こんにちは!アルメニア滞在もすでに5ヶ月!世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
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2週間ほど旅した、アルメニア北部のロリ地方(Lori)。
訪れる旅行者はそこまで多くはないのですが、アルメニアの長く豊かな歴史を現在に伝える見どころが点在している、おすすめの観光エリアの一つです。
今回紹介するのは、中世アルメニアの首都として黄金時代を謳歌したロリ要塞(Lori Berd / Լոռի բերդ) ▼
ジョラゲト川とウルット川が形成する深い渓谷に挟まれた、足がすくむほどの断崖絶壁。
その上に戦略的に築かれた要塞都市の跡地には、「栄光の時代も今は昔…」とばかりに一面の野原が広がっています。
ロリ要塞の敷地内には、シンボルの廃教会をはじめ、かつてこの場所で人々が生活した跡がいくつも残っており、中世のアルメニアにタイムスリップしたかのような気分が味わえるはず。
ロリ要塞を取り囲む深い渓谷の底には、およそ800年前に建設された石橋がオリジナルのままに残っている点も見逃せません ▼
今回の記事は、中世アルメニアの栄光の時代にどっぷりとひたることができるロリ要塞の観光情報を解説するもの。
ほとんど情報がない場所でアクセスも若干不便な点がありますが、その魅力は確かなもの。
歴史に興味がある人は感動間違いなしですし、「天空の城ラピュタ」を思わせる異世界な風景を一目見たい人にも、足をのばしてほしいです!
ロリ要塞観光前に知りたい!基本情報と歴史
ロリ要塞観光の基本情報
ロリ城塞は、アルメニアでは珍しい有料の見どころです。
「屋外博物館」というジャンルであるため、月曜日は休場となる点にご注意を。
ロリ要塞はさほど大きな規模ではなく、敷地内の見どころをまわるのに必要な時間は約1時間ほど。
敷地の外、深い谷底にある800年前の石橋をセットで観光する場合は、橋までのアクセス往復45分+橋の観光15分で、+1時間は最低でも必要。
つまり、ロリ要塞の見どころをすべてまわる場合は、最低でも2時間の観光時間をみておく必要があります。
ロリ要塞入口~石橋までは、いちおうトレッキングルートが整備されており、距離はたったの300mほど。
しかしながら、かなりの急斜面&足場がやや悪いため、子連れや体力に自信がない人は諦めた方が無難でしょう。
ロリ要塞の歴史をザックリと。
ロリ要塞の歴史のはじまりは、11世紀初頭(1000年前)に遡ります。
当時は、コーカサス一帯を支配して栄華を極めた中世アルメニア王国(885年~1045年)の黄金期末期にあたる時代。
アニ(現在のトルコ東部)を首都として王国を100年以上治めてきたバグラトゥニ朝による統治の根本が揺らぎ、領内で家臣たちが勝手に自分の王国を築いては独立宣言をしていた…そんな群雄割拠の時代でした。(日本で言う戦国時代のような感じかも)
その群雄割拠時代に、現在のアルメニア北部~ジョージア南部の広い範囲を治めたのがタシル・ジョラゲト王国(Tashir-Dzoraget Kingdom) ▼
タシル・ジョラゲト王国の二代目の王・ダヴィット1世(David I Anhoghin)は、群雄割拠の時代においても王国を守り抜きたいと考え、二本の深い渓谷に挟まれたこの地に町を建設することを決意。
1025年にはロリ(Lori)と名付けられた要塞都市が完成し、その後1065年にはタシル・ジョラゲト王国の首都として定められました。
三方を深い谷間に、もう一方を屈強な城壁に囲まれたロリの町には、浴場や民家、教会など人々の生活に必要な設備が整備され、万が一敵が襲来した際に住民が逃げられるように秘密の地下トンネルまで掘られていたそう。
人口が増えるにつれて要塞の外側や谷の反対側にも集落がいくつかでき、谷底の急流を渡るための石橋がいくつも建設されます。
タシル・ジョラゲト王国の首都としてどんどん発展していくと思われたロリ要塞でしたが、その華々しい時代は100年も続きませんでした。
1118年には、ダヴィット4世の治世下で急速に力をつけていた北隣の中世グルジア王国に国ごと併合されることとなり、その短い歴史に幕を下ろします。
その後、13世紀に東方からモンゴル帝国が襲来した際に、ロリ要塞は徹底的な攻撃対象となり、かつて築かれた城壁や民家などの多くが破壊されてしまいます。
それでもこの地に住み続けた人は存在したそうで、なんと20世紀のソ連統治時代までは住人がいたのだとか。
しかしながら、給水の手間やアクセスの難しさなど要塞都市ならではの造りが裏目に出て、1931年には完全に無人に。
その後は放置されることとなり、およそ千年前の要塞都市の栄光がほのかに漂うだけの場所となっています。
ジョージアにも残る、中世アルメニア王国の栄光の跡
千年前にロリの町を建設したダヴィット1世は、この町の完成以前は別の町に居城を構えていました。
それが現在のジョージア南部 クヴェモ・カルトリ地方(Kvemo Kartli)にあるサムシュヴィルデ(Samshvilde)という要塞都市。
ここもかつてはタシル・ジョラゲト王国の領土で、敷地内にはアルメニア風の教会跡や墓石が残り、ジョージアにいながら中世アルメニアを感じられるスポットです。
サムシュヴィルデは「中世グルジア王国においてモンゴル帝国によって最初に滅ぼされた町」としても有名で、最寄りの村の住人が現在でもアルメニア系というのも面白い点。
ロリ要塞とサムシュヴィルデは現在では別々の国に位置していますが、ジョージアとアルメニアの文化的・歴史的なつながりが感じられるはず!
ロリ城塞の6つの見どころ
①城壁
ロリ要塞を訪れる旅行者が最初に目にするのが、この地域の石を積み上げて築かれた城壁。
北、東、南の三方は深い渓谷に囲まれているロリ要塞で唯一、人口的に防衛線を築く必要があった西側にずらりと延びる城塞は圧巻。
最大の高さは25m、壁の厚さは10mにも及び、「鉄壁の要塞都市」を象徴する存在です。
要塞敷地内への唯一の入口である城門を通ると、城壁内部にはさらにもう一つの城壁があることに気が付きます。
そう。ロリ要塞西側には二重の城壁が築かれており、唯一の入口である城門以外からは何人たりともアクセスできないように工夫されているのです。
ロリ要塞の城壁は、モンゴル帝国が襲来した際に大きな被害を受けたそうで、現在でも半壊したままの箇所がほとんど。
高く積み上げられた石造りの壁の内側には、かつての民家の跡がかろうじて残っています。
②大浴場 ハイライト!
ロリ要塞の敷地内で最初に目にする建造物が、大浴場の跡。
この場所が首都とされていた11世紀~12世紀にかけての建造で、浴場/脱衣所/水を温めるための部屋(ボイラー室てきな)の三つの部屋で構成されていたそうです。
大浴場と脱衣所の床部分は二層構造になっていたそう。
これはボイラー室で温めた熱湯を浴槽へと流し込む過程で床下を通すことで、その蒸気で部屋全体が温まるように工夫されていたのだとか。
中世の浴場は、ロリ要塞内に住んでいた人々のコミュニケーションスペースでもあったはず。
説明されないと何の場所かわからないほどに風化が進んでいますが、千年前の人々の生活の息吹を追体験できるような、不思議な雰囲気に満ちた空間でした。
③教会 ハイライト!
ロリ要塞のシンボル的存在が、敷地の真ん中にぽつりと建つ教会。
敷地内に残る建造物の中では最もオリジナルの形をよく残しており、初めて見たときは「ラピュタ…!」と思う人もいるかもしれません。
この建物が教会として利用されるようになったのは後の時代になってからだそうで、ロリが首都であった千年前は別の目的で使用されていたと考えられています。
いったい何の目的で作られたのか、どう利用されていたのかは解明されておらず、ロリ要塞にまつわるミステリーの一つとして語られているのだとか。
外観からして独特な存在感を放つ教会ですが、内部はとにかく圧巻のひとこと ▼
天井に空いた穴から差し込む自然光に照らされた小さな空間は、まるで別世界に存在しているよう。
もともとは教会ではなかったにせよ、後の時代に聖地とされたのも納得。
神聖な雰囲気がビシビシと肌で感じられます。
建物内部の壁はすべて石造りとなっており、二本の柱が支えるアーチ型屋根は秀逸のひとこと。
これを千年前に造ったというのだから驚き。
当時のアルメニアがどれだけ技術的に発展していて、金銭的に豊かだったのか思い知らされます。
④小浴場
ロリ要塞の敷地の南側。
断崖絶壁ギリギリに建てられた小浴場も見逃せません。
要塞内に残る二つの浴場のうちの一つで、内部には土を焼いて作られた二本のパイプが残っています ▼
二本のパイプはそれぞれ冷水用と熱湯用で、浴場内で湯温を調整できるようになっていたそう。
小浴場からすぐ南側には、ジョラゲト川が形成する深い谷間の風景が広がります ▼
いわば「中世のエクストリーム露天風呂」のような感じでしょうか(笑)
昔の人も、この場所で絶景を眺めながら癒しのひと時を送っていたのかな…とイメージが湧きます。
⑤ハチュカル
ロリ要塞の北側には、数基のハチュカル(Khachkar)が残っています。
「ハチュカル」とは、石に刻まれた十字架のこと。
アルメニアのキリスト教を象徴するアイテムの一つで、教会や修道院を訪れる際は必ず目にするものです。
この場所のハチュカルは、ロリが首都であった11世紀半ば頃までに造られたもの。
当時はシンプルな模様のハチュカルが主流で、ロリ要塞内のハチュカルもほとんどがこの時代のもの。
現在のアルメニアに多く残る、細部に精密な装飾が施されたハチュカルは、のちの12~13世紀頃になってはじめて現れます。
⑥八百年前の石橋 ハイライト!
ロリ要塞の北側、ウルット川が形成する渓谷には、およそ800年前に建設された石橋が残っています。
ロリ要塞がタシル・ジョラゲト王国の首都として栄華を極めた11世紀~13世紀には、要塞の外側や深い谷を越えた対岸にも集落が形成されて人の行き来が爆発的に増えることとなりました。
要塞内外を移動する人々の往来を簡単なものとするために建設されたのが石橋。
当時はいくつもの石橋が築かれたそうですが、現在残るのはこの一本だけとなっています。
上から見ると、険しい谷の底にある石橋へはアクセス不可能にも見えますが、実は徒歩で谷底まで下りることも可能。
要塞への入口となる城門の手前左側から徒歩ルートがのびています ▼
谷を下ることになるので、道はかなりの急こう配&岩がゴロゴロしていて、少し注意が必要な箇所も。
履き慣れたスニーカー等で訪れるのがおすすめですし、体力に自信がない人はやめておくべき。
(下りはいいけど登りがかなりしんどいので)
徒歩ルートの距離は300mほどですが、歩きにくい道のために15分~20分ほどの時間がかかります。
ヒイヒイ言いながら、ようやく石橋へと到着!
長さ3.8m/幅2.8mのアーチ型の石橋は、なんと800年前のオリジナルのもの。
近年に入っての修復等はされていないという点も驚きです。
石を用いた建築技術に関してアルメニア人の右に出る者はいません(とのぶよは思っている)が、その技術の結晶となるものだと思います。
ロリ要塞が町としての機能を失った結果、この石橋もその役割を失い、いつしか人々に忘れ去られた存在となり果てました。
時が経とうとも変わらぬ川の流れと、鳥の鳴き声だけが時折響く谷底で、中世以降の激動のアルメニア史を静かに伝えているような気がしました。
ロリ要塞へのアクセス情報
ロリ要塞へのアクセス拠点となる町が、ステパナヴァン(Stepanavan / Ստեփանավան)。
人口1万人ほどの典型的なアルメニア地方都市といった雰囲気の町で、このエリアの交通の要所となっています。
ステパナヴァン~ロリ要塞間には公共交通機関は通っていません。
とはいえ、完全に平坦な幹線道路沿いを5km/1時間ほど歩いていくだけなので、健脚な人なら徒歩で往復するのも簡単です。
「歩くのはちょっと…」という人は、ステパナヴァンのバスステーションからタクシーを利用するのも◎
ロリ要塞までの単純往復+観光時の待機時間で2000AMD(=¥463)~が料金相場ですが、せっかくタクシーを利用するのであればこのエリアの他の見どころもセットで訪れるのが良いでしょう。
ステパナヴァン~ロリ要塞間の徒歩ルート
ステパナヴァン中心街のど真ん中に位置するバスステーションからロリ要塞までは片道5km/1時間ほど。
基本的に一本道なので、まず道に迷うことはありません。
バスステーションからすぐ北にかかる長い橋を渡った後は、東へとのびる道路をまっすぐに歩いて行きます ▼
橋を渡った後の道路をおよそ2kmほど歩いた地点で、ロリ要塞方面へ至る分岐点にさしかかります。
この分岐点を右に進み、「ロリ・ベルド」と名付けられた集落へと進んでいきます ▼
ロリ・ベルド村は、かつてロリ要塞内部に住んでいた人たちが移り住んでできた集落です。
なぜか道路は綺麗に舗装され、家々の佇まいも立派なものが多かったのが印象的。
ロリ要塞を訪れる観光客マネーで潤っているのでしょうか…
分岐点を曲がって2kmほど歩くと、ロリ要塞の堂々とした城壁がようやく目に入ります ▼
写真左側にある小さな小屋がチケットブースとなっているので、料金を支払って要塞内へと入場しましょう。
アルメニア各都市~ステパナヴァン間の移動
ステパナヴァンは、アルメニア他都市とは地理的に隔絶されていることから、公共交通手段はやや不便に感じるかも。
ステパナヴァン行きの便があるのは上のマップに表示した4路線のみで、便数が少ない&利用方法が若干複雑な点がネックです。
各都市~ステパナヴァン間の詳細なアクセス情報は別記事内でまとめているので、そちらを参考にしてください!
ロリ要塞とセットで訪れたい!周辺の観光スポット
ロリ要塞単体での観光でも良いのですが、せっかくここまできたなら周辺の観光スポットもセットでまわるのがおすすめ。
ロリ要塞のアクセス拠点であるステパナヴァン周辺には、いくつかの穴場スポットが点在しています ▼
ステパナヴァンでタクシーをチャーターしてしまうのが最も簡単(4000AMD~5000AMD)ですが、徒歩ですべてまわることも可能 ▼
のぶよの場合は、ヴァナゾルからの日帰りで3つの見どころすべてをまわりましたが、ゆっくりしたいならステパナヴァンに1泊して2日間に分けてまわるのが理想的だと思います。
【ステパナヴァンの宿をさがす!】
このエリアの見どころのまわり方(実際に日帰りで観光したスケジュール等)は別記事内で詳細に解説しているので、ぜひ参考にしてください!
おわりに
中世アルメニアの栄光が感じられるロリ要塞の観光情報を解説しました。
そもそもの旅行者が少ないアルメニアという国の中でも、さらに訪れる旅行者が限られているエリアなので、穴場感が強く感じられる点も良かったです。
ロリ地方にはまだまだ風光明媚な観光スポットがたくさん。
当ブログで随時記事にしていくので、お読みいただければ嬉しいです!
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