こんにちは!アルメニア滞在を満喫中、世界半周中ののぶよ(@nobuyo5696)です。
(世界半周についてはこちらの記事へどうぞ。)
アルメニア屈指の山岳リゾート地として人気のディリジャン周辺エリア。
「必見!」とされる見どころがいくつかあるのですが、その一つが今回紹介するゴシャヴァンク修道院(Goshavank / Գոշավանք)です。
山深いディリジャン国立公園の奥地に堂々と佇む中世の修道院。
その姿が視界に入ると、誰もがきっとこう思うはず。
「まるでRPGゲームの世界から抜け出してきたみたい…!」と。
遥か昔からこの地に建ち、人々の信仰を集め続けてきたゴシャヴァンク修道院は、UNESCOの世界遺産リストの候補にもなっているそう。
外観だけでなく内部の雰囲気もとても神秘的で、少しでも歴史を知っているとさらに楽しんで見学できるはずです。
今回の記事は、ディリジャン周辺エリアの必見スポットの一つ・ゴシャヴァンク修道院観光情報を解説するもの。
これさえ読んでおけば、観光はバッチリ!という内容になっています!
ゴシャヴァンク修道院の歴史
ゴシャヴァンク修道院が建つ場所には、かつてノル・ゲティク(Nor Getik)と呼ばれた別の教会が建っていました。
1188年の大地震によってノル・ゲティクは全壊してしまい、その敷地に新しく建てられたのが現在まで残るゴシャヴァンク修道院です。
新しい教会群の建造に深くかかわった人物が、ムヒタル・ゴシュ(Mkhitar Gosh / Մխիթար Գոշ)という学者。
かつての教会跡に新しく建てられた修道院は、建造を指揮した彼の名を冠して「ゴシャヴァンク(=ゴシュの修道院)」と名付けられ、周辺の集落は「ゴシュ村(Gosh)」と呼ばれるように。
13世紀に活躍した科学者/作家であったゴシュは、当時の中世アルメニア王国で初めて刑法を生み出したことでも有名。
彼はゴシャヴァンクの敷地内に科学者を養成するための学校を建設し、この地を拠点として活動を続けました。
中世以降のアルメニアでは、モンゴル帝国やティムール朝などの異民族による支配が続きますが、山深いこの場所までは異民族支配は届かなかったよう。
その証拠に、ゴシャヴァンク修道院には敷地を取り囲む城塞が存在しません。
(アルメニアの中世修道院の敷地の多くは防衛用の城壁で囲まれているのが普通)
外敵の侵入に悩まされることなく、12世紀~13世紀建造のオリジナルの建物が素晴らしい状態で残っている点が評価され、UNESCOの世界遺産リストの候補にも挙げられているほど。
アルメニアの人々にとってのゴシャヴァンク修道院は、長く続いた激動の時代をひそやかに見守ってきた特別な存在。
観光地として有名になった今でも、お祈りに訪れる人の姿が後を絶ちません。
ゴシャヴァンク修道院の見どころ
ゴシャヴァンク修道院とは、隣接する5つの教会から成る複合施設のことを指します ▼
すべての教会は隣り合うように建っており、30分~1時間もあればぐるっと見学できるでしょう。
ここからは、ゴシャヴァンク修道院敷地内の5つの見どころを紹介していきます!
①ゲヴィト(拝廊)
アルメニアの教会建築に特徴的なゲヴィト(拝廊)。
かつて聖堂内に入れない人々(=洗礼を受けていない)でも礼拝ができるように建設されたスペースのことで、メインとなる教会や聖堂につながるように建てられています。
ゴシャヴァンク修道院のゲヴィトは、敷地内で最大の面積を誇るもの。
長方形の形をした空間への入口部分には美しい彫刻が施され、12世紀当時のハチュカル(石の十字架)がズラリと並んでいます。
ゲヴィト内部は、4本の柱に支えられたアーチ型の天井が特徴的。
アルメニア教会のゲヴィトはどこもそうですが、天井部分には自然光を取り入れるための穴が空けられており、空間を優しい光が照らしています。
ゲヴィト内の柱や壁には十字架やアルメニア文字が刻まれており、この場所の神聖さを演出しているようです。
②聖母教会
ゴシャヴァンク修道院のメインの教会が、ゲヴィトとつながった聖母教会(St. Astvatsatsin Church)。
実際に中に入って見ると、結構な高さがあることに驚かされます。
祭壇部分には赤っぽい色でびっしりとアルメニア文字が刻まれており、こちらも圧巻。
教会上部のドーム型天井とそれを支えるアーチは、10世紀~13世紀の中世アルメニア王国時代によく見られた建築様式です。
聖母教会自体は、メインの建造物とはいえかなり小さな空間ですが、この場所の神聖さはかなりのもののよう。
多くのアルメニア人たちが熱心に祈りを捧げている姿がとても印象的でした。
③啓蒙者グレゴリウス教会
ゲヴィトの右側に肩を寄せるように建つ小さな建物が、啓蒙者グレゴリウス教会(St. Gregory the Illuminator Church)。
「啓蒙者グレゴリウス」とは、アルメニアにキリスト教を伝えた人物。
彼の存在のおかげで、アルメニアは301年に世界で初めてキリスト教国となったとあって、その名を冠した教会は全国に点在しています。
入口に施された装飾の緻密さとは対照的に、内部はかなり質素な作り。
どちらかというと礼拝堂のように感じられるほどに小さな空間ですが、巡礼者が灯したロウソクに照らされた光景はとても幻想的でした。
④聖ゲヴォルグ教会
啓蒙者グレゴリウス教会の裏側に独立して建つのが、聖ゲヴォルグ教会(St. Gevorg Church)。
1241年の完成で、他の教会よりもやや後の時代に建てられたものです。
聖ゲヴォルグ教会のドーム型天井はガラス板で補修された状態で、中世の教会と現代の技術が融合したような不思議な印象を与えます。
⑤鐘楼&書庫
ゴシャヴァンク修道院の最も北側に位置する建造物が、1291年完成の書庫&鐘楼。
当時は珍しい三層構造の建築様式が特徴的ですが、土台部分と上の二層は別々に建てられたもの。
土台にあたる一階部分が書庫として1241年に完成し、二階・三階部分を占める鐘楼部分は1291年に完成したものです。
特筆すべきが、一階の書庫部分と二階・三階の鐘楼部分は内部で直接つながっておらず、それぞれ別の入口がある点。
手前に残る学校の建物(現在は廃墟)の内部から階段を上って屋根の上にいったん出て、そこから二階・三階の鐘楼部分へとアクセスしていたんだそうです。
現在は学校の建物は廃墟となって屋根がないため、鐘楼部分へのアクセスは不可能。
旅行者が立ち入ることができるのは、一階の書庫部分のみとなります ▼
一階の書庫部分は、真っ黒の石で統一された空間。
かつては貴重な書物を保管するための場所だったためか、光が入らないように工夫されているのでしょう。
書庫の内部では八本の柱に支えられたアーチが交差するように天井部分を支えていますが、これはアルメニア全体を見てもかなり珍しい様式なんだそう。
アルメニア南部にある有名スポット・ノラヴァンク修道院(Noravank)の建築様式に強く影響されたものだと考えられているそうです。
ゴシャヴァンク修道院周辺の見どころ
ゴシャヴァンク修道院の見学を終えて時間に余裕があるなら、修道院を取り囲むゴシュ村(Gosh / Գոշ)を散策してみるのがおすすめ。
村内にはいくつかの見どころがあり、いずれの場所からもゴシャヴァンク修道院のパノラマを望むことができますよ!
聖サルギス礼拝堂
ゴシャヴァンク修道院から村の南側に広がる丘の斜面を100mほど登った場所に建つのが、聖サルギス礼拝堂(Saint Sargis Chapel)。
縦に長い形をした小さな礼拝堂の建物とゴシャヴァンク修道院を同時に見られることで、旅行者に人気の場所となっています。
礼拝堂の内部は、かなり質素な造り。
あまり訪れる人が多くないのか、どこか時代に取り残されたような雰囲気が漂っていました。
ムフタル・ゴシュの霊廟
聖サルギス礼拝堂から階段を上ったところにぽつりと建つのが、ムフタル・ゴシュの霊廟(Mkhtar Gosh Mausoleum)。
「ゴシャヴァンクの歴史」の項で解説しましたが、ムフタル・ゴシュとは現在のゴシャヴァンク修道院の建設に深くかかわった学者のことで、彼が眠る墓がまさにこの場所にあるのです。
霊廟からは緑に囲まれたゴシュ村と、堂々と建つゴシャヴァンク修道院を一望することができます。
およそ800年前にこの世を去ったゴシュ。
彼もきっと、この場所から現在の村と修道院を見守っていることでしょう。
ゴシュ村ビューポイント
ムフタル・ゴシュの霊廟からさらに丘を登ると、ゴシュ村からパルズ湖に至るハイキングコースに入ります。
ハイキングコースを歩くこと10分ほどの場所に、ゴシュ村を一望するビューポイントがあるので、時間と体力が許すなら訪れてみましょう。
緑に囲まれた素朴な村の風景と、そのど真ん中に堂々と佇むゴシャヴァンク修道院の姿。
現実離れした絶景は、ゴシャヴァンク修道院観光の締めくくりにぴったりです!
ゴシャヴァンク修道院へのアクセス・行き方
ゴシャヴァンク修道院があるゴシュ村は、このエリアの観光拠点であるディリジャンの中心街から南東に20kmほどの山奥に位置しています。
ディリジャン~ゴシュ村間には、いちおうマルシュルートカ(公共ミニバス)が走ってはいます...が。
・朝:ゴシュ村→ディリジャン
・夕方:ディリジャン→ゴシュ村
の1往復のみと、旅行者的には全く持って使えないスケジュール。
しかも毎日運行しているわけではなく、週にたったの2日しか走っていません。
というわけで、マルシュルートカを利用してゴシュ村にアクセスするのは至難の業。
アクセス方法は以下の3通りに限られます。
①タクシー
最も簡単&効率的な移動手段が、ディリジャン中心街でタクシーをチャーターしてしまうこと。
ディリジャン中心街~ゴシュ村間の往復 + 観光中の待機時間1時間で、1台4000~5000AMD(=¥889~¥1111)ほどが料金相場です。
せっかくタクシーを利用するなら、ディリジャン~ゴシュ村の途中に位置するハガルツィン修道院にも立ち寄るのがおすすめ。
ディリジャンでタクシーをチャーターしてハガルツィン修道院とゴシャヴァンク修道院を周る場合の料金相場は、1台7000~8000AMD(=¥1555~¥1778)ほどです。
②現地ツアー
「エレバンから日帰りで、効率良くディリジャンを観光したい!」という人には、現地ツアーの利用がおすすめ。
ディリジャンの必見スポットはもちろん、セヴァン湖など途中にある見どころにも立ち寄るツアーがほとんどで、値段も驚くほどにリーズナブルです!
③ハイキング
のぶよのように「絶対に自分の足で行ってやる!」という限界系の人には、ディリジャンからゴシャヴァンク修道院まで徒歩でアクセスするという方法もあります。
実は、この区間にはハイキングコースが整備されており、アクティブな欧米人旅行者の間ではかなり有名なんだそう。
ディリジャンを出発して山の中にあるパルズ湖(Parz lake)を経由し、ゴシャヴァンク修道院に至る16km/6時間ほどのハイキングコース。
自分の足で歩いた後に到達するゴシャヴァンク修道院の神々しさには、誰しもが感動するはずです。
難易度はそれほど高くなく、特別な装備も必要なし!
ディリジャン最大の魅力である大自然を全身で感じることができるので、体力がある人にはぜひともおすすめしたいです。
【ディリジャンの宿をさがすなら!】
ディリジャン国立公園の観光拠点に便利なのが、ディリジャン中心街。家族経営のゲストハウスからリゾートホテルまで…好みや予算に合わせた宿が選べます!
おわりに
山奥にどっしりと構えるたたずまいも、豊かな歴史も、内部の神聖な雰囲気も…
アルメニアの魅力がギュッと詰まったゴシャヴァンク修道院の観光情報を解説しました。
個人でのアクセスにはやや難ありですが、訪れる価値は十分にあります。
ゴシャヴァンク修道院以外にも、ディリジャンには魅力あふれるスポットがとにかくたくさん。
このエリアの記事は他にも色々と書いているので、あわせてチェックして充実した滞在に役立ててください!
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