こんにちは!アルメニア南部のヴァヨツ・ゾール地方をのんびりと旅行中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
ここ数日、のぶよがものすごい勢いで布教に励みまくりあげている小さな村があります。
それが、エレバンから南に1時間半ほど、ヴァヨツ・ゾール地方に位置するアレニ(Areni/Արենի)。

アレニは、アルメニアの中でもかなり高い知名度を誇る村。
その最大の理由は、泣く子も黙る名産品であるアレニ・ワインの存在です。
アルメニア人にとっても、さらに旧ソ連圏の人々にとっても、「アレニ=ワインの一大産地」というイメージがあるもの。
そのイメージは決して大袈裟なものではなく、アレニ村ではとにかくすべてがワイン、ワイン、ワイン…ワインのために存在している村であるかのような錯覚を抱くほどに、村全体がワインづくしなのです。


エレバンからそれほど遠くはなく、アルメニアが誇る有名ワインの本場の味を楽しめるとあって、アレニはアルメニア旅行の定番の一つとされる場所。
実際、多くの旅行者がエレバンから日帰りでこの村を訪れ、名産のワインを味わったり近郊の見どころを周ったりしていきます。

こんな感じで、アルメニアの中でも一大観光エリアといった風情のアレニ。
上質なワインの美味しさはもちろんのこと、近郊の見どころの数々についても見ごたえ抜群で、観光客に人気となるのも理解できます。
しかし!!!
アレニの魅力はワインや有名観光スポットだけではありません。
観光エリアど真ん中に位置しているにもかかわらず全く観光ボケしていないアレニ村の素朴な雰囲気や、スレていない村の人々の温かさ、村周辺のダイナミックな自然風景…など、アルメニア地方部の良いところがすべてぎゅっと詰まっているのです。

というわけで、前置きが長くなりました(有り余る情熱)。
今回の記事は、アレニ村の観光に関する情報をすべてまるっとまとめたものです。
最初に言ってしまいますが、アレニはのぶよがこれまでアルメニア全国を周った中でもトップレベルに気に入った場所(もしかしたらNo.1かもしれない)。
どうしてここまでアレニという小さな村を推すのか…それは実際に訪れて自分の肌で感じてほしいのですが、この記事がその背中を押すきっかけとなればとても嬉しいです!
アレニ観光マップ
紫:おすすめゲストハウス
黄色:エレバン方面マルシュルートカ途中乗下車ポイント
茶色:イェゲグナゾール行きマルシュルートカ発着ポイント
アレニ観光でするべき6つのこと

日本人のみならず、多くの旅行者にとって、「アレニ=エレバンから日帰りで訪れる観光エリア」という認識が強いもの。
実際、エレバンからアレニ周辺の見どころを周る日帰りツアーも多く最高されており、「アルメニアの定番観光地」として名を馳せています。
多くの場合、日帰りツアーは①ワイナリー見学+②アレニ洞窟+③ノラヴァンク修道院をセットで周るプランが定番。
どの見どころも見ごたえたっぷりですし、アルメニアの長い歴史や豊かな食文化が感じられます。
しかし、率直に言いましょう。
日帰りツアーでアレニ周辺の定番スポットを順番に周るだけでは、アレニ本来の魅力を味わうことはできません。
そのあたりも含め、まずは絶対に訪れたい定番の見どころから穴場の見どころまで「アレニ観光でしたい6つのこと」と題して解説していきます!
①アレニ・ワインのワイナリー見学

アレニと言えばワイン。ワインと言えばアレニ。
アルメニア人が「アレニ」という地名を耳にして最初に思い浮かべるのは、深いルビーのような色を讃える赤ワインです。
アレニは「アルメニアのワイン村」と称されるだけあり、とにかく村中がワインづくし。
大小さまざまなワイナリーが村に点在しており、好みのワイナリーを訪問するのはアレニ観光の定番中の定番となるアクティビティーです。
あまりにワイナリーの数が多すぎるため、こだわりや知識がない人はどこを訪問すれば良いのか迷うはず(のぶよも迷った)。
結果的に、地元の人による口コミが良好&アレニ村で最も長い歴史を持つワイナリーということで、Areni Wine Factoryを訪問することにしました。【マップ 青①】


Areni Wine Factoryは、1994年にオープンした中規模のワイナリー。
現在でこそアレニ村全体に点在するワイナリーの中で、一番最初に商業ワイナリーとしての歴史をスタートさせたのがここなのだそうです。
エレバンからの幹線道路沿いに位置しているAreni Wine Factoryですが、大型バスでの団体ツアー客の利用は少なめ(ツアー客はすぐ右隣にあるHin Areni Wineryという大規模お洒落ワイナリーに行くそう)。
客層のメインは個人で来る客や10人ほどの小規模グループツアー客ばかりのようで、人でごった返していないのが大きなメリットです。

ワイナリーの入口をくぐると、まず最初に姿を現すのはワイン貯蔵庫。
大きな樽の中で醸造したワインを保存しておくための場所で、かなりのビンテージもののワインも保管されています(こちらは非売品だそう)。
ワイン貯蔵庫の見学はツアー形式でなく、完全に自由。
係員もおらず、説明を受けられないのは残念ですが(たぶんお願いすれば案内してくれると思うけど)、のぶよのようにごちゃごちゃ説明されるよりも勝手に見学していきたいタイプの人間にはむしろありがたかったです。


圧巻のワイン貯蔵庫の見学を終えてメインの建物に入ると、そこはいきなり試飲コーナー。
空間的にはそれほど広くはないものの、Areni Wine Factoryが誇る自家製ワインがすべて揃っています。

驚いたのが、このワイナリーのシステム。
一般的には「ワイナリー見学=試飲できる数/銘柄別にいくつかプランがありお金を払うもの」という概念ですが、なんとAreni Wine Factoryでは見学も試飲もすべて無料。
このワイナリーのみならず、アレニのワイナリーはどこも基本的に試飲にお金を取ることはないのだそうです。
まさに「アルメニアのワイン王国」を凝縮したような、嬉しすぎるホスピタリティー。
従業員のおばちゃんいわく「さすがに全種類(20種以上はある)とか飲むなら1000AMD(=¥400)くらいは払ってもらわないとだけどねえ…」とのことですが、なんとも大らかで大盤振る舞いなシステムです。
そんなわけで、まずはアレニのワインにおける二大品種のワインから。▼


アレニ=赤というイメージの通り、定番は土着品種の「アレニ」を用いた赤ワイン。
セミスイートとドライ、セミドライがあり、のぶよはセミドライにしてみましたが(アレニの最定番はセミスイートだけど)、かなり口当たりが良くすうっと飲めてしまう軽さと、舌に残る重厚な風味がとても美味しかったです。
アレニの赤ワインの知名度に隠れた「ヴォスケハット」という品種のぶどうを用いたアレニ産の白ワインにも挑戦。
ヴォスケハットは酸味や苦みが薄めでこちらもとても飲みやすいのですが、なんとなく物足りない感じがしました。
のぶよが飲んだのはセミドライでしたが、ヴォスケハット(白)に関してはおそらくセミスイートの方が美味しいのではないかと。まあ言ってしまえば、やっぱりアレニ=赤なのかもしれません。
アレニ産の二大ぶどう品種を用いたワインの他にも、アルメニアが誇るフルーツワイン各種も試飲可能。
ざくろワインやブラックベリーワインなど5種類が用意されていますが、ワイナリーのおばちゃんが「アレニは実は桃の産地でもあって、うちで採れる桃は世界一美味しい!」と豪語するので、アレニ産の桃100%が使用された桃のワインに挑戦してみることに。▼

…いや!!!桃ワイン!!!めっっっちゃくちゃ美味しいです…!!!
セミスイートであるため甘味は結構強いのですが、嫌な甘さではなくどこまでもナチュラルで澄んだ甘さ。
何より、香りも味わいもとにかく「桃!!!」といった感じで風味がものすごく強く、アレニの桃が世界一美味しい説もあながち誇張ではないのかもしれません(おすすめしてくれたおばちゃんに感謝)。


さらに、アルメニアが誇るアプリコットを用いたコニャックや各種フルーツを用いたウォッカの試飲も可能。
好きな人にはたまりません…!


そして、Areni Wine Factoryの何がすごいかと言うと、商売っ気のなさ。
一般的に、「試飲・見学無料」を謳うワイナリーは「飲んだら買っていけ圧」のようなものをひしひしと感じるもの。
あの感じが苦手でワイナリー見学から足が遠のいてしまう日本人旅行者は、意外に多いのではないでしょうか(のぶよも実はそのタイプ)。
しかしここAreni Wine Factoryでは、ワインは水。
さんざん色々と飲ませてくれた従業員のおばちゃんは「欲しいのあったらあっちのショップで買えるから!じゃああたしゃ休憩行くんで何か飲みたいのあったらまた言って!」と言い残し、颯爽と去っていきました(笑)
このおばちゃんだけが適当なのかと思いきや、他の見学客もサッと来てサッと数種類飲んでサッと去っていっていたので、おそらくそういうものなのかと。
どうやって儲けを出しているのか心配になりますが、まあせっかく飲ませてくれるのですから、ありがたく美味しいワインを飲ませていただきましょう。
②Areni-Ⅰ洞窟

アレニ周辺エリアの見どころの中でもトップクラスの人気を誇るのが、Areni-Ⅰ洞窟(Areni-1 Cave/Արենիի քարանձավ/以下「アレニ洞窟」)です。【マップ 青②】
アレニ村から東に3kmほど離れた幹線道路沿いに位置する洞窟は、およそ7000年前の銅石器時代の人類が居住していた場所。
発掘は2007年に開始されたばかりですが、驚くべき発見が次々となされ、それまでの考古学の常識を見事に塗り替えたスポットです。
アレニ洞窟の入場は有料で、ガイドツアーの有無などによって料金体系がやや複雑に分かれていますが、個人で訪れるのであれば1000AMD(=¥400)の入場券でOK。
内部にも説明書きがあるので、正直ガイドをつける必要はないと思います。


アレニ洞窟内で現在発掘が住んでいるのは6つの空間のみ。
そのうち、訪問客が立ち入れるのは入口から近い3つの空間のみとなっています。▼

2007年にアレニ洞窟の発掘が開始された当初は、この洞窟は単なる墓地だと考えられていたそう。
アレニ洞窟の入口にあたる空間からは人間の頭蓋骨や葬送の儀式が行われた跡が発見されており、どれも13世紀から14世紀(800年前~700年前)のものと、比較的新しい時代のものであったためです。
しかしその後、発掘が進められていくにつれ、この洞窟は墓地として使用されていただけではないことが明らかになってきました。
次いで発見されたのが、7世紀~9世紀(1400年前~1200年前)にかけて、当時アルメニア一帯に侵攻してきたアラブ人から逃れた人々がこの場所で生活していた痕跡。
地中でパンを焼く窯や部屋として使用されていた空間の跡が次々と発見されたのです。


考古学者たちを驚かせたのは、アレニ洞窟をさらに奥に進んだ部分でした。
洞窟内を奥へと進んでいくにつれ、鉄器時代の出土品や青銅器時代の装飾品など、時代を遡っていくかのように次々と歴史的な発見がなされていったのです。


そして、アレニ洞窟における最大の発見と言われるのが、5500年前の革靴でした。
5500年前の革靴は、現在確認されている中では世界最古のもの。
年間を通して冷涼で乾燥した洞窟内の環境のおかげで、長い時を超えて現在にまで残ることができたのだそうです。
この世界最古の革靴は、現在エレバンにあるアルメニア歴史博物館内に展示されています。

5500年前の革靴が発見されただけでもものすごいことなのですが、アレニ洞窟のすごさはさらにここから。
洞窟の入口部分から奥へと進み、狭い通路を抜けた先の空間で6000年前のワイナリー跡が発見されたのです。


古代のアルメニアでは、ワインの原料となるぶどうの果汁を大きな甕に入れ、地中に埋めて発酵させる製法がとられていました。
アレニ洞窟最奥部にあたる空間では、甕を埋めるための穴はもちろん、果汁を搾るための道具や果汁を入れた甕、ワインを飲むための盃などが発見されています。
ワイン造りの際に産出されたらしきぶどうの種の化石を調査したところ、6000年前という数字が算出されたのだそう。
当時としては文句なしの「世界最古のワイナリー」であり、アルメニア観光局も「世界最古のワインの国」として観光PRをしていこうと盛り上がっていました。…が。


アレニ洞窟の6000年前のワイナリー発見からたった数年後に、なんだか見計らったかのような不思議なタイミング()で、北隣のジョージアで8000年前のワイナリー跡が発見。
ジョージアはそれを見事に観光PRに活かすことに成功し、いまでは「コーカサスのワイン王国」として絶大な知名度を有するまでになりました。
しかし、アルメニアの人たちの中には、このジョージアの後出しじゃんけん感溢れる「世紀の発見」を嘘っぱちだと考える人が多いのも事実。
実際、ジョージアで発見された「8000年前のワイナリー」は気温の変化が激しい荒野のど真ん中に位置していてお世辞にもワイン造りには適してない環境であり、しかも何故か一般人は訪問することができません(もはや怪しさがぷんぷん)。
こうした点からも、「洞窟内というワイン生産にぴったりな環境&ぶどうの種の年代などから科学的に年代が正確に解明されているアレニ洞窟のワイナリー跡こそが世界最古のワイナリーである」と主張する研究者も少なくないのだとか(さあて、真実は如何に…)。

ジョージアとアルメニア、どちらがワイン発祥の国なのか…という(不毛な)論争はいったん置いておくとして、アレニ洞窟は遥か昔の人類の営みを五感で感じることができる場所。
規模こそそれほど大きくありませんが、この場所が有する考古学的な貴重さと古代の歴史浪漫を存分に感じたいものです。
③ノラヴァンク修道院

アレニ村からさらに9kmほど山奥に行くと、荒涼とした荒野に突如として姿を現すノラヴァンク修道院(Noravank / Նորավանք)に到達します。【マップ 青③】
建造は1105年と今から900年以上も前のことで、「アルメニア全体を見渡してもここ以上に異世界感漂う修道院は珍しい」として、観光客にも大人気となっています。


ノラヴァンク修道院とアレニ村間は微妙に離れており、公共交通手段が存在しないのが不便ですが、多くの旅行者にとってはノラヴァンクとアレニはセットで周るのが定番。
エレバンからの日帰りツアーも出ているほどに定番の見どころであるノラヴァンク修道院ですが、個人的にはアレニ村に宿泊しながら個人でノラヴァンク修道院を訪れる方が、のんびりとこの場所の魅力を満喫できるような気がします。
ノラヴァンクへのアクセス方法を含め、観光情報まとめは別記事でがっつり解説しているので、こちらも参考にしてください!▼
④アレニ聖母教会

アレニ村東部の高台にたたずむアレニ聖母教会(Surb Astvatsatsin Church of Areni/Սուրբ Աստվածածին եկեղեցի)は、村のシンボルとして人々に愛される聖地。【マップ 青④】
建造は今からおよそ700年前の1321年ととても古く、当時の宗教建築の様式を反映した美しい造りが特徴的です。


ドーム屋根のぎざぎざとした傘のような装飾や、十字架型の敷地に建てられた聖堂は、中世アルメニアにおける定番の様式。
どの角度から見ても完璧な調和が感じられ、背後に聳える切り立った崖の風景とのコントラストが果てない非現実感を演出します。

アレニ聖母教会は細部の装飾に至るまで美しく、建物の規模自体はそこまで大きくないものの、中世アルメニアの教会建築の傑作とされています。
聖堂内部に入ると、天井部分に施された細かな彫刻や四体の神獣のレリーフの精巧さに息を呑むはずです。


▲アレニ聖母教会の南側入口上部のレリーフは、キリストを抱きかかえる聖母マリアの姿が描かれたもの。
こちらは、有名彫刻家であるモミク(Momik)の作品です。
モミクは、14世紀初頭にアルメニア南部地域を中心に活躍した人物。
ノラヴァンク修道院の聖母教会の入口ファサードの彫刻を施したことや、当時の名門大学であるグラゾール大学で芸術を教えていたことでも知られており、ここヴァヨツ・ゾール地方を旅する際には必ず一度は彼の作品に触れることとなるはずです。

▲建築自体も細かな装飾も素晴らしいアレニ聖母教会ですが、この場所の最大の目玉となるのがアレニ村周辺を一望する絶景。
一面の緑に包まれるような人口2000人弱の村の隅々までが、視界の限りに広がります。


アレニは、アゼルバイジャン領であるナヒチュヴァンとの国境までたったの3kmほどの場所に位置している村。
聖母教会から西方向を眺めると目と鼻の先に深い山々が見えますが、この山々の向こうはもうアゼルバイジャンです。
⑤ソ連ダムの跡

アレニ村の南側に聳える山の中にひっそりとたたずんでいるのが、ソ連時代のダムの跡。【マップ 青⑤】
定番の観光地ではなく「知る人ぞ知る」といった感じのスポットですが、なんとも言えないミステリアスな光景は一見の価値があります。


この場所に関する情報はネット上にはほとんどないものの、地元の人によると1980年代のソ連時代末期に建設が開始されたダムの堰となる建造物の土台なのだそう。
工事の影響なのか、途中で上流から流れて来る水の流れが変わってしまったそうで、いったん工事計画は見直しに。
そうこうしているうちに1991年にソ連が崩壊してしまい、結局ダム建設プロジェクトは実現されないまま放置されることとなりました。

ダムの堰の跡の向こう側には、かつて川が流れていた谷間の風景が広がります。
この谷間はダムの底に沈む予定だったのですが、結局ダムは完成せず。
大自然の力を人間に知らしめるかのように、ワイルドな風景を見せてくれます。
ソ連ダムの跡の敷地への立ち入りは自由で、建造物を間近で眺めることも可能。
一部マニアの間では、「クライミングできるソ連建造物」として人気なのだそうです。


一見すると、意外と難儀せずに登れそうな気がしますが、ここは30年以上前から何一つ整備されずに放置されてきた場所。
登る場合はリスクをともなうため、自己責任となります。
アレニ周辺の深い緑の山々と、幾何学的な人工物の不思議なコントラストが見られるソ連ダムの跡。
かなり大規模で圧巻なので、興味のある人はぜひ訪れてみては?
⑥アレニ村の素朴な風景

アレニ周辺エリアの観光・滞在拠点となるアレニ村は、人口1800人ほどの小さな村です。
訪問前は、「アレニ=一大観光地=観光客マネーでウハウハの村」とばかり思っていたのですが、実際に訪れてみるとそんなイメージは180°変わるはず。
アルメニア地方部を絵に描いたような素朴な雰囲気で、観光マネーの匂いは全くしないためです。

エレバン方面とを結ぶ幹線道路沿いには、日帰り観光客に人気のワイナリーが点在していたり、自家製のワインやドライフルーツを売る露店が数十軒ずらりと並んでいたり…と、「THE・観光地」といった印象を持つかもしれません。
しかし、アレニ村への分岐点から村内に一歩足を踏み入れると、大型バスでワイナリー見学に訪れる旅行者たちの姿は皆無。
「ここが本当にあの有名なアレニ村…?」とびっくりするほどの素朴さと静けさに包まれています。▼


アレニは、高さ数百メートルはある断崖絶壁の岩山を背景にした渓谷地帯にひらけた村。
そのため、村のどこからでもダイナミックな断崖絶壁の風景が見られ、村の景観を独特のものにしています。
アレニはとても小さな村ですが、村の中心を流れるアルパ川を境にして北側の集落と南側の集落に大きく分かれるそう。
より古い歴史を持つのは南側の集落で、伝統の石壁が連なる路地の雰囲気がとても素晴らしいです。【マップ 青⑥】


アレニの集落内にはこれといった観光スポットはなく、気ままに小さな路地を散策するのがメイン。
各家庭の庭では日々の農作業や調理が行われており、村の日常にお邪魔するような感覚で過ごすことができます。
村の人々は外国人に比較的慣れているようで、開放的で気さくに接してくれるのも◎
アレニに関しては、観光地としての訪問客の増加が村を良い方向に導いているような印象を受けました。

▲アレニの人は本当に柔らかな態度の人が多く、温暖な気候のおかげなのか他所からの人間にも開放的な気質がびしびしと感じられます。
みんなとても気さくに声をかけてくれ、とても良くしてくれるので、アルメニア地方部ならではの人の温かさにきっと心がじんわりするはず。
こうした素敵な人々の出会いも含めて、アレニという小さな村の大きな魅力となっているように感じました。
アレニの宿情報

アレニ周辺エリアを訪れる多くの旅行者はエレバンからの日帰りのプランを選びますが、正直アレニの魅力は宿泊しないと味わうことができません。
アルメニア地方部の昔ながらの暮らしがそのままに残っている村では、ゲストハウスに宿泊することで、田舎暮らしの素晴らしさを肌で感じることができるのです。
アレニ村の宿泊施設は、一般家庭の一部を旅行者向けに開放したゲストハウスのみ。
大型ホテルやドミトリーがあるホステルは存在しません。
のぶよがアレニ村で実際に宿泊したゲストハウスがもうとにかく素晴らしかったので、ここで紹介しておきます。
【LiViTi】

・料金:7000AMD(=¥2800)※朝食込み
・部屋タイプ:ダブルルーム一人利用 ※バス&トイレ付
・立地:7/10
アレニ村の入口にあたる幹線道路の分岐点から徒歩15分ほど。村の奥にあたる集落に位置するゲストハウスです。
幹線道路沿いのワイナリーや、アレニ洞窟など定番の見どころへは少し歩かなければなりません。
しかし、ゲストハウスの周辺には商店が二軒あるので便利。
集落ののんびりした雰囲気も素敵です。
・宿へのアクセス:10/10

宿の入口には看板が出ており、とても分かりやすいです。
入口の扉は常に開いており、宿のおばさんが宿泊客の到着を待機していてくれるので、簡単にチェックインすることができます。
・スタッフ:10/10

宿を経営しているのは、生まれも育ちもアレニというおばさん。
地元の見どころや食材への知識がとても豊富で、観光や滞在の有益なアドバイスをしてくれます。
おばさんのホスピタリティーは本物で、常に宿泊客が快適に過ごせるように色々と気にかけてくれます。
・清潔さ:10/10

部屋、共用部分、トイレ…と、どこをとっても完璧な清潔さでした。
シャワーのお湯も熱々で、若干水圧が弱かったものの、まあ気にならないレベル。
地方部ゲストハウスあるあるの排水溝の匂いも全くなく、ちゃんと掃除されていることがわかります。

部屋は広々としており、大きな窓があるのでとても開放的な雰囲気。
ゆっくりと羽をのばすことができます。
・設備:8/10
部屋には電気ポットやドライヤーが設置されており、細かいところまで宿泊客のニーズが考えられている印象。
コンセントの位置がやや微妙な場所(ベッドから離れている)にあって少し不便だったのが改善点かもしれません。

個室以外にも、宿泊客が利用できるリビングルームやテラスなどの共用エリアが充実しており、好きな場所でのんびりと過ごすことができます。
キッチンもあるにはあるのですが、宿の家族も使用するため、がっつり自炊などは難しいかもしれません。
・wi-fi:10/10
部屋、共用エリアなど宿全体で問題なく使用可能です。
電波もかなり強く、作業なども支障なくできる速度でした。
・雰囲気:10/10

この宿の居心地の良さは、アルメニアのあらゆるゲストハウスの中でもトップレベル。
宿からの眺めだけでも癒されますし、オーナー家族の柔らかな態度やホスピタリティーも素敵な空間づくりに一役買っています。
宿泊料金に込みの朝食も自家製の素材を使用したもので、地方部の村ならではの宿泊体験ができる点も◎
自家製のワインも数種類用意されており、アレニ村ののんびりした風景を眺めながら名物のワインに舌鼓を打つことができます。
・総合:9.3/10
クオリティー、居心地、オーナーの人柄…とすべてにおいて理想的な宿です。
アレニ村の中では最もリーズナブルな類の宿ですが、宿泊代以上の思い出がきっと得られるはず。
観光やワイナリーよりも、この宿に宿泊してのんびりとアルメニア地方部時間を過ごすことこそが、アレニ村訪問のハイライトとなるはずです!
【アレニの宿の予約はこちらから!】
アレニへのアクセス・行き方
アレニはアルメニアを代表する観光エリアの中心に位置する村ですが、そのアクセスはかなり不便。
エレバンからの距離が近いにもかかわらず、エレバン~アレニ間の直行の公共交通は存在しないという謎な状況になっています。
ほとんどの旅行者はエレバンからタクシーチャーターor現地ツアーを利用して、アレニのワイナリーとノラヴァンクを日帰りでサクッと周る行程を選ぶでしょう。
いっぽう、アレニ本来の魅力を味わいたいなら宿泊することになり、個人で移動することになりますが、その場合の移動の難易度はやや高めである点は知っておきましょう。
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、エレバンでタクシーをチャーターしてしまうこと。
エレバン~アレニ間の単純往復 + 観光時の待機時間2時間ほどで、1台12000~15000AMD(=¥4800~¥6000)ほどが料金相場です。
のぶよ的には、せっかくタクシーをチャーターするなら近郊の見どころもセットでまわるのが効率的だと思います。
・アララト山を背景にたたずむホル・ヴィラップ修道院
・圧倒的な異世界感漂うノラヴァンク修道院
・隠れた自然スポットエンジェルズ・キャニオン
上記の見どころは比較的近い場所に位置しているので、タクシーをチャーターしてセットで訪れるにはぴったりです。(もちろんチャーター料金相場は上がってくるので、あとは交渉次第!)
いっぽう、アレニの15kmほど東に位置するイェゲグナゾールの町からタクシーを利用することも可能。
その場合、片道のみ利用2000AMD(=¥800)/往復チャーター+アレニ周辺の見どころを周遊7000AMD(=¥2800)ほどが料金相場となります。
②現地ツアー
1日で効率的にアレニ周辺の見どころをまわりたいなら、現地ツアーに参加してしまうのもおすすめ。
アルメニアは小さな国土に見どころがギュッと詰まっているものの、公共交通機関がやや不便なのがネック。
移動を考えなくて良い&リーズナブルな現地ツアーは、一人旅の人にとっても便利です。
アレニ単体のツアーは存在せず、ホル・ヴィラップ修道院やノラヴァンク修道院に立ち寄るツアーがほとんどです。
③マルシュルートカ
絶大な知名度とは裏腹に、アレニへの公共交通手段はとてつもなく限られています。
多くの旅行者が拠点とするエレバンからアレニへ直行するマルシュルートカ(乗り合いミニバス)は存在せず、さらに先の町へ向かうマルシュルートカをアレニで途中下車する必要があるのです。

▲このエリアの主なマルシュルートカ路線は上の画像の通り。
エレバン~イェゲグナゾール/ヴァイク/ジェルムックなどさらに先の町まで行くマルシュルートカに乗り、アレニ村で途中乗下車してのアクセスしかありません(なので正直、旅慣れていない人には結構ハードル高い)。
エレバン~アレニ村間のアクセスに利用できるのは、アルメニア南部の町を結ぶ便。
イェゲグナゾル便やヴァイク便、ジェルムック便などを利用して、アレニ村付近で途中下車することになります。
いっぽう、アレニの東15kmほどの場所に位置するイェゲグナゾールからのアクセスは比較的容易。
個人でアレニを訪問する場合は、エレバン基点ではなくイェゲグナゾール基点の方が圧倒的に移動しやすいです。
エレバン~アレニ間のマルシュルートカ移動
【エレバン→アレニ方面(往路)】

エレバンからアレニへとアクセスする際に最も利用しやすいのが、アレニの東15kmほどの場所に位置するイェゲグナゾールを終点とする便。
もちろん、その先のヴァイク行きやジェルムック行きを利用してもOKなのですが、便数的にはイェゲグナゾール行きがベストだと思います。
エレバン~イェゲグナゾール間マルシュルートカのエレバン側の発着ポイントは、中心街南部にある労働広場(Labor Square/Աշխատանքի հրապարակ)の50mほど南の一角。
キリキア・バスステーションや鉄道駅前バスステーション発着ではない点に要注意です。▼
労働広場のマルュルートカ発着ポイントの最寄りは、エレバン地下鉄のGortsaranayin駅(Գործարանային)。
地下鉄駅の出口を出て、労働広場がある西方向に歩いて5分ほどの場所です。


▲労働広場のバス発着ポイントでは、イェゲグナゾール行きやヴァイク行きのマルシュルートカが常に待機しているので、運転手に行き先を確認して乗車すればOK。
事前に座席を予約したりする必要はなく、当日直接出発ポイントへ行けばOKです。
【アレニ→エレバン方面(復路)】

アレニ観光を終えてエレバン方面へ移動する場合も、直通のマルシュルートカは存在しないためひと苦労。
イェゲグナゾールやヴァイク、ジェルムックなどさらに先の町からエレバンへと向かう便に途中乗車するしかありません。
アレニ村への入口となる幹線道路沿いの分岐点【マップ 黄色】でエレバン方面へ走るマルシュルートカを待ち、やって来たら合図して停車してもらいましょう。
アレニ→エレバン方面を移動する際の最大のネックとなるのが、いつアレニ村入口を各マルシュが通るか正確な時間がわからないことと、すでに満席の場合は乗せてくれないこと。
このあたりの不確実性をよく考えて、移動のプランニングを組むようにしましょう。
個人的には、アレニ~イェゲグナゾールの区間の方が断然移動しやすいので、エレバン拠点の往復よりもイェゲグナゾール拠点の往復の方がおすすめです。
イェゲグナゾール~アレニ間のマルシュルートカ移動

エレバンからのアクセスはものすごく不便なアレニですが、ヴァヨツ・ゾール地方の中心的な町であるイェゲグナゾールとの移動は意外と簡単。
1日3往復のマルシュルートカが平日のみ運行しており、旅行者でも簡単に移動することができます。
・イェゲグナゾール発→8:00/12:30/16:00
・アレニ発→8:30/13:00/16:30
※アルメニア地方部のマルシュ時刻表は変更もしばしばあるので、必ず現地で自身での確認を
マルシュルートカのスケジュール的に、アレニには宿泊せずにイェゲグナゾール拠点で日帰り往復するプランももちろん可能です。
しかし何度も書いているように、日帰りでアレニを訪問する意味はなし。
最低でもアレニに一泊はして、翌日にイェゲグナゾールへ戻るプランを組みましょう。
イェゲグナゾールでの発着ポイントは、中心街のバスステーションから。▼
イェゲグナゾールからアレニへとやって来たマルシュルートカは、アレニ村南部の集落の広場【マップ 茶色】ですぐにイェゲグナゾール方面へと折り返すルートを取ります。▼

イェゲグナゾール~アレニ間マルシュルートカは、アレニ村の入口にあたる幹線道路沿いの分岐点【マップ 黄色】を経由するので、こちらで途中乗車/下車することも可能です。
アレニ観光のプランニングのポイント&アドバイス
アレニへの旅はプランニングが命。
限られたアルメニア旅行の日程で何日間をこの小さな村に割くか/どうやってアクセスするか…など、初訪問の場合は分からないことだらけだと思います。
ここでは実際にアレニに3日間滞在した経験から、アレニ観光のプランニングに役立つアドバイスを解説していきます!
アレニ観光のベストシーズン

アレニは標高1000mほどの場所に位置しており、これはアルメニアの中ではかなり低い方。
したがってアルメニアの中でも最も温暖な地域の一つであるとされ、積雪量もそれほど多くはないとされています。
とは言え、やはり冬場(12月~2月)は見劣りしてしまうもの。
村の風景は寒々しいものとなりますし、正直避けた方が良いです。
アレニの春は早く、3月の末にはすでに大地に緑が戻ってきます。
4月や5月はやや降水量が多いものの、快適な気温の中でのんびりと過ごすことができるのでおすすめです。
夏場(7月~8月)のアレニはかなりの暑さになるそうで、40℃越えも珍しくないそう。
とは言えエレバンのようなコンクリートジャングル的な暑さではないので、まあ耐えられるかと思います。
総合的に、アレニ観光のベストシーズンとなるのは、5月~6月の初夏と、9月~10月の秋。
特に、例年9月末には名産のぶどうの収穫が行われるそうで、宿泊先のゲストハウスの畑で収穫体験も可能となります。
また、毎年10月1週目の土曜日にはアレニ・ワインフェスティバルが開催されます。
村が一年で一番賑わいを見せる日なので、「とにかくワイン三昧をしたい!」という人は狙って訪れるのも良いでしょう。
アレニ観光の必要日数&モデルプラン
アレニ観光に必要な日数は、最低1泊2日(=2日間)。
とにかく、日帰りは絶対にNGです。
アレニを訪れる際の最大の目玉となるのはワイナリーでも修道院でもなく、アレニ村で滞在すること。
アルメニア地方部の素晴らしさが詰まった村の素朴さにどっぷり浸ることこそが、アレニを訪れる意味となります。
そんなわけで、近郊の定番スポット訪問を含めたアレニ観光モデルプランは以下の通り。
個人でも移動しやすいイェゲグナゾール発着の場合で考えていますが、エレバン発着の場合は往復タクシー移動となります。
【1日目】
8:00 イェゲグナゾール出発
8:20 ②Areni-Ⅰ洞窟で途中下車&観光
9:00 出発。ノラヴァンク修道院へ徒歩で向かう
11:30 ③ノラヴァンク修道院到着&観光
12:30 出発。アレニ村へ徒歩で向かう
16:00 アレニ到着&⑥アレニ村を散策して宿へ
【2日目】
9:00 出発&⑤ソ連ダムの跡を観光
10:30 ④アレニ聖母教会観光
11:30 ①ワイナリー訪問
13:00 イェゲグナゾール行きマルシュ乗車
こんな感じ。上記は全て公共交通手段&徒歩で周るプランなので、結構ハード(特に距離があるノラヴァンク修道院)。
各見どころ間をタクシー移動するのであれば、時間も体力もがっつり節約することがでるので、そのあたりは上手にメリハリをつけてください。
アレニは安全?
隣国との関係などの要因で、情勢がやや不安定なことがあるアルメニア南部。
アレニはアルメニア南部地域の玄関口にあたる町であり、地図を見るとアゼルバイジャン領ナヒチュヴァンとの国境までたったの3kmほどの場所に位置していることが分かります。
こうした地理的リスクが存在するのは否めませんが、2025年現在、アレニと周辺エリアで有事が発生する可能性は低いとされています。
そもそも、記憶に新しいアゼルバイジャンとの紛争が起こったのはさらに南に位置するナゴルノ=カラバフ。
アゼルバイジャン領ナヒチュヴァンからアルメニア領土への軍事攻撃リスクは低めで、アレニは国境地帯ではあるものの情勢は落ち着いています。
アレニ村のインフラ

アレニ村には大型スーパー等は存在せず、個人経営の小さな商店が数軒あるのみ。
どの商店でも基本的なものは揃いますし、特別に必要なものがなければ問題はないと思います。
飲食店に関しては、主にエレバンからの道路沿いにレストランが点在しているので、こちらも困ることはないはず。
とはいえ、理想的なのは宿泊先のゲストハウスで食事を付けてもらうことかもしれません。
一つ注意したいのが、アレニ村ではアルメニアの他地域に比べて停電になる頻度が高いこと。
丸一日ずっと電気がないことこそ珍しいものの、のぶよが滞在していた3日間のうちでも2回(3時間ほど&10分ほど)停電がありました。
まあ電気がなくとも村の人は火を起こして料理してくれますし、特に問題はないのですが、「ずっとネット環境が必要」というノマドとかそっち系の人にはマイナスポイントかもしれません。
おわりに
アルメニアが誇るワイン村・アレニの魅力をものすごい勢いで解説してきました。
もう何度も書いていますが、最後にもう一度言います。
みなさん…アレニにはぜひとも宿泊を…!
アルメニア国内津々浦々、色々な町や村を訪れてきましたが、アレニの観光地としてのポテンシャルや居心地の良さ、スレていないピュアな地方部感などはトップレベル。
村の周辺の有名観光地だけを日帰りで訪れるだけでは、確実に「すんごくたくさんの観光客で賑わってるなあ…(写真ぱしゃぱしゃ~)」で終わってしまうので。
周辺に点在する見どころの素晴らしさはもちろんですが、アレニの真の魅力である「アルメニア地方部ならではの豊かさ」を存分に感じてほしいです!
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