こんにちは!アルメニア滞在を満喫中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニアの首都・エレバン周辺には、半日から丸一日かけて足をのばせる日帰りスポットが数多く点在しています。
公共交通機関で簡単にアクセスできる場所がほとんどなので、個人の旅行者にとっては嬉しい限り。
中でも最もポピュラーなデイトリップ先が「ガルニ&ゲガルド」と呼ばれるエリアです。
今回紹介するのは、「ガルニ&ゲガルド」の三大スポットの中でも定番中の定番、ガルニ神殿(Temple of Garni / Գառնիի տաճար)です。
1900年以上も前に建造されたガルニ神殿は、修道院観光がメインとなるアルメニアにおいて異色の雰囲気を持つ場所。
キリスト教伝来以前の建造物が現存しているのは、アルメニア広しといえどもここだけなのです。
古代にタイムスリップしたような気分を味わおうと、国内外から多くの観光客が訪れるガルニ神殿。
今回の記事では、観光や個人でのアクセスに必要な情報をすべて解説しています。
悠久の歴史に触れることができるガルニ神殿は、アルメニア人も強くおすすめするスポットの一つ。
個人でのアクセスもかなり簡単なので、ぜひ参考にしてください!
ガルニ神殿の歴史&見どころ
ガルニ村を訪れる99%の旅行者の目的地が、村の南端にぽつりと佇むガルニ神殿。
まるでイタリアやギリシャの遺跡のような外観の建造物ですが、それもそのはず。
ガルニ神殿は1世紀(1900年前)に古代ギリシア様式(イオニア様式)で建てられたものなのです。
タイムスリップしたような感覚になる美しい神殿と、周辺の渓谷の絶景を堪能しましょう!
ガルニ神殿の歴史
ガルニ神殿が建造された正確な年に関しては議論が続けられているものの、現在のところは77年頃までには完成していたのとする説が有力です。
当時のアルメニア一帯にはまだキリスト教が波及しておらず、古代ギリシア神話の影響を受けて発展した古代アルメニア神話がベースの精霊信仰や多神教が主流でした。
ガルニ神殿は、神話内に登場する太陽神ミフル(Mihr)に捧げられたものとされています。
301年にアルメニアがキリスト教を国教として認めると、それまでの多神教や精霊信仰は異教という扱いになりました。
キリスト教の建造物ではない神殿や寺院などは次々に破壊されていきますが、どういうわけかガルニ神殿だけ破壊を免れたのです。
中世以降のアルメニアは、ペルシア帝国やアラブ人、モンゴル帝国にティムール朝…など、異民族による侵攻と支配を受け続けました。
しかしながら、この激動の時代においてもガルニ神殿は破壊されることなく残されたのです。
(アラビア文字で書かれた1000年以上前の落書きも発見されているらしいので、異民族がこの場所に到達していなかったというわけではないよう)
なぜガルニ神殿だけが破壊されずに残されたのか…
その理由はいまだに解明されておらず、アルメニアの歴史上のミステリーの一つとなっています。
異民族による破壊こそ免れてきたガルニ神殿ですが、自然の脅威には敵いませんでした。
1679年に起こった大地震によってオリジナルの建物は完全に崩壊してしまい、19世紀になってから再建されたものが現在の神殿となっています。
ガルニ神殿の建築様式
ガルニ神殿は、古代ギリシアの典型的な様式に忠実に建設されています。
正面や背後から見ると、完全に左右対称に造られていることがわかります。
屋根部分を支えるのは6.5mほどの長さの24本の柱 ▼
驚くべき点が、壁や屋根、柱の建設のすべてにおいてモルタル(セメントと水を混ぜたもの)が使われていない点。
鉄を溶かしたものが、石と石のつなぎとして用いられていたそうです。
建物正面の大理石の階段を上った先には、ぽっかりと口を開けたようなゲートと天井があり、オリジナルの装飾が最大限に再現されています ▼
このゲートをくぐった先にある空間が、「チェラ(Cella)」と呼ばれる神殿中央部分の小部屋 ▼
チェラとは、古代ギリシアや古代ローマ風の神殿の中心に築かれた空間のこと。
祈りを捧げる目的で使用されたり、神の姿を具現化した像が置かれたりしていた場所で、ガルニ神殿の心臓部であったと考えられています。
ガルニ神殿の周囲の遺跡
ガルニ神殿の敷地はそれほど大きくありませんが、神殿の周りにはいくつかの遺跡が残されていて興味深いです。
神殿の西側にある茶色っぽい建物の土台のようなものが、897年に建設された教会の跡 ▼
この教会も1679年の大地震で全壊してしまい、その後は再建されることなく土台部分だけが残されています。
ぜひ立ち寄りたいのが、神殿の北西部分にあるローマ風浴場跡 ▼
ヨーロッパから遠く離れたこの場所にまでローマ帝国の勢力が拡大していたと考えるとびっくりですが、浴場跡の最奥部にはさらなる驚きが。
それが、神殿が建設された1900年前に描かれたモザイク画です ▼
古代から続く悠久の歴史を感じた後は、神殿正面に何本かあるアプリコットの木にも注目 ▼
実は、アルメニアはアプリコットの名産地として有名。
アプリコットのジャムやお酒などもお土産の定番です。
アルメニア人観光客の間では「ガルニ神殿のアプリコット」はかなり有名だそう。
のぶよも数個拾って食べてみましたが、甘酸っぱくてとても美味しかったです。
果実を拾っては(時には強引に木から落としては)、みんなその場でムシャムシャ食べている謎すぎる光景もまた、ガルニ神殿にまつわるミステリーなのかもしれません(笑)
ガルニ神殿へのアクセス・行き方
ガルニ神殿が位置するガルニ村は、エレバンから南東に30kmほど離れた山の中にあります。
ほとんどの旅行者にとって、エレバンから日帰りでガルニ神殿を訪れるのが定番。
エレバン~ガルニ間のアクセス方法は、大きく分けて3通りあります。
予算やスケジュールに合ったものを選びましょう!
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、エレバンでタクシーをチャーターしてしまうこと。
エレバン~ガルニ間の単純往復 + 観光時の待機時間1時間ほどで、1台10000AMD(=¥2216)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするならガルニ近郊の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
・世界遺産のゲガルド修道院(Geghard Monastery)
・圧倒の柱状節理が見られるガルニ渓谷(Garni Gorge)
などはガルニ村と同じ幹線道路沿いにあるので、セットで訪れるのが定番。
ガルニ神殿/ガルニ渓谷/ゲガルド修道院をセットでまわる場合のタクシーチャーター料金の相場は、1台15000AMD(=¥3325)~ですが、交渉次第で上下します。
②現地ツアー
1日で効率的にガルニ周辺の見どころをまわりたいなら、現地ツアーに参加してしまうのもおすすめ。
アルメニアは小さな国土に見どころがギュッと詰まっているものの、公共交通機関がやや不便なのがネック。
移動を考えなくて良い&リーズナブルな現地ツアーは、一人旅の人にとっても便利です。
③マルシュルートカ
アルメニア地方部では公共交通手段があまり発達しておらず、旅行者泣かせなスポットもかなり多いのですが、ガルニに関しては話が別。
エレバンからマルシュルートカ(公共ミニバス)を利用して1時間もかからずにアクセスでき、本数も40分に1本ほど。
アルメニア全体を見てもかなりアクセスしやすい部類です。
ここでは、個人でガルニへ移動する人向けに、マルシュルートカでのアクセス情報をできる限り詳細に解説していきます。
エレバン→ガルニ方面(往路)
【①ガイ・バスステーションへ行く】
エレバン発着のマルシュルートカでややこしいのが、行き先によってバスターミナルが異なる点。
ガルニ村方面へのマルシュルートカが発着するのが、中心街の東に位置するガイ・バスステーション(Gai Bus statuon) ▼
バスステーションとは名ばかりの、幹線道路沿いの脇道といった雰囲気ですが、数台のマルシュルートカが常に停車しているのですぐにわかります。
エレバン中心部とガイ・バスステーションはかなり離れていて、とても歩ける距離ではありません。
市内路線バスやトロリーバスを利用しましょう。
(ガイ・バスステーション近くには地下鉄が通っていません)
・中心街(メスロプ・マシュトツ通り)から:トロリーバス1番/路線バス5番・8番・26番etc
・エレバン中央駅から:路線バス22番・44番
【②ガルニ経由ゴグト行きの便に乗る】
ガイ・バスステーションに到着したら、あとはもう簡単。
ガルニ村を経由してゴグト(Goght / Գողթ)行きの便に乗るだけです。
エレバン~ガルニ~ゴグト間の路線は、265番/266番/284番の3種類あり、どれに乗っても同じルートをとります。
出発地も目的地もルートも同一なのに、なぜ便番号が変わるのかはアルメニアンミステリー。
上の3つの番号のいずれかの便が30分から40分に1本出発しており、乗客が多くても少なくても定刻になると発車するシステムなので、満員になるまで待たされることもありません。
【③ガルニ神殿入口の十字路で下車】
茶色く乾いた大地の中を走ること50分かからないくらいで、バスはガルニ村に到着します。
マルシュルートカはガルニ村内の数か所に停車するのですが、最も神殿に近いのは上の写真の十字路。
この十字路から神殿入口の城壁&チケット売り場までは、南に200mほど歩くだけです。
ガルニ→エレバン方面(復路)
ガルニ観光を終えてエレバンに戻る際も、往路の行程を反対にたどるだけなので簡単。
行きでマルシュルートカを降りた③ガルニ神殿入口の十字路付近で、来た時と反対方向に走って来るバスを待ちましょう。
30分~40分に1本はエレバン行きのバスが通るので、手で合図をして乗るだけ。
(合図しないと停車してくれない場合もあるので注意)
エレバン到着時は、行きの出発地のガイ・バスステーション周辺の幹線道路沿いで降ろされます。
ゴグト→ガルニ→エレバン行きの最終マルシュルートカは、ゴグト村18:00発のもの。
ガルニを通過するのは18:10分頃となります。
万が一のことを考えて、最終マルシュルートカではなくもう少し早い時間の便を利用する方が良いと思います。
ガルニ神殿観光のアドバイス・注意点
プランニングのポイント
ガルニ神殿観光に必要な時間
ガルニ神殿観光に必要な時間は、長くても1時間みておけば十分。
神殿の敷地は広くはなく、当記事内で紹介している見どころも全て隣り合わせにあるので、短い時間でも十分に見学することが可能です。
せっかくガルニ神殿まで来たなら、近郊の見どころ観光と組み合わせるのが効率的。
・ガルニ渓谷ハイキングコース:+2時間
・ゲガルド修道院:+1.5時間
となり、丸一日あれば3つのスポットをまわることが可能です。
ガルニ&ゲガルト修道院の日帰り観光は可能?
【タクシー/現地ツアー利用の場合:◎】
上の項で書いた通り、ガルニ神殿 + ガルニ渓谷 + ゲガルト修道院を日帰りでセットでまわることは、時間的には十分可能。
タクシーチャーターや現地ツアーの場合は、半日ほどで3ヶ所をサクッと見学できるでしょう。
【個人でマルシュルートカ利用の場合:△】
個人でマルシュルートカ利用の場合は体力的に日帰りで3ヶ所まわるのは結構たいへん。
・ガルニ渓谷ハイキングコースを全て徒歩:4km
・ゴグト村~ゲガルト修道院間(マルシュルートカが走っていない)の徒歩往復:11km
と、合計15kmもの距離を歩かなければならないためです。
(しかもエレバン行きの最終マルシュルートカは18時でやや早め)
ガルニ渓谷の観光を諦めれば(ガルニ神殿とゲガルト修道院のみ観光)日帰りでもなんとかなると思いますが、せっかくここまで来たのなら3大スポットを制覇したいですよね。
というわけで、個人で移動&観光の場合は、ガルニかゴグトのどちらかの村に1泊するのがベター。
(ゲガルト修道院には宿がありません)
2日間にわけて3ヶ所の見どころをまわるプランなら、時間的にも体力的にも余裕を持って観光できると思います。
ガルニ観光のアドバイス
とにかく朝早く行くべき!
ガルニ神殿を訪れる人全員に言いたいことはただ一つ。
とにかく朝一番に行きましょう!
というのも、アルメニア人にも外国人にも人気の観光地であるガルニ神殿(と、ゲガルト修道院)は、日中は多くの団体旅行客で大混雑するため。
正直、敷地内の見どころの90%は神殿部分にあるガルニでは、ほぼすべての観光客が小さな神殿にドッと集まるのです。
神殿付近に人が少ないのは、遅くとも朝10時半頃まで。
それ以降は、1900年前の姿を残す神殿は自撮りSNS族に占領されてしまい、なんの風情もないディズニーランドと化してしまいます。
ガルニ神殿は毎日朝9時から開場しているので、「一番乗りで入場してやる!」くらいの気持ちで訪れるべき!
土日はエレバンからやってきた家族連れで大混雑するので、平日がおすすめなのは言うまでもありません。
神殿正面は基本的に逆光
ガルニ神殿は南向きにひらけた渓谷を背にして建っているため、正面から写真を撮ろうとすると日の出から日没まで基本的に逆光となってしまいます。
こればかりはどうしようもないことなのですが、写真撮影目的なら太陽の光があまり強くない朝早い時間の見学がおすすめです。
ガルニ神殿観光時の服装
ガルニ神殿は宗教建造物ではないため、修道院見学時のようなドレスコードはありません。
神殿の敷地内は平坦で足場が悪い場所もないので、サンダル等で訪れても問題ないです。
しかしながら、ガルニ神殿とセットで訪れる人が多いガルニ渓谷は岩がゴロゴロしているため、最低でもスニーカーを着用しないと危険。
また、ゲガルト修道院は宗教施設であるため、ドレスコードを守らなければなりません。
というわけで、ガルニ神殿以外の場所にもセットで訪れる場合の服装は、スニーカー/長ズボン/袖があるシャツが基本のスタイルとなります。
いずれの場所も日陰がとても少ないので、夏場の見学時には飲料水や暑さ対策をお忘れなく!
ガルニ神殿周辺での食事・買い物
ガルニ神殿周辺にはいくつかレストランが点在していて、食事面で困ることはありません。
しかし正直なところ、どこも値段は高めです。
(とはいえ、味はそこまで悪くはないらしい)
ラバシュ(アルメニアの薄いピタパン)作りのショーや、伝統音楽を聞きながらのランチ…といった「THE・観光客向け」な雰囲気があまり好きではないのぶよは、ガルニ村で食事はしませんでした。
「まあ観光地だから別にいいや!」と割り切れる人(&予算がある人)なら、ガルニでランチしていくのも良いかも。
また、マルシュルートカ停留所付近には商店が数軒あり、軽食や飲み物などを購入することが可能です。(値段も一般的な価格でした)
ガルニ名物!お土産に「ガタ」はいかが?
ガルニの名物として知られるのが、ガタ(Gata / Գաթա)と呼ばれる甘いパン。
ガタ自体はアルメニア全土で食べられるものですが、地域によって形や模様が大きく異なってくるそうです。
ガルニ周辺エリアのガタは、直径30cmほどの円形で、表面に美しい模様をつけて焼き上げられたもの。
各家庭やお店によって、どんな模様かは変わってきます。
ガルニ神殿へ続く道路沿いでは、ガタを売る露店がいくつか建ち並んでいるので、それぞれ異なる模様を見比べてみるのも楽しいもの。
また、ガルニ村のレストランでは必ずメニューにあるので、食後のデザートとして注文してみるのもおすすめです。
一人で食べるには巨大すぎるガルニ村のガタ。
数人でシェアするか、お土産としてお持ち帰りするのが良いと思います。
おわりに
ガルニ神殿観光に必要な情報を、「これでもか!」とばかりに詳しく解説してきました。
アルメニアは日本人にとってはまだまだ馴染みが薄い国。
遠く離れた国の「定番観光スポット!」といくら声を大にしたところでピンとこない人が多いでしょう。
いっぽうで、アルメニア人に尋ねると「とにかくここだけは行くべき!」と激推ししてくるほどのスポットです。
自然の偉大さを感じるガルニ渓谷や、世界遺産の聖地・ゲガルト修道院など、趣向が異なる周辺の見どころとセットで見学しやすい点も魅力的。
エレバンの喧騒を逃れて、ダイナミックな自然と歴史を感じる…
そんな極上のデイトリップにぴったりのエリアだと感じました。
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