クマイリ地区散策モデルコース&36の見どころ
①「おはようの家」 必見!
②ホヴハンネス・シラスのハウスミュージアム
③アヴェティック・イサハキアン・ミュージアム
④ムヘル・ムクルチヤン・ミュージアム
⑤コーニス・デザインの家
⑥聖ヌシャン教会 必見!
⑦ヴィラ・カルス
⑧テラスと木製扉の家
⑨ミニシアター 必見!
⑩ギュムリで一番お洒落なカフェ
⑪木製テラスの家 必見!
⑫昔ながらの民家が残る裏道
⑬音楽学校
⑭アレクサンドロポル醸造所
⑮Poloz Mukuch 必見!
⑯Florence
⑰ピンクの建物 必見!
⑱絶品ピロシキ店 必見!
⑲ビールバー&映画の中庭 必見!
⑳ティクニカイン・タトロン人形劇場
㉑Gyumri Garden House
㉒アスラマジヤン姉妹ギャラリー 必見!
㉓カーク・カーコリアン像
㉔オクトーバー・シネマ
㉕アルメニア最古の床屋 必見!
㉖Ani Photostudio 必見!
㉗二階建て木製テラスの家
㉘テクノロジーセンター
㉙旧美術学校
㉚映画のテラスの建物 必見!
㉛おしゃれドア
㉜カラフルゲート
㉝ユズバショフの家
㉞ギュムリ最古の中学校
㉟三連テラスの建物
㊱黒のお屋敷&プルプラク
ここまで読めば、クマイリ地区散策に必要な知識はバッチリ!
いよいよ、実際に歩いていきましょう。
今回紹介する散策コースは、クマイリ地区内の縦5本・横3本のストリート沿いの見どころやフォトスポットなどを、くまなく巡るもの。
ギュムリの中心に位置するヴァルタナンツ広場(Vardanants Sq.)が基点となります。
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スタート地点となるのは、ヴァルダナンツ広場の北側に建つヨト・ヴェルク聖堂(Yot Verq)。
真っ黒な外観が特徴的で、ギュムリの人々の信仰の中心として機能している聖地です。
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ゴール地点となるのは、ヴァルダナンツ広場の南側に建つアメナプルキッチ聖堂(Amenaprkich)
黒とオレンジの独特の色合いの聖堂で、ギュムリのシンボルとして絶大な知名度を誇ります。
各聖堂の見どころに関しては、ギュムリの観光まとめ記事内(執筆中)で解説予定です!
(ただでさえもの凄いボリュームの当記事が恐ろしいことになってしまうので…)
シャフミャン通り
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ヨト・ヴェルク聖堂から散策をスタートしたら、シャフミャン通り(Shahumyan St.)を北へと進んでいきましょう。
美しい石畳のストリートを馬車が駆け抜ける光景を目にしたら、もう一瞬でクマイリ地区の虜に…!
ギュムリ出身の文化人の家を改装したハウス・ミュージアムもいくつか点在しているので、散策の序盤から「さすが文化の中心都市!」と感動するはずです。
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シャフミャン通りは、クマイリ地区の東側の境界線となるストリート。
これよりさらに東側はギュムリの中心街エリアにあたりますが、クマイリ地区とはガラリと雰囲気が変わるのも面白い点です。
①「おはようの家」 必見!
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クマイリ地区散策で最初の見どころが「おはようの家」(house of good morning / Բարի լույսի շենք )と呼ばれる建物。【地図①】
もともとはレストランとして営業していたようですが、1988年の大地震をきっかけに廃業。
現在まで内部は半壊した状態のままで放置されています。
この建物が「おはようの家」と呼ばれる理由は、窓とその周囲に施された装飾が、朝起きて一番最初に見る鏡のように見えるからなんだとか ▼
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内部に立ち入ることはできませんが、外から眺めるだけでも圧巻。
クマイリ地区らしい重厚な建築様式と細やかな装飾…必見です!
②ホヴハンネス・シラスのハウスミュージアム
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黒とオレンジの石造りが印象的なこちらの建物は、ホヴハンネス・シラスのハウスミュージアム(Hovhannes Shiraz home and museum)。【地図②】
ホヴハンネス・シラスとは、ソ連時代に活躍したギュムリ出身の詩人。
アルメニアでは知らない者はいないほどの有名な人物で、ユーモア溢れる人柄が現在でも語り継がれています。
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現在はミュージアムとなっている建物自体は1886年の建造で、もともとは裕福な商人が住んでいたもの。
建設から100年以上が経った1983年にソ連政府からシラスに譲渡され、翌1984年に亡くなるまでの短い期間を彼はこの場所で過ごしました。
③アヴェティク・イサハキアン・ミュージアム
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濃淡が美しい黒い石造りの建物が、1875年にこの場所で生まれた詩人・文筆家のアヴェティク・イサハキヤンのミュージアム(Avetiq Isahakyans Museum)【地図③】
アルメニアはもちろん、ティフリス(現在のトビリシ)や欧州各国で活躍し、20世紀初頭の激動の時代を生き抜いた人物です。
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1915年に西アルメニア地域(現在のトルコ)でアルメニア人大虐殺が起こった際には、アルメニア人の団結を唱えたイサハキアン。
近代アルメニア史の象徴的な文化人として知られ、10000アルメニアドラム札のデザインにもなっているほどに有名な人物です。
④ムヘル・ムクルチヤン・ミュージアム
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ハウスミュージアムが点在するシュマニャン通りラストの見どころは、ムヘル・ムクルチヤン・ミュージアム(Mher Mkrtchyan Museum)【地図④】
ムヘル・ムクルチヤンとは、ソ連統治時代の1960年代に活躍したギュムリ出身の俳優のこと。
この町が舞台となった作品にも多く出演しており、ギュムリの人々が誇りに思う存在です。
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彼の出演作品で最も有名なものの一つが、“The Tango of Our Childhood”。
クマイリ地区にはこの映画のロケ地が点在していて、当記事内でも⑲ビールバー&映画の中庭や㉚映画のテラスの建物などを紹介しています。
ルスタヴェリ通り
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ムヘル・ムクルチヤン・ミュージアムから西へとのびるのがルスタヴェリ通り(Rustaveli)。
クマイリ地区を東西に貫く3本のストリートのうち、最も北側に位置しており、黒壁の建物がどこまでも並ぶ光景は圧巻。
他のストリートに比べても、よりいっそう調和がとれたエレガントな雰囲気です。
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ストリート名になっているルスタヴェリとは、約800年前の中世グルジア王国(現在のジョージア)で活躍した詩人、ショタ・ルスタヴェリ(Shota Rustaveli)のこと。
当時のアルメニアは中世グルジア王国の支配下にあったため、ジョージア人であるルスタヴェリはアルメニアでもポピュラーな人物となっています。
⑤コーニス・デザインの家
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優雅でこだわり抜かれたデザインの建物が並ぶルスタヴェリ通りを象徴する存在が、コーニス・デザインの家【地図⑤】
真っ黒な石造りの重厚感がすでに圧巻なのですが、注目すべきは屋根の少し下あたり ▼
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「コーニス」とは、建物上部をあえて壁面より出っ張らせたデザインのことで、クマイリ地区の建物のいくつかで見ることができます。
中でも有名なのがこちらの建物のコーニス・デザイン。
「ギュムリ全体で最も美しい」と言われるほどに、細部にまでこだわりぬかれた秀逸な職人技が見られます。
⑥聖ヌシャン教会 必見!
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ルスタヴェリ通りで一番高い建物であり、シンボル的存在が聖ヌシャン教会(Surb Nshan church)【地図⑥】
19世紀末の建造と比較的新しいもので、ギュムリらしい黒っぽい石で統一された外観が目を引きます。
内部はモダンに改装されていて、明るく温かな雰囲気 ▼
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聖ヌシャン教会はソ連時代に一度閉鎖され、鐘楼部分を展望台に改装するプランがでていたそう。
もちろん、歴史を大切にするクマイリ地区の人々がそれを許可するわけもなく、計画は頓挫。
ソ連崩壊とともに、再び信仰の場としての機能を取り戻しました。
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クマイリ地区のメインストリートであるアボヴィアン通りとルスタヴェリ通りに面して建つ聖ヌシャン教会。
黒壁のドーム型屋根が石造りの町並みの上に突き出している風景は、「これぞクマイリ地区!」と唸りたくなるほどに美しいものです。
⑦ヴィラ・カルス
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聖ヌシャン教会の向かいに建つのが、ヴィラ・カルス(Villa Kars)というゲストハウス。【地図⑦】
「アルメニアのベル・エポック(良き時代)」と称される19世紀後半の建造で、当時の美意識や豊かさを象徴するかのようなアールヌーヴォー調の建築様式が特徴的です。
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木製扉や玄関上部のデザイン、窓の周りの装飾にいたるまで…
クマイリ地区の建築の素晴らしさが凝縮されたような、秀逸な建物が必見です。
内装や中庭部分もこだわり抜かれたデザインだそう。
ロシア帝国時代そのままの雰囲気での宿泊ができるかも!(のぶよには完全に予算オーバーでした…)
⑧テラスと木製扉の家
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聖ヌシャン教会の向かいに建つテラスと木製扉の家も見逃せません。【地図⑧】
19世紀後半に建てられたもので、もともとは私立の小学校として利用されていたそうですが、現在は一般の住居となっています。
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まるでパリのアパルトマンのようなお洒落な雰囲気のテラスが目を引きますが、入口の木製扉の美しさも見逃せません ▼
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デザインの秀逸さはもちろん、少しはげた塗装も味わい深さを演出しているようです。
⑨ミニシアター 必見!
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聖ヌシャン教会から南にのびるアボヴィアン通りを少し進んだところにあるミニシアターにも寄り道してみましょう。【地図⑨】
ギュムリを中心に活動する小劇団のベースとなっており、入口のレトロな看板がとてもお洒落です。
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ミニシアターから北側を眺めると、石畳が敷かれたアボヴィアン通りと聖ヌシャン教会の美しい風景…
まるで古き良き時代のヨーロッパさながらの光景には息を呑むはず。
クマイリ地区の中でも一、二を争うほどの、絶好のフォトスポットだと思います!
⑩ギュムリで一番お洒落なカフェ
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聖ヌシャン教会からルスタヴェリ通りをさらに西へと進みましょう。
何の事前情報がなくとも、つい立ち止まってしまうほどの存在感を誇るのが、ギュムリで一番お洒落なカフェ【地図⑩】
統計をとったわけではなく、あくまでものぶよ個人の感想で「一番お洒落」と思うだけですが、実際に訪れてみると納得するはず。
1880年代建造の重厚な外観も、当時の内装を再現した店内も、とにかくすごく素敵なので。
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実は、ここギュムリは「カフェ文化が強く根付いている」と言われる町。
カフェにふらりと立ち寄って、のんびりと時間を過ごす地元の人の姿も多く見られます。
ギュムレツィ(=ギュムリの人)が好んで使う表現は、“Joie de vivre”(フランス語で「生きる喜び」)
どこまでもお洒落で粋な地元民にならって、ここで少し休憩していくのもおすすめです!
⑪木製テラスの家 必見!
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とにかく絵になる風景が目白押しなルスタヴェリ通りで、のぶよ的に最も味わい深いと感じたのがこちらの木製テラスの家【地図⑪】
もともとは支えなしで二階部分から張り出す形だったのでしょうが、現在は二本の柱に支えられ、かろうじてその姿をとどめている状態です。
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テラスの下にはベンチが設置されていて、たまに座っている地元民がいるのも絵になる風景。(テラスが崩れ落ちないかハラハラしたけど)
現在でも住人がいるようで、洗濯物が干されていた日も。
それもまた、クマイリ地区らしいローカルな雰囲気で良かったです。
⑫昔ながらの民家が残る裏道
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ルスタヴェリ通りから南にのびるゴルガニャン通り(Ghorghanyan St)へと少し入った地点。
警察署入口の向かいに、「THE・裏路地」といった雰囲気の小道があります。
ゴルガニャン通りとハコビヤン通り(Hakobyan St.)を結ぶ50mほどの短い路地ですが、これが昔ながらの民家が残る裏道【地図⑫】
石壁に挟まれた狭い階段を上っていくと、昔ながらの石造りの民家が建ちならんでいる光景が。
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そこら中にはためく洗濯物や、中庭で遊ぶ子供たちの姿…
ずっと前から変わっていないギュムリのローカルな風景がそこら中で見られます。
1988年の地震で多くの民家が倒壊してしまったクマイリ地区では、こうして昔ながらの生活エリアが残る小道は意外にも少ないので、貴重な風景だと言えるでしょう。
⑬音楽学校
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ルスタヴェリ通りの最も西に位置するこちらの建物は、音楽学校【地図⑬】
アルメニアの文化の中心都市として名高いギュムリで、若い才能を育てるために現役で機能している場所です。
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ギュムリらしい黒壁と、入口に施された装飾はもちろん、赤く塗られた雨どいのデザインまでおしゃれ。
ロシア帝国時代に鋳造業(金属を溶かして型に流し入れる加工法)で栄えたギュムリならではのこだわりなのかもしれませんね。
ジヴァニ通り
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クマイリ地区の西端となるのがジヴァニ通り(Jivani St.)。
北側はお洒落でシック、南側はローカルと、南北で大きく雰囲気が異なるのが特徴です。
この項ではジヴァニ通りの北側(ルスタヴェリ通りとガイ通りの間)の見どころを紹介します。
(南側は「クマイリ地区南側エリア」の項で紹介しています)
⑭アレクサンドロポル醸造所
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ジヴァニ通りで最も広大な敷地を占める巨大な石造りの建物が、アレクサンドロポル醸造所(Alexandropol brewry)【地図⑭】
1898年に建造&開業したビール工場で、当時の町の名を冠してこのように呼ばれています。
観光客向けの工場見学&試飲ツアーも開催されており(要予約)、ビール好きなら必ず立ち寄っておきたいスポットですね!
⑮Poloz Mukuch 必見!
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アレクサンドロポル醸造所の向かいに建つのが、Poloz Mukuchというレストラン【地図⑮】
黒とオレンジの石が見事に調和した建物は、クマイリ地区の中でも指折りの美しさ。
「この町がアレクサンドロポルと呼ばれていた時代の最高傑作」と評価されているほどだそうです。
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19世紀の建造当時は民家として利用されていましたが、1960年代にはパブとしてオープンします。
1990年代には高級レストランとしてリニューアルオープンし、アルメニアの著名人も多く訪れているほどにポピュラーなのだそう。
店名の「ポロス・ムクチ(Poloz Mukuch)」とは、ギュムリ出身の有名コメディアンのこと。
メニューにもギュムリらしさが見られ、キャラ(Qyala:牛の頭の煮込み)など、この地域の名物料理を堪能することができます。(のぶよ的には完全に予算オーバーなので行きませんでしたが…)
⑯Florence
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Poloz Mukuchのすぐ隣に位置するお洒落な二階建ての建物が、Florenceというレストラン。【地図⑯】
1階部分は黒い石壁、二階部分はオレンジの石壁と完全に分かれている斬新なデザインで、色の組み合わせはお隣の有名店・Poloz Mukuchと同じ。
もしかしたら、かなりのライバル意識があるのかもしれません…
メニューはギュムリの名物料理からアルメニア料理の定番、果ては店名が表す通りのイタリア料理まで。
こちらも予算はやや高めではありますが、開放的な雰囲気の中で少しおしゃれな食事をしたい場合には良いかもしれません。
ゴルキ通り
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アボヴィアン通りと並ぶクマイリ地区のメインストリートが、ゴルキ通り(Gorki St.)。
石造りの美しい建物が建ち並ぶ風景は、「THE・クマイリ地区」といった印象を受けますが、ローカルな民家も点在しているのが独特。
通り沿いから建物の中庭部分に立ち入ることができる場所もあり、昔ながらのギュムリの人々の生活を垣間見ることができます。
⑰ピンクの建物 必見!
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ゴルキ通りを代表する建築物&フォトスポットが、ピンクの建物【地図⑰】
木製扉と色褪せた壁、玄関上部の秀逸なレリーフなど、クマイリ地区の魅力をギュッと詰め込んだような19世紀後半の建物です。
観光客の間では結構有名な建物のようで、写真撮影に励む人たちの姿を多く見かけました。
⑱絶品ピロシキ店 必見!
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ゴルキ通りでぜひ立ち寄ってほしいのが、黒い石造りの小さな建物にある絶品ピロシキ店【地図⑱】
店の名前はついておらず、GoogleMapにすら載っていないのですが、絶えず近所の人々が出入りしている地域密着型の店といった雰囲気が好印象です。
各種パンを提供しているのですが、激推ししたいのがピロシキ(具入りパン)。
いくつか種類があるものの、のぶよのおすすめは鶏肉とキノコのピロシキです ▼
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ふわふわのパンの中には、鶏肉とキノコをハーブと一緒にソテーしたものがたっぷり。
キノコの旨味とほどよい鶏油…まじで美味しいです、これ。
そもそも、ピロシキの具に鶏肉が入ることは珍しいもの(普通は牛か豚のひき肉)。
エレバンなど他地域では見かけたことすらないので、もしかすると隠れたギュムリ名物なのかもしれませんね。
⑲ビールバー&映画の中庭
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ゴルキ通りからアーチ型の通路をくぐった先にあるのが、ビールバー&映画の中庭【地図⑲】
ビールバー自体は、アルメニアで人気沸騰中のクラフトビール”Dargette”を中心に取り扱った「隠れ家バー」といった雰囲気。
それ以上に注目すべきが、通路を抜けた先にある中庭が、“The Tango of Our Childhood”というアルメニア映画のロケ地として使われた点です。
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“The Tango of Our Childhood”は、ソ連統治時代の1985年に公開された映画。
第二次世界大戦後に「レニナカン」と呼ばれていたギュムリで生きる人々の生活を描いたものです。
ギュムリにはこの映画のロケ地となったスポットが点在しており、そのうちの一つがこちらの中庭なのです ▼
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中庭を取り囲む建物は、一階部分は美しいアーチ状の石造り/二階部分は木製テラスという独特な造り。
とても静かで素朴な雰囲気が素晴らしく、映画のロケ地となるのも納得の風情を感じさせます。
“The Tango of Our Childhood”は、すでに紹介した④ムヘル・ムクルチヤンというギュムリ出身の俳優が主演したことでも有名。
ギュムリの観光にあわせて鑑賞しておくのも良いかもしれませんね!
アボヴィアン通り
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クマイリ地区全体で文句なしのメインストリートと言えるのが、ヴァルダナンツ広場までのびるアボヴィアン通り(Abovyan St.)。
「アボヴィアン」はアルメニアの各都市に一つはあるポピュラーなストリート名。
その由来となっているのは、19世紀前半に活躍したアルメニア人作家のハチャトゥル・アボヴィアン(Khachatur Abovyan)です。
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クマイリ地区を南北に走るアボヴィアン通りは、ゴルキ通り~ヴァルダナンツ広場間では歩行者専用なのも、散策しやすくて◎
通りの両側には堂々とした重厚な建物がずらりと建ち並び、ギュムリ市民お気に入りの散策コースとなっています。
⑳ティクニカイン・タトロン人形劇場
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80年以上の歴史を持つティクニカイン・タトロン人形劇場(Tiknikain Tatron)は、文化の都・ギュムリを象徴するような場所。【地図⑳】
ロシア帝国時代は醸造所として利用されていた建物が、ソ連時代に人形劇場としてリノベーションされたもので、コーカサス地域で最初の人形劇場として知られています。
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驚くべきが、この場所は現役の人形劇場として機能している点。
人形劇が行われる週末のお昼には、建物の前で開演を待つ家族連れの姿でいっぱいになります。
旧ソ連諸国では現在でも、人々の間で人形劇がポピュラーなことが多いのですが、観光地化されたものや富裕層の娯楽となったもの(=料金が高い)も目立ちます。
その点、このティクニカイン・タトロン人形劇場はあくまでも現地の家族連れ向け。
いち公演あたり400AMD(=¥95)と、昔ながらの庶民的な料金も、人々に愛され続ける理由でしょう。
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人形劇の鑑賞は観光客にも開放されているので、興味がある人にはおすすめ。
演目はもちろんアルメニア語のみとなりますが、言葉は分からずともギュムリに受け継がれる文化を肌で感じられるはずです。
㉑Gyumri Garden House
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アボヴィアン通りを散策していると必ず目に入る、存在感抜群なオレンジのアーチ。
アーチをくぐった先は10mほどのトンネルとなっており、その先に広がるのがGyumri Garden Houseというレストランです。【地図㉑】
アーチの先に広がる中庭を初めて目にした人は、きっと驚くことでしょう。
黒い石壁に囲まれた空間いっぱいにテラス席が設けられ、正面には大きなステージまで…
ここがアルメニア第二の都市のど真ん中であることを忘れてしまいそうなほどの開放的な雰囲気です。
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中庭を取り囲む建物には、もともと政府機関が入っていたそう。
ここも1989年の大地震によって大きな被害を受けてしまい、近年ようやくリノベーションが完了して、オープンテラスのレストランとして再スタートをきったのだそうです。
週末の夜には、地元アーティストによるライブパフォーマンスも開催されるとのこと。
夏にギュムリを訪れるなら、ナイトライフにはぴったりな場所だと思います!
㉒アスラマジヤン姉妹ギャラリー 必見!
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アートに興味がある人もそうでない人も、ぜひとも立ち寄っておきたいのが、アスラマジヤン姉妹ギャラリー(The Gallery of Aslamazyan Sister)【地図㉒】
ミュージアム部分の見学は有料(400AMD=¥95)ですが、中庭への入場は自由。
芸術に興味がない人でもぜひ立ち入ってみましょう。
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石造り&木製テラスのクマイリ地区らしい建築の建物は、細部の装飾も含めて圧巻のひとこと。
1988年の大地震での被害が比較的少なかった建物で、地震で家を失った人々の仮の住まいとして機能していたそうです。
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「アスラマジヤン姉妹」とは、マリアム・アスラマジヤンとエラヌヒ・アスラマジヤンという、ギュムリ出身の芸術家姉妹のこと。
20世紀初頭に世界中を旅した彼女たちは、異国の地で生きる女性や異文化を描いた作品を多く残しました。
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20世紀前半のソ連時代のアルメニアは、女性だけで海外を旅することなど考えられなかった時代。
極彩色で生き生きとしたタッチの作品の数々に、彼女たちの旅への情熱が息づいているかのよう。
とにかく素晴らしいギャラリーなので、ぜひ内部にも立ち入ってほしいです。(入場料も安いですし)
㉓カーク・カーコリアン像
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アボヴャン通りの南端にあるのがカーク・カーコリアン像(Kirk Kerkorian)【地図㉓】
カーク・カーコリアンとは、アルメニア系アメリカ人の実業家。
かつてはただの砂漠でしかなかった場所に、巨大カジノリゾート・ラスベガスを造成する事業に大きく関わった億万長者です。
彼の両親はどちらも、1915年に大虐殺を逃れてアメリカへと渡ったアルメニア人ですが、彼自身はアメリカ生まれアメリカ育ち。
しかし、自分のルーツがあるアルメニア本国へ多額の資金援助をしたことで知られ、銅像には「アルメニアの英雄」なんて刻まれているくらいです。(ああ、お金って大切…)
ガイ通り
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ヴァルダナンツ広場の北側を東西に走るガイ通り(Gayi St.)は、クマイリ地区の南端にあたるストリート。
西に向かってゆるやかな坂道となっており、ギュムリ観光の穴場とも言えるスポットがいくつか点在しています。
㉔オクトーバー・シネマ
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ヴァルダナンツ広場に面して建つ、ギュムリ唯一の映画館がオクトーバー・シネマ(October Theater)【地図㉔】
1926年に建造&開業したもので、現在でもギュムリの人々の娯楽の中心として愛されている場所です。
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1988年の大地震でオクトーバー・シネマの建物は全壊してしまい、現在の建物はオリジナルに忠実に再建されたもの。
オレンジの柱や装飾などにネオ・クラシック様式が見られる建物は、とても優雅な雰囲気。
数多くの映画の舞台となってきたギュムリにおける、カルチャーの中心地としての風格がただよいます。
㉕アルメニア最古の床屋 必見!
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ガイ通りで絶対に見逃せないのが、アルメニア最古の床屋【地図㉕】
およそ80年前の1940年のオープンで、外観も内装もものすごくレトロ。
ソ連時代からの床屋の伝統を重んじてか、現在でも男性しか入れない空間となっているのでご注意を。
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少し錆びついた椅子や丸鏡、天井の装飾から電気にいたるまで…
何から何まで、とにかく全てがレトロな空間がそこにありました。
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ギュムリの男性陣は、わりと頻繁に床屋で身だしなみを整える文化があるよう。
のぶよが訪問した数十分の間でも、ひっきりなしに客が来ていました。
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「こんなローカルにもほどがあるような場所に外国人が立ち入ると嫌がられるかな…?」
なんて懸念していたのですが、そんなことは全くありませんでした。
「あれも撮れ!これも見ていけ!なんなら俺たちを撮れ!」と、別に髪を切りに来たわけでもない外国人に、お店のおじさんたちも興味津々。
さすが、何十年も客商売をしている人たち。コミュニケーション能力に磨きがかかっています。
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しまいには「その長い髪を切っていけ!」と言い出したので、丁重にお断りしておきました。
アルメニアンカットにされるのもちょっとアレなので…
男性の旅行者なら、ギュムリ滞在中の鮮烈な思い出となることは間違いなし。
レトロな空間の中、愉快なおじさんたちによる「おまかせアルメニアンカット」に挑戦してみては?(シェービングだけでもOKだそうです)
㉖Ani Photostudio 必見!
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アート・クラフト文化が息づくギュムリのカルチャーが息づくAni Photostudioにも絶対に立ち寄りたいもの。【地図㉖】
その名の通り写真撮影スタジオとして機能している場所で、内装もギュムリ伝統の石造りの温かな空間です。
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この場所でのメインイベントとなるのはハンドメイド雑貨探し。
どれもギュムリ在住のアーティストによる作品で、地元への愛が伝わってくるものばかりです ▼
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アクセサリー類やインテリア類、何に使うのか謎なものたち…
さまざまな雑貨であふれる店内で、最も注目したいのがこちら ▼
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丸く削った木をカラフルに塗り、突起をつけたこれ…そう、独楽です。
ギュムリがあるシラク地方では、昔から子供たちの遊びとしてコマ回しがポピュラーなんだとか。
自分で木を削って作った手作りのコマを回して、ぶつけ合って対戦させるそう…もはや昔の日本じゃないですかそれ。
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Ani Photostudioでは、ギュムリの伝統的な遊びの道具であるコマにカラフルなデザインを施したものが売られています。
もちろん実際に回すことも可能ですし、インテリアとしても◎
ギュムリ旅行の思い出にはピッタリだと思いました。
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Ani photostudioで展示&販売されている雑貨はとにかく多岐にわたり、紹介していくとキリがないのですが、どれも本当にセンス抜群。
雑貨が好きな人ならじっくりと一つ一つ見ていくのも面白いと思いますし、ギュムリのクラフト文化に直に触れることができる点も良いなあと感じました。
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店内の一角におかれたHayAr Jewelryの作品もお見逃しなく ▼
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HayAr Jewelryは、ギュムリを拠点に活躍するアーティストが立ち上げたアクセサリーブランド。
なんと、全ての作品が弾薬や銃の部品を使って作られているのです。
隣国との紛争や領土問題を常に抱え続けるアルメニア。
平和への願いが最大のテーマとなっており、作者の思いが強く伝わってきました。
ゴルガニヤン通り
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のぶよ的に、クマイリ地区で最も調和がとれたストリートだと感じたのがゴルガニャン通り(Ghorghanyan St.)。
これといった見どころには欠けるものの、通りの両側に建ち並ぶ石造りの民家の統一感がとにかく素晴らしいのです。
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クマイリ地区のストリートの中では、最も居住エリアらしい閑静な雰囲気が漂うゴルガニャン通り。
軒先にそれとなく飾られた花や、手作りレースのカーテンなど、各民家で生活する人の美意識が見られるのも面白いです。
㉗二階建て木製テラスの家
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ガイ通りからゴルガニャン通りに入ってすぐの場所にあるのが、二階建て木製テラスの家【地図㉗】
クマイリ地区を隅々まで歩き回ったのぶよですが、二層に渡って木製テラスが設置されている建物はここ以外には見かけませんでした。
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各階から張り出した木製テラスは、ひとつひとつ手作業で施された装飾が特徴的。
ほとんどの建物が黒壁で統一されたゴルガニャン通りにおいて、独特の存在感を放っています。
クマイリ地区南側エリア
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クマイリ地区散策の総仕上げとなるのが、南側に広がるエリア。
具体的には、ジヴァニ通りのガイ通りよりも南側の一帯を指し、これまで散策してきた各ストリートに比べるとびっくりするほどのローカルな雰囲気へと変貌します。
1988年の大地震後に放置されたままの建物も目立つエリアですが、かつては大学や専門学校が多く点在している「アレクサンドロポルの学業の中心」でした。
当時の雰囲気を現在に伝えるような、歴史ある建物も多く残っています。
㉘テクノロジーセンター
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セントラル・パークの向かいに建つ巨大な建物がギュムリ・テクノロジーセンター【地図㉘】
1912年建造の建物は、もともとは貿易学校としてオープンしたもの。
ロシア革命後の1920年には、当時つかの間の独立国として2年間だけ存在していたアルメニア第一共和国における初の大学として利用されていたものです。
㉙旧美術学校
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テクノロジーセンターの南側に建つこちらの建物は、1910年代に建設された旧美術学校【地図㉙】
ある富裕層の市民が、自身の娘を住まわせるための邸宅として建設させたのがはじまりで、ソ連時代には芸術学校として機能していました。
二階部分のバルコニーや屋根部分のレリーフなど、細部にまでこだわった外観が特徴的ですが、内部も傑作だったのだとか。
この地域原産のトゥファ(Tufa)という黒い石を用いた螺旋階段で、一階と二階がつながれているそうです。
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1988年の大地震によって内部は半壊状態となっており、それ以来放置されたままとなっているのが残念。(=立ち入り不可)
この場所をリノベーションして再び美術学校にするプロジェクトもあるそうなので、将来的には再びギュムリの若いアーティストを輩出する場所となるかもしれません。
㉚映画のテラスの建物 必見!
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クマイリ地区南側で最も有名なのが、木製バルコニーがぽつりと残る石造りの建物。【地図㉚】
すでに⑲ビールバー&映画の中庭で紹介したギュムリが舞台の映画 “The Tango of Our Childhood”のロケ地として絶大な知名度を誇ります。
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建物自体は、1988年の大地震による被害を大きく受けてしまったために半壊状態のまま。
しかし、奇跡的に残った木製テラスを一目見ようと、現在でも多くの人が写真撮影に訪れます。
㉛おしゃれドア
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クマイリ地区を訪れる観光客の間で、なぜか写真撮影スポットとして大人気なのが、こちらのおしゃれドア【地図㉛】
何の変哲もない、クマイリ地区でよく見かける木製のドアなのですが、皆やたらとこの場所でモデルポーズに励んでいました。
良い感じのレトロ感ただようドアはたしかに素敵ですが、説明書き等も一切なく、どんな場所でどうして人気なのかは謎のまま。
ここが何なのか知っている人がいましたら(まあいないだろうが)、情報提供をお待ちしています!
㉜カラフルゲート
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のぶよ的に、上のおしゃれドア以上に写真撮影におすすめなのが、カラフルゲート【地図㉜】
オレンジと黒の石でデザインされたお洒落なゲートは、奥に位置する民家部分への入口にあたる場所。
洗濯物がはためいている感じや、住人が談笑するためのボロボロの椅子…
重厚な造りで気品ただよう門と、生活感あふれる奥の光景とのコントラストがたまりません。
㉝ユズバショフの家
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ギュムリがアレクサンドロポルと呼ばれていた19世紀~20世紀のロシア帝国支配時代。
「自身の子供や孫などもみんなで一緒に暮らせるように」との思いから、富裕層の間では巨大な邸宅を建てるのが普通だったそうです。
その良い例となる建物が、こちらのユズバショフの家(Yuzbashov Residential House)【地図㉝】
ユズバショフ家の人々が生活した住宅で、20世紀初頭の建造です。
重厚な石造りで贅を尽くした造りには圧倒されますが、南側の一角に木製テラスが設置されている点にも注目 ▼
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木製テラスはもともと設置されていたものではなく、後のソ連時代にこの建物に住んだ人が取り付けたもの。
ロシア帝国時代には裕福な家族だけが独占して暮らしていた巨大な邸宅は、ソ連時代に入ると一部屋ごとに分割&それぞれ別の住人に分け与える政策がされました。
この政策の名残は現在のギュムリでもよく見られ、かつての大邸宅は数家族が共同で生活するアパートのようになっており、中庭やテラスは共用部分として機能していることが多いです。
㉞ギュムリ最古の中学校
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クマイリ地区の中でも最も南に位置するのが、ギュムリ最古の中学校【地図㉞】
1900年代に建設された一階建ての石造りの建物で、窓の周りなどディテールの装飾がとにかく秀逸です。
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建設から100年以上が経った今でも、現役の学びの場として機能しているのもポイント。
こんな雰囲気の建物の中で学べるギュムリの子供たち。
贅沢すぎる学校生活でうらやましいです…
㉟三連テラスの家
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クマイリ地区の散策も間もなく終了…
ゴール地点となるアメナプルキッチ聖堂を目指して歩いて行くと目に入るのが、こちらの三連テラスの家です。【地図㉟】
この建物も、すでに⑲ビールバー&映画の中庭や㉚映画のテラスの建物で紹介した映画 “The Tango of Our Childhood”のロケ地なんだそうですよ!
㊱黒のお屋敷&プルプラク
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クマイリ地区散策でラストの見どころが、インパクト抜群の黒のお屋敷&プルプラク【地図㊱】
クマイリ地区の建築美をギュッと詰め込んだような重厚な造りの建物で、お洒落なデザインの二本の柱に支えられたバルコニーが印象的です。
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建物入口の脇にあるプルプラク(=水飲み場)も、建物のお洒落な雰囲気に花を添えているよう。
黒い石造りの町並みの中で、シックな色合い&デザインのプルプラクから湧き出す水…
なんだかとてもギュムリらしい風景に見えました。
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クマイリ地区散策のゴール地点が、ヴァルダナンツ広場の南側に建つアメナプルキッチ聖堂(Amenaprkich)。
黒とオレンジの外壁が印象的で、ギュムリを象徴する存在のスポットです。
聖堂が面するヴァルダナンツ広場はギュムリの中心街のど真ん中にあたる場所。
散策後の腹ごしらえにも、引き続きの市内観光にも…プランニングは自由自在にできるはず!
おわりに
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というわけで、ギュムリの中でも古き良き時代の風景が残るクマイリ地区の見どころを紹介してきました。
のぶよはギュムリがとにかく好きすぎて、4日の予定が結局10日以上もいたほど。
この町のとにかく全てが波長に合っているのを日々実感していました。
そんなギュムリの中でも、足しげく通ったのがこのクマイリ地区。
建築の素晴らしさも文化の香りも豊かな歴史も…どうして世界遺産になっていないのかわからないほどです。(UNESCOまじでちゃんと仕事してほしい)
なぜか観光客がやって来ないギュムリの魅力を語り始めたら、あら不思議。
写真130枚以上/22000字越えの超大作記事ができあがってしまいました(ここまで読んだ方、まじでお疲れ様です)。
しかしながら、今回の記事で紹介しているクマイリ地区はあくまでもギュムリの一部分。
つまり、今記事では紹介しきれてなかった見どころがまだまだたくさんあるということです。
というわけで、ギュムリに関する記事はまだいくつか書いていく予定。(いつになることやら…)
とにかく!せっかくアルメニアにはるばる来たのに、この町を見逃してしまうのは本っっっ当にもったいない!
なぜか過小評価されがちのギュムリがアルメニアの必見スポットの仲間入りをする、その日まで…
この町の素晴らしさを、より多くの人に伝えていけたら嬉しいです。
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