こんにちは!元ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
地方によって異なる文化や方言、食べ物など、地域色豊かなご当地文化がある日本。
自分が生まれ育った場所が一番に感じるのは当たり前のことで、京都vs大阪や埼玉vs千葉などの地域バトルはテレビ番組でもよく取り上げられていますよね。
中でもポピュラーなのが、関東vs関西という終わりなき戦いではないでしょうか。
肉じゃがの肉は豚?牛?
「ものもらい」?「めばちこ」?
お好み焼き単体?定食?
など、どうでもいいことではあるものの、地域によって異なる文化を知るのはとても面白いですよね。
実は、この東西問題があるのは、日本だけではありません。
日本の正反対に位置する小国・ポルトガルにおいては、首都のリスボン(南)と古都・ポルト(北)の二大都市の間で、仁義なきライバル争いが繰り広げられているのです。
今回の記事は、同じ国なのにかなり文化が異なるリスボンとポルトの違いに焦点を当てたもの。
言葉や食文化、人々の気質まで、色々な面での違いを紹介していきます。
地域色豊かなポルトガルという国を、もっと知ってもらえれば嬉しいです!
例外も多々あると思うので、あくまでもエンターテイメント的に楽しんでくださいね!
リスボンvsポルトの戦い1:ビールの銘柄問題
ポルトガルを南北に二分する問題としてまず思い浮かぶのが、南と北で飲まれるビールの銘柄が異なる点。
リスボンから南の地域で飲まれるのは、サグレシュ(Sagres)という銘柄。
ヨーロッパ大陸最南西端に位置するサグレシュという町の名を冠したビールで、深みがあって少々甘めの味わいが特徴的です。
一方、ポルトを中心とした北部で飲まれるのは、スーパーボック(SUPER BOCK)という銘柄。
サグレシュに比べるとかなりドライで、キレがある味わいが特徴的。
日本のビールの味に近いのは、こちらかもしれません。
のぶよ個人的にはスーパーボックの方が好みなのですが、リスボンでそんなことを公言してしまうと、友達を失ってしまうかも(笑)
スーパーマーケットでは地域に関わらず、いずれの銘柄も置いてあるのが普通ですが、レストランやカフェ、バーなどではどちらか一つしか取り扱っていないことも多いです。
リスボンは完全にサグレシュ優勢で、スーパーボックを置いている店はレア。
反対に、ポルトではほぼスーパーボック一択となります。
スーパーボック文化とサグレシュ文化の境目が気になったのぶよは、リスボン(サグレシュ優勢)から北に向かってバイクで走って、どの町で初めてスーパーボックを取り扱う店に巡り合うか調査しました。
(そう、暇だったのです)
その結果、リスボンから北に90kmほどのカルダシュ・ダ・ライーニャ(Caldas da Rainha)という町で、初めてスーパーボックを出すカフェバーに出会いました。
ということで、ポルトガルのビール文化の境界線はカルダシュ・ダ・ライーニャということにしておきましょう。
リスボンvsポルトの戦い2:「生ビール」の呼び方問題
ビールの銘柄問題に関連して、お店で注文する「生ビール」の呼び方も、ポルトガル北部と南部で異なるのは結構有名な話。
ポルトガルでは200mlほどの細いグラスに入った生ビールが好まれ、レストランやスナックバーはもちろん、屋外のキオスクなどどこでも購入可能です。
料金も€1(=¥120)ほどなので、ちょっと喉を潤したいときにビールを飲む人も多いです。
リスボンでの呼び方は「インペリアル(Imperial)」一択。
元々の意味は「帝国の」や「皇帝の」といったもので、なんだかリスボンらしいおしゃれな言葉です。
一方のポルトでの呼び名は「フィーノ(Fino)」。
「細い」という意味の形容詞が原義で、細長いグラスの形をそのまま表したものです。
リスボンの人を皮肉るのが大好きなポルトの人たちは、「なーにがインペリアルだよ!気取りやがって!」と憎まれ口を叩くのが定番。
東京を皮肉る大阪の人たちと、全く構図は同じです(笑)
リスボンvsポルトの戦い3:食文化違いすぎ問題
東京と大阪の食文化が大きく異なるように、リスボンとポルトの食文化はかなり異なるのも特徴的。
代表的なのが、リスボンの人たちがポルトの人のことを「トリペイロ」と呼ぶことでしょう。
「トリペイロ(Tripeiro)」とは、ポルトガル語で「臓物を食べる人」の意味。
牛や豚の内臓を煮込んだトリパス(Tripas)という臓物シチューがポルトの名物料理であることが由来です。
ポルトの人たちも「トリペイロ」と呼ばれることはまんざらでもないようで、むしろ自分で自分のことをそのように呼ぶ人も多い印象。
ポルトは大航海時代の始まりの地として知られ、その黄金期の幕開けを担ったエンリケ航海王子が生まれ育った町でもあります。
南米やアジアへと航海に出る船乗りたちに、ありったけの食料を分け与えて送り出したため、当時のポルトは厳しい食糧難に見舞われました。
そこで本来は捨てるはずの家畜の内臓の部分を食べて、飢えをしのいだことがトリパスの始まりだそうです。
また、ポルトを代表するB級グルメであるフランセジーニャ(Francesinha)も忘れてはいけません。
当ブログでも何回か紹介している、見た目も味も重たすぎるジャンキーな料理で、リスボンの人からすると「あんなわけのわからないもの食べるポルトって…」というマウント取りによく使われます(笑)
大航海時代で得た巨万の富を背景に発展したリスボン。
「ポルトの人が臓物シチューを作ってる時代に、リスボンではエッグタルトを作ってたよ」というのが自慢だとかなんとか。
「食べ物がないなら、エッグタルトを食べれば良いのに」と言わんばかりのリスボンの上から目線を、ポルトの人は許せないのかもしれません(笑)
リスボンvsポルトの戦い4:人の気質違いすぎ問題
リスボンとポルトの人の気質は、同じ国とは思えないほどに異なっています。
ポルトガル最大の都市であるリスボンの人の気質はかなり都会的だと言われ、ポルトの人からすると冷たい印象を与えるそう。
都会的で忙しない
他人にあまり関心がない
楽天的で浪費家
リスボンは大航海時代の莫大な富がつぎ込まれた結果、発展した町。
いわば、「棚からぼた餅」で大都市となったため、あまり努力を好まない「なんとかなるさ気質」の人が多いと言われます。
一方のポルトの人は、大航海時代から続く港町気質。
人懐っこくて情に厚い
気性が荒め(汚い表現も多い)
働き者で真面目
大航海時代の初期に貧しさを味わった歴史から、苦境でもじっと耐え抜いて働くことを美徳とする文化が根付いているのかもしれません。
面白いのが、ポルトの人の方がオープンマインドで、友人が作りやすいと言われる点。
大航海時代で多くの移民がやってきて共に生活したこと
名産のポートワインの輸出のため、イギリス資本を早い時期から受け入れてきたこと
などが理由として考えられます。
またよく言われるのが、「リスボンの人は同じ顔触れの仲間たちと時間を過ごすことを好み、ポルトの人は新しく仲間の輪に入ってきた人とすぐに打ち解ける」ということ。
個人的な印象としては、確かにポルトの方が人と人の距離が近い感じがします。
地下鉄や路面電車の中で知らない人同士がお喋りしている光景は、ポルトではかなり見かけましたが、リスボンではあまりない光景だと思います。
リスボンの人が冷たいというわけではなく、ただシャイな人が多いのかもしれませんね。
リスボンvsポルトの戦い5:アズレージョvsファドの芸術問題
ポルトの人々がリスボンに絶対に負けないと考えているのが、アズレージョの美しさ。
アズレージョとはポルトガル伝統のタイルアートのことで、一枚一枚手作業で色付けをした正方形のタイルを組み合わせて、一つの作品を作るのが定番です。
私たちがイメージするアズレージョと言えば、白い背景に青一色で色付けされたもの。
これは大航海時代後期にあたる16世紀~17世紀の作風で、ポルトの町にはかなり多くの作品が残っています。
一方のリスボンでは、この青と白を基調にしたアズレージョを目にする機会は少なめ。
18世紀半ばに起きたリスボン大震災によって、それまでに描かれたアズレージョの多くが被害を受けたためです。
そんなリスボンの芸術面を象徴するのが、ポルトガルの伝統音楽であるファド。
リスボンで最も歴史が古い町並みが残るアルファマ地区発祥の音楽で、郷愁をそそるギターの音色と歌い手の情熱的な歌声が見事にマッチしたものです。
ポルトではファド文化は根付いておらず、旧市街で開催されるファドライブのほとんどは観光客向けのもの。
リスボンの人からすると、「アズレージョでは負けるけど、ファドの美しい音色では絶対に負けない!」ということらしいです。
リスボンvsポルトの戦い6:コーヒーの呼び方問題
再び、ものの呼び方に関する違いなのですが、リスボンとポルトでは「コーヒー」の呼び方も異なります。
ポルトガル全土でポピュラーな、小さなカップで提供されるエスプレッソ。
これにたっぷり砂糖を入れて、クイッと飲み干すのが基本スタイルです。
一杯€0.6~(=¥72)ほどと手軽に購入できるので、ポルトガル人は朝から晩までこの苦いコーヒーを楽しむ人が多いです。
リスボンでは「ビカ(bica)」と言えば、このシングルエスプレッソのこと。
「コーヒー」を意味する「カフェ(Café)」も通じますが、「ビカ」の方がよりローカルっぽい印象を出せます。
一方のポルトでは、絶対に「ビカ」は使いません。
間違えて口にしてしまうと、「うわ、でた!リスボン!」となるでしょう(笑)
ポルトでエスプレッソを指すのは「シンバリーニョ(Cimbalinho)」と言う言葉だそうですが、若い人はあまり使わなくなっており、普通に「カフェ」と言われることが多いそう。
関西弁の「冷コー」(=アイスコーヒー)と同じように、死語になりつつあるのかもしれませんね。
リスボンvsポルトの戦い7:ポルト、天気悪すぎる問題
リスボンとポルトの仁義なき戦いには、なかなか落としどころを見つけるのが難しいのですが、リスボンの人の伝家の宝刀となるのが「そもそもポルト、天気悪いでしょ。」のひとこと。
たかが天気?と思いますが、ポルトの人にとってはかなり痛いところを突かれる攻撃となります。
ポルトの天気の悪さは折り紙付きで、とにかく雨の日が多いのです。
夏場の3~4ヶ月こそ降水量が少なくなるものの、冬場は毎日雨かどんよりした曇り空の日が続きます。
平均気温もリスボンに比べて低めで、「あんな天気の悪い町には住めない」と言い放たれてしまうことも。
リスボンの気候は、夏は快晴続きでほぼ一滴も雨が降らない日が続き、冬場は降水量が多くなりますがポルトほどではありません。
リスボンvsポルトの戦い8:リスボン、物価高すぎ問題
天気の悪さだけはどうしようもないポルトの人が反撃に用いるフレーズが、「リスボンは物価が高すぎる!あんなところには住めない。」という、こちらもクリティカルヒットとなるもの。
リスボンに住んでいたのぶよですが、確かにリスボンの物価は異常だと思います。
特に家賃や光熱費などの住まいに関する費用の高さは突出していて、平均給与がかなり低いポルトガル(月7万~8万ほど)において、みんなどうやってお金をねん出しているのか不思議に感じるほどです。
レストランでの食費に関しても、ポルトの方がリスボンに比べて2割~3割ほど安く、出費を抑えながら生活できるという点では確実にポルトに軍配が上がるでしょう。
大阪人が「東京は家賃も外食費も高すぎ」と主張するのと同じようなことが、ポルトガルでも起こっていると言えますね。
リスボンvsポルトの戦い9:方言強すぎ問題
リスボンとポルトでは、話されるポルトガル語のアクセントがかなり異なるのも特徴的。
リスボンのポルトガル語は、口を閉じてボソボソと喋るのが特徴ですが、ポルトは比較的口を開けて発音する人が多く、聞き取りやすいのは確実にポルトのアクセントです。
(お隣スペイン北西部のガリシア地方で話されるガリシア語とかなり似ています)
さらに大きく口を開けて、はっきりと母音が発音されるブラジルのポルトガル語にも、少し近いように聞こえるポルトのポルトガル語。
大航海時代初期にブラジルへと渡った人達の多くが北部出身だったことも、この類似性に関係しているのかもしれません。
他にも、ポルト周辺の北部のポルトガル語には独特の発音が多くあります。
“rr”を巻き舌で発音:リスボンでは喉を鳴らす”h”のような音
鼻母音ãoを「ォン」と発音:リスボンは「アォン」
bとvが入れ替わる:”vaca”(牛)を「バーカ」と発音(リスボンでは「ヴァーカ」)
聞き比べてみるとかなり発音が異なるので、北部出身者のポルトガル語はすぐにわかることが多いです。
リスボンの人は「ポルトの発音は田舎の船乗りみたいでダサい」と言い、ポルトの人は「リスボンの発音はボソボソして気取ってるみたい」と言うのも定番のバトルの一つ。
日本の「関西弁は怖い」vs「関東弁は気取ってる」そのままの構図です(笑)
リスボンvsポルトの戦い10:ポルトガル代表の町はどっち?問題
最後に紹介するのが、ポルトとリスボンのどちらの人も一歩も譲らない最重要テーマ。
「どちらの町が、よりポルトガルらしいか」という、これまた不毛にも程があるバトルです(笑)
リスボンの主張はこんな感じ。
ポルトガルの首都である
外国人がまずイメージするのはリスボンの町並み
郷愁漂うポルトガルらしい雰囲気
確かに、ポルトガルと聞いて最初にイメージするのは、リスボンの坂道や路面電車、「七つの丘の町」と呼ばれるリスボンの風景かもしれません。
対するポルトの主張は、
ポルトガル王国独立時の領土はポルト周辺の北部のみ
大航海時代始まりの地
「ポルトガル」という国名の由来は「ポルト」
と、豊かな歴史を引き合いに出して「ポルトガルがポルトガルなのはポルトのおかげ!」と、もはやなぞなぞのような理論で完全武装してきます(笑)
のぶよ的には、完全にどちらもポルトガル感満載の町でしかないのですが、外国人には到底わからないこだわりがあるようです。
リスボンの人はリスボンが一番だと思っている人が多く、「ポルト?行かないよ、だってリスボンに居ればなんでもあるし。」という感じ。
一方のポルトの人は「リスボン?行かないねえ、だってポルトの方が美しいしのんびりしてるし。」と主張する始末。
両者一歩もゆずらないポルトガルの二つの町を、何のしがらみもなく移動して観光できるという点では、私たち観光客の立場が最強なのかもしれませんね。
おわりに
食文化や言葉の違いをはじめ、人々の気質や町の雰囲気まで、ポルトとリスボンの違いを紹介してきました。
二つの町は、いわば永遠のライバル。
たった300kmほどしか距離は離れていないものの、心の距離はかなり開いています。
これからも二つの町の主張は交わることなく、熾烈なバトルが繰り広げられていくのでしょう。
のぶよ的には、夏場はポルトでのんびり過ごして、冬場はリスボンで快適な都市生活というのが理想のポルトガルライフです。
どちらの町にもそれぞれ素晴らしい点がたくさんあるのは言わずもがな。
ポルトガルに行く際は、ぜひ自分の目で二つの町を客観的に見ながら滞在してみてはいかがでしょうか。
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