下で入浴することができるのです。▼


ジェルムックの温泉はミネラルをものすごく多く含む泉質で、かなり強い効能を持つそう。
そのため、一回の入浴は最大で10分までと決められており、日本の温泉のように1時間も2時間ものんびりと浸かることはできません。
浴場は大浴場ではなく、半個室のような空間に年季の入ったバスタブが設置されたTHE・ソ連サナトリウム式。
担当のおばちゃんにお湯を溜めてもらい、いざ浴槽へ…!▼

少し緑がかった黄金の温泉は、湯温40℃ほどと超適温。
さらりとした湯ざわりのお湯からは鉄っぽい鉱物臭がぷんぷんと漂い、なんだかとても健康に良さそうです。
5分ほど浸かっていると、少し肌がピリピリするような感覚が。
「ジェルムックの温泉はとにかく成分が濃い」という前評判の通りのようで、確かにこれは10分以上の入浴は逆に良くないのかもしれません。
心も体もリラックスしたあとは、いよいよサナトリウムご飯の時間です!
サナトリウムの食事

Ararat Health Spaでは、宿泊料金に3食分の食事が自動的についてきます。
初心者にとってややこしいのが、お食事券の発行システム。
ただ食堂スペースに直接行けば良いというわけではなく、お食事券を自分で発行してそれを持参する必要があります。


▲チェックイン時に渡されるお食事券発行のカードを、受付横にある機械に通すと、シンプルな画面でお食事券の発行がされます(超簡単なので実際にやればわかる)。
食事の時間は、発行されたお食事券に記載されている通りいちおう決められていますが、そこまで厳しくない印象。
あとはこのレシートのようなお食事券を持って、食堂スペースの大広間へと向かいましょう。▼

この「大広間に宿泊客みんな集まって食事」というのも、どことなく日本の温泉ホテルを思い出させるもの。
外国人宿泊客など他にいるはずもなく、アルメニア人宿泊客オンリーなので、迷い込んできた外国人はものすごい勢いで注目を浴びます(笑)
食事は、朝昼晩にかかわらずバイキング形式。
好きな物を好きなだけ取って食べることができ、もちろんおかわりもし放題です。


宿泊費に込みの食事というわけで、のぶよは食事に全く期待していなかったのですが、実際に訪問してみてびっくり。
食事メニューはバラエティー豊富で、朝昼晩と異なるものが日替わりで提供され、それでいて味も結構美味しいのです。
「蕎麦の実とちっちゃいカツレツとパンみたいな感じだろう」と何一つ期待していなかったため、この食事の内容には大満足。
基本的にはアルメニアでよく食される家庭料理やスタローヴァヤ(大衆食堂)の定番料理がずらりと並びます。

「サナトリウム=療養施設」というわけで、病院食のようなものをイメージする人もいるかもしれませんが、全くもって真逆。
味つけも結構しっかりめで、肉や野菜や各種主食や…と様々な食材を用いたメニューが食べられます。
サナトリウム滞在中の過ごし方

サナトリウムに宿泊している人たちのほとんどは、何かしらの疾患を抱えており、それを療養する目的で滞在しているもの。
あまり長距離を歩くことはできないという人も多いためなのか、サナトリウムを出てすぐの場所には散策にぴったりな公園が整備されています。


他にも、サナトリウムから徒歩5分の場所には、ジェルムックが誇る温泉水が湧き出す「水のギャラリー」。
もう少し足をのばせば、渓谷地帯に敷かれた遊歩道や、ジェルムック観光のハイライトとなるジェルムックの滝などの見どころもすぐです。

ジェルムックとその周辺にはとにかく見どころがたくさんあるので、サナトリウムに滞在しながら色々と足をのばすのがおすすめ。
のんびりとトリートメントを受ける日とガッツリ観光する日を分けても良いですし、午前中にトリートメント/午後に市内観光…とするのもアリ。
自分に合ったスタイルで滞在できるのが、ジェルムックのソ連サナトリウムの魅力です。
ジェルムックの見どころやアクセス情報の記事は現在執筆中です!
おわりに:ジェルムックのソ連サナトリウムの魅力とは?
ジェルムックのソ連サナトリウムの宿泊レポートを解説しました。
温泉を用いたトリートメントも、ソ連感あふれる雰囲気も、意外と美味しくて豪華な食事も…ジェルムック滞在を思い出深いものとする要素がたくさんあります。
のぶよ的にソ連サナトリウム滞在で最も印象的だったのが、この場所で長期の療養生活をする人たちの感じ。
いわば、宿泊客たちの毎日は温泉トリートメントを受けてご飯を食べて寝て…といったルーティーンであるため、良くも悪くもみんな暇なのです。
そのため、ひょっこりと迷いこんできた外国人なんて、そこはかとない興味の対象。
めちゃくちゃ話しかけられますし、子供たちも放っておいてくれません。
また、多くの人が長期で滞在している=毎日顔を合わせるということもあり、サナトリウム全体が一つの大家族のようなアットホーム感に包まれていたのも印象的。
従業員の人たちも毎日同じ顔触れなので、自然と会話が生まれ、輪の中にじんわりと入っていくことができます。
とにかく、他ではなかなか体験できないソ連時代のサナトリウム滞在。
ジェルムック観光を考えている人は、ぜひ一泊はしてみて、ソ連時代そのままの雰囲気に身を浸してみては?(ほんと、かなり面白いのでおすすめ)
【ジェルムックの宿の予約はこちらから!】
コメント