こんにちは!元ポルトガル在住ののぶよ(@nobuyo5696)です。
ポルトガル南部に位置するアレンテージョ地方は、リスボンに流れるテージョ川の南岸を占める広大な地域で、ポルトガルの農業・畜産業の中心。
その中心都市のエヴォラ(Évora)は、ポルトガルでは珍しくローマ時代の遺跡が残る古代都市。
多くの民族が入れ替わり支配した町並みは世界遺産に指定されています。
町のシンボルであるローマ神殿をはじめ、中世に建てられた教会の数々や、イスラムの影響を受けた町並みなど、まるで町全体が屋外博物館のよう。
歴史に興味がある人はもちろん、綺麗な町並みを散策したい人にもおすすめな穴場の観光スポットです。
今回の記事では、
エヴォラ歴史地区の主要観光スポット
エヴォラ観光のポイント
エヴォラへのアクセス
を解説していきます。
リスボンからの日帰りでも、アレンテージョ地方観光の拠点として滞在しても楽しめるエヴォラ。
ポルトガル観光の定番は制覇したい人に、ぜひおすすめしたい町です。
エヴォラの主要観光スポット&モデルルート
1.ジラルド広場
世界遺産に指定されているエヴォラ歴史地区の中心にあるのが、ジラルド広場(Praça do Giraldo)。
地面にはポルトガルらしいタイルが敷き詰められ、オープンテラスのカフェや商店が建ち並ぶ賑やかな雰囲気です。
広場の名前になっている「ジラルド」とは、「恐れ知らずのジラルド(Geraldo Sem Pavor)」との異名を持った一人の戦士のこと。
エヴォラがイスラム教徒のムーア人の支配下にあった1162年に、レコンキスタ運動で活躍した人物で、1164年にイスラム教徒の手からエヴォラの支配権を取り戻すことに成功します。
アレンテージョ地方では英雄として扱われ、彼の勇敢さにまつわる伝説が多く残っています。
2.サント・アンタン教会
ジラルド広場に面して建つサント・アンタン教会(Igreja de Santo Antão)は、16世紀建造のルネッサンス様式のもの。
シンプルながら優雅な外観が、エヴォラの人々に愛され続けています。
エヴォラは15世紀~16世紀にかけてのルネッサンスの中心となった町で、かつては芸術の都として多くのアーティストや詩人が滞在したことでも知られています。
町に漂うどこか優雅な雰囲気は、この歴史に関係しているのかもしれませんね。
3.10月5日通り
エヴォラ歴史地区のメインストリートが、歩行者専用の10月5日通り(R. 5 de outubro)。
観光客用のお土産屋などが並ぶ賑やかな雰囲気ですが、人の数はそこまで多くないので、ゆっくりと散策が楽しめます。
お土産屋で目立つのが、アレンテージョ地方名産のコルク製品を売る店。
ポルトガルらしいガロ(鶏)やイワシをあしらったポーチや財布、コースターなども売られており、お土産にはぴったりです。
メインストリートを少し外れた路地は、昼間でもひっそりと静まり返っていました。
白壁に黄色を基調とした家々のデザインや、ところどころに飾られた花々がとても美しく、エヴォラの人々のセンスがうかがえます。
4.エヴォラ大聖堂
エヴォラ歴史地区観光のハイライトの一つであるエヴォラ大聖堂(Catedral de Évora)は、ジラルド広場から10月5日通りのゆるやかな坂道を登った先に堂々と建ちます。
1340年完成の歴史あるもので、当時を反映するゴシック様式が主体となっています。
アルファマ地区に建つリスボン大聖堂と似たようなファサードを持つのは、同時期に建設されていたため。
いずれの聖堂も、イスラム教徒を追い出すレコンキスタの完了にともない、キリスト教の復権を目指した当時の人々の信仰心が感じられる壮大なものです。
完成後、幾度となく増築された内部も必見。
バロック様式やマヌエル様式など、増築当時の建築様式が反映されています。
時間があるなら、聖堂周辺の裏路地を散策してみるのもおすすめ。
エヴォラで一番高い場所に建つ大聖堂を望むゆるやかな坂道は、とても情緒があります。
5.エヴォラのローマ神殿
エヴォラ観光の最大の見どころと言えるのが、エヴォラのローマ神殿(Templo Romano Évora)。
ローマ神話の月と狩猟の女神であるディアナ(Diana)の名をとり、ディアナ神殿(Templo de Diana)とも呼ばれる、1世紀のローマ帝国支配時代の神殿跡です。
ローマの政治家・アウグストゥスに捧げられたものとされており、エヴォラの中心にある丘の上のフォーラム(Forum=ローマ時代の町に整備された公共の広場)に建てられました。
イベリア半島で最も保存状態が良いローマ遺跡の一つとされ、多くの観光客が集まるスポットとなっています。
ローマ神殿の北側は展望台になっており、こちらの眺めも必見。
エヴォラ歴史地区のパノラマが眼下に広がります。
6.グラッサ教会
大聖堂とローマ神殿がある丘から南側に坂道を下っていくと、1511年建造のグラッサ教会(Igreja da Graça)に到着します。
ルネッサンス様式の正面ファサードには、美しい彫刻がずらり。
その上に突き出した可愛らしい鐘楼が、トレードマークです。
グラッサ教会の敷地内はポルトガル軍の施設として使用されているため、内部への入場はできません。
7.サン・フランシスコ教会&納骨堂
グラッサ教会から南に歩いていくと、エヴォラ歴史地区観光の隠れたハイライトとも言えるサン・フランシスコ教会(Igreja de São Francisco)があります。
1550年代に完成したゴシック様式の建物自体も素晴らしいのですが、必見なのは併設された納骨堂(Capela dos Ossos)。
その名の通り、5000もの人骨が壁や天井一面を覆う礼拝堂です。
フランシスコ派修道会の僧たちが瞑想する場所として建設された小さな礼拝堂なのですが、壁や天井をびっしりと覆うおびただしい数の人骨は圧巻。
これらの人骨は、戦争の犠牲者やペストに罹った人など様々な説があるものの、その真偽は謎のままです。
いずれにせよ、こんなにたくさんの人骨で装飾するという考え方も怖いですし、そこで瞑想をしていた修道僧たちにも恐ろしさを感じます。
礼拝堂の入口には、
“Nos ossos que aqui estamos pelos vossos esperamos”=「私たちの骨は、ここであなたの骨を待っています」
との有名な(そして恐ろしい)詩が刻まれているので、こちらもお見逃しなく!
8.水道橋
エヴォラ歴史地区の北側にあるのが、水道橋(Aqueduto)。
水道橋自体はポルトガルのどこでも見られるものですが、エヴォラの水道橋は一味違います。
はじめこそ高さ1mほどだった水道橋は、斜面を下るにつれてどんどん高くなっていき、その下の空間を利用して倉庫や家が建てられているのです。
水道橋に沿って続くカノ通り(R. do Cano)を北に歩いていくと、どんどん高さを増していく水道橋と、限られた空間をめいっぱい利用した家々が建ち並ぶ不思議な光景が見られます。
家の内部はどうなっているのかすごく気になりますが、一般に内部を開放しているような建物は見当たりませんでした。
しかしながら、水道橋の下に建つ家々という他ではなかなか見られない光景は、一見の価値があります。
エヴォラ観光のポイント(観光マップ/市内交通/所要時間)
エヴォラ観光マップ
青:見どころ
エヴォラの鉄道駅/バスステーション~市内間の移動
他都市からエヴォラにやってくる旅行者が到着するのは、鉄道駅かバスステーション。
いずれもエヴォラ歴史地区の外に位置しており、
鉄道駅:ジラルド広場まで徒歩15分~20分
バスステーション:ジラルド広場まで徒歩10分~15分
と、簡単にアクセス可能です。
歩きたくない場合は、Trevo社が運航するミニバスの青線(Linha Azul)の利用が便利。
鉄道駅~バスステーション~ジラルド広場~エヴォラ大学~鉄道駅
と、町を周回する路線です。
エヴォラ観光は日帰りor宿泊?
エヴォラはとても小さな町で、観光自体は徒歩のみで十分に可能。
今回の記事で紹介した見どころをまわるだけなら、半日あれば十分満喫することができます。
リスボンから日帰りで観光することも可能ですが、のんびりと歴史ある町の雰囲気を堪能したい場合は宿泊するのもアリ。
また、この地域の観光・交通の拠点として、とても便利な場所にあるエヴォラ。
周辺には、アライオロシュやエシュトレモシュなどアレンテージョ地方の伝統を残す小さな村が点在しており、のんびりとした時間を感じに行きたいもの。
スペインとの国境近くにある世界遺産の町・エルヴァス(Elvas)に足をのばすのもおすすめです。
その場合は、エヴォラに滞在しながら各スポットに日帰りで足をのばすのが最も効率的だと思います。
エヴォラにはホステルもあるので、予算を抑えながらの滞在も可能ですよ。
エヴォラ観光の注意点
小さなエリアに見どころがギュッと詰まっているエヴォラ。
とても観光しやすい町なのですが、いくつかこの地方独特の気候や文化の影響による注意点もあります。
エヴォラの夏場の暑さをなめてはいけない
エヴォラ周辺のアレンテージョ地方内陸部は、夏場の猛暑で有名な地域。
5月の時点で30℃超えなんて普通ですし、6月~8月にかけては40℃を超える日も多いです。
この暑さを軽く考えてはいけません。
日本ではまず体験できない、まるで砂漠にいるようなカラッカラの灼熱ですから。
エヴォラ歴史地区には日陰もそれほど多くなく、暑さ対策は必須。
夏場に観光で訪れる場合は、休憩などをとりながらの余裕を持ったプランニングを強くおすすめします。
エヴォラでは昼12:00~14:00の間の観光はおすすめしない
エヴォラをはじめとするアレンテージョ地方の町では、昼12:00~14:00くらいにかけての観光プランニングはご法度。
というのも、多くの観光スポットや商店が軒並み昼休みとなって休憩に入るためです。
昔はポルトガル全体で見られたこの昼休憩の習慣。
現在ではアレンテージョ地方など、限られた地域にしか残っていません。
レストランは普通に営業しています(むしろ稼ぎ時なので)が、スーパーやお土産屋、観光スポットなどは、営業時間に記載されていなくてもクローズする場合があるので、覚えておきましょう。
ポルトガル他都市~エヴォラのアクセス
アレンテージョ地方の中心都市として発展しているエヴォラは、首都のリスボンからのアクセスが最も便利です。
リスボン~エヴォラのアクセス
リスボン~エヴォラ間は、鉄道・バスのいずれでもアクセス可能で、所要時間はどちらも1時間半~2時間ほどです。
鉄道は本数が少なめですが、バスはかなりの便数が運行しているので、気軽に利用できます。
リスボンでの発着地は
鉄道:オリエンテ駅(Oriente)
バス:セットゥ・リオシュ(Sete Rios)バスターミナル
いずれもリスボン市内中心部から地下鉄でアクセス可能です。
エヴォラ~アレンテージョ地方の他の町のアクセス
エヴォラを拠点としてアレンテージョ地方の小さな村を周遊することも可能です。
公共交通手段はあまり発展していないアレンテージョ地方では、レンタカーを借りるのが一番手っ取り早い手段。
バス等で各町を周遊する場合は、本数が少ないため、1日に数か所観光してまわるのはかなり難しいと考えておきましょう。
アレンテージョ地方の各町とを結ぶバスを運行しているのはRodalentejo社。
ほとんどのバスは地元の学生向けに運行されているものなので、旅行者的には少々不便なスケジュールのものが多いですが、不可能なこともありません。
ポルトガルの国内長距離バス路線を一括運行しているRede expressos社は、各町の移動には使えないことが多く、リスボン~アレンテージョ地方の各町の路線に限られます。
また、エリア内の鉄道網もほとんど発展しておらず、長距離バスと同様にリスボン~各町間を結ぶものに限られてしまいます。
エルヴァス
スペインとの国境に位置するエルヴァス(Elvas)は、城壁に囲まれた旧市街が世界遺産に指定されている町。
スペインから国境を越えて多くの観光客がやってくる町並みは、ポルトガルにありながらもどこかスペイン風です。
エヴォラからは
Rede expressos社:1日4本
Rodalentejo社:1日2~3本(平日のみ)
のバスが出ています。
エシュトレモシュ
エヴォラの北に位置するエシュトレモシュ(Estremoz)は、丘の上に佇む白い町並みが魅力的。
アレンテージョ地方北部の交通のハブとして各方面にバスが出ているので、こちらを拠点に周遊するのもおすすめです。
エヴォラからは比較的多くのバスが出ており、日帰り観光も十分に可能です。
アライオロシュ
丘の上の古城とその麓に広がる白い町並みという、アレンテージョ地方の典型的な村の雰囲気が残るアライオロシュ(Arraiolos)も、エヴォラからのデイトリップにぴったりな場所。
Rodalentejo社の8007番のバスが、エヴォラ~アライオロシュ~エシュトレモシュの区間を走っているので、上手にプランニングすれば1日で2つの村をまわることも可能です。
それ以外にも、エヴォラ~アライオロシュ間を走る路線はいくつかあり、個人での日帰りも難しくはありません。
ポルタレグレ
「ポルトガルの秘境」、サン・マメーデ山脈自然公園(Parque Natural da Serra de São Mamede)観光の拠点となるポルタレグレ(Portalegre)は、アレンテージョ地方の北東に位置する町。
天空の白い村・マルヴァン(Marvão)や、絶景の城塞があるカステロ・ヴィドゥ(Castelo Vide)など、穴場の観光スポットが点在する国立公園で、ぜひ足をのばしたい場所です。
エヴォラ~ポルタレグレ間は、
Rodalentejo社の8553番のバスが1日1本
Rede Expressos社のバスが1日4~5本
走っています。
交通の便が良くないエヴォラと周辺の地域を効率良くまわるなら、リスボン発着の日帰り現地ツアーがおすすめ。
エヴォラ市内観光はもちろん、近郊の神秘的なストーンサークルや「白い村」アライオロシュに立ち寄るものも多く、アレンテージョ地方名産のワインテイスティングが含まれているものまで選択肢は豊富です。
おわりに
ポルトガルの中でも田舎感が強く残るアレンテージョ地方の中心、エヴォラの魅力や観光のポイント、アクセスを解説してきました。
日本人でエヴォラを訪れる人はなぜかとても少ないのですが、リスボンやポルトとは異なる雰囲気の地方都市らしいリズムや、歴史を感じさせる優雅な町並みはとても素晴らしいです。
周辺にも可愛らしい村が点在しているアレンテージョ地方。
時間をたっぷりとって、ポルトガルらしいのんびりとしたリズムを感じながらの観光も悪くないですよ。
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